[580](投稿)政府、責任転嫁の強圧姿勢

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西村担当相発言 責任転嫁の強圧姿勢だ
07/13 05:05(北海道新聞社説より)

 政府の責任を棚に上げて飲食店に責めを転嫁するのは筋違いだ。▼ 新型コロナ対策を担う西村康稔経済再生担当相が、東京都などへの緊急事態宣言の発令に合わせ、酒類の提供停止に応じない飲食店に強圧的な対応を打ち出した。▼ 一つは飲食店に取引金融機関から順守を働き掛けてもらうものだ。金融庁全国銀行協会に文書を出す準備を進めていたが、与野党の反発で撤回に追い込まれた。▼ もう一つは酒の卸業者などに対する取引停止の要請で、こちらは撤回せず、内閣官房国税庁が業界団体に文書で通知した。▼ 国税庁などは規制官庁であり、要請も事実上の命令と受け取られよう。政府は間接的に影響力を行使する形だが、法的根拠はない。▼ 私権制限は最小限とするのが原則だ。憲法に基づく営業の自由に抵触しかねず、権力の乱用とも言うべき要請は撤回すべきである。▼ 飲食店が応じないのは、政府の支援が不十分なことが大きい。ワクチン接種の遅れや病床の未整備といった失態を顧みずに飲食店ばかりを標的にするなら、政府への反発は強まるだけで逆効果だ。▼ お金を借りている飲食店にとって金融機関の意向は無視できず、立場は弱い。▼ 取引関係で強い立場にある金融機関を政府の要請で関与させる行為は、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる恐れがある。西村氏の発言が金融機関から懸念を持たれたのは当然だ。▼ また、卸業者などを通じて飲食店に取引停止を要請することについても、業界から取引先との信頼関係を壊しかねないと反発する声が上がっている。▼ 飲食店だけでなく、卸業者も窮地に陥りかねない。▼ 緊急事態宣言は4度目となり、要請や命令に応じない飲食店が増えているのは事実である。順守している飲食店などからすれば不公平感もあるだろう。▼ だが、支援の協力金の支給遅れや額の不十分さは改善されていない。政府は協力金の先渡しが可能となる仕組みを導入するとしたが、検討が始まったばかりだ。▼ 政府は、経営支援を強化しなければ飲食店の協力が得られないことを強く認識せねばなるまい。▼ 緊急事態宣言下での東京五輪開催などに関し、政府の国民に対する説明は足りない。政府・与党は野党が求める臨時国会召集に応じるべきだ。▼ 菅義偉首相は説明責任をしっかりと果たす必要がある。

※※※上杉真剣のコメント:

 問題は、「政府の責任を棚に上げて飲食店に責めを転嫁するのは筋違いだ」ということです。西村康稔経済再生担当相が中心となり、「飲食店に取引金融機関から順守を働き掛けてもらい」「金融庁全国銀行協会に文書を出す準備を進め」たことで、飲食店、酒類卸店などから猛反発されました。政府は野党からも追及され、法的根拠のない「制限・禁止」工作は撤回せざるを得なくなりました。
 政府の問題は、オリンピック開催を目前に控えて焦り、感染拡大の抑え込みを、現場の経済的・精神的苦境を無視して権力を行使してやろうとしたことにあると思います。金融機関からも西村氏の行為は「取引関係で強い立場にある金融機関を政府の要請で関与させる行為は、独占禁止法が禁じる『優越的地位の乱用』に当たる恐れがあり、金融機関から懸念を持たれたのは当然だ」と社説では書かれています。経営難に苦しむ飲食店、酒類の卸業の人たちのことを考えない、私権の制限にもつながる「拙速で、下賤な工作」は、してはならないことです。
 西村氏や菅氏などが行っている為政は、オリンピックが「平和の祭典」でもなく、政治の一部分であり、またここでは書かれていませんが、オリンピックを演出することに関わる・バッハ会長をはじめとする一部の人たちの金儲けと政治の場と化していることもこれらの件で露(あら)わになったとも思います。読者の皆様はどのように思われますでしょうか?

