ペンギンドクターより
皆様
立て続けですが、送信します。転送する和田眞紀夫医師の内容は1がやや煩雑ですので、2の「今すぐにでも改善すべき問題点」をお読みいただければいいと思います。今朝の朝日新聞3面に「コロナ飲み薬行き届かぬ恐れ」という見出しでメルクの内服薬服用の問題点が出ていました。前回送信した和田眞紀夫医師の意見が的を射ていることがわかります。
また前回私が酷評した「専門家会議」の提言は、以下のように変わりました。
「若者は検査せず症状のみで診断する」については、医療者(つまり現場の医師)からの強い疑問が出たことから、
●「若年層で重症化リスクの低い人については必ずしも医療機関を受診せず自宅での療養を可能にすることもあり得る」と修正となりまた。これなら、反論は出ないでしょう。
しかし誠実な専門家であれば、「我々専門家も含めた医療行政の当事者の怠慢により、十分なコロナ検査体制が構築できていませんので、限られた検査数のみしかできない現状では、高齢者及び持病等で重症化しうる方々を優先的に検査するために、若い人びとは申し訳ありませんが、軽い風邪症状の方は、自宅待機していただき、医療機関受診を控えていただきたいと思います」・・・・・・と述べればいいと思います。
医療者からの不満の理由は明らかです。風邪症状できた若い人にコロナ検査(PCR検査や抗原検査)が出来ないとすれば、通常の風邪として処方するしかないのですから、当然若者は不満を持ちます。また風邪として帰宅させた中にコロナが紛れていれば、いくら軽症が殆んどといっても、急変があり得ます。その責任が診察した医師に問われます。また高齢者の多い外来で、感染した若者が来てなおかつ検査できないとなれば感染拡大をもたらしますし、そのクリニックは一時的閉鎖となり得るでしょう。何を無責任なことを「専門家」は言うか・・・・・と怒ったのではないでしょうか。私がその一人です。
また全国知事会から苦言を呈された、「人流抑制ではなく、会合などの人数制限にシフトする」という提言も次のように変更されました。不要不急の外出を控えるよう呼び掛けている自治体があるからです。
●「かつて実施した一律かつ広範な”人流抑制”という方法もあるが、感染対策を社会経済活動との両立が求められる現時点では、感染リスクの高い場面‐場所に焦点を絞った接触機会の確実な低減のため”人数抑制”が適していると考えられる。」
と変更になりました。反論はしにくい提言です。
正直なところを言えば、私が医療従事者でなく50歳未満であれば、あるいは医師であっても50歳未満であれば、感染しても無症状か軽症というのがオミクロン株だから、ワクチンも一応やったし、どんどん感染して「集団免疫」をつけるぐらいの気持で行動してもいいと考える可能性はあります。
実際、2009年の新型インフルエンザの流行の初期に私は「早く感染して免疫をつけたい」と広言していました。新型インフルエンザと言っても毎年流行していたインフルエンザと大きな違いはないと考えられたからですし、タミフルなどの薬があったからです。今回のCOVID‐19とは違います。
ただ、私は今のオミクロン株の蔓延で新型コロナ感染症(COVID‐19)のピークは過ぎていく可能性があると密かに思っています。希望的観測で根拠はありません。というのは歴史的にみてあのスペイン風邪(当時はワクチンなどなかった)も確か3年で終息に向かったと記憶しているからです。磯田道史さんの『感染症の日本史』を見ればいいのですが、どこに置いたかすぐに見つかりません。繰返しですが、希望的観測で、3年経てばもういいだろうという期待に過ぎません。
今回、維新の会の松井大阪市長(名字を思い出しました)が、「新型コロナウイルス感染症を2類相当から5類感染症に」と提案しました。私は政治家としてこの急増の時点での格下げの提案に反対と述べました。今もその考えに変わりはありません。しかし実質的に新型コロナウイルスの扱いは、2類扱いから離れています。ここで感染症法の一部をおさらいします。私自身もネットで先ほど確認しました。
●2類:急性灰白髄炎・結核・ジフテリア・SARS・MERS・鳥インフルエンザ(H5N1)
(H7N9)
●5類:アメーバ赤痢・ウイルス性肝炎・エイズ・破傷風・百日咳・風疹・麻
疹・・・・・他多数
2類は患者・疑似症・無症状病原体保有者のすべてを直ちに届ける必要があります。
5類の一部は患者のみ全数を7日以内に届ける必要があります。また5類の一部は定点(指定された病医院で見つかった患者)把握のみで全数を届ける必要がない場合があります。インフルエンザや淋菌感染、川崎病、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などがそれに当たるようです。
また2類は入院(都道府県知事が認める時)です。5類は発生動向調査のみです。また都道府県知事は2類では感染したおそれのある者に対する健康状態報告要請、外出自粛要請等が可能です。
