[115](投稿)日本 で重症化率・死亡率が低い のはなぜ

ペンギンドクターからの寄稿

皆様

 ようやく梅雨も明けました。まもなく立秋ですが、本格的な暑さの季節になります。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。本日は、添付ファイルの情報をお送りします。医師向けの情報ソースではなく、東洋経済新報の取材した情報であり、一般向けです。優れた情報だと思います。お読みいただければ幸いです。

 NHKスペシャルでもCOVID‐19関連情報が頻繁に放送されていて、良さそうだと思うものを録画して視聴しています。一般放送でも十分状況を理解できます。ただ、ある程度の予備知識がないと、理解が難しいかもしれません。広範囲でかなり深い情報を報道しているからです。参考になるのは、中公新書で井上栄『感染症 広がり方と防ぎ方』です。もともと2003年のSARSに対応して2006年に初版が出ていて、この4月に増補版を出したのですから、ちょっと触れているだけのCOVID‐19については役に立ちませんが、基礎知識の整理にはいい本だと思いました。著者は1940年生まれ、東大医学部卒で国立感染症研究所感染症情報センター長の経験があります。

 今のように感染拡大が進めば、どうなるか、重症者を扱う病院は危機感を持っています。重症者を増やさないためには感染そのものを減らしてほしいとNHKの特集でも医師は述べています。それは確かですが、現実的ではないと私は思います。その理由は皆様もよくおわかりだと思います。この新型コロナウイルスは弱毒だからです。このウイルスとは共存するほかの道はありません。WHOも今後10年以上の対応が必要だと述べています。

 問題は70歳以上に感染させないようにすることです。添付ファイルに高橋泰教授は具体的な今後の対策も述べています。そちらを参照してください。残念ながら私たち団塊の世代が大手を振って歩き回るのは、当分「自粛」せざるを得ないと思います。


 テレワークなどが可能なのは恵まれた一部の会社であることは確かでしょう。中小企業や接客業には不可能です。ただし、デジタル化、テレワーク化の流れはもともとあったので、コロナにより加速ということだと思います。

 教育においては、デジタル化とともに、直接顔を合わせることも大事なことです。要するに多元的な方向、グローバル化とともに自給自足型の二股で行く、国内農業振興を推し進めるなどの様々な方向しかないのではないかと思っています。


新型コロナウイルス(COVID‐19)情報その13


 COVID‐19情報を順不同にて報告します。

 東洋経済オンラインはいつも興味深いニュースを配信してくれます。したがってYAHOOニュースで、私は東洋経済オンラインとあると必ず開いてみるようにしています。戦時中においても軍部に屈することのなかった石橋湛山東洋経済新報で主筆として頑張っていた歴史を今も反映しているのかもしれません。以下は、一部省略したところもありますが、ほぼ全文を引用しています。



●新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ

YAHOO!ニュース 2020年7月17日(金)配信  東洋経済オンライン

 東京都を中心に新型コロナウイルスの検査で陽性と判明する人が増加している。東京都は15日、警戒レベルを4段階のうち最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げた。ただ、無症状者や軽症者が多く、専門家の間でもレベルを引き上げるかどうかでは意見が割れたという。また、2月から現在までの5カ月余りの間に日本では新型コロナにより亡くなった人は1000人に及ばず、例年のインフルエンザ死亡の3分の1にとどまる。新型コロナウイルスの流行当初の予測や欧米の被害実態とも大きなギャップがある。


 国際医療福祉大学の高梁泰教授は、新型コロナの臨床に関わる論文から仮説を立て、公表データを使って「感染7段階モデル」を作成した。高橋教授に話を聞いた。


■新型コロナとインフルエンザには大きな違い

 ――足元では新型コロナウイルスの流行再拡大の不安が広がっています。10万人死ぬ、といった予測も流布していますが、先生はそうした見方を否定していますね。

 発表されている数字はあくまでもPCR検査で判明した「PCR陽性者判明数」であり、正確には「感染者数」ではない。もちろん「発症者数」でもない。特に若年者の場合、PCR検査陽性者が発症する可能性は低く、多くが無症状・軽微な症状で治ってしまう。また「数十万人が死ぬ」といった予測は、新型コロナウイルスについての前提が間違っていると考えている。


