[1588]ウクライナ動員法改悪

 東西資本主義の新冷戦下、2022年2月24日ロシアの越境侵略をもって開始されたウクライナ戦争は多くの犠牲を背後に残してなお続けられています。西側諸国の長期に渡る支援にもかかわらず、ウクライナは軍事的後退を余儀なくされ国家として継戦が困難になってきました。

 ゼレンスキーの「国民の奉仕者」政権は兵士が不足し動員法の改定を行いました。

 

ウクライナ大統領、兵士動員の改正法案に署名 4/17(水) 12:42 Yahoo!ニュース

 ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、兵士の動員を強化する改正法案に署名した。

 法案は先週、議会で可決されていた。 新法は18~60歳の男性全員に軍への登録と、登録書類の常時携行を義務付ける内容。政府は兵力補充の効率と透明性を高めるのが目的としている。 海外にいる対象年齢の男性は、最新の登録書類を提示しなければ、領事館でパスポートの更新ができなくなる。 長期にわたって戦闘に参加した兵士の動員を解除する条項は盛り込まれなかった。議会ではこの数カ月、動員期間の長い兵士を交代で一時帰宅させるかどうか、ロシアが再び攻勢を強めるなか、疲弊した兵士の休養は認められるかどうかなどをめぐる議論が続いていた。 法案は最初に提示されてから4000回以上も修正された。議会は最終的に、できるだけ多くの兵士を前線に配置しておくため、動員を3年間で解除するとの規定を削除した。 法案が議会を通過した後、兵士の妻や親族数十人が議事堂の前に集まって抗議し、動員期限を盛り込むよう要求した。

 ゼレンスキー氏が率いる与党「国民の奉仕者」は昨年末、軍が50万人の追加動員を求めていると述べたが、軍のシルスキー総司令官は最近、兵士を増員するとしても少人数にとどまるとの見通しを示した。 東部戦線の司令官は先日、ロシア軍の兵員がウクライナ軍の10倍にも上ると指摘していた。

以上

 家族の反対は当然だと思います。国内の厭戦反戦の運動の高まりにゼレンスキーはさらに強権を発動すると思われます。

 プーチンは日本のメディアで描かれているほどには国際的に孤立してはいないようです。世界中で私たち労働者階級が戦争反対の声をあげなければ戦争を終わらせることは困難です。東西対立の谷間で、露ウの両国家権力によって戦線に送られる労働者民衆の犠牲をこれ以上出し続けることを許してはならないと思います。

[1587]ヘーゲル精神現象学の序論

 私も本棚からヘーゲルの『精神現象学』を探して久しぶりに「序論」を読みました。30代半ば、当時の勉強会で私の活動レポートを読んだ先生から「あんたはヘーゲル主義だ、ヘーゲルが泣くけど」と言われ、ヘーゲルなんかほとんど読んだことないのにヘーゲル主義とはなんだ!と思って少し読みました。

 ヘーゲルは概念が現実をうみだすと言っているようだ、ということはなんとなく理解できましたが、途中まで読んで挫折しました。その後認識論を考えるようになって、唯物論における裏返しのヘーゲル主義などについて学びましたが、ヘーゲルの著書は不勉強のままです。

 一つだけいまだに記憶に残っているフレーズがあります。今、手元に平凡社の『精神現象学』(樫山欽四郎訳)があるので「序論」「学的認識について」の当該箇所を引用します。

「哲学的著作の眼目は、その目的と帰結以外のどこにより多く言い表されうるのか、••••••事柄は目的の中でくみつくされるものではなく、その実現のなかでくみつくされるものだからであり、また結果は、現実の全体ではなく、全体の生成と一緒になるとき、現実の全体であるからである。目的はそれだけでは生命のない一般者である。それは、傾向がただの活動にすぎず、いまだ現実性を欠いているのと同じである。そしてむき出しの結果は、傾向を捨て去った屍である。」

 うまく説明できませんが、事柄を学的に認識するということは、その目的の中にくみつくされるものではなく、事柄が生成される必然性とその中に定立された目的とそれの実現過程を主体的に認識することだということでしょうか。