[579] (寄稿)コロナ感染拡大を抑えて社会活動をコロナ禍以前の状態に戻すための施策の提言

ペンギンドクターより
その2
和田医師の提言の紹介

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コロナ感染拡大を抑えて社会活動をコロナ禍以前の状態に戻すための施策の提言


内科医

和田眞紀夫


2021年6月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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コロナ感染拡大を抑制するためにこれまで行われてきた施策は、(1)クラスター対策(濃厚接触者の追跡・隔離)、(2)緊急事態宣言(まん延防止等重点措置)の大きく2つだけだ。

クラスターを探して濃厚接触者の行動制限をしてもコロナが社会に蔓延することは阻止できなかったし、緊急事態宣言やそれに続くまん延防止措置を繰り返し発令しても感染拡大を繰り返すばかりで、今に至っては宣言発令中に感染が拡大し始める始末だ。どちらの施策もコロナ感染拡大を抑えるのに有効な施策ではないことが明らかになったのだから今すぐすべての施策から完全に撤退すべきである。根拠なく飲食店や劇場・スタジアムの規制を続けることは慎むべきだ。

それに代わるコロナ感染拡大抑制およびさまざまなコロナ禍を最小限に抑え込むための有効な方法は、(1)免疫獲得者の開放と(2)免疫非獲得者・弱者の徹底した保護である。


1.コロナワクチン接種者、既感染者の行動抑制はしない

国民全体に一律の行動制限を加えるのではなくて、コロナワクチンを接種したもの、すでにコロナに罹患したものには免疫パスポートを発行・所持させて通常の生活に戻ってもらう。これらの人たちは基本的にはお酒を含めて飲食のために集まってもいいし、旅行をしてもいいはずだ。スタジアムでスポーツ観戦をしてもいいし、ライブハウスや劇場で演劇や音楽を楽しんでもいい。すでに免疫を獲得しているのだから大きく感染拡大に寄与することはない。当面は居酒屋に入店できるのは免疫パスポートを持ったひとだけ、スタジアムや劇場に入れるのも免疫パスポートを持ったひとだけに限定するなどの過渡的な措置をとることは仕方がない。一律に営業時間の短縮を強いたり、入場者数を減らすというような科学的な根拠が曖昧な施策を漫然と続けることに比べたらはるかに理にかなっている。

そのために行わなければならない具体的な対策は、2つ。一人でも多くの人にコロナワクチンを接種してもらうことと、もう一つはコロナ抗体検査を無料で受けることができるようなシステムを作ることだ。ワクチンを打ったことの証明やコロナに既感染の証明書をもらえば行動制限が解除されるとなったら(インセンティブの付与)、多くの人がワクチン接種を受けてみたいと思うだろうし、既感染の証を得たいと思うだろう。職域接種・未成年者の接種(その良し悪しの議論は別稿に譲る)が開始された今こそ、このような方針に方向転換する絶好の機会なのだ。是非すぐにでも具体的な実施要綱を打ち出してほしい(もちろんこのような対応を取る場合には、同時に飲食店等も免疫パスポートを確認する条件で通常営業に戻ることになる)。


2.徹底的なPCR検査の拡大実施によって感染者を洗い出す

PCR検査を無料で実施できるようにして、PCR検査実数を現在の100倍以上にすることを提案したい。感染拡大を抑えるために最も重要なことは、今更ながら、PCR検査をいつでも誰でもどこでも行えるようにすることだ。無料でいつでも実施できるなら多くの人が検査を受けるだろうし、陽性者はインフルエンザと同じように一定期間の自粛を甘んじて受け入れてくれるだろう(現行の決まりでは10日間、場合によっては8日間に短縮することも可能かもしれない)。コロナウイルス流行の特性(季節性の変動)を考えたときに、夏にコロナウイルスの流行が再燃することは避けられないことかもしれないが、感染拡大の規模を抑え込むことはできる(早期のPCR検査で感染者をいち早く割り出して、自粛を促す)。

そのためにはすべての医療機関、さらには薬局などが検体回収に協力するシステムを構築することだ。当初限定されていた鼻咽頭拭い検体とは違って、今は唾液検体でのPCR検査が一般的となっておりこれに意義を唱える人はいない。唾液検体の回収は極めて簡単で本人に容器を渡して自分で採取してもらえばよく、検査実施者の感染リスクは限りなくゼロに近い。

