[1177](寄稿)医療あれこれ(その77)−3

ペンギンドクターより
その3
 もう一つ、時間が無くなったので、次回紹介したい本の題名だけ記します。
 島薗進釈徹宗若松英輔・櫻井義秀・川島堅二・小原克博『徹底討論!問われる宗教と”カルト”』(NHK出版新書、2023年1月10日第1刷発行)です。旧統一教会の関連からNHKEテレで収録したものが基礎になっています。それぞれ現在の日本の良心的な宗教学者・宗教者です。私自身も宗教には関心をもっています。母の墓参に帰りますが、母の墓地はいずれ無縁墓地になります。でもそれでいいと私は思います。つまり、私も含めて土に還るのは当然だと思っているからです。このへんはいずれお話するつもりです。
 
 さて転送するのはCOVID‐19のアメリカの現状です。マスクというわかりやすいアイテムからの報告です。なお私は今週末の訪問でもちろんマスクはつけて行きます。マスクをつけるのは、他人に感染させないためであり、マスクをつけていれば自分の感染が防げるわけではないということは当然と理解した上でしばらく人前ではつけます。
 余談ですが、最近のアメリカの医学雑誌に、初期のCOVID‐19による医師の死者が600人に上ったというデータが発表されたようです。いわゆる「超過死亡」の計算からです。
 出来る限り注意しながら三年ぶりに上京して、新幹線その他で西日本まではるばる行ってきます。
 今回はこのへんで。
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 脱マスクを女医が2カ月やってみて 「マスクを着用しなければ」からの解放された生活とは
 
 この原稿はAERA dot.(2023年1月25日配信)からの転載です
 
 内科医
 山本佳奈
 
 2023年2月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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【グラフ】米国での新型コロナウイルスの新規感謝数の推移
 
 昨年末に報じられた新型コロナウイルス感染症の「5類」引き下げの検討が、ようやく動き出しそうです。今年の1月18日、岸田首相は加藤厚生労働大臣らと新型コロナウイルスにおける感染症法上の分類見直しについて協議し、今年の春を視野に現在の「2類相当」から「5類」へ引き下げる方針を固めたことが報じられました。マスク着用の目安についても緩和の検討を指示する方針であるほか、5類引き下げの際は法律上の根拠がなくなってしまう公費負担については特例的に継続し、段階的に廃止する方針だといいます。
 
 日本のニュースを見ていると必ずと言っていいほど見かけるマスク姿ですが、私は「脱マスク」をしてからもうすぐ2カ月が経とうとしています。理由は単純です。日本を離れているからです。
 
 コロナパンデミック後の渡米は、昨年の春と夏に続き今回が3回目です。昨年の夏の時と比較して、ロサンゼルス国際空港での入国審査を待つ人の数は明らかに増えているような印象を受けました。実際に、入国審査を終える時間も前回の30分であったのに、今回は1時間半もかかってしまいました。審査を待つ人はノーマスクの人も多く、空港で働く人もノーマスク姿が増えていたように感じました。
 
 「もうアメリカは元に戻っているよ。コロナなんかもう気にしていないんじゃないかな……」米国在住の友人からはそう聞いていましたが、今回の長期滞在ではそう肌で感じることが多いです。
 例えば、昨年の渡米の際は空港の到着ロビーに設置されていたコロナ検査を促すテントを、今回は見つけることができませんでした。前回はハイウェイ沿いで見かけたコロナワクチン接種を勧める広告や街中に設置されたコロナ検査を行う仮設テントも、現時点で一つもみかけていません。
 
 サンディエゴの薬局の駐車場の看板
 
 唯一、コロナワクチン接種をすすめる看板を発見したのは大型薬局の駐車場に立てかけられた看板です。冬のシーズンだからでしょうか。「インフルエンザとコロナワクチンの予防接種を無料提供(多くの場合、被保険者はインフルエンザとコロナワクチンは無料。コロナワクチンは被保険者でなくても無料)」と接種を呼びかけるものでした。
 
