[1597]2年前の記事

はてなブログさんから送ってもらった2年前の記事です。

2年前の記事

2022/04/23

[864](寄稿)日常 - ◼新型コロナ危機のなかで

ペンギンドクターより その2 さて本日の転送するMRICの意見は、かなりレベルの低い医師の発言です。媒体の幻冬舎ゴールドラインのレベルの問題かも…
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2022/04/24

[865](寄稿)医療あれこれ(その66) - ◼新型コロナ危機のなかで

ペンギンドクターより その3ここで「膵がん」についてです。 膵がんが最も予後不良のがんであることはご存知でしょう。10年生存率は約5%です。つま…
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2022/04/25

[866]“無効とされた解雇の金銭解決制度” 厚労省 検討会が報告書まとめる - ◼新型コロナ危機のなかで

厚生労働省は2021年11月、新型コロナウイルス感染拡大の影響で解雇や雇い止めにあった労働者が、2020年2月からの累計で12万99人(9日時点、見込みを…
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[1596]1年前の記事 岸田首相和歌山漁港事件

 

 岸田首相襲撃事件から1年が経ちました。ABCテレビが事件のその後を報道しています。

 

 去年4月15日午前11時半ごろ、和歌山市の漁港に選挙の応援に訪れていた岸田総理に向けて爆発物が投げ込まれ爆発し、聴衆の男性ら2人がけがをしました。

 この事件では去年9月、兵庫県川西市の無職・木村隆二被告(25)が殺人未遂や爆発物取締罰則違反など5つの罪で起訴されています。

 木村被告は逮捕時に黙秘を続けていて動機については明らかにされていません。検察は裁判に向けて準備を進めています。  事件から1年のタイミングで、数年前から別居をしている木村被告の父親がABCテレビの取材に応じました。

 

【岸田総理襲撃事件から1年】「親としては・・・ちょっと考えることはある」 木村隆二被告が黙秘を続ける中、被告の父がABCテレビの取材に応じる。

 

Q.事件から1年経ちますが?

「そうやな、あれから1年経ったな」

Q.率直な思いは? 「何もないよ。1年経とうが2年経とうが関係ない」

Q.木村被告は黙秘しているということですが?

「それは警察に聞いてほしい」

Q.殺人未遂など5つの罪で起訴されたことについてはどう思われますか? 「それでええんちゃう。日本は法治国家。法に従ったらそうなったということで」 「親としては…ちょっと考えることはある」

Q.木村被告の行為は一線を越えていた? 「越えまくっているでしょ」 「ただ、同じ殺人未遂でも半殺しにするようなものと、隆二のしたことを一緒にしてくれるなとは警察に言った。一緒にしてくれるなといっただけで、だからどうのこうのとは言ってない」 「警察がけがしたとか、壁に穴が開いたとか、客観的に一個ずつ見てみて。どうでもいい話。おれが隆二の親じゃなかったらそう思っている。ただ隆二がやったことだから。それは親としては…ちょっと考えることはある」

木村被告のものとみられるSNSには被選挙権についての批判が書かれていたが・・・

Q.事件を起こす兆候は? 「知らない。何年も会っていないので」 「もう裁判はするんやから、それでええがな」

Q.真実を話してほしいというような思いは?

「そんなもん、二十歳まわっとるんやから、語るも語らないも本人次第」 「知らんがなと言ったら無責任やけど、えらいことしたなというぐらいのこと」

ABCニュースのインタビューは以上

 いまだ黙秘を貫いている木村氏。なんのために行動したのか裁判で語ることをよく聞かなければなりません。

1年前、人権派•宇都宮弁護士が依頼を断わりました。私は宇都宮弁護士の対応を批判しました。

[1227]木村氏の弁護を依頼された人権派弁護士の対応

――今後、弁護を引き受ける考えはある?