 ――ではその辺りの説明と、作成された新型コロナの「感染7段階モデル」の狙いを教えてください。


 新型コロナの感染ステージをStage0からStage6までの7段階に分けて、それぞれに至る確率やそれに関わる要因を見える化したものだ。

 新型コロナウイルスは、初期から中盤までは、暴露力(体内に入り込む力)は強いが、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わるおとなしいウイルスである。しかし、1万~2.5万人に1人程度という非常に低い確率であるが、サイトカイン・ストームや血栓形成という状況を引き起こし、肺を中心に多臓器の重篤な障害により、高齢者を中心に罹患者を死に至らしめてしまう。

 このウイルスの性質の特徴は、自身が繁殖するために人体に発見されないように毒性が弱くなっていることだ。したがって、一定程度増殖しないと人体の側に対抗するための抗体ができない。そしてまれに宿主となる人体の免疫を狂わせ殺してしまう。

 日本も含めた各国でそれぞれ数十万人死亡するというような、当初流布された予想は大きく外れた。その原因はインフルエンザをベースとしたモデルを使っているためだと思われる。2つのウイルスには大きな違いがある。


 ――新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの違いをご説明ください。

 病原体が体内に入ると、まず貪食細胞(マクロファージ)などを中心とする自然免疫が働く。次に数日かかって獲得免疫が動き出し、抗体ができる。


(注1)自然免疫:侵入してきた病原体を感知し排除しようとする生体の仕組み。外敵への攻撃能力はあまり高くないが、常時体内を巡回している警察官に相当する。(注2)獲得免疫:病原体を他のものと区別して見分け、それを記憶することで、同じ病原体に出会ったときに効果的に排除する仕組み。1種類の外敵にしか対応しないが殺傷能力の高い抗体というミサイルで敵を殲滅する軍隊に相当する。

 インフルエンザの場合は、ウイルス自体の毒性が強く、すぐに、鼻汁、咳、筋肉痛、熱と明らかな症状が出る。暴れまくるので、生体(人の体)はすぐに抗体、いわば軍隊の発動を命令し、発症後2日~1週間で獲得免疫が立ち上がり、抗体ができてくる。よって、抗体検査を行なえば、ほぼ全ケースで「陽性」となる。多くのケースにおいて生体側が獲得免疫で抑え込み、1週間~10日の短期で治癒する。だが、抑え込みに失敗すると肺炎が広がり、死に至ることもある。


■毒性が弱いので獲得免疫がなかなか立ち上がらない

 新型コロナはどうか。今年5月6日のアメリカ医師会雑誌の「新型コロナの診断テストの解釈」という論文に、新型コロナは抗体の発動が非常に遅いことが報告された。

 私の研究チームはこの現象を、新型コロナは毒性が弱いため、生体が抗体を出すほどの外敵ではなく自然免疫での処理で十分と判断しているのではないかと解釈し、「なかなか獲得免疫は動き出さないが、その間に自然免疫が新型コロナを処理してしまい、治ってしまう」という仮説を立てた。

 この時期にPCR検査を行なえれば、新型コロナは体にいるので、PCR検査陽性となることもある。一方、まだ抗体は出来ていないので、抗体検査は当然「陰性」となる。その後、症状が進んで獲得免疫が発動しても新型コロナを抑え込めなかったごく一部の人でサイトカイン・ストームが起きてしまい、死に至ることもある。


(注)サイトカイン・ストーム:免疫システムの暴走。免疫細胞の制御ができなくなり、正常な細胞まで免疫が攻撃して死に至ることもある。


――第2波が来たら日本は脆弱だという見方も強くあります。


 抗体検査を行なったところ、ロンドンで16.7%、ニューヨークは12.3%、東京が0.1%だった。これをインフルエンザと同じような感染症モデルで考えると、東京では感染防止は完璧だったが、抗体を持つ人が少ないので、次に防御に失敗したら多くの死者が出る、という解釈になる。これには疑義がある。

 日本は強力なロックダウンを実施しておらず、新型コロナに暴露した人が欧米より極端に少ないとは考えにくい。むしろ「これまで多くの人が新型コロナにすでに感染しているが、自然免疫でほとんどの人が治っている」という仮説で、抗体ができる前に治っているから抗体陽性者が少ないと考えたほうがいい。

 この仮説を用いれば、無症状のPCR検査陽性者が多く発生している現状の説明もできる。第2波が来ても、自然免疫の強さは日本人にとって強い助けとなり、再び欧米より被害が軽くなるという考え方が成り立つ。