そこでネックになるのが、感染症法による縛りだ。エボラ出血熱のようなタイプの感染症ではないのだから、いつまでも感染症法で規定される隔離必須のウイルスのままでいいわけがない。インフルエンザのようなものと片付けられるものではないが、感染症法での扱いはインフルエンザと同等レベルでよい。その方がすべての医療機関、民間病院がコロナ対策に参入し安くなるのも確かだからだ。

PCR検査とは別に自分でできる自宅用の抗原検査キットを幅広く普及させることも感染拡大防止には大いに役立つ。自分でできて10-15分で結果が出るのが利点だ。自分で実施する場合でも唾液を使った抗原検査となるとかなり感度が下がる可能性があるが(このほかに鼻腔拭い検体と言って鼻腔2?ぐらいの浅い位置を拭う検査方法がある)、とりあえずすぐに結果を出ることのメリットは大きい。このような簡易検査をなぜもっと普及させないのか、理解に苦しむ(欧米では安価な自己診断検査キットが普及している)。ただし、確定診断には感度の高いPCR検査を実施すべきだし、病院や高齢者施設での緊急性がないようなスクリーニング検査は感度の高いPCR検査を選ぶべきだ(それを安易に抗原検査で済ますべきではない)。医療機関や高齢者・福祉施設におけるPCRスクリーニング検査を徹底して行うことを怠ってはならない。また、一般市民に対しては頻回の検査を実施することで免疫パスポートに準ずる扱いにすることも考えられる。


3.入院施設の充実

このまま大きな感染拡大がないことだけを望むが、万が一第4波に匹敵するかそれ以上の大きな第5波が起きる可能性がゼロではないなら、万全の体制をとっておかなければならない。そもそも緊急事態宣言を出さなければならなかった理由は医療の逼迫を避けるためだ。ならば医療が逼迫しないような体制を整えておくことが何より大切なはずだ。入院が必要なコロナ患者さんがいつ増大してもいいように大学病院や都立病院の受け入れ態勢を今のうちに整えておくべきである。政権与党の幹事長は「これ以上やりようがありますか」と発言してはばからないが、やらなくてはいけないことは山積みで、手付かずで放置されていることだらけなのではないだろうか。


4.最後に

国際社会と協調していくためには、世界と歩調を合わしていくことも重要だ。世界基準のコロナ対策に歩み寄ることは国際社会との関りを断たないためには絶対必要なことで、でなければ世界の中で孤立してしまう。このような視点が日本のコロナ対策では全く欠如していた(オリンピックの時だけ世界基準を採用しておかしなことになっている)。日本独自のコロナ対策を頑なに固辞せずに、世界で示されるエビデンスにもきちんと眼を向けて新たなコロナ対策に取り入れることができるようなエキスパートが新たな諮問機関に加わっていただけることを切望してやまない。


まとめ

クラスター対策・緊急事態宣言(まん延防止等重点措置)からの完全撤退

(分科会の解散、総入れ替えした新たな諮問機関を設定、危機管理、数理統計の専門家も加える)

コロナワクチンの普及・促進

無料の抗体検査(コロナ既感染の証明)

免疫パスポートの発行、行動制限の段階的解除

無料のPCR検査・自己診断抗原検査の拡大・普及(感染者の割り出し、自粛)

感染症法の改正もしくは取り扱いの是正

入院施設の拡充と十分な準備

世界基準のコロナ対策に歩み寄る(国際社会との関りを断たないため)

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ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご覧いただけますのでご確認ください。

MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

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[578](寄稿)読書の話━黒木登志夫著『新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ』ほか

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ペンギンドクターより
その1

皆様

 梅雨の末期の豪雨とだけ言っていいのか、あちこちで猛烈な雨が降っています。出雲地域の豪雨については、斐川町の従妹にショートメールをして聞きましたが、大丈夫だとのことでした。その後広島や山口さらに九州と大雨が移っています。山間部は熱海市の例を見ても被害は尋常ではありません。何らかの造成地のようですから、天災ではなく明らかに人災です。福島の原発被害は未曽有の大震災がきっかけではありますが、明らかに人災です。「人新世」の現代社会は、天災よりも人災の比率がはるかに高くなっていると思えます。世界的には気候変動をいかにストップするか、確かに斎藤幸平氏の言うように、成長神話(SDGsもまた成長の呪縛から逃れられていない)から離れて、人類は「脱成長」を目指す他はないように思います。

