[670](寄稿) 保健所機能は強化されない!~ムラ社会の弊害

ペンギンドクターより
その2
 下記の「某保健所長」の意見は愚痴に近いものと言えますが、現状の一端はうかがえるようです。やはり、現場の率直な意見は説得力があります。

***********************************************************

保健所機能は強化されない!~ムラ社会の弊害~

某保健所長

2021年10月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
·············································································
新型コロナウイルス感染症等の健康危機に対し、保健所機能の強化が叫ばれている。しかし、強化はされない、されるはずがない。

何故ならば、「県」というムラ社会の中に保健所が埋没しているからだ。保健所が医療機関であり、公衆衛生の最前線基地というのは名ばかりで、現実はそうなってない。「県」ムラ社会の弊害に押しつぶされ、細々と生き延びているのが現状だ。だから、2009年新型インフルエンザパンデミックのときも保健所機能強化が叫ばれたが、強化されなかったし、当然今回も無理だろう。

自分の「県」の保健所を見てみればわかる。保健所という表看板の保健所がどれだけあるだろうか?

〇〇福祉事務所とか××センターとか奇妙な名称となっている所が多いのは何故であろうか?そして、その〇〇福祉事務所とか××センターの中に保健所があるという建て付けの「県」が極めて多く見られる(都は体制が全く違うため、今回は言及しない)。このような場合、事務職員が〇〇福祉事務所や××センターのトップであり、その下に保健所長がおり、しかも、保健所職員は保健所長のみという信じられない構造になっている。保健所の長は原則医師となっているため、保健所長は確かに行政医師、しかし、一人だけの保健所職員という冗談のような話がまかり通っている!実質的には保健所組織なのに、ほんの少しの福祉を入れたりして、〇〇福祉事務所とか××センターとか名乗っている。これは地方分権の成れの果てか?

保健所職員が保健所長のみでどうやって健康危機に対処できるのだろうか。他の職員は〇〇福祉事務所や××センターのトップである事務職員の部下という形になっており、これでは保健所長以下保健所が一体となって重大な健康危機に対応できるはずがない。

トップの事務職員は前例主義に凝り固まっている。ボトムアップで対応すべき案件もいちいち本庁(県庁)の指示を仰ぐ習慣が身についており、臨機応変に対応する術を知らない。責任を取るという考えが全くないというか、責任回避に終始する習性に洗脳されている。すぐに予算のことを言い出すが、健康危機にまず予算という発想自体がナンセンスだ。

事務職員にとって、定年間際の出先機関の長は非常においしいポジションだろう。本庁(県庁)も長年働いてくれた恩賞人事で、最後の1、2年に事務職員を出先機関の長にする。そして、定年後は再び「県」に再任用の形で就職するため(もしくは「県」関連に再就職)、本庁(県庁)の言う事に逆らわず、大過なく定年を迎えなければならない。これが「県」ムラ社会である。
そのようなトップの下、臨機応変ボトムアップの対応が必須の健康危機に対し、〇〇福祉事務所や××センターが上手く機能するとは思えない。忙しくなると本庁(県庁)に頼んで事務職員を派遣してもらう発想が関の山だ。専門職の集団である保健所に対し、専門職ではなく事務職員派遣でお茶を濁すのである。次年度、専門職を十分に配置して保健所機能を強化することは毛頭計画にない。そのような専門職の重要性を理解できないというか、〇〇福祉事務所や××センターのトップの事務職にはそのような専門職を統括することは元々できないし、むしろ来てもらって充実されては立場がなくなるのである。なぜなら、このトップの事務職員は保健衛生畑にずっといた保健衛生のエキスパートではない、ついこのあいだまでは農林だったり、、、医療に至っては全くの素人同然、、、これでは、保健所機能を統括出来るはずがない。

このような体制では、見せかけだけ、掛け声だけの強化に終わるのが見えている。新型インフルエンザでのエビデンスがそれを物語っている。十中八九、新年度となっても、強化はされないだろう。「人事部局に掛け合ったが却下された」で終わるだろう。本庁(県庁)人事部局は健康危機管理には全く無縁の部署、保健衛生に最も遠い部署だから、保健所の人的強化を理解できるはずもないし、むしろ人減らしに熱意を燃やしている。また、何処まで真剣にこの人事部局に掛け合う気持ちがあるかも疑わしい。精々本庁(県庁)の事務職員を出先(〇〇福祉事務所や××センター)との兼務という形にして短期間派遣要員としリストにあげて、一見頭数だけを増やした形にするのが精いっぱいだろう。
このような県「ムラ」の論理で固められた職場、保健所長一人しかいない保健所に就職する公衆衛生に燃えた医師がいるだろうか。少し長く臨床をやっていると、学生時代あれほど面白くなかった公衆衛生の重要さに気が付き、公衆衛生をやってみたいと思う医師は少なくない。しかし、保健所長になって公衆衛生を実践したい医師がいないと叫ばれている。その根本の原因はこの県「ムラ」自身の論理にあることは意外と知られていない。

強固な保健衛生の組織を目指し、全国的な公衆衛生の機関自体を立て直す時期に来ている。今回のような感染症パンデミックに、地方分権とか県「ムラ」の論理をゴリ押しするのは完全に限界であり、住民の方をしっかり向いた保健衛生/公衆衛生に軌道修正するべきである。国が指導しても県「ムラ」が変わらなければ、全国的な新しい組織の出番となるだろう。国の新しいトップはそこまで踏み込めるだろうか?是非踏み込んで歴史的な仕事をして欲しい、これは現場の保健所長からの心からのお願いである。

··············································································
ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご覧いただけますのでご確認ください。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp
···············································································
◆◇お知らせ◆◇◆◇◆◇
MRICの英語版として、MRIC Globalを立ち上げました。
MRICと同様に、医療を超えて、世界の様々な問題を取り上げて参りたいと思います。
配信をご希望の方は、以下のリンクからメールアドレスをご登録ください。
https://www.mricg.info/

◆ご投稿をお待ちしています◆◇◆◇◆◇
投稿規定はこちらから
http://expres.umin.jp/mric/mric_kitei_2020.pdf

················································································
今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

***************************************************************************


※メールアドレス変更・メルマガ解除は以下よりお手続きをお願いいたします。
http://medg.jp/support/mailinfo.php?id=s1diR9vrPt1iJTGH

