[900] ロシア沿海地方議会でプーチンの侵略反対の声


 2020年5月20日にはじめたこのブログ『新型コロナ危機のなかで』が900回目になりました。読者のみなさん、寄稿、投稿をしていただいたたみなさん、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
 
 感染症の広がりは2年を越えてもおさまっていません。中国では強権的な「ゼロコロナ」政策にたいして学生が抗議闘争に立ち上がっています。
 天津大学では26日午後7時過ぎに一千名の学生が大学に集まり当局による大学の封鎖に抗議の声をあげました。朝日新聞によれば、学生たちは外出を許されず、食事を買おうにも学内の売店は値段が高く、体調が悪くても学内の医者の態度が悪い。まともな授業もないのに期末テストだけは行われようとしていたのだといいます。SNSで「打倒形式主義、打倒官僚主義」というスローガンが流されているといいます。
 また今月15日には北京大学で200人の学生が集まり、外出制限に抗議しました。
 このスローガンから推測すると、大学当局は感染拡大の責任をとらされることを恐れ自己保身して行動規制だけを上から強制しているのでしょう。学生たちの動画や、書き込みはSNS上から削除されています。しかし、学生たちは弾圧されることを覚悟して立ち上がりました。コロナ危機の犠牲を学生、労働者に転嫁する大学当局、政府に抗議する闘いにエールを送ります。
 
ロシア沿海地方議会でプーチンの侵略反対の声
 
 ところで、ついにロシア共産党員が地方議会でプーチンウクライナ侵略に反対する声を上げました。AFPニュースを紹介します。

ロシア地方議員、ウクライナ侵攻の停止要求
批判浴びる

5/28(土) 2:43
【翻訳編集】 AFPBB News

【AFP=時事】ロシア極東・沿海(Primorsky)地方の議会で27日、共産党議員2人が、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に対しウクライナへの侵攻を停止するよう求めた。同国議員が公の場で政府への反対を表明するのはまれ。

 3か月にわたり続くウクライナ侵攻では多数の死傷者が出ているものの、ロシアの各政党や政府高官の大半はプーチン氏を支持している。だがこの日の沿海地方議会では、共産党のレオニード・ワシュケビッチ(Leonid Vasyukevich)議員がプーチン氏に対しウクライナ撤退を訴える声明文を読み上げ、議場は騒然となった。

 その際の映像によると、ワシュケビッチ氏は「軍事作戦を停止しなければ、国内でさらに多くの孤児が生まれるだろう」と指摘。「軍事作戦中に障害者となる人々もいる。わが国に大いに貢献する可能性のある若者たちだ」とし、「ロシア軍の即時撤退を要求する」と述べた。

 数人の議員やオレク・コジェミャコ(Oleg Kozhemyako)知事がワシュケビッチ氏を制止しようとした。知事は、同氏をロシア軍の評判を汚す「裏切り者」と呼び批判した。

 ワシュケビッチ氏によると、声明文には4人の共産党議員が署名していたが、そのうち2人は議会でその内容に反対を表明した。議会はその後、登院していた議員の賛成多数で、声明文に賛同した同氏とゲンナジー・シュリガ(Gennady Shulga)議員から同日の発言権を剥奪することを決めた。

 地元共産党トップのアナトリー・ドルガチョフ(Anatoly Dolgachev)氏は、声明文は党の承認を得ていなかったとし、「最も厳しい措置」を取ると約束した。【翻訳編集】 AFPBB News

 ニュースは以上です。
 二人の共産党員は勇気を出して行動したと思います。私も日本の労働運動のなかで連帯して闘いたい。闘いがロシア国内に波及することを祈ります。共産党員が党指導部の弾圧に抗して立ち上がったことは、ソ連邦自己崩壊後のロシア共産党の内部に「祖国防衛主義」に傾く指導部を批判する声が生まれてきているということを意味しています。ロシア共産党現指導部はプーチンの侵攻を支持しています。スターリン主義の破産をを反省できないのです。むしろスターリン復権すら口にしています。この指導部はのりこえらなければならないと思います。

