[106](投稿)子どもの感染がすくないのはなぜ?

   
管理人のアルバムより 志賀高原焼額山
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ペンギンドクターからの寄稿


皆様

 新型コロナウイルスの感染が広がってきています。ある程度予測されたことですが、政府は非常事態宣言の再発令には否定的です。私自身もやむを得ないと思っています。ただし、GOTOプランの是非については、私は否定的です。4連休の前ということで、22日に開始することに固執し、東京を除く形で始めるぐらいなら、延期する方がいいと女房と二人で話していました。都道府県の知事も反対してはいましたが、本音については微妙だったと思います。

 政府としては声を上げた以上、延期するのはますます権威失墜ということなのでしょう。実際に観光地の経済は崩壊寸前でしたし、今回のGOTOプランに頼らざるを得ない地域もあったようです。難しい問題です。

 私なりに医療を離れて今の日本の状況を考えてみるのですが、政府に同情する気もないではありません。野党のように、感染がますます拡大すれば、「総辞職」だと吠える気にはなりません。なぜなら、新型コロナウイルス感染を完全に抑え込むのは不可能だからです。抑え込むのが可能な時期は1-2月の時点でした。台湾やベトナムのやり方です。あるいは強権発動をした本家の中国のようなやり方です。広く静かに感染が拡大していたはずの1-2月そして3月を無策で過ごし、4月初めには日本感染症学会が「軽症にはPCR検査をしなくていい」と発表しています。その後の「自粛」のおかげで、感染はそれなりに抑えられていたと思いますが、それは見かけであり、静かにウイルスは広がっていたのだと考えています。なぜなら、そういうウイルスだからです。


 評論家的に述べるのは気が引けますが、若い人たちがGOTO政策を利用して観光地を訪れること自体は、いいことだと思います。ただし、私たち70歳以上は動きません。一番の旅好きの団塊の世代が動けないので、観光地もそれほどのメリットはないと思います。いずれにしろ、細々と経済が動き始めるしかないのではないか、と考えています。


 添付ファイルはCOVID‐19関連です。子どもに感染が少ないことについての仮説です。説得力はあると私は感じています。お読みいただければ幸いです。


 東京女子医大が「一時夏のボーナスゼロの回答」をして話題になりました。結局撤回となりましたが、女子医大の経営状況が悪いのは、周知の事実です。組合は医師も入っていると思われる「医労連」のようですが、経営者側の理事長についての悪評もネット上では飛び交っていました。真偽はわかりません。

 恐らく全国の病院が同様の形だと思いますので、国・政府も「医療提供体制の崩壊」に対しどうするのか、コロナ以後も含めて課題山積です。

 政府および与野党の政治家は、「アベノマスクに200億以上拠出したぐらいだから、この際思いつくものにドンドン金をつかっちゃえ」と十分検討もしないで支出しているように見えます。今こそ、長期的な政策が必要です。例えば、全国の小・中・高・大学に無償で双方向ネットワーク端末を整備するとか、子どもたちの教育格差を無くす試みが必要でしょう。・・・・・・。
 
子どもに感染が少ないことについての仮説です。説得力はあると私は感じています。お読みいただければ幸いです。

新型コロナウイルス(COVID‐19)情報その12


 順不同にてCOVID‐19情報をお伝えします。


 新型コロナウイルスそのものを言う場合、SARSCoV‐2と表現します。また「サロゲート」の意味は「代理」です。


●ウイルスは10時間で院内の4割超に拡散

 英・新型コロナのサロゲートウイルスを用いて検証

 2020年6月19日メディカル・トリビューンより

 新型コロナウイルスSARSCoV‐2)がどのように医療機関全体に拡散していくのか。英・University College LondonのRawlinson氏らは、ヒトには感染しないSARSCoV‐2のサロゲートウイルスを用いて医療機関内におけるウイルス感染をシミュレート。その結果、ベッドの手すりに付着させたサロゲートウイルスは、10時間後には院内に設置したサンプルの41%に拡散していたと、J.Hosp.Infect(2020年5月20日オンライン版)に報告した。


 開始から10時間後、サロゲートウイルスは病室のドアノブ、待合室に置かれた肘掛け、院内にある子供の遊び場の玩具や絵本などからも検出された。

 ベッドの手すりのみに1回噴霧したものが、医療スタッフ、患者および見舞いに来た家族や友人・知人を介して伝播することを示している。



 いかがですか。

 ウイルスは咳やくしゃみ、体への接触によって拡散するのですが、上記の実験から、著者らは「接触面が重要な役割を果たすこと、手指衛生と環境の消毒を徹底することの重要性を示している」と述べています。