MRIC by 医療ガバナンス学会

f:id:new-corona-kiki:20211012061848j:plain

[669](寄稿)医療あれこれ(その60)

f:id:new-corona-kiki:20211011063135j:plain
ペンギンドクターより
その1

皆様
 本日は雑多なニュースをお送りします。それだけでは、申し訳ないので、MRICの某保健所長の主張も転送します。保健所長は医師です。一般に臨床や研究職からの落ちこぼれなどのやる気がない医師のイメージが強かったのですが、下記の「某保健所長」は過去何度もMRICに意見を述べており、それだけでも異色の保健所長と思います。
 MRICに登場する意見と言っても、すべて傾聴すべきとは限りません。体制批判のみの素人の意見もあります。また専門家のようであっても、空理空論に近いものもあります。下記の「某保健所長」の意見は愚痴に近いものと言えますが、現状の一端はうかがえるようです。やはり、現場の率直な意見は説得力があります。(編集者註:次回掲載します)
 私の優秀な同級生2人が茨城県の保健所長を務めていたので、彼らから内容はある程度聞いていました。ただ、もう20年近く前の話です。その二人はある意味で「落ちこぼれ」ではありましたが、もともと能力はあるので、有力保健所長として活躍していました。所長のなり手がなく、一例をあげると彼らはM保健所長と兼務で小さな町の保健所長もこなしていました。暇だと言っていましたから、平時に縮小されるのはある意味で当然だったかもしれません。難しいところです。行政にとっては、「一匹狼」の傾向のある医師は扱いにくく、下記のような事態が起こるのでしょう。コロナ以後も保健所改革は容易ではないと思います。

 さて、「医療あれこれ」です。
●透析中止で患者死亡、病院と遺族が和解 裁判長「病院の説明不十分」
 事故・訴訟 2021年10月6日(水)配信 朝日新聞

 公立福生病院で2018年、腎臓病患者の女性(当時44)が人工透析の治療をやめたあとに死亡した問題で、遺族が病院側に慰謝料を求めた訴訟は5日、東京地裁で和解が成立した。桃崎剛裁判長は和解条項で「透析中止は患者の生死に関わる重大な意思決定で、病院側の説明や意思確認が不十分だった」と批判した。
 一方で、「病院側が透析中止を提案して死を誘導したとは認められない」とも説明した。和解条項はほかに(1)病院側が解決金を支払う(2)再発防止として患者が意思決定後も病状変化に応じて病院側が意思を確認する――など。
 女性は当時、医師と相談して人工透析治療の中止を承諾したものの、呼吸の苦しさなどから数日後に治療中止の撤回を申し出た。だが治療は再開されなかった。遺族はこの日、「患者がどんな状態でも言葉に耳をかたむけてほしい」とコメントした。

▼いかがですか。上記のニュースは毎日新聞がスクープした記事で、広く話題になりましたから、ご記憶の方も多いと思います。記事を書いた記者についてとか、病院側の発表の前の一方的な病院批判の論調、さらには透析医会、透析学会などの反応など、私もいろいろな側面から調査して皆様に結果を提供しました。落ち着くところに落ち着いたという感じです。
 私の今の考えを述べます。
 裁判官の「病院の説明不十分」というのは、自分が患者の立場に立てば当然出てくる意見です。しかし、福生病院の担当医師にすれば、腎臓外来もあり入院患者も診ている立場として、揺れ動く患者さんの気持ちに「いちいち付き合っていられない」というのも予想されることです。日常的に透析をしていた開業医の先生と患者さんとで、透析の意味を日常的に話しておいて欲しかったと言いたいと私は予測します。また、家族の関係においても、不自然な感じを私は持っています。確か息子が二人いたようですが、母親の状況に無関心だったように感じます。自殺未遂を起こしたという情報もありましたから、家族の中で浮いていたのかもしれません。死者に対して勝手な予測は許されませんが、実際に「がんの外科医」としてある時期最前線で仕事をしてきた者として、実に様々な現場、家族に出会った来ましたから。
 最近も、先日送信した「乳がん未治療の女性」との一年にわたるやり取りで、私は家族との関係が医療選択において大きな問題があると推測しています。私自身の周辺の人々を見ても、日常生活に追われる日々で、生と死の問題さらに家族関係の現状について、真摯に向き合ってこなかった日本の現状がうかがわれます。また私の「大言壮語」が始まったと思われるかもしれませんが、山田昌弘中央大学文学部教授(専門は家族社会学)の本を読むと、家族の危機はすでに到来しています。この件はそれぐらいとします。

 いよいよ衆議院議員選挙です。立憲民主党の議員の批判になりますが、ちょっと古い情報です。M3ネットワークで話題になっていて、もとはYAHOOニュースから拾ったスポーツ報知の報道のようです。保守系読売新聞が背景にあるという注意は必要でしょう。
●医師で議員のあべともこ氏、都で親子3人感染の40代母親死亡に「この女性の重症度は誰が診断したのか」
 2021年8月18日(水)配信 報知新聞社 
 立憲民主党のあべともこ衆議院議員が、8月18日、自身のツイッターを更新、東京都内で親子3人全員が新型コロナウイルスに感染し、自宅療養中に40代の母親が死亡したことに見解を述べた。

 小児科医として藤沢市に自身のクリニックを持つあべ氏。親子3人全員が自宅療養中に母親が死亡したニュースを引用し、「自宅療養という名で、不安と苦しさの中死亡したこの母親に保健所はどんな関与をしたのか?あるいは救急は対応できなかったのか、知事はきちんと説明すべきである。どこに問題があったのかをはっきりさせないで、酸素センターだ、抗体カクテル療法だと次を云々すべきではない」と記した。

 さらに、連続で「多くの人がこのお母さんの死に怒りと悲しみを持ってネット拡散していると思う。誰が自宅療養の指示を出したのか、この女性の重症度は誰が診断したのか、酸素センターというが誰がどうやって運ぶのか、とにかく抽象的なことばかりで現実の苦しみを知ろうとしない政治家はいらない」とツイートした。