[899](投稿)[898]の小型原子炉や福島の甲状腺がんの記事を読み、考えたこと


■■■一労働者の投稿

●小型原子炉や福島の甲状腺がんの記事を読み、考えたこと

 小型の原発は、原発に反対する小出さんたちも研究用に使っていました。
 しかし、小出さんも原発が「小型」であっても放射線防御は極めて厳しく行うことになっていて、防御を厳格にやっていると著書に書いています。
 また、さらに連想したのは原子力空母や原子力潜水艦などです。小型の原子炉を使い、艦船を電気で駆動させ、戦闘にも電源として使うのだと思いますが、その原発記事を読売新聞に出して、読者の反応を見たのではないかと思います。恐らくは小型化することで安く仕上げる、労働者・人民の反発を少なくするなどの「メリット」?を「測定したのではないか」?と思います。
 しかし、小型であろうと原子炉を絶えず河川水や海水で冷却をしないと、過剰に原子炉内の温度が上がりメルトダウンや水素爆発をおこし、大災害が起こります。この事実は、福島第一原発が示しました。
 艦船は海水を利用して冷却していると思います。そしてこの冷却水は海に放出しているのではないかと想像します。原子炉搭載の空母の原子炉の沸騰水の冷却方法も同じだと思います。
 原発で稼働している空母の発電の仕組みなどが陸地の原発と同じ仕組みならば、海洋に放射能を帯びた冷却水を垂れ流していると思われます。さすれば、放射性物質を含んだ冷却水の海洋放出は、既に行われていたことになります。
 このことを考えれば、福島原発の汚染水の海洋放出を企んでいる政府・電力会社は汚染水と言わないで第2次冷却水をこれまでも常に海洋放出してきたのですから、「海洋に放出して、薄まれば安全だ」と言いなすのは、残念ながら「当たり前のこと」なのです。
 海洋放出された汚染水は薄まっても、生物的濃縮はもちろん、蒸発して大気とともに運ばれて、雨水となって人間を含む大地・海水の動植物に多大の影響を及ぼすと考えられます。
 海洋放出の量が増えれば増えるほど、地球の温暖化は進みます。炭酸ガスのみが温暖化の原因ではないのです。
 また、温暖化によって北極や南極などの氷山や高山の雪が溶け海水面の高さが増していると警告する放送もありましたが、その大きな原因の一つが原子炉から放出される(放射能を含んだ)温排水です。
 森林伐採など自然破壊は資本家階級が自らの首を絞める行為です。現代資本主義における労働者搾取の行為は、労働者階級という「人間的自然」に貧困を強制し塗炭の苦しみを与えていると思います。
 ヒットラープーチンウクライナ侵攻・大量虐殺に反対するとともに、資本家たちの全世界の労働者に対する搾取・収奪と、原発の利用や核のごみの地層処分に対して反対の声を上げて行きましょう。

[898](投稿)小型原子炉開発・生産を勧める読売新聞


 電事連電気事業連合会)の要望で小型の原子炉を求める傾向があり、それを読売新聞などが年度を変えて記事にして、電事連の広告塔の役割をしていると分かりました。

 模範は米国で、2022年5月15日(日)の読売の表題は「小回り利く『SMR』注目」です。
SMRは小型原子炉のことで、「小型モジュール炉」と呼んでいるようです。

今回の見出しでは、

「連結で出力アップ ■ へき地でも利用可」とあります。

以下は序論です。

 米国を中心に海外では、様々な新技術を投入した原子炉を小型化した原子炉を複数連結する「小型モジュール炉(SMR)」は、従来の軽水炉と同じ原理を利用できることから注目が集まる。日本の企業も新たな市場への参入を狙う。

 中身では、ただ一応、原発アレルギー対策のため「安全基準の策定課題」と言っています。実用化を自国でやることを促してもいますが、福島原発チェルノブイリ原発メルトダウン・爆発・放射性物質のまき散らしを意識・想起しているのか、国内生産技術の向上を促しています。これまで米国から輸入して組み立て、メンテナンスなどもしてきた企業に国際競争力を付けるために技術の向上を求め、さらには「次世代炉の規制をどうするかの検討が急務になっている」と規制緩和を求めるような結句で筆を擱(お)く始末です。