文春からこう問われた宇都宮氏は答えました。

「正直、難しいと思います。全国からこうした連絡を頂くことがあるのですが、私は東京だし、かなり多忙です。対応が難しいので、できるだけ地元の弁護士会を利用してほしいとお断りしているのが現状です。(木村容疑者の)動機がまったく分かりませんしね。もちろん面識はありません」

 宇都宮弁護士はここですでに嫌がっています。

 21日には記者会見を行いました。

テレビ朝日は次のように伝えています。

 岸田文雄総理大臣に向かって爆発物を投げたとして、逮捕された木村隆二容疑者(24)。  

 日本弁護士連合会の元会長・宇都宮健児弁護士によりますと、事件が起きた15日、和歌山西警察署から事務所に電話があり、木村容疑者が弁護を依頼しているという内容の留守番電話が残されていたということです。  

 その後、容疑者には別の弁護士が就き、依頼は取り下げられました。  

 木村容疑者は逮捕後、取り調べに「すべて弁護士が来てからお話します」と話し、その後は黙秘を続けています。  

宇都宮弁護士は…。  

宇都宮弁護士:「選挙制度に不満があるなら、市民運動などで実現すべきで、暴力で訴えることはあってはならない」   

 木村容疑者は、選挙の供託金制度などが憲法違反だとして起こした訴訟で、宇都宮弁護士が以前、弁護団長を務めた同様の訴訟の資料を証拠として提出しています。

以上引用。

 私は宇都宮氏の対応に、この程度のことしか言えない人かと思いました。供託金問題が事件の動機となったのかどうかわかりませんが、宇都宮弁護士の闘いの資料を自身の供託金裁判に援用して訴訟中の容疑者に、暴力で訴えてはならないと「正解」を言っています。

 木村氏の動機は今もわかりませんが、暴力はいけないことはわかっていたのではないでしょうか。すき好んでやった行動でもないでしょう。刑事事件の容疑で逮捕された人の話を聞いて弁護をするのが弁護士の仕事です。宇都宮氏は検事ではないのです。「市民運動家」としての宇都宮氏が木村氏の行動を批判すること自体を間違っているとは思いませんが、「人権派」と言われる弁護士としての宇都宮氏のこの対応は間違っていると思います。自己保身したと言われても仕方ないでしょう。

 「忙しいから断った」ことにしておけばまだましのような気がするのですが······。

 物言えば唇寒し春うらら、と言いたくなる世相

 

以上1年前の記事。

[1595]1年前の記事 岸田首相メーデー参加

 支持率を少し上げたものの低空飛行をつづけている岸田首相。しかし先日の日米会談で、バイデンに日米会談は世界の「かがり火だ」と言われ、得意満面です。

 今年もメーデーに来るでしょう。昨年を振り返ります。

 

[1596]1年前の記事 岸田首相メーデー参加

 新しい戦前の旗振り役がメーデー会場の檀上から労働者に何を語るのでしょう。

共同通信は次のように伝えています。

 

首相、連合メーデー出席へ 9年ぶり、労組と連携強化

共同通信 

 岸田文雄首相は、29日に東京都内で開かれる連合のメーデー中央大会に出席する方向で調整に入った。政府関係者が22日、明らかにした。首相が参加するのは2014年当時の安倍晋三氏以来、9年ぶり。自民党は今年の運動方針に連合との連携強化を掲げており、選挙で組織票を持つ連合傘下の民間産業別労働組合の取り込みを図る狙いがある。(共同通信)

共同通信の分析は間違いではないと思います。連合指導部もわかっているでしょう。 

 このときに招待するのは、労働組合員を戦争できる国づくりへの協力要請に無防備に投げ出すに等しいです。

 翼賛化した野党=国民民主党を政治的代表として担ぐ大産別組合の幹部が動いたのでしょう。芳野会長は大得意になっていると思います。労働運動は9年前を超える危機の中にあります。憲法改悪問題、ウクライナ戦争加担問題、中国相手の危険な軍事的包囲網づくりの問題。物価問題、そして物価の値上がりと実質賃金の低下に追いつかないわずかな賃上げ、あらゆることで岸田政権と対決しなければならない時なのです。

 連合指導部が岸田首相に抗議するために招待したというならわかりますが。

以上2023年メーデーについて

 岸田首相は今年4月、バイデンと会い共同声明で日米同盟を強化することを明らかにしました。日本の自衛隊も対米防衛義務を担うというように「片務」から「双務」へと安保第5条の解釈を変えました。メーデーでも何か言うでしょう。

 