▼このニュースに対する医師の反応は、①この患者さん、基礎疾患ありでワクチン未接種だそうです。もうすでに基礎疾患ありの人は申し込めばワクチン接種できたのに、様子見でもしていたのですかね。②このような後出しジャンケンの議論は最も恥ずべき、いまするべきではない行為だと思う。このようなことが起こらないためにどうすべきかを議論すべきではないか。賛成854、反対38。③じゃあ、あなたが診断したら助かったのか、と問いたい。④小児科医と政治家と兼業できる暇があるのか? などと批判が多いのは当然でしょう。
▼あべともこ氏は1974年東大医学部卒です。専門は小児神経科です。なぜ、上記のニュースを保存していたかというと、面識はありませんが、政治献金(寄附金)の依頼が昔私のところにも来たことがあったからです。私は献金しませんでした。理由は活動が一般的だったからです。以下はこのニュースを見たときの私の彼女に対する批判です。
(1)あべ氏は想像力が欠如している。「この女性の重症度は誰が診断したのか」という疑問ですが、当然保健所職員でしょう。職員がチョックした時、酸素飽和度(SpO2)が緊急入院させるほどではなかったから・・・・・という回答が予測されます。
(2)この患者さんと接触した職員はいるはずだが、この職員を個人的に探し出して責任を追及することは、絶対にやってはいけないことである。システムの問題を個人の責任の追及に向けることは、事故の防止にはつながらず、疲弊した職員の「自殺」をも起し得る暴挙である。そんなことを知らないあなたは、それでも医者か?
 と私は怒りを禁じ得ませんでした。立憲民主党のレベルがわかります。まさにあべ氏こそ「現実の苦しみを知らない政治家」だと思いました。
・・・

●日本の新型コロナブレークスルー感染の実態を調査
 国立国際医療研究センター・松永展明氏
 m3.com編集部 2021年10月3日(日)配信
 国立国際医療研究センターは9月29日、オンラインでメディアセミナーを開催し、同センターAMR感染症リファレンスセンターの松永氏が国内のいわゆるブレークスルー感染で入院した患者の実態を報告した。基礎疾患を有する高齢者の入院が多かったものの、非接種者に比べICU入室や抗ウイルス薬、抗体医薬の使用割合が少なかったという。
 (ブレークスルー感染とはワクチン2回接種後の感染をいう)
 以下見出し主体で内容の詳細は省略です。

◍非接種者に比べ感染が8分の1、入院・死亡は25分の1
 SARSCoV‐2ワクチンは他のワクチン同様、100%感染を防げるわけではないが、2回接種後感染時には症状が出ても軽いことが明らかである。アメリ疾病対策センター(CDC)での2021年9月20日時点でのブレークスルー感染コホート調査によると、入院患者の20%が死亡し、そのうち87%は65歳以上の高齢者である。
◍ブレークスルー感染による入院例の8割は基礎疾患あり。
◍ブレークスルー感染者は致死割合3分の1、 
 死亡例の解析では6例中2例が2回完了者で、その他は2回接種後14日以内の発症だった。6例の年代は60歳代から90歳代でほとんどのケースが複数の基礎疾患を有していた。
◍1回目接種後、2回目接種前の入院多い。

▼ワクチン接種は有効ですが、我々高齢者は接種後も三密は避けるということでしょう。

 今回はこのへんで。

[668](投稿)表紙を変えた自民党

f:id:new-corona-kiki:20211010060806j:plain
峠野須加単さんからの投稿です。

 面白い文がyahooニュースに掲載されていましたので紹介いたします。

岸田首相の所信表明は1点?ジャーナリスト青木理が「カチンときた」セリフとことわざ〈dot.〉
10/9(土) 12:30配信


 岸田文雄首相は8日、衆参両院の本会議で、初めての所信表明演説を行った。演説時間は約25分。岸田政権がどこを目指し、何を実現していくのかを国民に示したわけだが、新政権に期待できるのか。所信表明演説について、ジャーナリストの青木理氏は「1点か5点でもいいか」と語る。その理由とは…。