 これらのことから、この記事は、国際競争力のある原発の小型化開発を促す記事であることが明らかです。同時に原発のさらなる規制緩和を政府に求めるという、福島第一原発事故の悲惨さを無視した悪辣な記事であることは間違いありません。

 原発の稼働、再稼働に反対しましょう!!原発はただの湯沸かし器ですが、高レベル放射性廃棄物を産生する危険極まりない難物です。
 このような危険を伴う原発の新規の原発開発にも、これまでの原発の再稼働にも反対の声を上げていきましょう!!
                石川木鐸

[897](投稿)5月19日付けの甲状腺がんで提訴と題する投稿への感想


読者より

 5月19日付けの甲状腺がんで提訴と題する投稿を読ませてもらいました。原発事故後の甲状腺がんの多発は 、スクリーニング効果だとする主張に囲まれながらも、東電の責任を問うた原告の切迫した決意に頭が下がる思いです。
 また、小型化した原子炉の開発を進めようとしていることも初めて知りました。ウクライナ戦争の激化の中で、岸田政権は原発を重要ネルギー源として位置付け直しているのですね。     
 ところで、放射線被曝には外部被曝内部被曝があることは知ってはいるのですが、人にうまく説明できませんでした。その点について教えて貰えれば勉強になります。

[896]「戦争はいけない。臆病者で結構」

 
 先週の朝日新聞のコラム「多事奏論」で高橋純子解説委員が歯切れのいい文章を書いています。
 見出しは「ブレーキが弱い国 戦争はいけない。臆病者で結構」です。これだけで言いたいことがわかるような気がします。
 冒頭で「━━戦争はなぜ起きるの?」という質問が出されます。ついつい、いつどこで起きた戦争?······ウクライナ戦争は······、と言いたくなりますが、それは野暮。コラムでは「人間が愚かだからだよ」という答が出てきます。

 それはそうかも知れないが、と反問したくなりますが。

 その答にたいしてさらに質問が出されます。
 「━━どうしたら愚かじゃなくなるの?」
 答えは「ちゃんと考えることだよ」です。

 そう言われ私はなるほどという気持ちになりました。

 この問答は筆者が読んだ絵本に出てくる話だそうです。
 ここから筆者は考えることを徒然に語っています。
 かつて外務省担当だったころ、幹部に「『唯一の被爆国として』だなんて、世界で言ったら笑われますよ」、だって日本は米国の核の傘に入っているんですから━━
 こう言われ、筆者は「しかし人にも、国にも、立ち返るべき原点というものがあるはずだ。愚かな戦争に突き進んだ敗戦国であり、被爆国であること。そこから足を放して、どうやって日本外交なるものに背骨を通すのだろう?」と考えました。
 当時筆者は散歩していて外務省の敷地にある陸奥宗光銅像と向き合ったそうです。日清戦争で三国干渉を受諾した外相・陸奥宗光の日記「蹇蹇(けんけん)録」の大要を紹介して、「当時の日本社会の様子が垣間見える」と言っています。
 「妥当中庸の説を唱えれば卑怯未練、愛国心がない者と見られるので声をのんで蟄居閉居するほかない」「国民の熱情は主観的判断のみで客観的考察を入れず、内を主として外を顧みず、進むだけで止まることを知らない」

 いまだって同じです。プーチン・ロシアからウクライナNATOの動きがどのように見えていたのか考える必要がある、と言うとロシアを擁護しているのかという非難の視線を感じて口にしづらい昨今です。
 
 コラムの文章を引用します。
 「ロシアのウクライナ侵攻を受けて、敵基地攻撃能力を持つのだ、核共有も議論しろ、防衛費を増大するぞ、憲法9条を改正すべきだなどと、勇ましい政治家がクイズ番組よろしく『早押しボタン』を連打してしてやかましい。」
 「彼らは往々にして、戦争はいけないが······、と前置きしてのち語り出す。しかし、『戦争はいけない』に『が』や『けれど』を接続させるから、つるり戦争の方へと滑ってしまう。『戦争はいけない。』。まずはそう言い切ること。小さな『。』の上にかじりついてでも考え抜くことができるか否か。そこがいま、問われていると思う。」