なんとなくわかりますが難解です。

 当時私がこのフレーズに触れたのは梯明秀の労作『ヘーゲル哲学と資本論』でした。私は梯先生の哲学に共鳴し勉強しました。

 けれども梯による引用文は樫山訳とは違うものでした。何だかもっとなるほどと思わせるような訳だったような気がします。一番気に入ったのは「むき出しの結果は、傾向を背後に残した屍である。」という一文だったと思います。

 探してみます。

 ありました。

ヘーゲル哲学と資本論』(梯明秀 18頁〜19頁)より

「或る哲学的著作の核心は、その諸々の目的および結果におけるよりも、より以上に如何なる点において言明されるべきか。

 この問題にふくまれる事柄は、その目的のうちに尽くされているのではなくて、その実現のうちに尽くされており、結果もまた、現実的なる全体ではなくして、その成立過程を併せて現実的な全体であるからである。傾向がいまだ現実を欠ける単なる生長であると同じように、目的はそれだけでは生命なき一般者であり、そして、むき出しの結果は傾向を背後にのこした屍である。註2」

(註2 ヘーゲル精神現象学』「序文」岩波版上巻3頁)

 どうでしょうか。こちらの訳が私は分りいいです。ヘーゲルの文は動的だと思います。

 パラフレーズすれば、哲学的著作の核心は、その目的や結果のうちにあるのではなくその目的の実現のうちに尽くされている。結果もその成立過程をあわせて認識して現実的な全体として把握されなければならない。結果は過程なくして実現されない。目的の実現過程は結果にとって傾向でありいまだ現実を欠ける単なる生長である。過程の傾向と同じように、実現過程におかれない目的は生命のない一般者に過ぎない。目的が現実化される過程の「傾向」が畳みこまれ止揚され結果となる。結果はその中に畳まれた「傾向」の終局であり、結果には、その前駆体としての動きを失った死んだ「傾向」が堆積しているがその痕跡は消えて見ることができない。それが「むき出しの結果は傾向を背後に残した屍である」というまとめの謂いです。

 ヘーゲル精神現象学』を精神的労働の論理としてとらえかえしたといわれているマルクス的論理ーー私の理解するそれーーから解釈しかえしてみましたがまちがっているかもしれません。

 それはともかく、私も勉強します。

[1586][寄稿]医療あれこれ(その106)ー3紅麹の件

 

ペンギンドクターより
その3
●さて次は最近大きな問題になっている。「紅麹」の件です。消費者庁による「保健機能食品に対する各制度の比較」があります。ざっとまとめます。 
 
特定保健用食品(個別許可制)】  
 消費者庁長官の許可を得て特定の 
 保健の用途に適する旨が表示され 
 た食品。国が有効性と安全性を審 
 査。
 疾病リスク低減表示:可能
 許可について個別に諮問が必要
 有効性の科学的根拠:最終製品を 
 用いたヒト試験が必須
 許可・届出件数:1055件
【機能性表示食品(届出制)】
 疾病に罹患していない者が対象
 販売60日前までに、科学的根拠に裏打ちされた安全性・機能性に関する資料等を消費者庁長官に届け出ることにより特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く)が期待できる旨の提示が可能。
 安全性・機能性の科学的根拠について国の審査は行われず、その合理性の挙証責任はあくまでも届出者。 
 疾病リスク低減表示:不可最終製品を用いたヒト試験または文献調査(システマティック・レビュー)
 許可・届出件数:6789件
【栄養機能食品(自己認証制)】
 ビタミン、ミネラルといった20の栄養成分について、食品表示法に基づく規格基準で定められた機能に関する定型文の表示を行う食品。「カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です」など。
 これは特に問題となることはない。(ペンギンドクター)
 私の記憶では安倍内閣の時に、「機能性表示食品」のしばりがゆるくなったように記憶していますが、古いことで確かではありません。とにかく膨大な数の「機能性表示食品」が販売されているのがおわかりと思います。これがアメリカでのサプリメントと言えるのでしょう。日本では、主として販売対象はわれわれ団塊の世代前後でしょう。わかりやすく言えば、世代として、団塊の世代およびその前後世代(それ以降の世代と比較してということですが)は「勝ち逃げ」(高度成長期で退職金も貰えた世代)でお金を持っているので、それを消費させる必要がある・・・・・・ということで、しばりがゆるくなったと当時ひねくれていた私は考えました。
 というのは、当時、内科一般外来を担当していた私に患者さんがいわゆる「サプリメント」を食べたり飲んでいいかとよく質問されたからです。私は「よく知らないし、まあ害はないと思うから、ダメとは言いません。しかし私は買いません。お金に余裕があれば買ってあげたらどうですか。国は医療保険にお金がかかるから、サプリメントを使ってほしいのですよ。それでお金が回りますしね」と笑って患者さんに答えていました。しかし、クローズアップ現代プラスでも専門家がコメントしていましたが、食品と言っても有効成分の濃縮をするから、もし有毒物質があればそれも濃縮されることになる・・・・・・。確かにそうですね。
 私たち夫婦はもちろんサプリメントは一切食べたり飲んだりしていません。そして、その「サプリメント」を宣伝して暴利(?)をむさぼっていると思える、サントリーなどの大手企業に反感を持っています。でもそこら中の企業が「健康食品」を売り出している現実があります。反感は、私たち自身の身体的な問題を実に見事についた宣伝にある意味で感心させられるからでもあります。私たちはもちろん医薬品は内服していますが、降圧薬など最小限にしています。では。 
 