 病院でのクラスター(集団感染)が多いのは当然とも言えますし、病院に限らず、一人患者が近い周囲にいれば、ウイルスがあっという間に広がる可能性があるのは当然ともいえるでしょう。感染防止などできないのではないかとすら思います。その割には日本の感染者は少ないですね。やはりPCR検査の不足によるものでしょうか? とすれば、PCR検査が増えると感染者も増えるのは当然ということになります。


 子どもの感染が少ないのは以前から言われています。2020年7月16日にM3.comAIラボに見られた論文というか、エッセイから引用します。5ページあるので抜粋しつつ要約します。


●学校に通わせても大丈夫?新型コロナ、子どもに関する3つの疑問

◍①新型コロナウイルス感染症(以下COVID‐19)に子どもたちはどれほど感染しやすいのか?

◍②COVID‐19は子どもたちにどれほど悪影響を及ぼすのか?

◍③子どもたちはCOVID‐19を他人にうつすのか?


まず①です。

 子どもは大人よりもCOVID‐19の感染率が低いことがわかっている。正確には感染率は約半分だ。これはロンドン大学衛生熱帯医学大学院が中国、イタリア、日本、シンガポール、カナダ、韓国のデータを使用して実施した最近の研究による。また米国疾病予防管理センターが実施したCOVID‐19の患者14万9760人を対象にした調査では、17歳以下の子どもたち(米国人口の22%を構成する)の割合は、全米で確認された感染者の2%に満たない。


次に②です。

 ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の調査では、子どもがCOVID‐19に感染した場合、通常、その症状は非常に穏やかだと示している。70歳以上の成人の69%と比較して、10~19歳の子どもたちは5人に1人(20%)だけが臨床症状を呈した。

 子どもがCOVID‐19で死亡する確率は極めて低い。ケンブリッジ大学統計学者によれば、イングランドウェールズにおける9週間のパンデミックのピーク時に、14歳以下の子どもの死者数は、その年齢層の人口約1100万人のうち、たった5人だった。

 COVID‐19に関連して、川崎病に似た、好ましくない炎症性症候群が子どもの間に発生しているものの、極めて稀だ。「世界中で報告された症例は500例に満たないと思います」とバンダービルト感染・免疫・炎症研究所の教授は言っている。つまり、保護者は子どもたちがSARSCoV‐2に感染しても過度に心配する必要はないということのようだ。


次は③です。

 結論は、様々な意見があって、わかりませんということです。要するに、データが少ないので不明ということです。つまり子どもは感染することが少なく、かつ感染しても症状がないか軽いので医師にかからない。したがってデータが少ないという結論です。

 最も恐れることの1つは、子どもが学校でウイルスを拾って持ち帰り、高齢者に感染させてしまうことだと述べています。

 この文章の後には学校の教師の問題が述べられているが省略します。

 さて、それではなぜ子どもにはCOVID‐19が少ないのかが問題になります。回り道ですが、次の論文から始めます。


日経メディカルオンライン2020年7月2日配信。

インタビュー◎気道上皮のACE2発現低下が新型コロナウイルス感染を阻むカギか

●喘息患者はCOVID‐19にかかりにくい――3カ国8地域のデータのメタ解析より

国立成育医療研究センター研究所免疫アレルギー・感染研究部部長の松本健治氏に聞く


 気管支喘息患者は新型コロナウイルスSARSCoV‐2)に感染しにくい可能性があり、また喘息を基礎疾患に持つことは重症化と相関しないことが明らかになった。

 基礎研究では喘息患者の病態に特徴的なサイトカイン環境は、気道上皮細胞にウイルスが侵入する際の足場となるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現を抑制することもわかってきている。


この論文の後の方に述べられている文章を先に記します。

新型コロナウイルスは気道上皮細胞に侵入する際に、ACE2に結合しますが、他の多くのかぜ症状を引き起こすウイルスは侵入にACE2を使いません。重症急性呼吸器症候群SARS)ウイルスは細胞への侵入に際し、やはりACE2に結合することが知られている。2003年に流行したSARSのときも、小児の喘息患者はSARSにかかりにくかったとの報告がある。」


 COVID‐19に関係のある論文のうち、基礎疾患として喘息の有無を記載してある8論文についてメタ解析をしたところ、

 世界3カ国(中国、米国、メキシコ)8地域から報告された合計1万7485人のCOVID‐19患者のうち、喘息を合併している人は5.27%だったのに対し、当該国の一般集団における喘息有病率は7.95%で、喘息を基礎疾患に持つ人の割合は一般集団に比べてCOVID‐19患者集団の方が有意に少ないこと(p<0.0001)が分かった。

