[1116]で人口が減リはじめた中国の変化について素描しました。今回はこんにちの経済成長を支えた若く安価な労働力だった農民工の高齢化と変化を見ていきたいと思います
「世界の工場」支えた農民工 老いの波
朝日新聞「中国新世 人口減が始まる」シリーズ2は、中国の経済成長を支えた農民工の現状についてです。西山明宏記者が北京からレポートしています。記者が伝える現状を私なりにまとめてみます。
1978年に鄧小平の改革開放政策が始まって間もない1985年に6700万人だった農民工は、2021年には2.9憶人にまで増えました。
しかしその農民工も高齢化し、50歳以上の農民工の割合は2010年の12•9%から2021年には27•3%となりました。今後10年間で約8千万人が退職の年齢を迎えます。
西山明宏さんが、北京で仕事を探している農民工にインタビューしました。工場や建設現場などの日雇い労働者の待機場所にいた山東省出身の男性労働者(51)は、普段は建設現場で働くがコロナで仕事が減ったと言います。1日働いて400元(1元は約20円)。仕事がないときは1日200元の警備の仕事で食いつないでいるといいます。
その男性は今「まともに働ける人でも仕事がない。年齢が高い人はここに1週間以上いても誰も雇ってくれないから、地方に帰ったよ」と言ったそうです。。
日焼けした河南省出身の男性(58)はバスの警備員をして生計をたてているが、中国は定年が60歳なのであと2年働いたら実家に戻って生活保護を受けて暮らす言っています。
中国を支えた低賃金の農民工は高齢化し、若い農民工は少なくなっています。16歳〜30歳の農民工の割合は16年には3割超でしたが21年には2割まで下がったといいます。
工場労働者になったけれども今は北京でデリバリーの運転手をしている19歳の農民工は次のようなことを言っています。
「工場は毎日7〜8時間働き、同じ作業をひたすら繰り返すだけ。技術の向上や進歩もない」。
資本主義的労働の疎外感を感じているようです。わかるような気がします。
彼は今工場労働者の2倍の賃金を得ているそうですが、疎外感は消えたのでしうか。
全国人民代表大会で、自動車部品工場のトップが、労働力不足を訴えました。
「中国の製造業では20年時点で2200万人分の人手が足りず、最近5年間は毎年150万人が製造業の仕事を離れている」。
その多くがデリバリー業界に流れていると言われています。
私が推測するに、多くの若い労働者がデリバリー資本と請負契約によって働くギグワーカーになっているのでしょう。
中国の資本家は安い労働力を求めてベトナムやカンボジアに工場を移しています。スマホ大手の小米科技(シャオミ)がベトナムで生産をはじめました。習近平の一帯一路戦略は安い労働力を求める資本家の思惑に応えるべくこれからも進められるでしょう。
人口が減りはじめた中国資本主義社会は転機に立っています。