[1802]ハリスは「暗闇が深いほど星は輝く」と言うが••••••

 11月16日の日経新聞のコラム「大機小機」が米大統領選について的確なコメントを書いています。

 全文を引用します。

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 米大統領選で浮かんだ米国の闇

 米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領に敗れた民主党のハリス副大統領は、敗北の弁で公民権運動の黒人指導者キング牧師の「暗闇が深いほど星は輝く」との言葉を引用した。「多くの人が暗黒の時代に突入したと感じていることは知っている。もしそうだとしても、無数の輝く星で空を満たそう」と訴えた。

 ハリス氏のスピーチを聞いて筆者は、分かっていないと感じた。だからハリス氏は、いや、民主党は敗れるべくして敗れたのだと納得した。

 米国は近年、めざましい経済成長を謳歌してきた。新型コロナウイルス禍の乗り越え主要株価指数は最高値を更新し続けている。しかし、そうした経済的繁栄の光が輝きを増す一方、光が届かない所の闇は深くなる。

 トランプ氏が米大統領に返り咲くことで暗黒の時代が始まるのではない。すでに深い暗闇は存在していた。成長から取り残された多くの人々は闇の中にずっと前からいたのである。その闇の中で見つけた星がトランプ氏だった。

 今回の選挙では所得が低くなればなるほど、前回と比べて民主党から共和党に投票先切り替えた人が増えた。米国の成長と繁栄を主導しそに恩恵にあずかってきたのは一部エリートとビジネスの成功者だが、その陰で大多数の「負け組」がいる。票の数では圧倒的に負け組の方が多い。であれば、そちらにフォーカスした者が勝つのは自明ではなかったか。

 民主政治のど真ん中を突いたトランプ氏のような人物が米国のリーダーに選ばれたことに、改めて世界は民主主義の盲点を突かれた気がしたのではないか。しかし、問題は衆愚政治でも民主主義機能不全でもない。米国の経済格差その帰結である分断だ。

 トランプ氏の虚勢はすぐに見破られるのではないか。低所得者の暮らしが厳しいのは民主党の失政のせいではなく、トランプ氏と共和党が改善できるわけでもない。早ければ2年後の中間選挙で失望は投票行動に表れ、共和党は多くの議席を失うだろう。

 しかし、それは決して民主党が信任を得るということではない。行き場のない不満は解消されない。右から左へ、そしてまた左から右へ、振り子の針が振れるだけである。その巨大な振れ幅に世界が翻弄される。これが真の問題である。(九転八起)

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 腐朽した現代資本主義が危機を労働者階級に転嫁し貧富の差が広がりつづけている中で、変革の運動が選挙の二者択一に収斂されている限り「行き場のない不満」は堆積し続ける。本質的に資本の増殖を目的とする資本主義経済社会である限り格差と分断は深まります。「深い暗闇」を突き抜ける労働運動が組織化されなければなりません。

ハリスのアジテーションは虚ろな目眩まし以上ではない。