[1268]親元で暮らす若者は世界的に増加

 親と同居する若者が世界的に増えています。5月29日の日経新聞「Inside Out」に「巣立たぬ若者、英米も急増」という記事がありました。

 英米で若者の3分の1が親と同居するようになったといいます。米カリフォルニア州に住むエンジニアの若者エリック・レーさん(男性26歳)は大学院修了後実家で暮らしています。

「アパートを借りるにしても家賃が高すぎる。実家暮らしなら家賃にお金を割かない代わりに貯金ができ、ぜいたくなことにお金が使える」と言います。同世代の友人の多くが同じように親と同居している。

 大恐慌以来の高率で親元に暮らすようになっているといいます。米統計局によれば、18~34歳の若者で親と暮らす人の割合は1960年に23%、1990年に27%、2021年に33%となった。特に29歳以下で同居する人が多いです。米調査会社によると、20年には18~29歳の52%が親元で暮らしていました。新型コロナ感染症の広がる中、大学の一時閉鎖や失業の増加などの影響です。大恐慌以来の高率だと言われています。

 ヨーロッパは北欧で同居率が16~18%と低く、南欧で高く、最高はクロアチアの77%、ポルトガル72%、イタリア71%、スペイン65%、東欧ポーランドで64%といいます。

 アジアでは16~34歳で韓国70%、日本は20年の国勢調査で18~34歳で47%です。

 親との同居率は世界的に高まっています。その理由は住居費、授業料の高騰や失業の増加です。家賃は米国はこの20年で1・7倍、英国で1・5倍と言われています。学費は2・4倍。

 失業率は米国で15~24歳で21年に9・7%で米全体の5・3%より高率です。人種別にみると、白人より黒人、ヒスパニック系の親同居が多いといいます。

出生率

 やはり親同居の方が出生率は低い。

 日本の場合には未婚者のうち40歳代の6割強、50歳代の5割弱が親と同居しています。山田昌弘中央大学教授は「日本の少子化パラサイト・シングル現象が一因だ」と強調しています。

 特集記事は、このような「巣立たぬ若者」という現象を「所得格差の拡大や雇用環境の厳しさなど先進国で広がる社会の分断を映し出している」とまとめています。

 現代資本主義社会は格差が広がり、後戻りできなくなっています。貧窮する若年労働者の増加によって少子化はさらに進行するのは必然的です。少子化は今よりもさらに将来労働力が不足することを意味しています。

 必要な労働力が不足するということは労働が生み出す剰余価値が減少するということを意味します。資本家・経営者が生産過程にAIを導入して労働生産性を向上することに躍起になっているのは同一の労働量でより多くの剰余価値を生み出そうとしているということです。資本家・経営者がAIの開発と生産過程への導入を急ぐのは、現在働いている労働者の人員を削減するためばかりではなく、労働力が不足してもなお生産力を維持し向上するためです。労働の搾取率は高まります。多くの労働者は否応なくリスキリングすることを余儀なくされます。