① 日本からの新型コロナ後遺症の報告 約2割が発症約1~4ヶ月後に脱毛の症状も
忽那賢志 | 感染症専門医
10/24(土) 9:38 ①は、yahooニュースからの引用です。
新型コロナウイルス感染症には遷延する症状、いわゆる後遺症を訴える患者さんが一定の割合でいらっしゃいます。
海外から後遺症の報告が続き、徐々に実態が明らかになってきていましたが、日本からもこの後遺症に関する報告が出ましたのでご紹介いたします。
新型コロナの後遺症「LONG COVID」
海外ではこの新型コロナの後遺症についての研究が進められています。
イギリスの国立衛生研究所(NIHR)では遷延する新型コロナによる症状(いわゆる新型コロナ後遺症)を「LONG COVID」と呼び、病態の解明に取り組んでいます。 (石川木鐸 注:この場合のLONGは、「長く続く」という意味で、LONG COVIDは、コロナウイルスによる「長引く後遺症」と読み替えてください)
このLONG COVIDは、単一の病態ではなく、実際には4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないか、ということが分かってきました。
4つの病態とは、
(1) 肺、心臓への恒久的障害
(2) 集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)
(3) ウイルス後疲労症候群(post-viral fatigue syndrome)
(4) 持続するCOVID-19の症状
を指し、これらがオーバーラップしていると考えられています。
このうち「(2)集中治療後症候群」は集中治療室(ICU)在室中あるいはICU 退室後、さらには退院後に生じる身体障害・認知機能障害・精神の障害を指すものであり、多くは重症例でみられる後遺症ですが、それ以外の病態の重症度は様々であり、軽症例でもみられることがあるようです。
例えば、「(1)肺や心臓への恒久的障害」は、軽症例や入院を要しなかった症例でも報告されています。
また「(3)ウイルス後疲労症候群」、「(4)持続するCOVID-19の症状」に関して海外から報告されています。例えば、新型コロナを発症してから約110日後に電話インタビューで回答した120人の回復者のうち、約3割の人で記憶障害、睡眠障害、集中力低下などの症状がみられたというフランスからの報告がありますが、これらの症状は「(3)ウイルス後疲労症候群」の症状と考えられます。
イタリアからの報告では、新型コロナから回復した後(発症から平均2ヶ月後)も87.4%の患者が何らかの症状を訴えており、倦怠感や呼吸苦、関節痛、胸痛、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢などの、新型コロナの急性期にみられた症状が持続していたとのことです。これは「(4)持続するCOVID-19の症状」に当たるものです。
日本からのLONG COVIDに関する初めての報告
先日、日本から初めてとなる新型コロナ後遺症に関する臨床研究が報告されました。
国立国際医療研究センター(感染症で有名な病院ですね)からの報告であり、著者にはMiyazato, Moriokaらの中心メンバーとともにSatoshi Kutsunaというどこかで聞いたことのある人も名を連ねています。
国立国際医療研究センターに入院していた新型コロナ患者に退院後に電話インタビューを行い、それぞれの症状についての症状の持続について詳細に聴取したものです。
最終的に回答が得られたのは63人(9割が日本人)であり、このうち酸素投与を受けた中等症患者が27%、人工呼吸管理を受けた重症患者が8%でした。つまり大半は軽症患者です。
新型コロナの症状の持続期間(Open Forum Infectious Diseases, ofaa507より)新型コロナの症状の持続期間(Open Forum Infectious Diseases, ofaa507より)
「(4)持続するCOVID-19の症状」に関しては、発症から60日経った後にも、嗅覚障害(19.4%)、呼吸苦(17.5%)、だるさ(15.9%)、咳(7.9%)、味覚障害(4.8%)があり、さらに発症から120日経った後にも呼吸苦(11.1%)、嗅覚障害(9.7%)、だるさ(9.5%)、咳(6.3%)、味覚異常(1.7%)が続いていました。
また、急性期にはなく後から嗅覚障害が出現した人もおり、発症から92日経ってから嗅覚障害が出現した人もいました。