 MRICメールマガジン Vol. 240592024年04月01日MRIC by 医療ガバナンス学会 発行http://medg.jp
 
ボストン・ウェルネス通信その7:そのサプリメント大丈夫!?
米国ボストン在住内科医師大西睦子 
 
小林製薬」の「紅麹」の成分を含むサプリメントによる健康被害が問題になっています。3月28日の集計では、5人が亡くなり、114人が入院、さらに食品メーカー各社で商品の自主回収など波紋が大きく広かっています。厚生労働省の専門家による調査会によると、サプリメントには「プベルル酸」という青カビからつくられる物質が含まれていたそうです。今後、その毒性や製品に混入した経路、それ以外の物質の混入などを調べるとのこと。
 
ところで、サプリメントを利用する多くの人は、サプリメントが無害で健康に効果があると信じています。ただし、サプリメントの利点は大きく宣伝されていますが、医薬品と違い、もしリスクがあっても消費者に知らせる義務はありません。なぜでしょう?
 
サプリ大国の米国の状況を参考にながら、サプリメントや日本の機能性表示食品について考え直しましょう。
 
●米国、サプリメントの副作用で年間平均約23,000件の救急外来受診
 
多くの米国人にとってサプリメントは必需品です。米疾病予防管理センター(CDC)の報告(2023年)によると、米国では、0~19歳の小児・青年の34.8%、20歳以上の成人の58.5%が、サプリメントを利用しています(1)。
 
たしかに有効性が裏付けされたサプリメントはあります。例えば、妊婦は葉酸が欠乏しやすく、胎児の先天性欠損症の原因となりますが、予防には葉酸サプリメントが効果的です。
 
一方、米国では専門家を中心に、サプリメントの必要性の有無や安全性の議論が続いています。2015年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)の報告では、年間平均約23,000件の救急外来受診の原因は、サプリメントの副作用であることが判明しました(2)。
 
救急外来を受診した人の4分の1以上が20歳から34歳であり、その半数は減量や精力増強のために販売されたサプリメントが原因で、胸痛、動悸、不整脈などの症状を引き起こしました。ただし影響を受けたのは若者だけでありません。 4歳未満の子供の多くは、監督なしで誤ってビタミンを摂取し、アレルギー反応や消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛)を経験しました。 65歳以上の人は、大きな錠剤サイズのビタミンや微量栄養素を摂取した後、嚥下障害を引き起こしました。
 
このような状況は米政府としても無視できず、現在では米食品医薬品局(FDA)のウェブサイトには、サプリメントの副作用、重金属の混入、未申告のアレルゲンや微生物汚染などの問題が頻繁に報告されています(3)(4)。
 
