[1295](寄稿)医療あれこれ(その87)ー3 患者から見た「信頼できる医師」

ペンギンドクターより
その3
 転送する黒田氏の主張は「よくある、よくあるというケース」でしょう。ChatGPTの方がよほど役に立ちそうです。これからAIが日常の医療にも取り入れられのは必至ですから、医師国家試験を通って医師になった人びと、要するに医療にたずさわる人びとは、患者さんといい関係を作る能力がなければ、生き残れないでしょう。以下の文中に登場するX医師とZ医師は現在でもあまり有能な医師とは思えませんが。
 一冊本を紹介します。
 ●佐藤優・片岡浩史『教養としての「病」』(集英社・インターナショナル新書、2023年6月12日第1刷発行)です。佐藤優については省略します。片岡浩史は腎臓内科医(東京女子医大)。1970年NY生まれ。京都洛星高校を卒業後、京大法学部に入学。卒業後はJR西日本で働くが、その現場経験を通じて、医療に携わりたいと思い、退社。鹿児島大学で学ぶ。腎臓内科医として日々患者と向き合う一方で、腎臓病研究者として医学の進展を、社会保険診療報酬請求書審査委員や診療ガイドライン作成委員として日本の「医療の質」の向上を追求・模索している。医学博士。裏表紙のコピーを記しますと、
 
 はじめに――病と私(佐藤優
 第一章 医師と患者の「共同体」をどう作るか
 第二章 「生き方の基礎」を見つけた場所
 第三章 今の「医学部ブーム」が危ない理由
 病と戦う――「異質なもの」との対峙(片岡浩史)
 第四章 新自由主義が日本の医療を荒廃させた
 第五章 人はみな「死すべき存在」である
 
 現在、佐藤優は週3回血液透析を受けています。また前立腺がんで前立腺全摘を施行しました。また心臓疾患で冠動脈にステントが入っています。いずれ可能なら奥さんから腎臓移植の予定もあるようです。現在63歳ですが、何とか生き延びてほしいと私は思います。しかし、彼の病気はまさに生活習慣病です。身長167cmで体重は時に120㎏を記録したこともあったようです。
 片岡医師はユニークな経歴の持ち主でもう10年来佐藤優の主治医を務めています。女子医大病院での三大優しい先生という評判もあるようです。佐藤優は、女子医大病院および医師やナースを礼讃していますが、医療者ネットワークでは女子医大病院の評判は散々です。M3ドクターズライフスタイル編集部が患者さんを対象にアンケート調査を実施したところ、全国各地の大学病院に通院の患者さんの評判では女子医大は残念がらベスト50にも入っていませんでした。このへんの判断はいろいろ千差万別ですから、そのまま信用できるわけではないでしょうが。
 では。今日はこのへんで。
Subject: MRIC Vol.23105 患者からみた「信頼できる医師」
 
 鳴門教育大学嘱託講師
  Office MAIKO代表
 黒田麻衣子
 
 2023年6月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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 先日、尾崎章彦医師が「クチコミでの病院批判」について投稿されていた。
 筆者は尾崎医師の診察を受けたことはないが、尾崎医師のお人柄をよく知っており、信頼できる方だと思っている。それでも、クチコミに悪評を書かれたという。尾崎医師の投稿を拝読しながら、「私にとって信頼できる医師ってどんな人だっただろう?」と考えた。
 筆者はここ数年、心臓手術をしたり、骨折したり、ウィルス感染起こしたりと、何度も入院している。運ばれた病院が違ったので、複数の病院での入院を経験した。教え子には医師になった者も多く、今もなお医師を志す高校生を指導しているので、「信頼される医師」の条件を生徒とともに考える機会も多い。そうした経験から、「患者の側から見た、信頼できる医師」について、具体例を交えて記してみたい。
 
 心臓に疾患が見つかる数年前の話である。筆者は原因不明の高熱に十数日も苦しんだ。高熱が続いたので、近所のX病院を受診した。X医師は診察をして「扁桃腺も腫れてないし、ただの風邪だろう」と解熱剤を処方してくれたが、それを飲んでも回復しなかった。外注してくれていた血液検査の結果を聞きに行った日にも「血液検査の結果も大したことはない」と、高熱の私は誰もいない待合室で30分以上も放置された。どうしても熱が下がらなくて、食べ物も喉を通らなくなったので、日曜日に福祉センターの休日診療を訪れた。Y医師は、インフルエンザの検査をしてくれて、ていねいに話を聞いてくれて、血液検査もしてくれて、循環器に疾患があるかもしれないとレントゲンも撮ってくれた。
 
