[138](投稿)核ゴミ問題 高知の闘いの教訓

f:id:new-corona-kiki:20200825064844j:plain
晩夏


北海道新聞電子版によると

寿都(すっつ)】
国が進める原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の第1段階となる文献調査に、後志管内寿都町が応募を検討していることが12日、分かった。北海道新聞の取材に対して片岡春雄町長(71)は「将来の町の財政を見据え、住民の意見を聞いて判断する」と話し、調査に伴い交付金が支給されることなどを理由に挙げた。今月下旬に開催予定の町民意見交換会の内容を踏まえ、9月にも方針を決める。

 国が2017年に処分に適した場所を示す「科学的特性マップ」を公表した後、自治体が調査への応募検討を明らかにしたのは寿都町が全国で初めて。07年には高知県東洋町が処分場候補地に応募したが、住民の反発で撤回した。北海道には都道府県で唯一、核のごみを「受け入れ難い」とする条例もあり、寿都町の対応は議論を呼びそうだ。

北海道知事は、「核ごみ拒否方針」 「概要調査に不同意」とあります。

 寿都町は、科学的特性マップで大部分が処分適地とされた。町は19年度から国のエネルギー政策に関する勉強会を町内で開催。今年6月からは毎月、原子力発電環境整備機構(NUMO)による核のごみ地層処分の勉強会を開いてきた。

 片岡町長は応募検討の理由として、文献調査を受けると最大20億円の交付金が出ることによる財政改善を挙げる。町は今月下旬に予定する町民との意見交換会の内容を踏まえ、9月中旬までに方針を決めるという。片岡町長は「合意を得られるのであれば突っ込んで話をしていく価値はある」と話す。


※※※ 



 北海道新聞の電子版の一部を引用しましたが、この先例が高知県の東洋町にあります。

 具体的で有用な記事がたくさんありますが、高知県東洋町を故郷とし、農水省関連を定年前に辞めた故郷の東洋町の原田英祐氏の文章がとても参考になると思いますので下記に引用させていただきます。

 この「事件」は平成18年のことですから、今日の経産省の核廃棄物関連の政令や省令等を国は手を変え品を変えて、各町長などを通じて、町の議会・議員・町民を籠絡(ろうらく)する手段をも再考し、内々に実施ていると推測できます。今回の北海道後志(しりべし)の寿都(すっつ)町での「核のごみ処分場選定事件」問題を考えるために「東洋町の核廃問題について」を掲載させていただきます。






東洋町の放射能・核廃物処分問題について  
       高知県東洋町  原田英祐

1. 高レベル放射性廃棄物最終処分とは

 原子力発電は「トイレなきマンション」と言われ、核物質を燃やして発電して、そのあとに残る核廃棄物の最終処分が未解決。核廃処分の立地調査をするだけで年間10億円の交付金が出るという「核廃最終処分法」があり、市町村長がNUMO(原子力発電環境整備機構)に、立地調査を応募することができます。
 国が認可したら、住民・議会・知事が反対しても6年間は調査が強行され、毎年10億円程度の交付金(原子カマネー)が出ます。この金は反対住民を届服させる軍資金。細川内ダム問題で木頭の方々はお察しできると思います。

2. 東洋町の核廃問題

 東洋町では、平成18年3月に町長が秘密裏に応募。しかし、「住民や議会の同意を得ていない」との理由で一旦応募書は返されるものの「核廃受け入れを前提とした」町長(国、NUMO)の呼びかけの勉強会などを重ね、計画は着々と進行。
 やがて住民やサーファーから反対の声があがりはじめ、署名運動もはじまり住民の69%が反対署名して請願書を提出。全国サーファーも4千人余の反対署名を町長と議会に提出。方々で反対集会や学習会なども開かれ、日に日に住民パワーがアップしていきました。住民パワーこそ勝利の原動力でした。県や周辺市町村はもとより、全国的にも反対の声が圧倒的でマスコミ関係も表面は中立報道と言いながら、核廃反対の報道に尽力。とくに原子力発電所事故隠しなどが次々と報道されました。核廃応募推進派は、東洋町長と4名の町会議員と一部住民で「百年後に放射能は自然消減。活断層はなく地層は安全」など、非常識な見解を発表。
 町長は安全性などまったく考えず、頭の中は交付金で満杯。議会は反対派6対推進派4で町長辞職勧告、核廃持込禁止条例制定など、あらゆる手段を講じました。国の態度は一転して「核廃最終処分法は、町長の意志のみで概要調査まで進めることになっている。住民や議会や県知事の反対など受け付けない」と、国会答弁でもひらきなおりました。
 こうなれば町長をやめさせ、核廃反対の町長を当選させるしかありません。その頃から、おもな反対派には殺人予告のような脅迫電話もある中、沢山氏(現町長)を擁立。圧倒的なリコール署名が集まり始めると、町長は、リコール前に辞職(4月5日)し、町長選挙に突入。