 まさにそうです。が言われていることを貫くのは大変です。われわれ労働者民衆は、資本主義現代の過酷な労働のなかで考える力を削がれ、政治家のプロパガンダにさらされています。「『戦争はいけない。』と言い切る」運動の波が必要です。実践するなかで考えることが考え抜く自分をつくる第一歩になると、私は経験を通じて感じています。

筆者は「この国のブレーキは大変に利きが悪い。」と言います。
 
 ブレーキの利きも悪いが、同時に西側の一員としてアクセルも吹かしてると思います。ウクライナ戦争に群がっている米欧の武器商人は色めき立ち、NATO諸国家はウクライナ政府の戦争政策を賛美し支援するアクセルを踏んでいます。日本も「勇ましい政治家」が今こそチャンス到来と戦争に沸き立っています。
 
 考え抜くものを臆病者と呼ぶなら「私は臆病者として生きたい」という筆者のような気骨あるジャーナリストがいることに、驚きすら覚えるのがこんにちのメディア情況です。

[895](寄稿)「ワクチン接種の副反応としての蕁麻疹?かと思ったら、『アニサキス』の感染だった」

ペンギンドクターより
その2

◆本日転送するのは、ワクチン接種の副反応としての蕁麻疹?かと思ったら、「アニサキス」の感染だったという日常よくある話です。まずは、基礎知識としてアレルギーの分類をお伝えします。実は医師国試にも時々このアレルギー分類が出題されるのですが、よく私は間違えます。免疫の知識は急速に進歩した分野でもありますが、学生時代の怠慢と外科医としてはそれほど重要な知識ではなかったこともあり、私は今もクイズでミスを重ねています。自分自身のためにも整理しておきます。一般にアレルギーは4つに分類されます。

 ●Ⅰ型:IgE抗体に結合した抗原刺激によりヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が遊離され、標的臓器において薬理作用を示す反応で多くのアレルギー疾患が属する。【即時型、アナフィラキシー型】。アナフィラキシー気管支喘息アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー、薬剤・食物アレルギー。アナフィラキシーは短時間で致命的になることがあり、発症したら即座にアドレナリンの筋注をおこなわなくてはなりません

 ●Ⅱ型:標的細胞に対する抗体と補体による細胞融解反応でRh不適合妊娠などにみられる新生児溶血性疾患が代表例。【即時型、細胞障害性】。赤血球や血小板に抗体が結合しておこる。特発性血小板減少症。

 ●Ⅲ型:免疫複合体の沈着による臓器障害で多くの自己免疫疾患に見られる。【アルサス反応、免疫複合型、即時型】。血清病、リウマチ、SLE、糸球体腎炎、薬物アレルギー

 ●Ⅳ型:Tリンパ球による細胞障害の型でありツベルクリン反応あるいはウイルス感染細胞の除去がこの型に入る。【遅延型、抗体は関与しない。T細胞が抗原の情報を記憶した】。ツベルクリン反応、接触性皮膚炎、細菌・真菌・ウイルスなどとのアレルギー。

 以上が一般的な分類ですが、Ⅴ型も付け加えることがあるようです。生半可な知識ですみません。
 ●Ⅴ型:基本的にはⅡ型と同様ですが、受容体に対する自己抗体が産生され、受容体を持続的に刺激して細胞から物質が分泌される「バセドウ病」(甲状腺機能亢進症)が代表。