法律的には別に新型インフルエンザの流行時(2009年)に制定された法律があり、それは2類感染症にほぼ同等です。
以上、松井市長の提案は、経済を回すためにも、諸外国の状況をみても、猛烈な感染者数だし、無症状か軽症だし、5類にしていいだろうと考えたと思います。この考えは、「専門家会議」の提言の背景にもあると言えます。
医療者ネットワークm3のアンケートでは、50%を超える医師がCOVID‐19を2類から5類感染症にすべきだとの意見でした。母数がネットに慣れた若い医師が多いはずでちょっと偏っているかもしれませんが、いちいち届けるのが面倒という意味もあるかもしれません。そういうデータが大分前からあります。私は74歳ですから、感染すれば重症化する方に入るので、そこまでは言い切れません。悩ましいところです。
きょうはこのへんで。
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東京都から発表された1日のコロナ感染者数に無料PCR検査の結果は含まれていない?
わだ内科クリニック
和田眞紀夫
2022年1月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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1.東京都から発表された1日のコロナ感染者数、報道各社が発表する数字は正確で
はない
例えば今日(1月16日)に報道各社が実際に報じたいくつかの例をみてみよう(配信順)。
「【速報】東京の新たな感染者4172人」(ニッポン放送、1/16(日) 16:46配信)東京都は今日1月16日、新型コロナウイルスの感染者が新たに4172人確認されたと明らかにした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/89757b90adec3229803e6b7d7f469919d455c247
「<新型コロナ・16日>東京都で新たに4172人が感染 病床使用率は19.3%」(東京新聞、1月16日 16時46分)東京都は16日、新型コロナウイルスの新たな感染者4172人を
確認したと発表した。・・
https://www.tokyo-np.co.jp/article/154564
「東京で新たに4172人感染」(共同通信、1/16(日) 16:55配信 )東京都は16日、新型コロナの感染者が新たに4172人報告されたと発表した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/baa0a8bb4e4fb6134cee4d7308179d465b94a5f2
「東京都 新型コロナ 4172人感染確認 先週日曜日の3倍以上」(NHK、1月16日 20時52分)東京都内の16日の感染確認は4172人で、3日続けて4000人を超えていて、感染拡大が続いています。・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220116/k10013433711000.html
共通して言えることは、表題では「新たに何人感染」、文中では「新たに何人確認(報告)」などと表記していることである。これらの報道のもとになる東京都の発表は以下の通りだ。
「東京都 新型コロナウイルス感染症検査の陽性率・検査人数」
https://catalog.data.metro.tokyo.lg.jp/dataset/t000010d0000000088
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/
→「新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(第2803報)」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/hodo/saishin/corona2803.html
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/hodo/saishin/corona2803.files/280
3.pdf
→「(情報提供)新型コロナウイルスに関連した患者の発生について【追加情報】」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/hodo/saishin/corona2803.files/280
3-2.pdf
第2803報を見ると、「2患者の発生状況」のところに総数4172と記され、性別や年齢別の内訳などが書かれているが、この総数というのが何の総数を意味するのかはここではわからない。ところがその次の追加情報を見てみると、同じ「2患者の発生状況」の総数4172と記されているところに※1として但し書きが添えられていて、「患者発生の総数は、医療機関等から保健所に発生届が提出され、保健所において確認が済んでいる事案を集計している。」と明記されているのである。