●薬でも食品でもないサプリメント
 
米国は訴訟大国。サプリメント業者に対する問題で、さまざまな訴訟が起きています。最近の例では、テキサス州の会社が偽ブランドサプリメントの流通の有罪を認め、450万ドルの罰金刑に同意しました。このサプリメントには、栄養成分として誤って表示された成分や、製品ラベルに記載されていない成分が含まれていました(5)。
米国はこんな状況になってしまった背景には、1994年に米国で成立した「栄養補助食品教育法(DSHEA)」があります。同法は、政治資金的にもサプリメント業界と強固な関係をもつ元共和党上院議員の後援により成立しました。この法律によって、サプリメントに対するFDAの規制は大幅に制限されています。
 
サプリメントは販売前にFDAの承認を必要としません。つまり、安全性や有効性、科学的根拠に基づくことを、証拠をもってFDAに証明する必要はありません。さらに、含まれる成分が副作用を引き起こすことが知られていても、製造業者は副作用について消費者に通知する必要はありません。こうしてサプリメントは、薬でも食品でもない位置付けとなりました。サプリメントのラベル表示の内容が正確かつ真実であること、安全であることは、製造業者や販売代理店の言うことを信じるしかないのです。
 
「この製品は栄養不足を助け、健康をサポートします」とか、「健康上の問題のリスクを低減します」などと表示することも、何の規制も受けずに可能です。ただし、同時に、「これはFDAによって評価されたものではありません。また、この製品は疾病の診断、治療、治癒、予防を目的としたものではありません」という「断り書き」は表示しなければなりません。また、仮に「特定の疾患または状態の治療、予防または治癒」などと表示すると、そのサプリメントは未承認薬ということになるので違法です。もちろん、安全でないことをFDAが発見した場合は、FDAは業者に警告を発するか、市場から製品を排除するなどの行動を取ることができます。しかし、これはあくまでも事後対応です。
一方米国では、1990年に成立した「栄養表示教育法」により、企業からの申請に基づき、FDAが認めたものについて食品全般を対象として健康強調表示が可能となりました。ただし、これはFDAの厳格な審査により、明確な科学的な根拠に基づいて専門家の間で合意が得られ、食品や栄養素を摂取したことで病気のリスクを軽減する可能性が認められた場合に限定されます。例えば、カルシウムの多い食品、脂肪の少ない食品や食物繊維の多い食品など、生活習慣病の予防に効果が報告されている食品です。その後、法律の緩和はあるものの、今日まで、食品の表示に関しては、サプリメントとは違って、FDAにより厳しく規制されています。
 
ちなみに、日本の「機能性表示食品」の新制度は、実は1994年に米国で成立した「栄養補助食品教育法」におけるサプリメントの表示制度を参考にしています。さらに、日本の機能性表示食品の対象は、サプリメントだけでなく、加工食品や生鮮食品まで含まれます。
 
日本にも、米国の「栄養表示教育法」と同種の制度、「トクホ」の名称で知られる「特定保健用食品」があります。これは国の審査が必要です。この表示許可を得るには、臨床試験データをはじめ膨大な量の書類を厚生労働省に提出しなければならず、その審査も厳密に行われます。つまり費用や時間の面で企業側の負担が大きくなります。
サプリメントの詐欺に騙されないための6つのヒント
 
さてFDAは、「病気や健康に効果があるように誤って宣伝しているにもかかわらず、安全性と有効性が科学的に証明されていない場合、その健康食品は詐欺行為となります」「リスクを冒す価値はない」と警告し、詐欺をみつけるための6つのヒントを紹介しています(6)。日本の消費者も参考になります。
 
1:ひとつの健康食品ですべてが解決する
さまざまな病気を治すと謳う健康食品は怪しい。FDAは、偽の万能薬を販売する企業に対し、警告状を送り続け、必要に応じて強制措置を取っています。これらの奇跡的な治療法は存在せず、インチキであり、これらの企業が売っているのは偽りの希望だけです。
 
