[1153](寄稿)医療あれこれ(その75)−1

ペンギンドクターより
その1
皆様
 昨日の「立春」は予報より早く日ざしが出て暖かでした。公園も梅の花が咲いています。ボケの花芽も少し膨らんできました。しかし芽吹きの春はまだまだ先のことです。
 
 今回もMRICの主張の転送とともに、雑多な「医療あれこれ」を送ります。お付き合いください。
 先日、医療者ネットワークで「薬剤師国家試験」の合格率がニュースとなっていました。それによりますと、
 ●薬剤師国家試験の合格率:私立大学の三分の一が50%以下 
 さらに姫路独協大、千葉科学大、第一薬科大、日本薬科大の4大学が3割以下の合格率だったようです。また入学したものの卒業できず、退学となった学生が30%以上の大学が5大学あったとのことでした。
 そのニュースを見て、私はある意味で納得しました。薬学部が4年制から6年制になったとはいえ、薬剤師になるには、国家試験が難しすぎます。先日も言いましたように私は毎朝医師国家試験と薬剤師国家試験問題を1問ずつ解いています。医師国試の正答率が74%(少しずつ上昇中)なのに、薬剤師国試は46%です。しかも薬剤師国試の正答率は上昇する気配がありません。膨大な薬剤の作用機序についての問題が入れ替わり立ち替わり出題されているからです。さらに法律関係も出ていますし、具体的な疾患に関する問題(これらは何とか私が正答できる分野です)も出ています。医師国試よりはるかに難しいと言えます。
 さらに、この20年ほど前からは「病棟薬剤師」という仕事、薬局から実際に患者さんのベッドサイドに出て、薬剤に関する情報を患者さんに説明する仕事も重要視されてきました。おかげで医師はずいぶん助かっているのですが、臨機応変の質問に即応できなければいけない、という意味で薬剤師さんの仕事の大変さが倍加したと私ですら感じました。
 といったわけで、医師もそうですが、薬剤師さんもコンピュータやネットをうまく活用して、ミスのない仕事をする時代が来ていると思います。そのうち、薬剤師国家試験にも、スマホやパソコンの「持ち込み可」となる時代が来るかもしれません。それほど、薬剤師国家試験は膨大な薬剤知識が必要となり、すべてを記憶するのは無理になっていると、「老医」(中国医学の優秀な医師という意味の老医ではなく知力の衰えた老人医師のこと)である私は同情します。
 私はもう20年前から、薬剤については遠慮なく薬局に問い合わせて、適応する薬剤を教えてもらい、処方していました。「がんの外科医」というのは、手術から離れれば、医療の世界では「素人に近い存在」です。もちろん私なりにインターネットを通して、日々知識を得る努力は続けていますが……。
つづく