[1594]1年前の記事

 ロシアの侵略を起点としてはじまったウクライナとロシアの国家間戦争はNATO諸国の介入で泥沼化し、2024年4月現在アメリカの援助再開決定によってさらに長期化するかもしれません。

 1年前の記事で当時を振り返ります。1年前、ポーランドウクライナ産農産物への免税措置が国内の農民の貧窮を招きました。

[1226]ポーランドが農産物禁輸

 

 これまで避難民を受け入れるなどウクライナ支援の先頭に立っていたポーランドウクライナからの農産物輸入を禁止しました。

朝日新聞を引用します。

ウクライナ情勢 ポーランドハンガリーウクライナ農産物を禁輸 自国農業を保護

ブリュッセル=玉川透

2023/4/17 8:04 

中欧ポーランドハンガリーは15日、穀物などウクライナ産農産物の輸入を一時的に禁止すると発表した。ロシアによる侵攻後に大量流入した安価なウクライナ産農産物から、国内農業を保護する目的という。AP通信などが伝えた。 

 ウクライナ産の農産物は、ロシアの軍事侵攻の影響でアフリカや中東への黒海経由での輸出が困難になっている。欧州連合EU)は支援策として関税を免除して輸出を促進しようとしたが、安価なウクライナ産の多くが中東欧の国々にとどまって農産物の価格を押し下げ、地元農家に損害を与えているという。

 こうしたEUの対応にポーランドなどは不満を強めており、ブルガリアも禁輸を検討しているという。 EUの報道官は16日、ポーランドなどの措置について、「通商政策はEUの独占的な権限であり、加盟国の一方的な措置は受け入れられない」と述べた。 また、ウクライナの農業政策・食料省は声明で、「ポーランドの農家が苦境にあることは理解しているが、現状ではウクライナの農家が最も難しい局面にあることも強調したい」と懸念を表明した。(ブリュッセル=玉川透)

 ポーランド政府はロシアとの戦争に応じたゼレンスキー政権のもとで苦しむウクライナの農民を救うために関税を免除しました。

 ウクライナからの農産物が低価格で輸入されればポーランド産の農産物の価格が下落するのは必然的です。ポーランド農民が貧窮したのです。

 もっと困っているのはウクライナだ、という「反論」はポーランドの農民の闘いの火に油を注ぐようなものです。ポーランド政府は自国農民に犠牲を強いる形でウクライナ戦争への加担を続けてきたことが農民の闘いによって明るみに出されました。

 ハンガリーも同様です。ロシアもウクライナも政府支配階級の利害のために労働者農民に犠牲を強いています。

 下からの力で戦争を止めなければならないと思います。

2023年4月17日

以上、1年前の世界の一断面です。2024年4月、ウクライナ戦争はなお続いています。アメリカは9兆円以上のウクライナへの軍事援助を決定しました。ロシア(•中国)ーウクライナNATO諸国家はウクライナ戦争を自陣営を有利に終わらせるための駆引きの手段として戦闘を利用しています。

 

 

[1593]労基法改正案、40年に一度

 労働基準法が大きく変えられようとしています。23日に厚労省で「労働基準関係法制研究会」が開かれました。研究会は経済学者や産業医ら計10名で今年1月にスタートし、この日が6回目となりました。研究会では、働き方改革関連法に盛り込まれた施行5年後の労働時間規制など見直しが議論されています。

 朝日新聞デジタルが伝えています。

労基法「40年に1度」の大改正? 働き方が多様化、進む見直し議論

4/24(水) 9:00配信

「労働基準関係法制研究会」には多くの傍聴者も集まった=2024年4月23日、東京・霞が関厚生労働省

 時間外労働の上限規制が導入された働き方改革関連法の施行から、4月で5年が経った。厚生労働省では、働き方の多様化に対応するため、労働基準法などのより抜本的な見直しも視野に入れた議論が進んでいる。「40年に1度」(同省幹部)とも言われる大改正につながるのか、関心が高まっている。

 「今後の議論を通じ、政策の進むべき方向性を打ち出すことができればと考えている」

 23日に厚労省で開かれた「労働基準関係法制研究会」で、座長の荒木尚志・東大大学院教授(労働法)はこう語った。

 研究会は、経済学者や産業医ら計10人のメンバーで今年1月にスタートした。検討事項の議論は一巡し、この日が6回目となった。働き方改革関連法に盛り込まれた施行5年後の見直しを検討する役割を担い、労働時間規制などを改めて議論。さらに、フリーランスら多様化する働き手の健康管理のあり方や、労働条件を決める労使のルール作りなどを幅広く話し合っている。