3 反対運動の結果とその後

 反対派沢山保太郎氏が70%の得票で圧倒的に勝利しました。当選の翌日すぐに国に対して調査申止と自紙撤回を求めると、国側は約束どおり、あっさりと東洋町からの撤退を決めました。5月20日臨時議会でr東洋町放射性核物質の持ち込み拒否に関する条例」が全会一致で可決成立、東洋町の核廃騒動がここに終止符をうったのです。
 しかしながら、国政では「今後は自治体から応募を待つだけでなく、候補地を国が選定する方法も検討する」としています。高知県では先日、中谷白民党衆議員(もと防衛庁長官)の父親ら数名が核廃誘致のNPO団体設立の申請を出していることなど、予断をゆるしません。
 まだ町政が安定したとは言えませんが、過渡的な現象だと私は判断しています。豊かな自然や歴史・文化を活用し、産業振興のための公杜たちあげや、産直販売所「白浜海の駅」開設などが準備段階です。

4. おわりに

 私は定年前に農水省関連を退職して故郷の東洋町へ帰り、現在は町会議員をはじめ神杜や寺の総代その他、各種地域活動をやっています。公務員時代には労組役貝もやり、国との喧嘩は経験ずみ。藤田恵氏の著書などで細川内ダム反対運動をお手本に、国会県会議員、知事周辺市町村、マスコミ、反核団体などに情報を発信して対応。沢山氏らとともに上京し、日弁連への支援要請、経産省でのひざ詰め談判も行ないました。
 町議会では、国の発行した「原子力白書」「原子力安全白書」から原子力行政や核廃処分の問題点などをとりあげ、町長やNUMOや国を追求。高レベル廃棄物に隣接して低レベル廃棄物も埋めるという国のマル秘方針も暴露。いったん高レベルを受け入れると、低レベルなども受け入れさせられる恐れあ
り。「調査だけOKして数十億円いただき、途中で中止させたらよい」という甘い考えはダメ。
 そんな美味しい話なら全国方々の自冶体が応募しているはず。正式応募は東洋町だけなのです。反対するなら徹底的に反対すべし。世界的に深地層処分は問題ありとして他の方法が模索されています。けっして安心・安全なものではありません。現時点では地中深く埋めず、地上もしくは半地下に保管施設を作り、手の届く範囲内で注意深く監視していくことが最善策。

 東洋町の核廃騒動は、さいわいにも約1年で終結。住民パワーと日本全国の世論が、法律をも撃破し、金よりも大切なものを再認識させました。    



 寿都町の町長は、(新聞には、「町長、稼ぐ行政が持論」「20億円おいしい」「これしかない」「狙いは町財政改善」という見出しが載っていますが)、昨年の11月には、「核のごみなんて言葉が出たら大変なことになる」「文献調査で20億はおいしいと感じていたが、この段階では水産加工業ふるさと納税も堅調で、(最終処分場選定調査に)立候補したらふるさと納税もなくなるし、漁業などへの風評被害も出るかも)と慎重に言葉を選んでいたという。しかし、コロナの感染拡大で今年4月には「経済が止まり、国が地方に金を回せなくなれば、現状維持も難しい、町を救うには今、手を上げるしかない」と応募を決断したという。

 「核のごみ」の議論に貢献する「見返り」として、期待するのは、洋上風力を国が優先的に配備する「促進区域」への早期指定だ。片岡氏は、応募検討が「(指定に)有利に働いてくれればいい」と話す。

 今回の応募検討に対して町内外で批判が高まる中、片岡氏は、調査応募の可否は町民の意向を踏まえて判断すると表明。しかし、肝心の町内でも「なし崩し的に処分場建設までいくのでは」(30代男性)など反対の声も強い。



 片岡氏は「調査と誘致 別の話」という意見も出しているが、腹の中ではすでに最終段階まで考えていると思われる。

 「10倍返しで、石が飛んでくるかもしが、覚悟の上だ。国が札束でほおをたたいたのではなく、仕掛けたのはわたしだ」と『自負心』をのぞかせていると、同時に、国を(国策)を庇(かば)うことも忘れない周到さである。



◆◇◆ 石礫(いしつぶて)飛んでこようが構わない



◆◇◆ 稼いでた自信があって核のごみ



 片岡自信過剰(かたおかじしんかじょう)作



◆◇◆ 東洋町反対の声見習えば



片岡知恵象(かたおかちえぞう)    作



 東洋町の反対運動に代表される、いくつかの県の核のごみ受け入れ反対運動を見習って、億単位の金と同じく、億単位の時間を経過しなければ放射能の自然界の生命体への影響はなくならないことに思いを寄せないならば、一時の「裕福」も「水の泡」になります。

 先ずは、基礎的な「放射能とは何か?」、「原発の廃棄物とは何か?」などの基礎的な勉強をしなければ、原発の存在する時代・新型コロナのパンデミックの中にいる時代の「労働者・人民の明日はない」のではないでしょうか?


     批評禍 中村銀之助