 アニサキスという寄生虫は90%が胃壁にくい込んで、Ⅰ型アレルギーを起こし、蕁麻疹や激烈な胃痛を起こします。
 私が清瀬市の国立療養所東京病院に在籍していたとき、同僚の呼吸器内科の女医さんが胃痛と嘔吐で朝早く受診して胃の内視鏡をしたところ、胃に白く細長い虫体を見つけ、摘出したことがあります。ご主人も医師で東京厚生年金病院の外科医だったので、そちらに電話したら、「ただ今内視鏡の検査中で、アニサキスが見つかりました」という「笑い話?」がありました。
 さらに虫体が胃を通り過ぎて腸にくい込むと、嘔吐などの腸閉塞症状を起こし、昔森繁久彌が名古屋の御園座?だったか、公演中に腸閉塞の緊急手術をしたとかいう話を聞いたことがあります。アニサキスだなと思ったことを記憶しています。アニサキスそのものは、時間が経過すれば死滅するので、腸にくい込んだ場合、手術しなくてもまもなく症状は軽快します。アニサキスとわかっていれば、痛み止めなどで経過を見ることができ、森繁久彌も手術しないですんだと言えるでしょう。

 コロナの副反応についてもいろいろありそうです。インフルエンザの時期の発熱患者さんには、ついついインフルエンザばかり考えて腎盂腎炎や肺炎などの細菌感染を見落とすから要注意というのは医師の間の常識となっています。
 では、以下の山本佳奈医師の文章をご覧ください。
           

********************************************************************************

 ワクチン後のアレルギー症状の原因は?胃カメラアニサキスを発見

この原稿はAERA dot.(4月20日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2022041900060.html?page=1

ナビタスクリニック(立川)内科医
山本佳奈

2022年5月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
··············································································
 オミクロン株の流行を受けて適応されていた「まん延防止等重点措置」解除から約1カ月が経ちました。規制の解除や第6波のピークアウトのおかげでしょうか。定期的に外来を受診されている方からは、「毎日出社するようになりました」という声や「在宅勤務の割合が減りました」という声が多く聞かれるようになってきました。日中の街は、すっかり元に戻ったかのような人の多さです。朝晩の通勤電車では、残念なことに滅多に座れなくなりました。

 第6波はピークアウトしてはいるものの、新規感染者数は横ばいで推移している状況が続いています。風邪症状を認めて内科外来を受診される方も、ピークの時よりは減少したものの、そのような症状の方をみないという日はありません。PCR検査をすれば、3割程度で陽性が出る状態が続いています。

 Our world in dataで世界各国のコロナ新規感染者数のグラフをみていると、感染者数の違いはあれど、日本の流行の波は世界の流行の波と同様のパターンを認めているように感じます。

 もともと、ヒトコロナウイルス新型コロナウイルスではない)の流行には、季節性があるのではないかと考えられていました。国立感染症研究所の報告書によると、「ヒトコロナウイルス感染症の月別の報告数の推移は、おおむね1~2月に多く、3~6月に減少し、7~10月にかけて少なく、11~12月にかけて増加する傾向にある」とあり、夏季(7~10月)の平均報告数は冬季(12~2月)の10分の1程度であったといいます。

 日本と同じ北半球の温帯に位置し、年間を通じて気温の推移が比較的似ている米国においても、ヒトコロナウイルスの検出率は冬に高く夏に低いことが報告されています。ゆえに、北半球において、ヒトコロナウイルスは夏季に減少する季節性を持つ可能性があるのではないかと、考えられているのです。

 このような「ヒトコロナウイルス感染症」の流行の特徴と、パンデミックが起きてからの「新型コロナウイルス感染症」の流行の波を考慮すると、新型コロナウイルスの感染にも季節性の変化があってもおかしくないのではないか、と私は考えています。

 さて、3回目のワクチン接種が世界中で進んでいますが、世界中で新型コロナウイルスワクチンの大規模接種が開始されて以降、接種後の副反応の報告も次第に集まってきています。先日、在宅診療もされている内科の先生(以下、A医師)から教わった、「コロナワクチン接種後の蕁麻疹」についての症例があったのでご紹介したいと思います。

 ある日の深夜2時ごろのことです。目の周りや、手足、体幹部にひどい痒みを伴う赤く盛り上がった膨疹が急に出現したため、救急外来に70代の女性(以下、Bさん)が受診されました。お話を詳しく伺ったところ、Bさんは、救急外来を受診した日の前日に1回目の新型コロナウイルスワクチン(ファイザー製)を接種し、受診する前の夕食には友人が釣ってもらったヒラメを生で食べていたことがわかりました。