2:個人の「成功」体験談
「糖尿病が治った」「COVID-19感染がすぐに止まった」といった成功談は、簡単に作り話ができ、科学的証拠の代わりにはなりません。
 
3:即効性のある治療法
医薬品であっても、すぐに治る病気や症状はほとんどありません。「30日で30キロ痩せる」「ウイルス感染から守る」「数日で皮膚がんをなくす」といった言葉には注意しましょう。
 
4:「すべて自然な」治療や処置「すべて自然な」といった表現に騙されてはならない。このような言葉は、製品が従来の治療法よりも安全であることを示唆するために、注目を集めるために健康詐欺でよく使われます。こうした言葉は、必ずしも安全性と一致するわけではありません。自然界に存在する植物(毒キノコなど)の中には、食べると有害であったり、死に至るものもあります。さらにFDAは、「オールナチュラル」の治療薬や治療法として宣伝されている製品の中に、隠れて危険なほど高用量の処方薬成分やその他の医薬品有効成分が含まれているものが数多くあります。
 
5:奇跡の治療法
「新発見」「結果保証」「秘密の成分」といった類いの謳い文句を目にしたら、注意を促すべきです。もし深刻な病気に対する本当の治療法がFDAの認可を受けたものであれば、医療専門家によって処方されるはずです。
 
6:陰謀論
「これは政府や大手製薬会社が知らせたくない治療法」というような主張は、一般常識的な疑問から消費者の目をそらすために使われます。
 
以上、サプリメントに関するお話です。すべてのサプリメントが無害で健康に効果があるわけはないこと、誇大に宣伝される可能性があること、そして、国の審査が必要ないので、安全性や有効性は事業者を信用するしかないことを忘れないでください。また、現在サプリメントを利用している方、これからサプリメントの利用を考えている方、ぜひその必要性を医師に相談してください。
サプリメントの詐欺に騙されないための6つのヒント
 
さてFDAは、「病気や健康に効果があるように誤って宣伝しているにもかかわらず、安全性と有効性が科学的に証明されていない場合、その健康食品は詐欺行為となります」「リスクを冒す価値はない」と警告し、詐欺をみつけるための6つのヒントを紹介しています(6)。日本の消費者も参考になります。
 
1:ひとつの健康食品ですべてが解決する
さまざまな病気を治すと謳う健康食品は怪しい。FDAは、偽の万能薬を販売する企業に対し、警告状を送り続け、必要に応じて強制措置を取っています。これらの奇跡的な治療法は存在せず、インチキであり、これらの企業が売っているのは偽りの希望だけです。
 
2:個人の「成功」体験談
「糖尿病が治った」「COVID-19感染がすぐに止まった」といった成功談は、簡単に作り話ができ、科学的証拠の代わりにはなりません。
 
3:即効性のある治療法
医薬品であっても、すぐに治る病気や症状はほとんどありません。「30日で30キロ痩せる」「ウイルス感染から守る」「数日で皮膚がんをなくす」といった言葉には注意しましょう。
 
4:「すべて自然な」治療や処置「すべて自然な」といった表現に騙されてはならない。このような言葉は、製品が従来の治療法よりも安全であることを示唆するために、注目を集めるために健康詐欺でよく使われます。こうした言葉は、必ずしも安全性と一致するわけではありません。自然界に存在する植物(毒キノコなど)の中には、食べると有害であったり、死に至るものもあります。さらにFDAは、「オールナチュラル」の治療薬や治療法として宣伝されている製品の中に、隠れて危険なほど高用量の処方薬成分やその他の医薬品有効成分が含まれているものが数多くあります。
 
5:奇跡の治療法
「新発見」「結果保証」「秘密の成分」といった類いの謳い文句を目にしたら、注意を促すべきです。もし深刻な病気に対する本当の治療法がFDAの認可を受けたものであれば、医療専門家によって処方されるはずです。
 
6:陰謀論
「これは政府や大手製薬会社が知らせたくない治療法」というような主張は、一般常識的な疑問から消費者の目をそらすために使われます。
 
以上、サプリメントに関するお話です。すべてのサプリメントが無害で健康に効果があるわけはないこと、誇大に宣伝される可能性があること、そして、国の審査が必要ないので、安全性や有効性は事業者を信用するしかないことを忘れないでください。また、現在サプリメントを利用している方、これからサプリメントの利用を考えている方、ぜひその必要性を医師に相談してください。
 
ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はホームページ(http://medg.jp)より原稿をご覧いただけます。 ◆◇お知らせ◆◇◆◇◆◇MRICの英語版として、MRIC Globalを立ち上げました。MRICと同様に、医療を超えて、世界の様々な問題を取り上げて参りたいと思います。配信をご希望の方は、以下のリンクからメールアドレスをご登録ください。https://www.mricg.info/
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MRIC by 医療ガバナンス学会編集長 上 昌広 

[1585](寄稿)医療あれこれ(その106)ー2ヘーゲルの本

ペンギンドクターより

その2

閑話休題

ここでちょっと本の話を。

 私は今、健診の仕事のあいまにヘーゲル精神現象学』を「開いて」います。難解で有名なこの本をなぜ「読み始めた」かといえば、くも膜下出血経験者の女房の脳外科の主治医でもあるH先生がついにこの『精神現象学』を「再読」し始めたからです。脳外科という専門からこの本に対し多少理解が可能という側面もあるかもしれません。しかし、相当変わったドクターでもあります。2月28日4年ぶりに彼を我が家に招いて一緒に一杯やった時、彼のその話を聞きました。

 ところで私にとってのヘーゲル精神現象学』はまったく理解不可能な書物です。今「読み始めた」と言いましたが、正確にいえば、ただ「字面を追っている」という方が的確な表現です。とにかく「哲学用語」が理解不可能です・・・・・・。通読した後、もう一度読んだところで理解することは出来ません。あと五年で平均寿命を迎えるという残された時間の少ない男が、馬鹿なかつ無駄な努力をしているという考えがなくはありませんが、何度も挫折していることを考えれば、とにかく最後のページに到達することだけを目指しています。 

 現在400ページ余りのこの本の半ば近くまで何とかやってきました。3月・4月は検診対象者が少ない時期でもあり、意外に早く最後のページを迎えそうです。実はこの本の最後のページに50年以上前の私のサインがありました。こんな本を買おうという時代があったのですね。 