すなわち東京都が総数として発表し、報道各社が「確認された感染者数」として発表している数字は「医療機関等から保健所に発生届が提出された分」のみということがわかる。この医療機関等というのがまた何を意味しているのかが不透明なのだが、「都内の最新感染動向」というサイトのモニタリング項目(4)の注釈には「2020年5月7日以降は(1)東京都健康安全研究センター(2)PCRセンター(地域外来・検査センター)、(3)医療機関での保険適用検査実績により算出。 」と書かれており、これらの3つが「医療機関等」に相当するとすると思われ、つまり「行政検査として実施されたコロナ検査(PCRと抗原検査を含む)」のことだろうと推察される。
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/monitoring
ところが東京都は実はこの「行政検査」とは別にいくつもの形でコロナ検査を実施しているのである。ここでもう一度、先ほどご紹介した「新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(第2803報)」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/hodo/saishin/corona2803.files/280
3.pdf
を見てみよう。「2患者の発生状況」の項目の下の方に。「参考 検査件数」という欄があり、そこには「行政検査」の他に「都の独自検査件数」、「PCR等検査無料化事業検査件数」というのがあることがわかる。「都の独自検査」というのはこの表からもわかるようにスクリーニング検査として実施している高齢者施設、障害者施設等、医療機関での検査と、モニターリング検査として実施している繁華街、事業所、飲食店、駅、空港などにおける検査であり、この「PCR等検査無料化事業検査件数」こそが、最近岸田総理の肝いりで始めた無料PCRのことである。
となると、これら「行政検査」以外で実施されたコロナ検査の陽性者は、東京都が毎日発表する総数にはカウントされていないことになり、正確には報道各社が報じている1日のコロナ感染者数は総数とは言えないし、「確認されたと発表された」と曖昧に表現していてきちんと現状を伝えているとは言い難い。これら「行政検査」以外を加えて報告すると陽性率にバイアスがかかるということを懸念するならば、そもそも4172件中1297件が濃厚接触者の検査で陽性が判明した(追加情報参照)のであり、モニタリング会議が注目して経過を追っている陽性率も実態をあらわしているものではない。
2.今すぐにでも改善すべき問題点
無料PCR検査で陽性となった方には、「再度医療機関を受診して原則としてもう一度コロナ検査を受けるように指示されている」らしいのだが、厚労省の思惑通りに全員が指示通りに医療機関を受診して検査を受けて下さるとは限らないし、したがって結局は医療機関を通して行政検査での陽性者として報告されるだろうという思惑通りにはいかないだろう。
この検査の流れはほかにもいくつもの大きな問題を含んでいる。PCRというのは通常翌日以降にならないと結果が出ないところにこれを2回繰り返すとなったら、最終的に診断が確定するまでに最短でも4日を費やしてしまう。重症化リスクのある方には5日以内に経口コロナ治療薬を開始しなければならないのに、このようなスケジュールは大きく治療のタイミングを遅らせてしまう。公費を投入して実施している民間無料PCRであるならばその結果を公式に認めるべきだし、公費をさらに使って不必要な再検査を受けさせるほど無駄なことはない。医療機関はただでさえ忙しいところへさらに余計な負担をかけるばかりでなく、感染者であることが明らかな人をさらに出歩かせて病院に来させるというのもあり得ない指示だ。
PCRにせよ抗原検査にせよ、今は精度管理などの細かいことにこだわるようなのんびりした状況ではないし、どうしても精度管理にこだわるならすぐにでもすべての検査キットのチェックを進めてどんどんお墨付きを与えていけばいい。今、必要なことは「早く広くコロナの検査を実施すること」であって、1日でも早く確定診断にこぎつけて、コロナ陽性者に対しては迅速な自主隔離・自宅療養をお願いし、治療が必要な人に対してはいち早く医療の恩恵を受けられるように環境を整えることである。諸外国のように市販の迅速コロナ検査などもどんどん活用していくべきだし、無駄なお役所縛りの政策から早く脱却することを祈るばかりだ。
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今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。
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