 それはそれとして、お馴染みの和田医師の提言を転送します。その前に読書記録についてひと言(二言かも)述べます。

 私は月に10冊本を読んで読書記録を残すのをノルマとしています。読みながら、これは面白いという文章に出会うとそのページに折り込みを入れます。折り目がつくとみっともないから、シールを貼った方がいいという家族の意見もありましたが、小説以外は折り込みが多く、手っ取り早い折り込みで通しています。読み終わるとすぐにパソコンに著者名と題名を入力し、日付と簡単な感想を入力します。そして後日、目次とページ毎の感想を入力していくパターンです。それが大体1カ月後にはクリアーできていたのですが、70歳を超えると、数カ月経ってようやく読書記録の入力となってしまいました。これもまた年齢による衰えだと思います。しかし、逆に読書記録を残す作業で、数か月後という間隔をおいて、一冊の本を二度読むということにもなり、ある意味でこれはメリットかもしれません。

 そんな作業の中で、興味深い文章に再会したので引用します。皆様にもお話した黒木登志夫氏の文章です。


●黒木登志夫著『新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ』(中公新書、2020年12月25日初版、2021年3月5日5版)

 したがって私が読んだのは3月終わりごろです。(p165-166)から引用します。(序章)(第9章)というのは、『新型コロナの科学』の章のことです。長めですが、1ページ余りをそのまま引用します。

 台湾は、SARSとMERS、韓国はMERSの経験があったからすばやく対応ができたが、日本にはSARSもMERSも入ってこなかったため、対応が遅れた。日本に、SARS、MERSが入ってこなかったのは事実であるが、SARSウイルスの分離などでは、国立感染研が相当の貢献をし、その蓄積があったはずである(序章)。

 さらに、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)流行では、193人が死亡するなど大きな問題となった。その対策会議が2010年6月10日、厚労大臣に提出した報告書には、今回の新型コロナウイルスにも、そのまま当てはまるような勧告が書いてある。


 国立感染研、地方衛生研、保健所の体制強化/迅速、合理的な意思決定、議論過程の透明性/国民への広報、リスクコミュニケーションの充実/臨時休校は地方自治体の状況に応じて運用/発熱外来の整備/PCR検査体制の強化/医療従事者の防護具の提供/ワクチンの確保


 10ページの報告書は、次の言葉で結んでいる。

 新型インフルエンザの危機管理対策は・・・・・・人員体制や予算の充実なくして、抜本的な改善は実現不可能である。この点は、以前から重ね重ね指摘されている事項であり、今回こそ、発生前の段階からの体制強化の実現を強く要望したい。


 この報告書を受け取った田村憲久(当時および現厚労大臣)は、最優先課題にはしなかったことを正直に認めた。尾身茂現分科会会長は、この報告書をまとめた委員の一人であるにもかかわらず、いつも、SARS、MERSを言い訳にしている(第9章)。


 ▲いかがですか。1936年生まれの黒木先生のおっしゃる通りです。2010年に新型インフルエンザの経験を踏まえて専門家が提言した報告書は、政府機関のどこかに埃をかぶって放置されていたということでしょう。黒木先生が引用されているので、配布はされているわけですが、政治家・官僚・学者、もちろん経済界も何もしなかった、いやむしろ感染症対策の人員体制はさらに縮小化されて、現在のCOVID‐19の惨状、オリンピックを無観客で開催せざるをえない状況に至ったということになります。

 日本の文化のまさに特質です。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」「人のうわさも七十五日」「災害は忘れた頃にやってくる」(最近は短期記憶もなくなりつつある)「馬鹿は死ななきゃ治らない」・・・・・・。