*  *  *「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」
 演説も終わりに近づいたころ、岸田氏は「ことわざがあります」と、2度繰り返した。 岸田氏はその意味を「一人であれば、目的地に早く着くことができるかもしれません。しかし、仲間とならもっと遠く、はるか遠くまで行くことができます。私は、日本人の底力を信じています」と語った。
 このことわざは国民にはいまいちピンとこないが、青木氏も「こんなことわざ、僕も初めて聞きました。しかし、なぜわざわざ海外のことわざを引っ張ってくるんですかね。意味がわからない」と厳しい意見。さらに、皮肉を込めて次のように解釈した。 「一人ではなく仲間と進めとは、麻生太郎副総裁、安倍晋三元首相、甘利明幹事長の3Aの協力がなければ前に進めないという意味、そして”はるか遠くまで"というのは、われわれが望むのとはまったく別の方向の”はるか遠く”を意味するのではないか(苦笑)。政権の実態をみると、そう感じてしまいます」  
 さて、所信表明の肝心の内容だが、「経済」という言葉が20回、「成長」が15回、「分配」が12回、「新しい資本主義」が7回繰り返された。これらが岸田政権のこれからを読み解くキーワードのようだ。
 「気になる言葉といえば、たしかに『新しい資本主義』とか、『分配』ですよね。その言葉だけ聞けば、安倍・菅政権とは少し違う、いわゆる宏池会的な路線が滲んでいるようにも感じられます。つまりは経済重視、再分配による格差や富の偏在の是正、一方で安全保障は軽武装路線のハト派といった『宏池会の価値観』を前面に出そうとしているという印象は受けます」 岸田首相の言う「新しい資本主義」とは何か。    
 「世界中で剥き出しの新自由主義と強欲資本主義が猛威をふるい、それによって中間層が破壊され、貧富の格差がかつてなく拡大した。そうした不満が政治を不安定化させ、欧州では極右やポピュリズム勢力を、アメリカではトランプ氏の出現などにもつながった。だから富の再分配と格差の是正が世界的課題なのは事実でしょう。しかし、岸田政権を眺めると、それを実現するための基盤となる足下の閣僚や与党執行部の顔ぶれはどうか。新自由主義路線を推し進めてきた安倍元首相や麻生元首相といった政治勢力に依存し、頼らなければ何もできない状況では、言葉が浮遊するだけの結果になるのは明らかでしょう」
 掲げた目標や計画はいいが、実効性には大いに疑問符がつき、看板倒れになってしまう可能性が高いというわけだ。党役員人事に早くもその兆しが見えているという。
  「たとえば、党執行部の人事はひどいものです。肝心の経済政策をはじめとする政策全般を取り仕切る高市早苗政調会長はバリバリの新自由主義者。かつて『弱者のフリをして少しでも得をしようと、そんな国民ばかりでは日本が滅びる』などと言い放ったこともあります。また、財務相をはじめとする閣僚にも新自由主義者がズラリと顔を揃え、甘利明・幹事長なども同様でしょう。しかも甘利氏は、口利きの対価として大臣室で現金を受領した問題をいまだにきちんと説明していない。こんな人物を幹事長に据えた時点で終わってます」
 岸田首相が、所信表明で「被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは『核兵器のない世界』です」と語った時にはハッとした人も多いかもしれない。 「この部分に目と耳を引かれた人はいるでしょうが、被爆地・広島はそもそも宏池会の牙城です。岸田氏は宏池会池田勇人元首相、宮澤喜一元首相が築いた伝統を背負っていますし、自身も広島選出の国会議員ですから、この程度のことは言うでしょう。しかし、肝心なのは具体的な核廃絶への道筋をどう描くのか、という点です。たとえば核兵器禁止条約に参加するのかどうか。そうした点については具体的な道筋はまったく見えず、従来の曖昧な態度に終始するだけでした。
 その岸田首相は「外交・安全保障政策の機軸は日米同盟です」と語り、「ミサイル防衛能力など防衛力の強化」を掲げた。 「経済政策では宏池会的な印象を一応打ち出す一方、安全保障面ではタカ派路線を露骨に滲ませましたね。もともと安倍元首相らへの配慮から、岸田氏は総裁選でも敵基地攻撃能力の保有などに前向きな発言もしています。結局、広島にバックボーンを置く政治家としてきれいごとは言うけれども、具体性はほとんどなく、むしろ安倍元首相らに引きずられていくんじゃないですか」
 綺麗なことを並べ立てているが、政権の実態は乖離しているということもありそうだ。 その一方で岸田氏は「いい人」「紳士的な人」という人柄に対するいい評価がある。その人柄で党をまとめ上げて、実行していくのは難しいのだろうか。
  「難しいというより、無理でしょう。これで自民党が変わるかもしれない、などと期待する人がいるなら、それは甘すぎます。忘れてはならないのは、いったいなぜ岸田氏が新首相になったのか。要は菅首相では選挙で大負けするから、表紙を変えておきたいという自民党の都合にすぎません。また、久しぶりに宏池会政権になったといっても、派閥の力が強かったかつての自民党と現在はまったく違います。はっきりいって岸田政権は安倍、麻生元首相らの傀儡ですから、お手並み拝見という以前に、何かが変わると期待するのはナンセンス。本当に政治を変えたいなら、自民党を牽制する野党勢力の力を強めるしかありません」
 岸田氏はさらに「明けない夜はありません」と呼びかけて演説を結んだ。国会の与党の議員のからは拍手が巻き起こり、感動的に受けとめた雰囲気もあった。 シェイクスピアの戯曲「マクベス」にも出てくるセリフだ。
  「逆に僕はカチンときましたけどね」
 それは次のような理由によるからだ。 「未曾有の危機というべき新型コロナ対策で、安倍・菅政権が万全の対策を尽くしたと考えている人はほとんどいないでしょう。必死にやっての失敗ならともかく、やることなすこと後手後手でピント外れな対策ばかり。いつまで経っても検査すら増えず、少し感染者が増えると医療崩壊の危機が叫ばれることの繰り返し。岸田新首相も、その政権で要職を歴任してきたわけです。そうした劣悪な政治によって痛めつけられた人びとが『明けない夜はない』と願い、嘆くならともかく、ひどい政治を強いてきた側が上から目線で『明けない夜はない』とはいったい何事ですか」
 同じ言葉でも発する人の立場やタイミングによって、聞いた人の受け止め方は変わってくる。つまり、言葉選びのセンスがないということのようだ。 総裁選では、岸田首相は「トーク力が上がった」と評判だったが、所信表明演説はどうだったか。
「まあ、前任の菅義偉前首相のトーク力がひどすぎましたからね。官僚がつくった文章をひたすら読み上げるだけだった前首相に比べれば、ずいぶんましになったなと思う人もいるでしょうけれど、総裁選を通じた会見などにしても、今回の所信表明演説にしても、人びとの感情を深く揺さぶるようなメッセージはない。知人の政治記者が岸田氏を評して『あたりさわりのないことを喋らせたら永田町でナンバーワン』と皮肉ってましたが、言い得て妙だと思います」 岸田氏は文章を読むためにほとんど下を向き、時々、顔を上げるというスタイルだった。
  「現在のコロナ禍は、言うまでもなく人類史的な危機です。ならばせめてその危機に立ち向かう為政者として必死の覚悟を示すとか、人びとに真摯な協力を求めるとか、あらかじめ作った文章を読み上げるにしても、もう少し響く一文があってもいい気がしたのですが、世襲のボンボン議員にそんなことを求めるのは所詮、ないものねだりということでしょう」
岸田首相は4日の記者会見で、衆議院を14日に解散し、19日に公示、31日投開票の考えを表明した。
「表紙を変えたにすぎないとはいえ、首相が変わったご祝儀相場があるうちに、一刻も早く解散して総選挙になだれ込みたいということなのでしょう。菅政権の末期はヘタすると大幅な議席減とまで予想されていたものが、少しでもそれを抑えられれば、岸田政権も何とかもつという見方もあるようです。ただ、本当に負け幅を減らせるかどうか、もし衆院選を乗り切れたとしても、来年夏には参院選挙が待っている。安倍元首相らに牛耳られ、政治とカネの問題にまみれた甘利幹事長、小渕優子氏らを登用する“自己都合的再チャレンジ内閣”がそれほど長く続くとは到底思えません」 これらの話を総合し、岸田首相のはじめての所信表明演説を採点するとしたら、100点満点中、何点になるだろうか? 「0点でしょう。演説にかんしては前任者がひどすぎたから1点ぐらいあげてもいいけれど、実態としてはまぁ0点ですね」
(AERAdot.編集部 上田耕司)

●●● 峠野須加単のコメント

 お読みになって頂ければ分かるので特に付け加えることはありません。「表紙を変えても同じ」これまでの体質の自民党一家の顔ぶれと衆議院選挙前の「政策」ならぬ「政略」ということですね。

[667](投稿)泊原発の防潮提新設へ

f:id:new-corona-kiki:20211009054017j:plain
編集部より:森論外さんの投稿は8月27日に受けました。当時は菅政権でしたが10月末で終焉し、岸田内閣が成立しました。原発政策は基本的に変わりません。しかも日米財界人会議は10月7日、「原子力について低炭素の基幹電源としての重要性を認識すべきだ」との声明をだし岸田政権に念をおしました。