 A医師は、新型コロナウイルスワクチン接種によるアレルギー反応、もしくは生で食べたヒラメによる急性アレルギー反応による蕁麻疹と診断し、Bさんに対して抗アレルギー性緩和精神安定剤(ヒドロキシジン塩酸塩)の点滴を行いました。幸い、蕁麻疹は改善し、痒みもピークの時よりは改善したため、抗ヒスタミン薬(抗原抗体反応によって体内に過剰に生じたヒスタミンと拮抗的に作用して抑制する薬)を処方し、翌日の内科外来に受診するように伝え、Bさんは帰宅しました。

 翌日の午前、指示通りに内科外来を受診したBさんの目の周りや体幹、手足に生じていた蕁麻疹はすっかり消失。A医師が「蕁麻疹が落ち着いてよかったですね」とBさんに声をかけると、「昨日はなんともなかったけど、今朝から軽く胃が痛いんだよね……でもほんの少しなの」とおっしゃったといいます。その時、A医師は「もしかすると、生で食べたヒラメにアニサキスが寄生していて、そのアニサキスによる蕁麻疹だったのではないか」と疑い、消化器内科の医師に相談し、急遽、胃カメラをすることに。なんと、胃内にアニサキスが10隻も見つかったのでした。

 アニサキスとは、サバ、アジ、サンマ、カツオなどの魚介類に寄生する寄生虫(線虫)です。ヒトは、アニサキスが寄生した生または加熱が不十分な業界類を食べることによって感染します。
 
 これまで、アニサキス症はスペインや日本など、生の魚や調理が不十分な魚が伝統的に消費されている国に住む人々に限定されていました。2010年以前に報告された約2万件のアニサキス症うち、なんと90%以上が日本からの報告であったといいます。しかしながら、近年は世界中の多くの国からアニサキス症に関する症例が報告されています。アニサキス症を発症する人口も増加傾向にありますが、改善された輸送システムや国際市場の拡大と生魚の消費の増加、人口の移動などがそれらの要因として考えられています。

 驚くべきことに、ワシントン大学は、1978年から2015年の調査期間中にアニサキス類は283倍に増加していたことを報告しています。アニサキスが大量に発生した要因として、気候変動、肥料や流出水による栄養分の増加、同時期の海洋哺乳類の増加などが考えられていますが、実態は不明です。

 蕁麻疹は、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンなど炎症を引き起こす物質が放出されることにより引き起こされるアレルギー反応です。皮膚の一部が突赤くくっきりと盛り上がる膨疹と呼ばれる皮膚症状が特徴です。感染症、薬剤、食物、心因性因子、アレルゲンなど、多くの因子が病蕁麻疹を引き起こす要因となることが知られています。

 ワクチンの接種が要因となり、蕁麻疹が引き起こされることも報告があります。ワクチンに含まれるチメロサールやアルミニウムなどのアジュバンドホルムアルデヒド抗生物質ポリエチレングリコールなど、複数の添加剤が関与していることが指摘されています。世界で大規模接種が進む中で、新型コロナウイルスワクチン接種後に生じた皮膚症状の一つとしての蕁麻疹もすでに報告されています。

 アニサキスによるアレルギー反応については、1990年、日本から初めて報告されました。アニサキスによる症状は、蕁麻疹、胃腸症状(嘔吐、下痢、腹痛など)、アナフィラキシーショック、呼吸停止など、さまざまです。生ではなくしっかり調理されたアニサキス汚染魚を食べた後でも、アレルギー症状がみられたことも報告されていますが、全て解明されている訳ではありません。世界中から報告がなされるようになっている今、アニサキス症はホットトピックの一つと言えるでしょう。