 私は、コロナが普通の風邪になるときがいつかは来ると思いますが、きっと新型コロナの経験を踏まえた提言書も新型インフルエンザのそれと同じような運命をたどるのではないかと危惧します。原発事故の悪夢が忘れられ、そればかりか原発が気候変動防止のための二酸化炭素排出削減の「切り札」として原発新設まで復活しそうな日本のエネルギー政策です。ただし、私は原発すべて即廃止論者ではなく、新設はせず、今の原発を稼働させつつ廃止へもっていくという日和見論者ですが。


 読書の話に戻ります。

 最近の読書はわかりやすく言うと、明治以来の日本史および同時代の世界史に関わることと、近未来の予測といった分野を中心に読んでいます。つまり自分なりに「明治以来の日本史からこれからの日本を予測する」情報を集めて、分析し、文章化していこうと思っています。具体的には、書棚・書庫にある私自身が集めた本を読みながら、駅ビルの書店で、新刊本を購入して読み、医療や災害という切り口を中心に文章を書くというパターンです。

 とはいうものの、硬い本ばかりでは疲れるので、時に小説も読みます。最近読んだ本では前回ちょっとお話した夏目鏡子夫人の『漱石の思い出』もそうですが、石坂洋次郎の戦時中と戦争直後の短篇集『わが日わが夢』井上靖あすなろ物語』『しろばんば大岡昇平『少年時代』などの著名作家の自伝的小説などが、感動した本です。またいつか、ゆっくりと故郷に泊まって、自分自身の幼年時代と少年時代を振り返ってみたいと思う今日この頃です。

 では今回はこのへんで。

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編集者より

和田医師の「コロナ感染拡大を抑えて社会活動をコロナ禍以前の状態に戻すための施策の提言」は、次回つづけて紹介します。

[577](投稿)橋本大二郎 氏寿都で講演「町が取り下げねば文献調査止まらぬ」 

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※※※ 日下草木のコメント:

 4日に橋本大二郎高知県知事が寿都町の「住民団体『子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会』」に招かれて「原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査がテーマの講演会」で講演を行った。

 元知事は、

① 「調査は町が取り下げない限り止まらない」

② 「国は概要調査に進む前に知事や首長が反対すれば立ち止まると言ったが、調査を断念するわけではない。国は首長が交代したり交付金で住民の考えが変わったりするのを待つだけだ」

③  核のごみが核燃料サイクルによって発生することに触れ「核燃料サイクル計画自体が問題。(最終処分場選定に手を挙げれば)やめるべき計画に出口を与えることになる」

 と指摘しています。

 2007年、橋本氏は核ごみ処分場の文献調査に応じた高知県東洋町に知事として撤回を求めました。政府と業界が進めている核燃料サイクル計画は核のごみを出します。ごみ処分場設置を受け入れるならばこの計画に「現実性」をもたらします。橋本氏の指摘は正しいと思います。寿都町並びに神恵内村は、この「警告」を良くかみしめて、核のごみを子々孫々に残さぬようにしていきましょう!!

◆◆◆「町が取り下げねば文献調査止まらぬ」 橋本大二郎氏が講演 寿都
07/05 05:00 (北海道新聞デジタルより)

 【寿都原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査がテーマの講演会が4日、同調査が進む後志管内寿都町で開かれ、橋本大二郎・元高知県知事が「調査は町が取り下げない限り止まらない」と訴えた。▼ 住民団体「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」が主催し、町内外から135人が参加した。▼ 橋本氏は、2007年に高知県東洋町が文献調査に応募した際の知事で、町に撤回を求めた。橋本氏は当時を振り返り「国は概要調査に進む前に知事や首長が反対すれば立ち止まると言ったが、調査を断念するわけではない。国は首長が交代したり交付金で住民の考えが変わったりするのを待つだけだ」と語った。▼ 橋本氏は、核のごみが核燃料サイクルによって発生することに触れ「核燃料サイクル計画自体が問題。(最終処分場選定に手を挙げれば)やめるべき計画に出口を与えることになる」と指摘した。(前野貴大)

[576]辞職に追いやられる香港区議

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香港の反対派区議が一斉辞職

 7月9日までに香港の区議会議員(定員475名)のうち110名以上が辞職を表明し、今後さらに増える見込だといわれています。香港行政府は7月中に区議会議員に「愛国的」「宣誓」を求める方針を表明しました。宣誓を拒否する区議をはじめ230名にのぼる議員が辞職する見通しです。