つづく

[1584](寄稿)医療あれこれ(その106)ー1がんの話

ペンギンドクターより
その1
皆様、このところ暖かい日が続いています。いかがお暮しでしょうか。本日は、がんのことと、サプリメントについてお話します。
 話は飛びますが、再びNHKで「プロジェクトX」が放送開始となっています。何で今さらとも思いますが、テレビを観る人が減少している今、主要な聴取者である団塊の世代及びその前後を意識してのことだと思います。
働き方改革」特にこの4月から、運送業などや医師も、休憩時間・残業時間等の遵守が求められています。そういう時代だからこそ、AIなどの利用が推進される必要があります。
 先日の「ガイアの夜明け」では、タクシーの配車専門の新興企業(全国を網羅)がとり上げられていて、タクシー8台の地方の小さな会社ではお得意さん1000人を抱えるも人手不足で社長が電話番をしていたのが、息子の専務の発案で、「配車業務」をその企業に委託した話がありました。おかげで、社長は自ら昔取った杵柄で、一運転手業務に復帰して楽しそうに仕事をしている姿が印象的でした。何せ、地方ではお客さんは病院通いの高齢者が多く、お馴染みさんは、小さなタクシー会社に愛着を持ってくれるのです。それにタクシーの向かう先もパターン化(そのデータは入力されている)していて、画面上に通る道路も表示されて新人や高齢の運転手も間違うことなく進むわけです。私の防府にいる従姉も小さなタクシー会社の愛好者です。 
がんの話に移ります。
●肝がん、乳がんが多い都道府県は? 「がんの県民性」を知る提供元:ケアネット 公開日:2024年2月26日 
 企業でのがん対策を進めることを目的に厚労省が行うプロジェクト「がん対策推進企業アクション」は2月14日、プレス向けセミナーを行った。プロジェクトの推進役である東京大学特任教授の中川恵一氏が「がんの県民性」をテーマに講演を行った。世界中でも、国や人種によって多いがんと少ないがんがあるが、実は日本国内でも地域ごとに発生するがんの種類にバラツキがある。この要因はさまざまなものがあり、遺伝子、人口構成、食生活などが影響している。そして、最も大きな原因と考えられるのが、ウイルスの偏在と感染だ。
胃がん
 全国がん登録のデータ(2019年)を基に、人口調整後の10万人当たりの罹患率を見ると、胃がん罹患率がもっとも高いのは、男女ともに秋田県胃がんはピロリ菌の感染が原因の9割近くを占めることがわかっており、ピロリ菌の検査と除菌するようになってから罹患者数は減少傾向にある。その中にあって秋田県罹患率が依然として高いのは、塩分が多い食生活が大きな要因だと考えられている。マウスの実験では、ピロリ菌に感染しているマウスに塩分を過剰に摂取させると胃がんの発生率が上昇するという報告がある。秋田県に限らず、胃がんを減らすには、減塩、胃がん検診、禁酒・禁煙が有効だろう。
【肝がん】
 肝がんの罹患率が高いのは、佐賀県をはじめとした九州エリア。九州だけでなく、西日本全体が東日本と比べて高い傾向がある。これは肝がんの主な発症原因であるC型肝炎ウイルス佐賀県一帯の東シナ海エリアに多いためだと考えられる。台湾なども同じ理由から罹患率が高い傾向がある。企業が行う健康診断では毎年肝機能検査を行っており、ここにウイルス性肝炎検査も加えることを要請している。
乳がん
 乳がん罹患率が高いのは東京都などの首都圏。これは未婚で出産経験のない女性が多いことと関連している。乳がんは10万人当たりの年間罹患者数が40年で4倍と急増している。現在の日本人女性は平均して生涯に450回ほど月経があるとされるが、これは100年前の5倍超。かつては子沢山であり、妊娠・授乳期間を含めて子供1人当たり3年間ほど月経が止まる期間があった。この間、女性ホルモンによる刺戟が減り、乳がんの罹患リスクが低下していた。現在の乳がんの新規罹患のピークが40代後半にある理由も閉経直前・閉経後に女性ホルモンの影響を受けることが大きな理由だと考えられる。
白血病
 白血病罹患率が高いのは沖縄県・鹿児島県など。白血病の中の成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV‐1)の感染によって生じることがわかっている。HTLV‐1の感染経路は母乳による母子感染が多くを占め、このウイルスのキャリアが沖縄をはじめ、鹿児島、青森、岩手の一部などに多い。一方、このウイルスは中国・韓国ではほとんどみられない。この背景には、数千年前に日本に渡ってきた渡来人の遺伝子を受け継ぐ人々(弥生系)には感染者が少なく、縄文人が移行して弥生人になった人々(縄文系)には多い、という理由が考えられる。もっとも、人の移動の増加に伴い、HTLV-1 感染は全国で見られるようになっており、とくに大阪などの大都市圏で増加している。
食道がん・大腸がんなど】
 縄文系、弥生系の遺伝子は、飲酒時の分解酵素の有無にも関わる。アルコールは肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されるが、このアセトアルデヒドを分解するのが「ALDH2アルデヒド脱水素酵素2)」。縄文系はこのALDH2の活性が強い「正常型」が多く、日本人の55%を占める。一方で弥生系はALDH2の活性が弱い「低活性型」が多く、日本人の40%を占める。残り約5%は「不活性型」でALDH2の働きがまったくなく、酒を飲めない体質となる。問題は「低活性型」の人が飲み過ぎることで、こうした人が飲酒を続けることで、発がんリスク、とくに大腸がんや食道がんのリスクが急激に高まるとされる。低活性型は弥生系が多い近畿・中部・中国地方に多く分布している。 中川氏は「がんは決して一様な疾患ではなく、地域や人種によってリスクに差があり、それを産む大きな要因にウイルス感染がある。自分の居住するエリアの特性を知り、対策を知っておくことが重要になる」とまとめた。 
つづく