■日本では暴露した人が多いが自然免疫で98%治癒


 ――「感染7段階モデル」により新型コロナの感染や症状に関わる要因を数値化してみたということですね。


 新型コロナの患者数を予測するために使えるデータが現状では非常に限られる。かかった人の重症化率や死亡率という最も基本的なデータすらない。


 新型コロナの全体像を把握するためには、全国の暴露者数を推計することが大切なので、①全国民1億2644万人、②年代別患者数の実測値、③抗体陽性率推計値(東京大学の推計と神戸市民病院の推計)を使って、パラメータである暴露率(新型コロナが体内に入る率)をいくつか設定し、動かしながら、実際の重症者や死亡者のデータに当てはまりのよいものを探るシミュレーションを行なった。



 シミュレーションの結果の概略はこうだ。


 まず、国民の少なくとも3割程度がすでに新型コロナの暴露を経験したとみられる。暴露率をいろいろやってみたが、30~45%が妥当だろう。暴露した人の98%がステージ1かステージ2、すなわち無症状か風邪の症状で済む。すなわち自然免疫までで終了する。

 獲得免疫が出動(抗体が陽性になる)するステージ3、ステージ4に至る人は暴露者の2%程度で、そのうち、サイトカイン・ストームが発生して重症化するステージ5に進む人は、20代では暴露した人10万人中5人、30~59歳では同1万人中3人、60~69歳では同1000人中1.5人、70歳以上では同1000人中3人程度ということになった。

 あくまでもデータが限られる中での大雑把なシミュレーションだが、今後、データがもっと明らかになれば精緻化できる。


 ――欧米との死者数の違いに大きな関心が寄せられています。


 日本の死者数が欧米の100分の1であることについて、以下のような3つの要因の差という仮説で試算を試みた。

 まず、第1に暴露率。日本の場合、重症化しやすい「高齢者の暴露率」が低かったのが効いたのではないか。例えば特別養護老人ホームではインフルエンザやノロウイルスの流行する季節は家族の面会を禁じている。これらウイルスに対する対策も取られている。高齢者の外出自粛など自発的な隔離も積極的に行われた。他方、海外では介護施設や老人ホームのクラスター化による死者数が多い。「高齢者の暴露率」は日本が10%、欧米が40%と設定してみた。


■自然免疫力のわずかな差が大きな違いを生む


 第2に、自然免疫力。自然免疫で治る人の比率が欧米より日本人(アジア人)のほうが高く、その結果「軽症以上の発症比率」が低くなるが、抗体陽性率も低くなる。自然免疫力(特に細胞性免疫)の強化にBCGの日本株とロシア株が可能性は高いとみている。

 「(暴露した人の)軽症以上の発症比率」については、自然免疫力が標準分布と仮定し、シミュレーションの結果を当てはめると、自然免疫で処理できる率が日本人は98%で、対応できないのは2%ということになる

 日本では、新型コロナにかかった人が次の人にうつしても、その大半が自然免疫で処理され、次の人への感染につながらない。すなわち新型コロナ感染のチェーンが切れやすい。よほど多くの人に暴露を行なわないと、そこで感染が途切れる可能性が高い。一方、抗体陽性率から考えると欧米では自然免疫で対応できずしっかり発症する人が、日本よりもはるかに多いと考えられるので、「軽症以上の発症比率」を日本の5倍の10%と想定した。

 日本と欧米の自然免疫力の差をそれぞれ2%と20%(10%の間違い?ペンギンドクター注)と想定すると、両者の差はわずかに見えるかもしれないが、このわずかな差が欧米と日本の新型コロナ被害の大きな差を生んだ可能性が高い。欧米では感染後、しっかり発症して他の人にうつす、再生産確率が高いため、日本と比べて感染スピードが速く、かつ感染拡大のチェーンが途切れないということになる。

 第3は、「発症者死亡率」。日本は欧米に比べて低いと考えられる。その理由としては、欧米人に比べて血栓ができにくいことがある。サイトカイン・ストームが起きても、日本のほうが重症化する可能性が低いと考えられる。「発症者死亡率」は日本では0~69歳で0.01%、70歳以上では40倍の0.4%だが、欧州は0~69歳で0.05%、70歳以上が2%とした。

 他の条件は変わらないという前提で、このような数字を設定すると、10万人当たり日本の死亡者は0.9人、ベルギーの死亡者は82人となり、現在の実態とほぼ一致する。「暴露率、軽症以上の発症比率、発症者死亡率」の数字の設定はもちろん仮説的なものであり信頼性は低い。だが、全部の数字を掛けたり足したりして求められる日本の死亡率が、欧米の死亡率の100分の1になる必要があるので、3要因のいずれか、またはすべてにおいて、日本が欧米に大きく勝っていることは間違いない。