 ここに来て、そういえばX医師はインフルエンザの検査もしてくれなかったし、レントゲンなんか撮ってくれなかったなと思った。Y医師は私の血液検査のCRPの数値が10を超えていることを問題視してくれて、「明日、X病院に行ってこの血液検査の結果を見せて、大きい病院に紹介状を書いてもらってね」と言ってくれた。果たして翌日、再度X病院を訪れた。X医師は「自分のところでやった血液検査ではCRPは高くなかった」と言い放った。X病院で検査を受けたのは1週間も前の話で、今ある検査結果が最新のものなのに、X医師は聞き入れてくれなかった。
 そして私をクレーマー扱いしつつ、「どうしてもと言うなら紹介状は書くよ」と一応の紹介状は書いてくれた。きっとX医師の同級生か友人なのだろう。大きな公立病院の副院長先生だというZ医師が担当となった。X医師から何らかの言づてがあったのだろう。Z医師はハナから「大げさ患者」といった扱いで、ろくに話も聞かず、私の顔を見るなり「あんた、リンゴ病よ。顔も赤いし足も浮腫んでるし」と言い放ち、血液検査に行って来いと診察室を追い出した。血液検査の結果、リンゴ病はネガティブ。だが、ネガティブであったという検査結果は「リンゴ病だったのですか?」と私が聞くまで教えてもらえず、再び診察室に入った私にZ医師は「じゃあ、これ薬出しておくから。」とだけ言って、カルテをカチャカチャさせるだけだった。
 
 結局、Z医師の処方してくれた薬を服用して、数日後にやっと私は高熱から解放されたが、私がもっとも感謝しているのはY医師である。X医師のみならず、Z医師も私にとっては「医師失格」のヤブ医者だ。X医師とY医師(注:Z医師の間違い?)は高齢で、いわゆる「経験豊富」な医師だのだろう。しかし、患者の私の「つらさ」に寄り添ってはくれず、自らの思い込みだけで患者をあしらった。自分の見立て違いを患者側から質問されるまで明かさなかった。「リンゴ病だろう」との見立てが間違っていたことが問題なのではない。「違ってたね」と一言言ってくれれば良かったのだ。仮説から検査で検証をして、診断をするのは当たり前なのだから、「見立てが違ってたわ」って言ってくれれば良かったのだ。言わないのは「隠した」と見なされても仕方がない。私の身体のことなのに、私に説明しれくれないZ医師は、絶対に信用できないし、信頼できない。たとえZ医師の処方した薬で高熱が下がったとしても、「あの高熱の原因は何だったのか」と今も腑に落ちないままなのは、Z医師のずさんな診断のせいだと思っている。最新の検査結果を認めない!
 X医師は論外だ。だから、私は、二度とX医師・Z医師の顔を見たくないし、世のため人のためにも早く引退してほしいと願っている。
  一方で、Y医師のことは、今もとても感謝しているし、信頼している。もし、専門家から見たときに、Y医師の対応に落ち度があったとしても、私は悪感情は抱かない。なぜならば、彼だけが私に対して親身になってくれたからだ。私の辛さに寄り添い、なんとかしてあげたいという態度で接してくださった。「インフルエンザかと思ったんですが、違っていました」「だから、血液検査をさせてくださいね。あと、レントゲンも撮っていいですか?」「レントゲン撮りました。心臓とか肺に、何か疾患があるかもしれないと思ったんです。めっちゃ丁寧に診てみたけど、循環器系に疾患があるようには見えませんでした」と、なぜその検査をしたのか、どういう仮説・どういう見立てで検査をして、その結果、どうだったのかをきちんと説明してくれた。だから、もしもY医師が「結局、病気としては何らかのウィルスに感染したんじゃないかと思います。何のウィルスかはわからないけれど、抗生物質で様子見ましょう」って仰ったなら、それで納得したと思う。
 今はすぐに裁判を起こされる時代、何かあったらすぐに訴えられる時代と言われて久しい。医療現場がそれを過度に恐れている様子を感じることもある。でも、患者から訴えられることを恐れている病院ほど、医療者の目は患者を向いていないとも感じる。医師と目が合わない。説明のことばは、患者のためではなく自分たちの危機回避のため。だから、ことばに体温が感じられない。
 患者のことを見て、患者と向き合って医療を提供してくれている病院は、(患者に見えないところでは裁判沙汰を恐れているかもしれないけれど)一つ一つの声かけに、裁判を恐れての危機回避ではない、思いやりや温かみを感じる。
 医療者も人間なら、患者も人間である。人と人との信頼関係は、やはり、相手の目を見て、相手の気持ちに寄り添ってこそ築けるものである。医師は多忙だ。いちいち患者の心に寄り添ってなんか居られないという方もいらっしゃるだろう。私は、多忙であっても患者に寄り添ってくれるM医師のような医師にかかりたいと願う。
 
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