[1583]日米比三国首脳会談を定例化、対中軍事協力体制の確立へ

 

 日米比三国が軍事協力体制を構築するために史上はじめて会談を開きました。海洋進出を行っている中国にたいする軍事的対抗体制を三国で組むということです。 

 日本自衛隊の海外派遣も射程に入れていることは明らかです。

産経新聞が会談前に控えめな記事を書いています。引用します。

 

 日米比3カ国は11日午後(日本時間12日午前)に米国の首都・ワシントンで行う首脳会談で、この枠組みでの会談の定例化で合意する方向で最終調整に入った。複数の外交筋が明らかにした。中国が東シナ海南シナ海での海洋進出の動きを強める中、3カ国で緊密な意思疎通を図る考えだ。 

 会談は岸田文雄首相とバイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領が出席し、史上初めて行われる。会談後には共同声明が取りまとめられる。 昨年8月にワシントン郊外のキャンプデービッドで行われた日米韓首脳会談でも会談の定例化が合意されたが、日米比も定期的に安全保障や技術協力などの分野で意見を交わし、政権交代に左右されない強固な枠組みを目指す。

 また、会談では、電気自動車(EV)の電池に使われるニッケルなどの重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強化や半導体、第5世代(5G)移動通信システムに関する技術提供でも合意する。

以上

会談後、BBCニュースより

日米比で防衛協力

米政府と日本の外務省によると、日米比3カ国は海上合同演習などで「3カ国防衛協力」を進めることを計画している。

バイデン氏と岸田氏は10日、中国の潜在的脅威に直面する中での日米の防衛関係強化に重点を置いた合意事項を発表した

これらの計画には、オーストラリアも加えた防空ネットワークの拡大や、日米の共同指揮体制の構築が含まれる。

日米はまた、イギリスを含めた3国による合同軍事演習も予定している。

岸田氏は10日、日米は中国と対話および共通の課題での協力を続けていくことを望んでいると記者団に説明。一方で、日米は中国からの挑戦には対処していくと表明した。

以上BBC

日本政府は従来米軍が担っていた対中国の軍事的役割の一部を自らが引き受けるというスタンスを明確にしました。

[1582]「セキュリティ•クリアランス法案」衆院通過

 日米共同声明で安保同盟の強化が確認されました。それと時を同じくしてこの法案が衆院立憲民主党も条件付きで賛成してしまいました。


"機密情報"流出防止に向け セキュリティクリアランス法案 衆院本会議で可決

          4月9日テレビ朝日

 機密情報などの流出を防ぐため「セキュリティ・クリアランス制度」を創設する法案の修正案が、衆議院の本会議で可決されました。

「セキュリティ・クリアランス制度」は、機密情報や先端技術の流出を防ぐため、経済安全保障に関する情報を扱う民間人らを国が認定するものです。

 法案では、サイバー攻撃への防御策など日本の安全保障に支障をきたす恐れのあるものを「重要経済安全情報」に指定したうえで、本人の同意のもと家族や犯罪歴などを調査し適正と判断した人のみ情報へのアクセスが認められます。

 野党側は「プライバシーを侵害する恐れがある」などと主張していましたが、与野党の修正協議の結果制度の運用状況について国会への報告を政府に義務付けることで立憲民主党は修正法案の賛成に回り、共産党などが反対しました。

 参議院での審議を経て今の国会で成立する見通しです。

以上

  淡々と書かれていますが大変な法案です。この制度は、漏えいすると日本の安全保障に支障を来すおそれがある情報を「重要経済安保情報」に指定し、これらの情報へのアクセスを民間企業の従業員も含め、国が信頼性を確認した人に限定するものとされています。                

 国が信頼性を確認するということは、戦争できる国づくりに批判的な人かどうか思想調査もされるのでしょう。

 戦争体制は軍事だけではなく、経済•情報もふくめて国家的統制のもとに組みこまれます。同じような日常生活の繰り返しの中で戦争のできる体制づくりが権力者によって構築されつつあります。社会は変化しています。戦争に向かう奔流に身を任せるわけにはいきません。

 醒めた目で時代の動きを見なければならないと思います。