[1178]共産党の除名処分

 日本共産党元安保・外交部長松竹氏が党から除名処分を受け、松竹氏が反発し「今回の処分は、党の現状をさらに深刻にさせる」と反批判しています。

 松竹氏は、党首公選制や日米安全保障条約を堅持しつつ、米国の核兵器に頼らない「核抑止抜きの専守防衛」を共産党の基本政策にするよう唱えています。松竹氏は2023年になって記者会見を開いたり、同趣旨の『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を出版したことなどが問題視され2月に除名処分にされました。日本共産党は「党内に派閥・分派はつくらない」「党に敵対する行為はおこなわない」「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」とする党の規約に反すると認定し「規定を踏みにじる重大な規律違反だ」として処分の正当性を訴えています。

 この問題は組合の中で話題になっています。ある組合員が私に、やっぱり共産党は昔から変わってないですねと言いました。

 私はそう言われて次のように言いました。

 松竹氏の安保自衛隊問題の意見は反戦平和運動にとっては誤った意見だとは思います。が、それはともかくとして、党の安保政策や委員長の選出方法を巡る指導部批判を排除することによって「解決」するのは間違っていると思う。党勢が広がらない状況下で党内に党の路線や方針に批判的な意見が出るのは当然です。今回は批判が根強く党指導部の手におえなくなったので排除したというのが真相ではないかと思いますと言いました。

(松竹氏は自著や会見で「国民の目から見ると共産党は異論を許さない政党だと見なされる」などと危機感を表明しいて、その異論の核心が日米安保自衛隊の堅持・容認論でした。)

 今回の除名処分は党内対立の官僚主義的解決形態です。彼が本や記者会見で党首公選制を訴えた背景には党勢が拡大せず行き詰まっている現実があるからです。その原因は党のイメージが閉鎖的だからであり共産党のイメージを変えることが必要だと思ったという意味のことを松竹氏は言っています。そう感じている党員が少なからず存在し党は答えに窮しているのではないでしょうか。党指導部はその問題を党内で議論し意見対立を止揚することができないのです。

 指導部は松竹的意見に手が負えなくなり規約違反の名目で除名することによってのりきりをはかったのです。

 共産党は除名処分は正しかったということを主張していますが、松竹氏は反共主義に転向して党を破壊するために本を出したのではなく議会主義政党の得票を伸ばすためにしたことです。党も松竹氏を反共主義とまではいっていません。規約違反したことが除名の理由です。

 私は対立し行き詰まった討論を前に進めるために党内分派をつくるのは誤りとは言えないと思います。これはスターリン主義の組織論に抵触します。松竹氏も分派活動は間違っているということを前提に言い訳的意見を言っていますが、この点は共産党指導部と同じです。

 労働者階級の闘いが危機的になり、運動の基盤が弱くなったときには党の下からたとえ歪んではいても指導部批判がわきおこるのは必然です。党が批判を受けとめ内部思想闘争ができるかどうかが労働者階級の前衛党の試金石なのです。徹底した議論にもかかわらず対立が止揚されない場合には、党指導部は分派を認めるべきです。必要なときに党内反対派を組織しそれを基礎として内部思想闘争を生動的に行えるかどうかが前衛党のメルクマールなのです。

 日本共産党は党内闘争の自由を分派活動禁止の名のもとに本質的に認めないのです。あのスターリンの末裔としての実を「日本共産党」がまたもや示した事件です。

 

参考に東京新聞の記事を引用します。

共産、内部批判の党員除名 「重大な規律違反」 2023年2月6日

 共産党は6日、志位和夫委員長の長期在任を批判し、党首公選制導入を求めた党員で元党職員の松竹伸幸氏(68)について、言動を「重大な規律違反」として除名処分にしたと発表した。

 松竹氏は同日、日本記者クラブでの会見で「党員には憲法が保障する表現の自由が許されていない」と非難し、処分を不服として党側に再審査を求める意向を示した。 松竹氏は1月、党運営の透明化を訴える著書を出版。志位氏の長期在任を「国民の常識からかけ離れている」と公言するなどしていた。 松竹氏は会見で、分派活動との除名理由に「こじつけに過ぎない」と反論。「処分が覆らなければ、党は衰退の道をたどる」と指摘した。

引用以上。

 

 松竹氏は分派活動をしたという除名理由はこじつけだと言っていますが、分派活動をせざるを得なかったとなぜ訴えないのでしょうか。憲法に保障された表現の自由を基準にして出版を認めよというのは、共産党の外に出て言う意見ならわかりますが、共産主義者なら党内相互批判の自由を基準にすべきでしょう。

 党内闘争の限界露呈の確認に立って分派闘争を宣言し「別個に進んで一緒にうつ」道に踏み出すほかないのですが、松竹氏に言ってもわからないかもしれません。

 今や党と松竹氏は、単に自己正当化のために形式主義的な非難の応酬をしているだけです。党の議会主義と党内闘争の官僚主義的疎外は革命理論的にも組織論的にも反省しなければならないのですが現指導部は硬直化していてそれはできないでしょう。

 反対運動が消えそうな蝋燭の火のようになり、体制翼賛運動が跋扈し軍事大国化する日本の現状をのりこえるためには、議会主義にはまって大衆迎合主義に陥り、もめているだけの党指導部も松竹グループも根本的に批判していく力を下から創造しなければならないと思います。