以上

 経団連は今年1月、高度プロフェッショナル法の対象業務の拡大を提言しました。研究会はこの提言をも受けて裁量労働制の適用範囲なども含めて今後検討していくことになると思われます。

 2020年に新設された高度プロフェッショナル制度は、指定された対象業務(金融商品の開発、ディーリング、アナリスト、コンサルタントなど)で健康管理時間の把握措置条項を設け、原則として労働時間規制の適用が除外することができることとされています。導入に際しては労使委員会の5分の4の賛成が必要とされています。

 労基法の改悪の動きにたいして労働組合の存在意義が問われています。

 組合の仲間は団結しなければなりません。

[1592]軍事費が増加

軍事費が上がり続けています。

 国家間の利害対立が深くなっていることを意味していると同時に、経済の軍事化が進んでいるということです。

 ウクライナは米国などから軍事援助を受けており、援助を合わせるとロシアの軍事費の約91%に達したそうです。ウクライナはやはり東西対立の白熱点となっているのです。各国の軍事産業は武器を生産し、ウクライナとロシアの労働者階級は戦場で武器を消費させられています。そして消費した武器を補填するために死の商人が武器をつくり売って儲けるという悪循環。

 武器の生産と消費の悪循環は資本家階級の政府によっては断ち切れません。

朝日新聞デジタルから引用します。

世界の軍事費約378兆円、過去最高に

ウクライナは前年比51%増 4/22(月) 20:33配信

 スウェーデンストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は22日、2023年の世界の軍事費(一部推計)が前年比で実質6.8%増加し、総額2兆4430億ドル(約378兆円)だったと発表した。世界の軍事費は9年連続で増加し、統計を取り始めた1988年以降で過去最高となった。

 報告書によると、上位は米国、中国、ロシア、インド、サウジアラビアで、5カ国の合計が世界全体の61%を占めた。上位10カ国はいずれも前年から増加しているという。 欧州、アジア・オセアニア、中東で特に大幅な増加があったとし、ウクライナは前年比51%増の648億ドルで前年の11位から8位となった。

■「中国の脅威により日本も大幅強化」と分析

 ウクライナ単独の軍事費はロシアの軍事費(1090億ドル)の59%だったが、米国を中心に少なくとも350億ドルの軍事援助を受けており、これを合わせるとロシアの軍事費の約91%に達した。

 イスラエルは、2023年10月のイスラム組織ハマスの奇襲に端を発したパレスチナ自治区ガザへの大規模な攻撃が主に支出を促し、24%増の275億ドル。

 日本は11%増の502億ドルで前年の9位から10位となった。報告書は台湾でも11%増えたことなどに触れ、「中国の脅威によって日本や台湾は軍事力を大幅に強化し、この傾向は今後数年でさらに加速するだろう」と指摘した。 SIPRIは「前例のない軍事費の増加は平和と安全保障環境の悪化を反映している」と分析した。

以上

 「前例のない軍事費の増加は平和と安全保障環境の悪化を反映している」のは間違いないが、他人事のように言っている場合じゃない、メディアは警鐘を強く鳴らさなければならない時だと思います。日本政府も武器生産と輸出の規制を緩和し急速に軍事大国化しています。

[1591]哲学や思想は、このどうしようもない現実を変えることができるのか――。斎藤幸平×高橋哲哉でおくる「危機の時代と人文学」−2

 対談で、なんのために哲学するのか、ということを二人は問いかけています。

高橋 三年前に國分さんと対話したときに聞かれたんです。自分も高橋さんもフランス現代思想を読んできましたが、原発についてフランス現代思想は何と語ったでしょう。何もないじゃないですか、と。フランスという原発大国にあって、フーコーデリダドゥルーズ、その他綺羅星のごときフランス現代思想家たちが批判をしていたか。斎藤さんはご存知ですか?