 アニサキス症の場合、胃の内視鏡を施行し、胃内にいるアニサキスを摘出しないといけません。つまり、アニサキス症によるアレルギー反応と蕁麻疹では対処法が異なるということです。どうしても、ワクチン接種後に生じた症状は「副反応ではないだろうか」と考えがちです。Bさんのケースは、ワクチン以外の他の要因であるのではないかと考えながら問診することが大切だという学びを、改めて私に教えてくれたのでした。

 気候変動によりアニサキスが増加している可能性も指摘されているアニサキス症。これからは、より気をつけて診療に励みたいと思います。

 ············································································
 ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご覧いただけますのでご確認ください。
 MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

 ◆◇お知らせ◆◇◆◇◆◇
 MRICの英語版として、MRIC Globalを立ち上げました。
 MRICと同様に、医療を超えて、世界の様々な問題を取り上げて参りたいと思います。
 配信をご希望の方は、以下のリンクからメールアドレスをご登録ください。
 https://www.mricg.info/

 ◆ご投稿をお待ちしています◆◇◆◇◆◇
 投稿規定はこちらから

http://expres.umin.jp/mric/mric_hennsyuu_20211101.pdf

··········································································
 今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。
 MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

***************************************************************************

 ※メールアドレス変更・メルマガ解除は以下よりお手続きをお願いいたします。
 http://medg.jp/support/mailinfo.php?id=s1diR9vrPt1iJTGH

 MRIC by 医療ガバナンス学会


 

[894](寄稿)センダン。佐藤優の本のこと

ペンギンドクターより
その1

皆様
 五月も半ばを過ぎ、まもなくうっとおしい梅雨入りとなります。例年並みは6月7日ごろのようですが、今年は早いかもしれません。私たち夫婦は、今のうちにと近くの池や沼や公園に花々を求めて出かけています。その一つ、「センダン(栴檀)」を紹介します。例の「栴檀は双葉より芳し」のセンダンです。ただし実際には香りはありません。香りのあるのは「白檀」です。手元にある樹木図鑑によれば、
 ●センダン:センダン科センダン属。四国・九州以南の海岸近くに分布する。暖地性の落葉高木。高さは7~15ⅿ。本州伊豆半島南部にも自生しているという説あり。花期は5~6月で本年枝のわきから淡紫色の花がつく。花びらは5枚でまとまった花が長さ10~15cmの花房を作る。果実は長さ1.5~2cmの卵型で10~12月に枝先に多数つく。果実の付き方が「数珠(じゅず)」のように見えるところから「千珠」。この転訛である。

 私がこのセンダンを初めて知ったのは、広島駅南口のホテル「東横イン」の前の歩道の街路樹として大きな樹木(センダンという札がついていました)を見たときです。花はついていない時期でした。それで図鑑をみて大体の知識を仕入れていました。このように樹木については鉄道全線乗車や日本国宝建築物めぐり・日本百名城めぐりなどで旅をするその旅先で出会うことが多かったのです。
 ところが、一昨年我が住居のある市の公園散歩に行く途中に、無人の民家に名も知らぬ高木があり、たまたま茶褐色の果実がなっていました。こういう果実は結構あるので、樹木の名前はわからないまま、一年ほどが過ぎたころでした。大体月に一度ほどそのそばを通るたびに気になって、荒れたその敷地に入り、見上げては首をひねっていました。それをくり返しているうちに、いつだったかふっと「センダンかも!」と晴天の霹靂のように名前が浮かんだのです。そして、図鑑をみて花期を確かめ、それからはその時期になると頻回にそのそばを通って、ついに花を確認することができました。昨年の5月23日のことでした。本当に嬉しくて女房に撮影した写真を見せました。ただ、高いところにしか花がないうえに盛りを過ぎていて綺麗に取れてはいませんでした。
 そして、今年です。冬に白鳥をはじめとする水鳥がくる「城沼」を女房と歩いていたら、やはり茶褐色の果実のある樹木が目に留まり、「何の木?」と女房に聞かれたのですが、「葉が出て花が咲かなきゃわからない」と答えたものの、「ひょっとしてセンダンかも・・・・・」と伝えていました。そして、5月14日(土)に「城沼」を訪れたら、まちがいなく「センダンの淡紫色の花」が確認できました。そこで、人目も構わずちょっと木に登って近接した写真を撮った次第です。さらに5月18日には最初に見つけたセンダンを訪問して、高木全体に今を盛りと咲くセンダンを眺めてきました。本来暖地性の花が関東やや北にあるのも温暖化のせいかもしれません。そういえば最近、もともと沖縄に自生する「シマトネリコ」が近所の「庭木」として頻繁に見かけられるようになってきました。