 香港行政府と中国政府(=共産党)は、2019年の逃亡犯条例反対運動の高揚に香港統治の揺らぎ感じ、反政府運動の息吹が中国国内に波及することを恐れて運動とその担い手を壊滅するために弾圧しました。指導者、活動家とみなされた労働者、学生、経営者、文化人が根こそぎ逮捕され有罪判決を受けて投獄されました。
 昨年6月30日、中国政府・習近平は国家安全維持法を公布し香港行政府がその日に施行しました。中国政府は香港に国家安全維持公署を設立し国家安全維持委員会を指導・監督することを通じて反対運動を徹底的に弾圧しはじめたのです。
 議会対策として愛国者と認定するもの以外を議会からも排除するために選挙条例を改悪したのです。2019年9月の選挙で政府に批判的な議員が475議席中388議席を獲得し、林鄭月娥長官はリコールされる寸前に追いつめられたからなのです。


翼賛議会化


 改悪された選挙条例は、行政府にたいする反対派議員が辞職せざるをえないようにあからさまな踏み絵をつくりました。政府提出の議案に「むやみ」に反対したり行政長官に辞職を強く迫ることを禁じています。それだけではなく条例違反で議員資格をはく奪された議員は、政府から支払われた給与や事務所運営費など約2400万円を返還することを強いられるという締めつけまで行っているのです。

 その他方で、辞職すれば返還する必要はないという未確認情報をメディアに流し返済できない反対派区議に辞職をうながすという手も使っているのです。もはや、中国と香港行政府に忠節を誓うもの以外は区議会には存在しなくなります。


批判の封じこめ

 
 反中国政府運動としての意味をもっている香港の反対運動は、強権発動によって抑えこまれたかのようにみえます。弾圧は「共産党」員でもある資本家が牛耳る中国政府(今や資本家階級の政治的代表部となった)が香港行政府を指導してなされたのです。
 
 現在の中国共産党は資本家に転向した元スターリン主義者の党です。スターリン主義者・毛沢東が生きていたら間違いなく「走資派」と批判することでしょう。しかしスターリンが反対派の肉体的抹殺をもおこなった大粛清に示される党官僚専制主義は「継承」しているのです。社会主義市場経済という二律背反のイデオロギーを掲げ中国を資本主義化した鄧小平は、ソ連の自己崩壊の轍を踏まないように党の官僚統制と反対運動の弾圧は強化していったのです。さらに習近平は党と国家の専制支配を強化しています。

 中国共産党は自らに批判的な声の存在を否定し消そうとしています。批判の声が指し示すところの・批判される者の行為は、弾圧することによって批判されたことを覆い隠すことはできますが消すことはできません。批判は「共産党」の他在だからです。あえて存在論的にいうならば、どこまでも批判を消す行為をつづけるかぎり自分が消えるほかなくなるのではないでしょうか。批判の声は消すのではなく在るものとして認め、自省しつつ反批判していくことによってしか自分を実現することはできないのではないかと私は考えます。
 労働者農民学生の批判を弾圧で抑え込もうとする中国の官僚政府は下からの闘いによってたおされるにちがいありません。
 いまさら習近平以下中国共産党のご歴々にそんなことを言っても、キョトンとするだけだろうということは承知していますが、社会主義の理念を放棄した彼らが「中国の特色ある社会主義」だなんていうと、ついついいいたくもなるのです。
 

[575](投稿)寿都説明会━名ばかり「対話」

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※※※ 海坊主空海のコメント:

 すでに2回目の「NUMO(原子力発電環境整備機構)」も入った「対話の場」は行われましたが、その後の北海道新聞の報道によるとほとんど参加者がいない「対話しない場」と化してしまったようです。町民の賛成派も反対派も「対話の場」とは名ばかりだと気づいて、原子力発電や核燃料などに関心がある人もない人も、厄介な核燃料の廃棄物=核のごみ(うんこ)=高レベル放射性廃棄物の危険性の有無を知りたいと思うようになっていると思います。 