斎藤 していないんじゃないでしょうか。

高橋 そうですね。そうすると、哲学思想って何なんだろうと。だから、我々が学ぶような哲学者、思想家といった重要な存在は、いろんなヒントを与えてはくれるんだけれども、それを絶対化することはできないし、そこに必ず答えがあるとも限らない。現代はグローバルな世界なわけですから、本当の意味でのダイバーシティアーレント的に言うと多様性複数性ですが、市民社会の中からいろんな動きが出てきて、それが思想化されていく形ももっと重視する必要がある。大学で学ぶ古典、現代の古典も含めた代表的な哲学者、思想家の議論だけにとらわれる必要はないと思うんよ。そこに欠けているものも当然ある。

斎藤 それで言うと、最近ちくま新書から出た『現代フランス哲学』という本があって、その中で私がいいなと思ったのが、カストリアディスという哲学者にスペースが割かれていたんですね。実はカストリアディスという人は、まさに原発のような問題についても盛んに議論をしていて、脱成長というようなことも書いている。フランスの伝統をさかのぼると、今の日本ではほとんど読まれませんが、例えばアンドレ・ゴルツやフランソワーズ・ドボンヌといった思想家たちもいます。しかし彼らは90年代になると忘れられていった。でも彼らを今こそ読み返すべきだと思います。私も「どうして今更マルクスを読んでるんだ」とよく言われるんですが、マルクスの思想も1つではないわけです。マルクス自身も考えが変わっていくし、マルクスが言っている内容をどう広げていくか、どこに着目するかというのは、読み手によって全然違う。 

 それこそ廣松渉さんの時代なんかは、スターリン主義批判として出てきた科学主義、社会的科学主義、科学的社会主義があって、それに対してヒューマニストの人たちが批判していた。しかし、廣松さんたちはそれでも駄目だ、疎外論では駄目で物象化論なんだという論を展開していた。

 そんなふうに、人によって時代によって、政治的な関心によって読み方はどんどん変わっていくわけです。私がやったように、資本主義が唯一となった時代にもう一回そうではない社会を描こうとしたときに、気候変動が一つの軸になるのではないか思ってマルクスの今まで読まれてこなかったノートに焦点を当てると、また違う思想が蘇ってくる。                  

 私自身も、思想を勉強すれば何か社会が自動的に変わっていくのかと言えば、現実を見たらそうは言えないと思います。戦争やジェノサイドというべきものが現在進行形で起きていて、人を殺すなとか、地球環境を守ろうとか当たり前の話すら成り立たない世界で、哲学者たちがどれだけ有意義なことを言えるのかを考えると、私たちは単に論文を書いてさえいればいいとは到底思えない。どういう発言をするのか、どういう思想を使ってどういう未来を描いていくのか、どういう現実を批判していくのかというのが本当に大事だと思います。

 それは容易ではないと感じる一方で、環境保護の問題や高橋さんが取り組んでこられた戦後責任の問題などに対して、それらは単に個人の問題ではなくて社会的な問題なんだ、政治的な問題なんだと展開していくには、私はやはり思想や哲学なしにそういったことはできないんじゃないかと思いますし、そこに責務も感じています。

高橋 じつに頼もしいですね。

以上

 私も斎藤は頼もしいと思います。しかし次のような意見に斎藤の越えなければならない壁が露顕していると思います。

「人によって時代によって、政治的な関心によって読み方はどんどん変わっていくわけです。私がやったように、資本主義が唯一となった時代にもう一回そうではない社会を描こうとしたときに、気候変動が一つの軸になるのではないか思ってマルクスの今まで読まれてこなかったノートに焦点を当てると、また違う思想が蘇ってくる。」

 マルクス思想にたいして哲学的に、経済学的に、あるいは革命論的になどアプローチの視角を変えて読むことは必要です。しかしマルクスの既成の「読み方」を批判的に吟味する必要がありはしないか。

 マルクス思想の本質を、読み方の違いによって歪めてはいけないと思います。

 マルクス主義の把握の仕方は確かに人によって時代によって、政治的な関心によって変わっていきました。スターリン主義の破綻はロシア革命が世界的に孤立したという時代背景の中で、スターリン的読み方によってマルクス世界革命論を一国革命主義的に歪めたことに淵源しているのです。スターリンは政策的にではなくマルクスの理論•哲学の本質を壊しました。