[626](寄稿)「国立病院機構と地域医療機能推進機構は、コロナ病院に転換を」

ペンギンドクターより続報

皆様
 以下のような提言が今朝舞い込みました。大胆な提言ですが、東京都の危機は前代未聞のものであり、一考に値します。
 先日、東大病院の瀬戸病院長が菅総理と会って一時間懇談したという話がありました。

菅首相:首相、東大病院長と面会
 行政 政治 2021年8月23日(月)配信 毎日新聞社
 菅首相は22日、首相公邸で東京大学付属病院の瀬戸泰之病院長と約1時間、面会した。瀬戸氏は面会の用件について「新型コロナウイルス以外の医療も重要なので、両立させることが重要だと(首相に)申し上げた」と記者団に説明した。

 皆様、いかに大学の人々が時代錯誤の世界で生きているかがおわかりと思います。瀬戸院長は、このコロナ危機の時に、わざわざ首相と会って、コロナ以外の医療も大切だと言う必要があるのか、全国大学医学部長・病院長会議などを代表しているのでしょうが、同席していたと想像される厚労省や文部省などの役人のレベルも疑われます。
 これから仕事ですが、医療界の「社会性の欠如」の表れとして追加しました。日本医師会も同様です。いずれまた具体的なエピソードはお話する機会もあるでしょう。では。

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国立病院機構地域医療機能推進機構は、コロナ病院に転換を

都内民間病院院長

2021年8月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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全世界で2億人を超える感染者が出ており、日本国内でも感染者急増が叫ばれている。ニュースはその事象だけを繰り返しており、政府も人流抑制、ワクチン、個人への対応強化依頼を繰り返している。時がただただ過ぎていく。
なぜ誰も提案しないのか?なぜ誰も今の方針に異を唱え代案を示さないのか?全くもって判らない国になってしまった。
今現場で働いていて感じることは先行きへの深い絶望感のみだ。

7月後半から発熱外来の患者が急増している。春は1日数件であったが今は1日当たり20名を超えるようになり、陽性率も50%を大きく超えるようになった。毎日コロナ患者の発生届を出している。春の第4波の頃は1日で1~2枚、無い日も多かった。しかしここ1週間は連日10枚以上となっている。さらに一般外来や救急外来に発熱の無いコロナ患者が連日のように来ている。酸素飽和度低下は無いが炎症反応が高く肝機能障害があるため全身検索でCTを行うと肺炎像がある。コロナ感染症を疑いPCR検査を行い陽性が判明した患者もいた。脱水症として救急外来に来た患者がコロナ抗原検査陽性と判明するも入院させてあげられるコロナ病床が無く補液と投薬で帰宅させねばならない。
近隣の医療機関でも外来で投薬や治療を行い返さざるを得なくなっていると聞く。

40年に渡り臨床現場で働いてきた。医師として病んでいる人を治療することが自らの使命と思っていた。しかし具合が悪いので入院させてほしいという患者にお帰り下さいと言わねばならないこの現状は私の医師としての存在意義を揺るがしている。
東京都知事はコロナを受け入れない医療機関への圧力を明言している。確かにコロナ病床を設け補助金を貰っている医療機関が受け入れしないのは問題だが民間も含め全医療機関で受け入れる事を提言しているように見える。
本当にそうだろうか?

東京都の在宅患者は2万人を超えており経過中に重症化する患者も数多く、悪化時の入院調整困難事例が多発している。それに対して国も都も医師会も現場の頑張りは理解するがさらにコロナの受け入れ病床を増やすよう求めている。しかし増やせないのは一般の救急患者を含む通常診療を抑制しなければならないためであり、どの医療機関も協力はしたい心はあるのだ。
中等症2以上では入院が必要だがコロナ患者では通常診療に比べ膨大な医療資源が必要となる。病室は処置や治療はもとより、感染予防対策のため広いスペースが必要となる。16床を改造しても中等症で7床レベル、重症なら半分以下の患者数しか対応できない。さらに人員は中等症でも倍以上、重症ならICUを大きく超える人員を必要とする。

軽症は在宅や施設となっており、民間の狭い病院ではコロナ病床は作れても1~2床、ほぼすべての機能をコロナ病床に転換しない限りは多くのコロナ病床は作れないのが現実だ。また新たに中等症以上のコロナ病床を民間に作る場合は、感染対策に不慣れな施設もあるためクラスターになりかねない。民間でも少しで良いからコロナ病床を作れという提言は果たして現実的なのだろうか。

一方コロナ患者よりも通常疾患の救急患者が数的には多いが、コロナ診療だけに注目が集まっている。救急現場では救急隊がコロナ患者転送のため200件もの問い合わせをしたケースも聞いている。その間、救急隊は別の急性疾患患者の搬送は出来なくなるのだ。人命は大変重いものであり、それはコロナ患者も一般救急患者も同じだ。
この矛盾する救急医療現場を顧みることなく、コロナ診療だけを中心に考えていくことは明らかな過ちであろう。

両者を解決する方法論は実にシンプルだと思う。コロナ患者を受け入れる施設と、通常救急診療を行う施設を明確に分ければ良い。それを命令出来るのは唯一国だ。
本来なら政府の諮問機関が提言すれば良い事だが残念ながらその発想は聞こえてこない。

都立病院はその範を示してくれた。本当に感謝している。今こそ税金を投じて経営されている国公立病院群は自らコロナ病院として働く意思を示すべきではないのだろうか。

尾身先生が率いるJOHOではコロナ診療をしているとお聞きしている。しかしコロナ病床がJOHO病院総病床数の10%超に過ぎないことは知られていない。

最前線の医療現場で命の選択を行わざるを得ない事態になっている今こそコロナ病床の急拡大が必須であり一刻の猶予も無い。
新たな拠点病院を作ることは感染爆発の今では時間的な猶予が無く、酸素ステーションだけでは重症化した患者の対応など出来ない。

一刻も早い具体策が必要な局面にあると思う。JOHOを含む第3セクター病院群に尾身会長のご判断でコロナ診療専門病院に変換していただき、高度医療は大学病院やセンター病院、通常診療は民間に任せることで今の危機的な医療体制を救って欲しい。

コロナ診療と一般救急診療をともに破綻させないためには診療の完全な分離が必要だ。

これ以上救える命を失ってはならないことは医療従事者を含む全国民の願いだと思う。

そのためには尾身先生の決断と提言が必須であり伏してお願いしたい。

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