コロナ患者の脱毛がみられる頻度と発症日からの推移(Open Forum Infectious Diseases, ofaa507より)
また、「(3)ウイルス後疲労症候群」に関連した症状として脱毛についても聴取が行われており、全体の24%で脱毛がみられました。脱毛の持続期間は平均76日で、発症時には全くみられないものの、発症後30日くらいから出現し、発症後120日くらいまでみられることがあるようです。
今回の報告と、これまでの海外の報告とを比較してみると、「(4)持続するCOVID-19の症状」に関しては、イタリアの報告よりもそれぞれの症状の続く頻度は低いようです。
一方で脱毛についてはフランスからの報告の頻度とほぼ一致していました。
今後は、どういった人にこれらの後遺症の症状が現れやすいのか、についての解明が必要と思われます。
LONG COVIDのインパクトを正しく捉える
徐々に新型コロナ後遺症の実態が明らかになってきました。
新型コロナ感染者は世界で4000万人を超えており、まだまだ増え続けています。
ほとんどの人は回復していますが、一方で回復者の中にはこうした後遺症に悩まされる人が一定の割合でいるという事実が、社会に与えるインパクトは非常に大きいものと考えられます。
「後遺症は怖い」とやみくもに恐れる必要はないと思いますが、後遺症の実態を考えれば「若いから感染しても大丈夫」とは決して言えないでしょう。
後遺症の症状に対する有効な治療法はない以上、新型コロナに罹らないことが最大の予防になります。
新型コロナの流行が始まってもうすぐ1年になろうとしています。
そろそろ感染対策に対する意識も緩んでしまう時期ですが、Withコロナの時代はまだまだ続きそうです。
「手洗い」「咳エチケット」「屋内でのマスク着用」「3密を避ける」といった感染対策を今一度徹底しましょう。
②新型コロナウイルス感染症の後遺症に対する治療法を発見か? 20.11.01
新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/看護学群・風間逸郎教授
中身は難しいですが、いくつかの薬剤に効果があるとの基礎研究と薬剤の研究がなされた報告です。
以下のアドレスからご覧ください。
https://www.myu.ac.jp/academics/news/folder001/4103/
※※※ 石川木鐸(ぼくたく)のコメント
感染症と免疫に詳しい専門家の知人に、「ほとんど無症状か、軽い風邪症状を患(わずら)った」若い人でも、何カ月も続く後遺症、例えば、頭痛、胸痛、なんとも言えない「だるさ」などに悩まされている人がいるという記事を見て、まだまだ増えていく、第3波の新型コロナの感染に罹患しないようにしたいのだけれど…という話をしてみると、いろいろと教えてくれました。
その中で分かりやすく、これまで、TV放送などで見聞されたことを、日常的に使える方法を教えてもらいました。
先ずは、寒くて乾燥する冬場になるべく感染しないようにすることを第一に考えて、「上意下達(じょういかたつ)」の「自粛」ではなく、積極的に、自らもこれまでの「研究」されていることがらからはじめましょう。
①3蜜を避けること、②手洗いをまめにすること(アルコール消毒(丁寧にやると数秒で効果があります)、石鹸で手・手首・爪・顔などをよく洗うと脂溶性なので効果があります。歯磨きをこまめにする(歯磨き粉は石鹸のような成分でできています。いわばお口の手洗いのようなものです。(できれば、専用の舌を磨く用具で軽く舌を洗いましょう)、ついでに「うがい」もしましょう。
大小便を排せつする前後の手洗いをする。ドアノブに触れたら、アルコールか石鹸で良く手洗いをする。ウイルスは消化管でも生息し、糞便にも出てくるので、口から肛門、排泄物に注意して、洗浄や手洗いをする。トイレの水を流すときには、トイレの蓋(ふた)をしてから、水を流すとトイレの水の跳ね返りが無くなります…
以上は、どれもこれまですでに、世に言われてきたことを、手を抜かずに、やりましょうということです。
マスクはもちろんする。もし外食することになった時は、食事の時に話をするときはマスクして話をする。食べるときだけマスクを外す…ということも含めて実行してくださいね。
無症状の人も、軽い風邪だと思った方も、いろいろな「後遺症」に悩まされないようにしましょう。
まだやれることはありますが(冬場の湿度の保持、湿度を保持する器具をお使いの方は、道具を部屋の中心に設置する。換気は1時間に5分は必要)、今回はこの辺りで、終わります。