■死者は最大で3800人、検査ではなく重症化対策を


 ――緊急事態宣言の解除後は「感染者数」、正確には検査でPCR陽性とわかった人の数ですが、増えています。しかし、自然免疫で98%も治るとすれば、とるべき対策は違ってきます。

 PCR検査でどこから見ても元気な人を捕捉することは大きな問題があると考えています。PCR検査はコロナウイルスの遺伝子を探すものなので、体内に入って自然免疫で叩かれてしまい他の人にうつす危険性のないウイルスの死骸でも、陽性になってしまう。発症可能性がゼロに近い抗体陽性者でも、再度新型コロナウイルスが体内に入った時点で検査を行なえば陽性になる。

 また、新型コロナウイルスにとっては東京は人口密度が高く、3密を形成するようなウイルスが生き延びるための条件が揃う場所がある。だが、地方ではそうした場所ができにくい。98%自然免疫で処理されるので、ヒトが密集していないと、次に人にうつしていくチェーンがすぐ途切れてしまうからだ。

 日本ではこれまでのところ、人口10万人に対し0.8人が亡くなっている。我々は自然免疫の存在を重視しており、それを前提としたシミュレーションでは、新型コロナウイルスが現状の性格を維持するかぎり、どんなに広がっても10万人中3人以上、つまり全国で3800人以上死ぬことはなさそうだというのが、結論の一つだ。

 一方、人口10万人に対して16人、全国で2万人強が自殺で亡くなっている。過去に景気が悪化したときは3万人を超えて10万人当たり24人になった。そうであれば、10万人対比で見て、新型コロナによって2人亡くなるのを防ぐために、景気悪化で8人の死者を増やすのかということになる。対策のメリットとデメリットのバランスを考えないといけないのではないか。

 また、スティホームによって肥満の人が増えると、ACE2受容体が増加し、新型コロナの感染リスクも血栓形成のリスクも高まる。社会活動の停止で罹患率は下がっても、感染率や重症化率が上がる。そうしたバランスも考える必要があるだろう。


(注)ACE2受容体:新型コロナウイルスのスパイクと結びついて、細胞の中に取り込んでしまい、感染が成立する。子どもにはほとんどなく、年齢が上がると増える。また、高血圧や糖尿病でも増える。


 ――年齢やリスクに応じた対策を打つべきだということになります


 30歳未満では重症化リスクは限りなくゼロに近いのに、対面授業を行わないとかスポーツをさせないというのは誤った政策だと思う。対面での教育が行われず、オンライン教育のみにすることの弊害のほうがずっと大きい。平常に戻すべきだ。明らかな症状が複数の学生に現われる集団発生が起きてはじめて、報道を行ない学級閉鎖を行なえばいいのではないだろうか。

 30~59歳も通常の経済活動を行ってよいはずだ。罹患した場合は症状に応じて自宅待機などを行ない、集団発生すれば職場の閉鎖をすればよい。70歳以上の高齢者は流行している間は隔離的な生活をせざるをえないだろう。何度も言うが、感染リスクはある。しかし、2%未満の重症化リスクを減らせばいい。


■感染パターンを注視しつつ、社会活動は続けるべき


  ――すでに東京都の7月15日の会議では、PCR陽性で無症状や軽症の人を入院させているため病床が逼迫しつつあると報告されています。

 肺炎や呼吸困難といった兆候が認められなければ宿泊所、無症状・軽症なら自宅待機といった変更が必要だ。老齢者の施設等の対策に重点を置くべきだ。

 ――先ほどウイルスの性格が変わらなければという条件付きでお話されましたが、そこはいかがでしょうか。

 第2波が来たと判断したら、最初にやるべきはPCR検査の拡大ではなく、ウイルスの遺伝子解析だ。従来と同じ型のものなのか、違うものが来たのかを判別することが重要だろう。感染者を捕まえて隔離することより、感染パターンを把握することが重要だ。感染力が上がったのか、毒性が強まって死亡率が上昇するのか。それに応じて対策も変わる。感染7段階モデルのようなものを作っておくと、そうした議論をすることが可能になる。



●いかがですか。私はこの報告をみて、すべてに同意するわけではありませんが、全体として現状を十分把握したいい報告だと思いました。知識の整理にも役立ちます。現在私は、様々な情報を断片的に収集しているのですが、この報告だけは女房にも見せたところ、納得していました。

 いずれにしろ、これは仮説ですし、これからも多くの感染者の分析が必要になってくると思います。高橋泰教授の今後の報告に期待したいと思います。