 ただし喘息発症頻度は性別や年齢で異なるため、有病率を厳密に比べるならば年齢層などを考慮すべきだが、今回それができていない。また一般集団の喘息有病率は国単位で調べているが、厳密にはそれぞれの地域における有病率で比較すべきですが、それもできていない。しかし明らかな有意差が出たので意味があると考えた。内容は『Journal of Allergy and Clinical Immunology(JACI)』2020年7月号に掲載される。


◍喘息の存在はCOVID‐19の重症化とも関連しない

 中国と米国の2つの研究を検討したところ、合計2199人(軽症者1193人、重症者1006人)のCOVID‐19患者のうち、COPD(閉塞性呼吸器疾患)と糖尿病を基礎疾患に持つ患者の割合は重症者に有意に多かったのに対し、喘息を基礎疾患に持つ患者の割合は軽症者と重症者で差がないことがわかった。つまり喘息の存在はCOVID‐19の重症化と相関していないと考えられる。


 重要と思われるのは、ACE2は血管内皮細胞にも発現しているという点です。新型コロナウイルスはACE2を細胞内への侵入のために利用しているだけでなく、ACE2を介して細胞を刺激する働きもあると考えられている。こうした血管内皮細胞への作用は糖尿病や高血圧、腎疾患を基礎疾患に持つ人の重症化に関係している可能性がある。



 いかがでしょうか。上記の論文を読んで、思い出したのが次の論文です。

●COVID‐19重症化と関連?年齢とともにACE2発現率が増加/JAMA

 提供元:ケアネット             公開日2020年6月15日


 新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)は、小児では比較的重症化しにくいとされている。その要因の一つとして、小児の鼻上皮におけるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現が成人より少ないことがあるかもしれない。


 本研究は、2015年~18年にMount Sinai Health System(ニューヨーク市)を受診した4~60歳の患者の鼻上皮を後ろ向きに調査した。サンプルは、喘息におけるバイオマーカー研究のため、喘息の有無にかかわらず収集されたもの。線形回帰モデルは、統計処理ソフトウェアR version3.6.0(R Foundation)を使用して、ACE2遺伝子発現を100万当たりのlog2カウントで従属変数として、年齢層を独立変数として作成した。年齢層は、10歳未満(45例)、10~17歳(185例)、18~24歳(46例)、25歳以上(29例)の4群に分類した。

 主な結果は以下のとおり。

◍305例のコホートが収集され、そのうち48.9%が男性、49.8%が喘息だった。

◍鼻上皮に年齢依存的なACE2遺伝子発現が見られた。ACE2遺伝子発現は、10歳未満で最も低く2.40(95%信頼区間:2.07~2.72)で、年齢とともに増加し、10~17歳では2.77(同:2.64~2.90)、18~24歳では3.02(同:2.78~3.26)、25歳以上では3.09(同:2.83~3.35)だった。

◍従属変数としてのACE2遺伝子発現および独立変数としての年齢層を使用した線形回帰は、年少児と比較して、ACE2遺伝子発現が年長児(p=0.01)、若年成人(p<0.001)、および成人(p=0.001)で有意に高かったことを示した。

◍性別と喘息について調整された線形回帰モデルでも、ACE2遺伝子発現と年齢層間に有意な関連(両側検定、有意な閾値:p≦0.05)が示され、この関連が性別と喘息に依存しないことを示した。



 著者らは「この研究結果は、SARSCoV‐2と人体の最初の接触点である鼻上皮におけるACE2発現が年齢依存的であることを示している。成人に比べて子どものACE2発現が低いことが、COVID‐19が子どもに少ない理由を説明するのに役立つかもしれない。なお、本研究の限界として60歳以上の検体が含まれていないということがある」と述べている。

 いかがですか。COVID‐19の登場以前のデータをうまく利用した研究及びその解釈です。説得力はあると思います。上述の成育医療センターの松本さんもこの論文に言及しています。

 いろいろなCOVID‐19に関しての論文が登場しています。大量の感染者、死者を出しているアメリカですから、COVID‐19についての詳細な研究もまもなく登場してくるでしょう。治療薬やワクチンも患者がいればこそ使われるわけですから。日本初のアビガンも日本での感染数が減少したので、有効か無効かの判断ができずに終わりましたが、COVID‐19感染者数の増加とともに、対象症例も増えて、有為の差を示すことになるかもしれません。