森論外さんの投稿

北電、泊原発の防潮堤撤去し新設へ 着工時期は不透明
08/26 23:10 更新
北電、泊原発の防潮堤撤去し新設へ 着工時期は不透明
 北海道電力は26日に開かれた原子力規制委員会の審査会合で、泊原発(後志管内泊村)を津波から防ぐ防潮堤の設計概要を明らかにした。盛り土で造られた現在の防潮堤は液状化の恐れがあるため撤去し、岩盤に直接固定する形でセメントやコンクリート製の防潮堤を新設する。泊原発は先月、長年の懸案だった敷地内断層問題が規制委に了承され、再稼働に向け前進した。ただ、防潮堤の着工・完成の時期は不透明で、再稼働の日程は見通せない。▲ 北電は東京電力福島第1原発事故を受け、沿岸部の埋め立て地に盛り土をするなどして、海抜16・5メートル、全長1250メートルの防潮堤を2014年12月に完成させた。しかし16年、地震の強い揺れで地盤が液状化し、防潮堤が沈下したり破損したりする可能性があると判明。北電は17年に防潮堤を造り直す方針を規制委に伝えていたが、敷地内断層の審査長期化で、設計概要は示せていなかった。▼ 新防潮堤は全長1200メートル。高さは現在と同じ海抜16・5メートルで、泊原発1~3号機の重要施設を取り囲むように建設する。1200メートルのうち大部分は、セメントと土を混ぜて強度を高めた盛り土を固い岩盤上に設置。残りは、岩盤上に設置したコンクリート製の建造物の上に、鋼鉄製の壁を建てる二重構造にする。▼ 道路として残す一部を除き、既存の防潮堤は岩盤上部からすべて撤去する。着工時期や工費は未定。▼ 北電は審査会合で、設計概要の具体的な内容について9月から説明を始め、来年9月までに終えるとする日程案を規制委に示した。ただ、原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」や、想定される津波の最大値「基準津波」は別途審査が行われている。これらの審査が長引いた場合、防潮堤の詳細設計に入れず、北電の日程通りに審査が進むかは不透明だ。▼ 規制委によると、来年9月までに防潮堤の審査が了承されたとしても、その後も工事計画の認可を受ける必要があり、「現時点で防潮堤の着工時期は全く分からない」(幹部)としている。(佐々木馨斗、長谷川裕紀)(北海道新聞デジタルより)

※※※森論外のコメント
北海道電力(北電)は26日に、「盛り土で造られた現在の防潮堤は液状化の恐れがあるため撤去」し、「岩盤に直接固定する形でセメントやコンクリート製の防潮堤を新設する」ことで津波から原発を守ることを原子力規制委員会で表明した。しかし「泊原発は先月、長年の懸案だった敷地内断層問題が規制委に了承され、再稼働に向け前進した」が、「防潮堤の着工・完成の時期は不透明で、再稼働の日程は見通せない」と報道されています。
◆防潮堤の脆弱(ぜいじゃく)さや、敷地内の断層問題がずっと問題にされ、泊原発は稼働できませんでした。敷地内の断層問題については、断層の専門家の間でも意見が分かれたままですが、原子力規制委員会は断層問題については問題無しにしてしまいました。このことも津波に対する脆弱さに関しても本当に問題がないのかについては「不明」としかいいようがありません。
◆そもそも原発の耐用年数が40年であるにもかかわらず、各地の原発が電力会社の儲けのために、再稼働しようとしています。通常の原発の発電燃料よりもより危険なMOX燃料を使い、耐用年数が迫っているにもかかわらず、再稼働を許可する「原子力規制委員会」の役割というものに「信用」がおけません。第二の福島第一原発事故上の原発事故が生じるのではないかと懸念されます。
泊原発が稼働しなくても北海道の電力は何とか電力の需要を賄ってきました。これからもこのままで電力の需要は賄えると考えます。というのは、多くの電力を使う企業が縮小したり、本州に工場を統合したりして電力需要は減少してきているからです。◆にも関わらず、原発を再稼働させたい理由は、原発を稼働することでお金を余計に加算することができるからです。原発が休眠状態にあっても原発は冷却などの費用を要するので、私たち人民は余計な電力料金を支払わされているのです。
◆しかも、「脱炭素」などというまやかしの錦の御旗で、あたかも原発を稼働させても炭酸ガスが出ないという出まかせの宣伝を発信しているのが、コロナで倒れそうな菅政権なのです。◆原発の燃料である精製したウランを作るために多大のエネルギーを使っています。それはとりもなおさず、炭酸ガスなどを含む温暖化を促進することによって成り立っているのです。温暖化は炭酸ガスの増加だけで生じているのではありません。産業革命以降いろいろなものを生産し始めるころから、とりわけ顕著になってきたのは1900年前後くらいからです。気象上の変化もあり、また生産様式の変化や生活様式の変化など多種多様な変化がもたらしたものであろうと推定されています。山林を伐採したり、畑をつぶして工場を建設したり、草地をつぶして家を建てたり、さらには都市化してコンクリートアスファルトなどの太陽の熱を「備蓄する」資材を使って、道路を作ったり、天をも突くような摩天楼を作る競争をし、「都市化」と同時に「砂漠化」を進めて来たからではないでしょうか?
原発は核のゴミを処分できないくらいに作りだしてきました。その核のごみ=高レベル放射性廃棄物の処分地探しに懸命ですが、「わが町・わが村」に核のゴミを埋めてほしいと希望するのは、「文献調査」すると10~20億円を「あげるよ」という、核のごみ処分に困窮している国家の甘い汁を吸おうとしている北海道寿都町の片岡町長とその取り巻きと神恵内村の高橋村長とその取り巻きだけです。
◆核のゴミとの共生は決してできないものです。新型コロナは今すぐには克服が不完全ですが、何年かの間にワクチン等々で「共生」できる可能性はあります。しかし、プルトニウム半減期は2万3~4千年だと言われています。誰がそれを見届けることができるのでしょうか?
泊原発の再稼働に反対して行きましょう!!寿都町神恵内村の文献調査などにも反対の声を上げていきましょう!!政府は必ずや核のごみの「文献調査」だけにとどまらず、地層調査を開始し、その場に居座ることでしょう。北海道の幌延(ほろのべ)町の地層研究の再々延長はそのことを現実に示している顕著な・典型的な例です。それを教訓化しなければなりません。読者の皆様はどのようにお考えになられますか?
原発再稼働反対!!核のゴミ捨て場の「文献調査」や「核のごみの廃棄」に反対の声をあげて行きませんか!!