 文献調査などを皮切りに核のゴミを国に押しつけられると危機感を抱いている「反対派」は、もとNHKの記者・キャスターを務め、その後高知県知事も務めた橋本大二郎氏を招いて、核のごみの文献調査などを招致しようとした高知県の「東洋町」問題などの話を聞く会を開催したことがTVで放映されていました。

 おカネで人の一票を買おうとしている寿都町長片岡氏とその尻押しをする原子力発電を推進したい政府の代理機構の「NUMO(原子力環境整備機構)」の「対話の場」という仕掛けには人が集まらないことと対照的に、寿都町の町民の方々は橋本大二郎氏を招いた講演会に多く集まったと思われる映像も流れていました。この講演会のことはまた新聞にも掲載されると思います。

 文献調査などだけで10億円~20億円も国が支払うわけがないと思う方が正常な意識の持ち主だと思います。その高額な金の裏にある「核のごみの危険性」に気づいているのだと思います。コロナ禍の最中にオリンピックをするという常軌を逸した政府の原発推進政策に騙(だま)されないために、高知県の東洋町の経験を生かすことが大事なことだと気づいたことでしょう。秋の寿都町町長選挙に、核のごみに反対するためにも、文献調査反対という・そのような正しい行動が生かされることを願っております。

(以下の記事は、2021・6・28北海道新聞デジタルより引用致しました。)

寿都で「対話の場」2回目 「一部の人だけで議論」町民から冷ややかな声も
 【寿都原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が進む寿都町で25日に開かれた第2回「対話の場」。反対派町議らが欠席し、会則の決定で紛糾した初回とは異なり、会則の修正案決定やワークショップなども予定通り進んだ。一方、対話の場に参加できない町民からは「一部の人の話し合いには関心がない」など冷ややかな声も聞かれた。

 「俺らの意見を吸い上げてくれるわけでもない。一部の人だけの話し合いだ」。町内の80代の無職男性は同日、対話の場が始まる前にそう言い切った。
 今回の対話の場は、調査に反対する町議2人や住民団体代表、町内会連合会、福祉団体などのメンバー計7人が欠席。参加したのは13人で、過半数は文献調査に賛成とみられる。

 このため賛成の立場の参加者が多い「対話」となったため、町内の40代の漁師の男性は「反対派がいないのに対話とは言えない。意味があるのか」とくぎを刺し「反対派も一方的にならず、しっかり町の将来を話し合ってほしい」と注文した。

 寿都町の対話の場は4月14日に初回を行い、月1回ペースで予定されたが5月は新型コロナ感染拡大で見送られ、2カ月以上の間が空いた。この間、任期満了に伴う10月の町長選が選挙戦となる公算が大きくなり、秋にも文献調査への賛否の意思表示を住民ができる機会がありそうだ。町内の70代の無職男性は言った。「対話の場でどんな議論になろうと現状は変わらない。町長選に期待したい」

 同じく文献調査が進む神恵内村では30日に第2回対話の場が開かれる。(前野貴大)

[574](投稿)寿都町「対話の場」7人欠席

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「対話の場」会則案了承 寿都で2回目会合 委員7人が欠席
06/26 01:07 更新
 【寿都原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は25日、処分場選定に向けた文献調査を行う後志管内寿都町で、住民と意見交換する「対話の場」の第2回会合を開いた。町が選定した委員20人のうち出席したのは13人で、反対派を含めた5人は欠席し、2人は委員就任を辞退したと報告された。NUMOは4月の初会合で反対派から異論が出た会則の修正案を示し、了承された。▼ 片岡春雄町長は冒頭、「対話の場は自由闊達(かったつ)に意見交換してもらうことが目的だ」と述べ、会則の修正に理解を求めた。会則は当初、「処分事業への理解を深めていただく」としていた文言が「処分ありきだ」と反発を招いたため、修正案では「処分事業への賛否にかかわらず、自由で率直な議論を深めていただく」と変更した。対話の場は町とNUMOが共同で運営することも明記した。▼ 調査に反対する幸坂順子町議は「核のごみを持ってくるのが目的のNUMOと町の共同運営はありえない」と反対意見を述べたが、会則は賛成多数で了承された。▼ 参加した委員13人はこの後、意見交換し、「処分場選定の制度や処分技術についてもっと情報がほしい」「対話の場以外にも若い世代向けの会合などが必要だ」と、同席したNUMOや経済産業省の担当者に注文を出した。▼ 寿都商工会の金子光司会長は「いろんな意見が出て良い対話の場だった」と語り、町議会の石沢洋二副議長は「ようやく一歩踏み出せた」と話した。▼ この日は町議2人と住民団体、産業団体の各1人の調査反対派4人が欠席し、次回以降も出席しない意向。2人が委員に選ばれた町内会連合会は委員就任を辞退したと報告された。このほか福祉団体の1人がこの日は都合がつかないとして欠席した。▼ 片岡町長は終了後、欠席者や辞退者が相次いだことについて「戻ってもらえるようにお願いし続ける。補充は考えていない」と記者団に説明した。▼ 同じく調査が進む同管内神恵内村では30日に「対話の場」の2回目が開かれる。(前野貴大、岩内江平)(2021‣6・26北海道新聞デジタルより)