 「センダン事件」はこうして一件落着ですが、このような樹木の話は「暗い日々」の中で一服の清涼剤となっています。女房も「肝機能異常」以来、連日の「運動のための歩数稼ぎ」に精を出すようになって、樹木や雑草の写真を撮影することが多くなり、私の植物観察に付き合ってくれるようになりました。めでたしめでたしです。

  ◆前回の佐藤優の本のことですが、追加です。
 橋爪大三郎佐藤優『世界史の分岐点 激変する新世界秩序の読み方』(SB新書、2022年1月15日初版第1刷)の目次を示します。
 第1章 経済の分岐点――「アメリカ一極構造」が終わり、世界が多極化する
 第2章 科学技術の分岐点――人類の叡智が、新しい世界を創造する
 第3章 軍事の分岐点――米中衝突で、世界の勢力図が塗り替わる
 第4章 文明の分岐点――旧大陸の帝国が、覇権国の座を奪う

 細かいことですが、この本の30ページに佐藤優の言葉で、
 「ロシアもまた、憲法上、交代するルールを定めても、結局は憲法改正するという形になって、事実上はルール自体がないに等しい。実はプーチンは辞めたくて仕方がないのですが、誰も辞めさせてくれないわけです」
という発言があります。ロシアの専門家として、橋爪氏に実情を教えるような発言で、私は違和感を持ち、読書記録に残しておきました。
 橋爪大三郎社会学者で、何でもよく知っていますが、本当に詳しいのは宗教関係でしょう。
 佐藤優も最もライフワークとしているのはキリスト教プロテスタント系の宗教学です。彼が外務省に入ったのも、チェコプロテスタント系宗教学のフロマートカを研究したかったからのようです。その関係で西欧哲学のすべて、アリストテレスヘーゲルマルクスなどにも詳しい人です。念願のチェコにも行っていますが、佐藤優は1991年のソ連の崩壊前後に、外交官としてロシアの要人と密接な関係にありました。その前後でモスクワ大学の学生にキリスト教の講義も依頼されています(勿論ロシア語にて講義)。またロシアのユダヤ人はイスラエルに出国した人が多く、彼の専門性からみてもユダヤ教の造詣が深く、イスラエル諜報機関モサド」の高官との個人的な付き合いが今も続いています。
 そのような背景からみて、佐藤優は専門家としての自負もあったと思います。しかし、3月初めに彼の発言は「ウクライナとロシアの戦争」では、早いうちにロシアが勝利するだろうと述べていました。大きく目算が狂ったと言わざるを得ません。今彼が何を考えているか、もちろん私にわかるはずはありませんが、病気もあるので、沈黙しているのかもしれません。
 とにかく、ロシアのウクライナ侵攻までは、米中戦争に関する情報・分析等、書籍は溢れていましたが、ロシアに関しては日本では少なかったように思います。廣瀬陽子氏や小泉悠氏などの例外もありますが。
 ただ、ヨーロッパでは2014年のロシアによるクリミア半島の併合で緊張感が続いていたように思います。また今回のプーチンによるウクライナ侵攻の遠因は、トランプの大統領就任にあるようです。ロシアによるアメリカ大統領選挙介入により、首尾よくトランプを当選させることができ、トランプとプーチンの会談でも、トランプをして「プーチンを信頼する」と言わしめたのですから、ハイブリッド戦争は大成功だったということでしょう。「ディール(取引)」専門のトランプはアメリカの国益をますます毀損したと言えるのではないでしょうか・・・・・・。きりがありません。
 このへんで止めておきます。とにかく気候変動は歯止めがきかなくなるようで、憂鬱です。
つづく