[666](投稿)政府・東電、トリチウム汚染水海洋放出へ

f:id:new-corona-kiki:20211008062532j:plain
① 福島原発沖合1キロで処理水放出 東電、海底トンネル新設の方針
08/24 17:59
 福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、東京電力が約1キロの海底トンネルを新設して配管を通し、沖合で放出する方針を固めたことが24日、関係者への取材で分かった。処理水に含まれる放射性物質トリチウムは基準値以下に薄めるが、沖合放出によってさらに薄めて拡散させ、地元が懸念する風評被害を抑制したい考え。▼ 政府は同日、処理水処分の関係閣僚会議を開催。海洋放出で水産物の販売減少や価格下落などの被害が出れば国費で買い取り、漁業者を支援する風評被害対策を取りまとめており、放出への環境整備を進めている。一方で地元や漁業者の反発は根強く、今後の見通しには不確定要素も多い。▼ 海底トンネルは第1原発5号機付近から海底の岩盤をくりぬき、その中に配管を通す。漁業権が設定されていない原発から東約1・5キロ、南北約3・5キロの海域の中心近くで放出する。▼ 東電は処理水を大量の海水で薄め、トリチウム濃度を1リットル当たり1500ベクレル未満にして放出する方針。原発の港湾内の海水は放射性物質を含むため港湾外から取水する。工事が少なくて済む原発敷地内からの放出も検討したが、トリチウムの拡散を重視した。周辺海域でのトリチウム濃度測定の場所や回数も増やす。▼ 計画では、近く原子力規制委員会に審査申請するとともに準備工事に着手。2022年初めに本格的な工事に入り、政府方針に沿って23年春ごろに放出開始するとしている。

②政府、水産物買い取り支援 原発処理水放出の風評対策

08/24 10:57 更新
 東京電力福島第1原発の処理水を巡り、政府は24日、処理水処分に関する関係閣僚会議を首相官邸で開いた。海洋放出に伴い水産物の需要が落ち込み、販売減少や価格下落などの被害が出た場合、緊急避難的な措置として、国費で買い取って漁業者を支援することを盛り込んだ当面の風評被害対策を取りまとめた。弾力的な執行ができる基金の創設を念頭にしており、福島県だけでなく全国の水産物が対象。規模や詳細は今後検討する。▼ 政府は4月、処理水を海水で薄め、2023年春ごろから海への放出処分を始める方針を決定。漁業者を中心に風評被害を懸念する声が根強く、具体的な対策を示すよう求める声が、多く上がっていた。▼ 国内外で国産水産物の需要が急激に落ち込んだ際の措置として、新たな基金などで冷凍可能な水産物を一時的に買い取り保管したり、冷凍できないものは販路拡大を支援したりする。風評対策を徹底しても被害が生じた場合、セーフティーネットとして賠償を機能させるため、東電に具体的な賠償の枠組みを早期に示すよう政府が指導すると明記した。▼ 処理水の安全性に関する国内の消費者や海外の認識を把握し、風評を生じさせない仕組みを構築するため、インターネット調査を実施。効果的な情報発信のあり方を検証する。国際原子力機関IAEA)などと緊密に連携し、国際的な信頼性や透明性の向上も図る。▼ 政府は今後も関係者への意見聴取を重ね、必要な追加対策を検討。海洋放出後を見据えた中長期的な「行動計画」を年内につくる予定だ。(北海道新聞デジタルより)

※※※ 骨川筋衛門のコメント
福島第一原発事故を引き起こした東電が、政府方針にしたがって、沖合1キロで放射性トリチウムを含んだ汚染水を23年ころに放出を開始する予定であることが報道されました。2022年初めに本格的な工事に入るという予定です。海洋にトリチウムを含む放射能汚染水を投棄することには地元の漁協も全漁連も反対です。しかし、政府と東電は強硬姿勢を示しています。このコロナ禍で、「放射能汚染水の海洋投棄が小さく見えること」を期待・熱望しているのが政府および東電(電事連も背後にいます)です。◆この海洋投棄で「風評被害」が起き、水産物が売れなくなったら、水産物の買い取りを政府が指導するとしていますが、そのようなことで放射の汚染問題は解決しないことは明白です。◆放射能が低く、政府や原子力規制委員会が何と言おうと、放射能はその放射線による身体に与える量が低いほど、たとえばそのX(エックス)シーベルトが低ければ低いほど、身体を構成する細胞や内臓器官・血管などに与える影響がより強くなると小出裕章氏は書いています。(注1)◆また、北海道癌センター名誉院長の西尾正道氏は福島の空間線量の測定を自らして、その空間線量の値が低く抑えられていることを書物に書かれています。(注2) ◆つまり、政府や東電や全国の電力会社の見解などは決して信じてはいけないということです。     
◆読者の皆様 コロナ禍のどさくさに紛れて、汚染水の海洋投棄を画策する極めてあくどいやり方に反対の声を大きく上げて行きましょう!!8