※※※ 骨川筋衛門のコメント:

 「トイレのないマンション」と言われてきた日本中の原発から排泄(はいせつ)される「核のごみ=高レベル放射性廃棄物」を、これからも原発のさらなる再稼働も画策している各電力会社と菅・自民党政府は、たんまりため込んだ「核のごみ=高レベル放射性廃棄物=核のウンコ」を日本のどこかに埋めるしかなくなっています(トリチウムという放射性物質については、政府は、「福島漁連」や「全漁連」の反対にもかかわらず海洋投棄を狙っています)。
 政府はその「核のウンコの埋葬」の「適地」を探っているのですが、文献調査として10億円ですが、最大で10億円追加され20億円にもなるとも言われています。これに疑問を感じている「原子力資料調査室」(注1)では、法外な値段はなぜ提示されるかを暴(あば)いています。 
 NUMOは、「対話の場」を設けましたが、「対話の場」という名前の会の「会則」には当初、「処分事業への理解を深めていただく」としていた文言が、最初から「『処分ありき』の会則だ」と住民の反発を招いたために、修正案では「処分事業への賛否にかかわらず、自由で率直な議論を深めていただく」と変更しました。しかし「対話の場は町とNUMOが共同で運営する」ことも明記し、主導権は町議会あるいは片岡町長とNUMOにあることを潜(ひそ)ませました。それに対して、調査に反対する幸坂順子町議は「核のごみを持ってくるのが目的のNUMOと町の共同運営はありえない」と反対意見を述べましたが、文献調査等で10億円~20億円を手に入れたい「調査賛成派」の賛成多数で会則は通過しました。                                     
 「結局、このようになる」と分かっている人たちは、すなわち、町長派とNUMOとの「出来レース」と分かっている反対派の人たちの多くが、場合によっては板挟みになっている人たちは、この会に出席しませんでした。そのようにこの記事は読み取れます。
 いろいろな「文献」や「原子力資料情報室」の「情報」=「警戒警報」を読んでいると、国策としての核のごみの捨て場を求めての「悪あがき」の一つとして、文献調査や概要調査などという名称をつけて、カネでほっぺたを叩(たた)いて、「核のごみ」を受け入れさせるということが分かります。寿都町岩内町、泊村、神恵内村などは一つの海と海岸で繋がっています。放射線科医である西尾正道氏は「被曝インフォデミック トリチウム内部被曝――ICRPによるエセ科学の拡散」(寿郎社 1210円)を 2021/3/13に上梓されています。この中で岩内町から寿都町に至るまでの住民の癌の発生は、一般の市町村の1.2倍になっていると書いています。泊原発から排出されているトリチウムなどが原因だと書いています。これに輪をかけて、核のごみを持ち込まれたらどうなるのでしょうか?
 福島第一原発事故は10年たっても終わっていません。40年たっても終わらないと報道でも言われています。議論の余地はありません。今稼働している原発の即時停止と原発の処分を考えるのにエネルギーを注ぐべきです。停止している原発の再稼働は止めなければならないと思います。

注1:原子力調査室については、「文献調査」にだまされないために | 原子力資料情報室(CNIC) を参考にしてください。