 日本では、コロナワクチンやインフルエンザワクチンなどの集団接種や職域接種を除き、基本的に病院やクリニックを受診しないとワクチン接種を受けることができません。「病院に行かなくても薬局で接種できるのはとても便利だわ」とジムで知り合った年配のカリフォルニア州在住の女性が話すように、日本でも街の至る所にある薬局で希望するあらゆるワクチンの接種を受けることができるならば、ワクチン接種のハードルが下がるのではないかと感じました。
 
 マスク姿をほとんど見かけないことも、日本とアメリカのコロナに対する受け止め方の差を痛感することの一つです。私が滞在しているアメリカのカリフォルニア州では、昨年の春に屋内や公共交通機関でのマスクの着用義務が解除されました。そのため、スーパーマーケットやジム、レストランやカフェなど、日々頻繁に訪れる場所でマスク姿を見かけることはほとんどありません。接客業の人がたまにマスクをしているのを見かける程度と言っても過言ではありません。
 
 病院はまだ利用していないので現状はわからないのですが、先月に2回ほど訪問した鍼の治療院の先生も受付のスタッフはノーマスクでした。米国疾病予防管理センター(CDC)は、すでにCOVID-19多発地域でない医療施設は医師や患者などの全員のマスク着用を不用とすることができるとし、アメリカではすでにCOVID-19の多発地域以外の医療施設での一律のマスク義務が廃止されています。そのためなのでしょう。私も施術中にマスクの着用をお願いされることはありませんでした。
 
 日本を離れて間もない頃は、外出時にふと「あれ、マスクを着け忘れたかも……」と不安になりながら自分の顔に触れては「もう(マスクは)いらないんだ」と自問自答することが頻繁にありました。しかし、今ではそんなやりとりを自分自身の心の中ですることもありません。日常生活を送る中で、「コロナ」に関する話題が出ることも目にすることもほとんどないからです。
 街を歩いている時や店に入る際に「マスクの着用をお願いできますか?」と言われてしまうこともなければ、「消毒のご協力をお願いします」と入店前に止められてしまうこともありません。「マスクをしないといけない」と周囲の視線を意識することもなくなりました。こちらではハグもすれば、人との距離が近くても遠くてもマスクを着用することなく会話をしています。もちろん、ワクチン接種の有無を確認されることもありません。
 
 ジムやスーパーマーケットでよく見かけるのは、消毒液です。消毒することを強要されたり勧められることは決してありませんが、自主的に使用前や使用後に筋トレマシンを消毒したり、入店時や会計の際に手を消毒する人を頻繁に見かけます。公園では、子どもたちが遊び終わったときなどでしょうか。お母さんが小さいお子さんに消毒するように声をかけている姿もよく目にします。私も今ではマスクを持ち歩くことはなくなりましたが、消毒液や消毒シートをカバンの中に入れていつでも使えるように心がけるようになりました。普段よく訪れるところでは設置されていることが多いため、必ずしも持ち歩く必要はなさそうですが、意識して持ち歩くように自然となっていました。
 
 これまでの滞在期間中、念のためにマスクを持参したことが一度だけあります。昨年12月にミュージカルを観に行った時です。事前にメールで送られてきた案内で「公演中はマスクを着用されることを強くお勧めします。ワクチン接種の証明は必要ありません」と書かれていたからです。残念ながら、出演者の体調不良により鑑賞予定だった日と翌日の上演は見合わせ。少々残念ではありましたが、「次の機会にミュージカルを観に行った際にはマスク着用を勧める案内が送られてこないといいな」なんて思いながら帰宅したのでした。
 
 日本では、コロナの扱いを「5類」へ引き下げるほか、マスク着用の目安についての緩和検討を指示する方針であることが連日報じられています。日本に帰国するころには、「マスク着用をしないといけない」という雰囲気が続いていないことを願っています。
 
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