★下記の参考文献はじっくり読むと放射能の怖さが良く分かります。政府などがよりどころとする放射能の基準の嘘も良く分かります。

注1)小出裕章 著 「隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ」 創史社 刊 

注2)西尾正道 北海道がんセンター名誉院長 著 「被曝インフォデミック トリチウム内部被曝 ―― ICRPによるエセ科学の拡散」 寿郎社 刊

[665](投稿)寿都、神恵内は「対話」の成功事例という経産省

f:id:new-corona-kiki:20211007051434j:plain

寿都や神恵内の「対話の場」 道外で「成功例」として紹介 経産省など
08/13 05:00
 経済産業省原子力発電環境整備機構(NUMO)は2017年以降、核のごみの地層処分への理解を求める市民向けの説明会を全国で開いている。7月に鹿児島県鹿屋市で開いた説明会では、文献調査を行う後志管内寿都町神恵内村で開く「対話の場」を成功事例として紹介した。同県ではこれまで4自治体で処分場誘致の動きが表面化しており、道内での実績を前面に調査地を増やしたい国の思惑もありそうだ。▼ 「寿都と神恵内の対話の場では賛否に関係なく住民が話し合っている」。鹿屋市の説明会でNUMO職員はこう説明し、「処分場誘致を巡って住民同士が分断しかねない」という参加者の不安を打ち消した。▼ NUMOが寿都町で4月に開いた対話の場の初会合は、調査反対派が「処分場ありきだ」と反発して紛糾し、一部はその後、「国やNUMOの実績になる」と欠席している。NUMOは鹿屋市での説明会で寿都町でのいきさつに触れず、宇田剛理事は説明会後、「時間の制約があり、ポイントだけ説明した」と報道陣に述べた。▼ 鹿児島県は都道府県別で北海道に次ぐ農業生産額を誇るが、過疎が深刻なためか、全国的にも処分場誘致が活発だ。多額の交付金を目当てに05年に笠沙町(現南さつま市)、06年に奄美大島宇検村、07年に南大隅町、そして17年には肝付町で首長らによる誘致の動きが表面化した。▼ いずれも住民の反対で頓挫したが、今年4月の南大隅町長選には誘致派の新人が出馬。大差で敗れたが、この新人を支持した住民が町中心部に処分場PRの事務所を開設するなど誘致の動きはくすぶり続ける。▼ 同県内で説明会が開かれたのは鹿屋市が3カ所目で、他の都道府県と比べて突出して多いわけではなく、NUMOは「調査や処分場受け入れを求めるものではない」と説明する。▼ ただ、肝付町から説明会に参加した野間典文さん(74)は「南大隅町長選があった後に、近隣の鹿屋市で説明会を開いたのは本当に偶然なのか。誘致の可能性を消したくないのではないか」といぶかった。
山田一輝)(北海道新聞デジタルより)

※※※骨川筋衛門のコメント:「経済産業省原子力発電環境整備機構(NUMO)は2017年以降、核のごみの地層処分への理解を求める市民向けの説明会を全国で開いて」います。その理由(わけ)は、原発の「核のごみ」=高レベル放射性廃棄物の廃棄場所が皆無で、国も各電力会社とともに極めて危険な「核のごみ」=「高レベル放射性廃棄物」が増えていく一方であり、現在は原発の敷地内になんとかとどめ置いていますが、もうすぐ「核のごみ」で敷地内も満杯になるため一秒でも早く「高レベル放射性廃棄物」を廃棄する場所を探すために探しのために東奔西走しているのです。◆原発が米国から日本に輸入されてから、原発内で使用された核のごみが溜まり続けていています。当初は、「核燃料サイクル」という名の、原発の使用済み燃料のリサイクルを考えていたのですが、「核燃料サイクル」施設の事故続きで、「核燃料サイクル」は頓挫し、今日では、残った「核のごみ」の捨て場所探しに奔走しているというわけです。◆その「政策」に乗ったのが、北海道の寿都町(すっつちょう:令和3年・人口2830人)であり、神恵内村(かもえないむら)です。文献調査等をするだけで最大20億円というお金が町村に交付されるという話に飛びつきました。神恵内村では周囲の町村にいくらか分けるという行動を見聞して、寿都町も数町村に「少し分けてもいい」といい始めました。8月の20日には寿都町の周囲の町村との「会合」があり、どこが分け前にあずかるかが分かります。必ずしももらいたい町村ばかりではないようです。◆寿都町内では、意見が分かれているようです。漁業産業を主とした過疎の町なので、「風評被害」が怖いと思う漁業関係者が多いと思います。秋の町長選協には核のごみの受け入れ派の現町長に対して核のごみ受け入れ反対の意見を持つ町議が立ちました。◆「経済産業省原子力発電環境整備機構(NUMO)」は、北海道では核のごみの受け入れがうまくいっていると宣伝していると北海道新聞に書かれました。内実は「うまくいっている」わけではありません。「原子力発電環境整備機構(NUMO)」が開催する「対話の場」にはほとんどの町民は出席しないと報道されています。戸別訪問にも応じない家が多いとも書かれていました。◆しかし、高知県知事・橋本大二郎氏が講演し、高知県東洋町で起きた「核のごみ」の導入を巡っての話の場には多くの寿都町民が集まったそうです。東洋町ではどのようにして、またなぜ、核のごみの受け入れに反対したかを住民の方々は高知県知事から直接聞きたかったのだと思います。◆北海道の幌延(ほろのべ)では「幌(ほろのべ)深地層研究センター」があります。すでに最初の借地契約は切れたのですが、延長に延長を重ねて居座っています。「まだ350メートルより深い500メートルまで掘って研究する必要がある」という理由を付けて。まるで、「やくざ」の居直りであり、「庇(ひさし)貸して母屋取られる」という諺(ことわざ)通りになっています。ある学者はもう十分研究したと思うという記事が新聞に載っていました。◆事程左様に、同じ運命が寿都町にも訪れる可能性があります。国家権力の横暴さは皆様も良く分かっていると思います。お金で吊って、後は居座るということも。20億をただ研究のために出すわけがありません。日本学術会議の年間10億円という研究・研究者には欠かせない最低の必要経費お金さえ惜しむ菅政権です。しかし、アベノマスクには大枚のムダ金が流れる政治の世界です。◆コロナに罹患した人の自宅待機を減らすために、仮設でもいいから金をだすとは言わない菅政府ですが、核のごみ=高レベル放射性廃棄物の処分地を探すのには金を惜しみません。そのためには、いかようにも人を金でたぶらかします。騙(だま)します。◆経産省・NUMOが開催する会合で「核のごみ」についての北海道で開催した文献調査や概要調査などに関しての「説明会は成功した」などという「作り話」は信じないでください。◆くれぐれも、お金よりも放射性物質の怖さを研究して、内実を良く知って、鹿児島県の各市町村が、政府の核のごみ捨て場にならないようにしてほしいと思います。北海道で核のごみ捨て場になることを撥ね退けようとしている人たちの方が圧倒的に多いことを知ってください!!また、鹿児島県だけでなく、各県で核のごみ捨て場にされれる可能性のある過疎地と思われる地域は十分注意し、説明会を申し込まれても拒否してください!!

[664](寄稿)オンライン診療で変わる在宅医療の現場

ペンギンドクターより
その2

 今回の転送するMRICの内容は新型コロナの患者さんではありませんが、これから大いに普及させるべきと思われる「オンライン診療」の実例を送ります。

*************************************************

オンライン診療で変わる在宅医療の現場

東京大学医学部
小坂真琴

2021年9月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
················································································
早期のがんと慢性心不全を患っている90代の女性。施設に入所していて、病院まで自力でいくのが難しくなっていたので月に二回の訪問診療を受けていました。
ある晩、1週間以上にわたり痰と息苦しさが続いたため、施設の看護師からクリニックに連絡をしてもらいました。12日前の前回の診察の際には声がかすれていたものの目立った症状がなく、何かあればすぐ連絡をするよう伝えられていました。
クリニックの医師はすぐに向かうことができなかったので、訪問看護師が現場に向かい、医師とのビデオ通話を行いました。立ったり座ったりがスムーズに行えることや明確な肺の雑音がないこと、患者の顔色なども考慮して肺炎の可能性は低いと考えられました。感染症心不全の悪化について精査するために、医師が採血を指示、訪問看護師が採血を行い、検体をクリニックに持ち帰りました。同時に、症状緩和のた
め、一旦漢方薬が処方され、訪問薬剤師が施設まで薬剤を持って行きました。その後、採血の結果から心不全の悪化が明らかとなり、利尿薬が開始され、症状は改善しました。

これは在宅医療における対応でビデオ通話を利用した一例です。
医師が現地に赴けなくても、訪問看護師のサポートによって、採血など原因精査に必要な情報を得られたこと、ビデオを通じて迅速に診療ができたことができました。さらに訪問薬剤師との連携で薬の服用に至るまで施設にいながらにして行うことができました。無事に対処され、次の定期の訪問診療を迎えました。

オンライン診療は職場や自宅から待ち時間なしで診察を受けられるということで、近年徐々に広がっていました。しかし、基本的には対面診察を通じて患者さんについてしっかり把握している状態で行うことが望ましいとされ、コロナ流行下で、2020年4月10日に、ようやく初診でのオンライン診療が特例的に認められました。その点で、定期的に訪問を行っている在宅診療における緊急時の対応は、オンライン診療ととて
も相性の良い環境です。しかし、その有効性や安全性についてはあまり議論されていませんでした。

私たちの研究チームでは、在宅診療での緊急時の往診の代わりとして行われたビデオ通話診療について分析し、英文学術誌「Journal of Medical Internet Research」に発表しました。以下に内容を紹介します。

福井県福井市の在宅診療専門クリニック・オレンジホームケアクリニックでは、2018-19年の2年間で計17件、ビデオ通話で対応した例がありました。全体のうち15件では、訪問看護師または施設看護師が現場に赴ける状況で、ビデオ通話の際に患者さんのそばで必要な対応を行いました。これは厚労省のオンライン診療に関する通知でも紹介されているDoctor to Patient with Nurse(D to P withN)と呼ばれるもので、看護師は患者のもとに赴いた上で、医師とオンラインでつながる診療形態です。訪問看護ステーションは、在宅診療クリニックよりもさらに細かく地域に密着した形で分布しているので、現地に行ける可能性が高くなります。採血などの処置が行えるのも大きな強みですが、患者家族が普段スマホなどを使わずビデオ通話を行うのが困難な場合に、ビデオ通話自体をサポートするのも重要な役割です。

17件を分析したところ、2件は救急搬送が必要だと医師によって判断されて実際に搬送され、そのまま入院となりました。他15件については、医師の指示のもと、新たな薬の処方、注射、手持ちの薬の内服、経過観察などの対応がとられました。そのうち後から救急搬送になったのは1件で、残りの14件は問題なく予定通りに次の訪問診療をむかえました。実際に医師が訪問する場合に比べて、より迅速に状況を判断できる
という点で患者さんにメリットがあり、医師の負担も大きく減らすことができます。

もう一つ事例をご紹介します。
脳性麻痺のために寝たきりとなっている30代の男性です。ある日、左手に赤みがあり、低温やけどのようだと家族からクリニックに連絡がありました。医師が緊急に訪問する必要があるかを確認するため、家族の携帯電話とつないでビデオ通話を行いました。ビデオを通じて赤くなっている部分を視診した上で、家族に話を聞いて、左手が湯たんぽに長時間触れていた後に赤くなったこと、赤みだけがあり痛みがないこと
を確認しました。そこで、元々胃ろう周囲の炎症に対応するために処方されていたステロイドで対応し、症状が悪化した場合には改めて連絡するように伝えました。

この事例では、家族がビデオ通話を行う環境を持っていたため、看護師の訪問を待つことなく直接医師の遠隔診療を受けることができ、さらに自宅の薬で対応できる症状だったため、誰も移動することなく迅速に症状に対応できたということです。

以上のようにメリットが多くある在宅医療におけるオンライン診療ですが、対面の診療に比べるともちろん劣る点もあります。実際にオンライン診療にあたった宮武医師は、「医師の五感を必要とする身体所見はどうしても制限される他、オンライン診療では視野の外になってしまいがちな家族の様子を含めた『臨場感』が大事だと感じます。やはり話に納得いただいているか、言葉だけではわからない部分もあります」と話します。オンラインで一旦は対応したとしても、必要性があればできるだけ早く直接対面の診察に赴くことを判断することが大事です。

すでに在宅診療を受けている方、これから受ける可能性がある場合には、通信機器をしっかり使えるようにすることによって受けられる在宅医療の質が上がる可能性もあります。一方で、メインで医療を受ける70歳代以上では、2017年時点でインターネット使用率が未だ50%以下の状態であり、しばらくは看護師がサポートするD to P withNが主流になりそうです。今回研究の対象とした例では全てiPhoneのアプリ「FaceTime」で通話を行いましたが、将来的なことを考えると何か一つ使いこなせる状態にしておくことが大事になるかもしれません。

················································································
ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご
覧いただけますのでご確認ください。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

◆◇お知らせ◆◇◆◇◆◇
MRICの英語版として、MRIC Globalを立ち上げました。
MRICと同様に、医療を超えて、世界の様々な問題を取り上げて参りたいと思います。
配信をご希望の方は、以下のリンクからメールアドレスをご登録ください。
https://www.mricg.info/

◆ご投稿をお待ちしています◆◇◆◇◆◇
投稿規定はこちらから
http://expres.umin.jp/mric/mric_kitei_2020.pdf

·················································································
今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけました
ら幸いです。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

***************************************************************************


※メールアドレス変更・メルマガ解除は以下よりお手続きをお願いいたします。
http://medg.jp/support/mailinfo.php?id=s1diR9vrPt1iJTGH

MRIC by 医療ガバナンス学会

f:id:new-corona-kiki:20211006052050j:plain