[343](投稿)あとがない菅政権


菅首相、むなしき「1カ月で事態改善」の決意  感染拡大続けば、政権の「3月危機」に現実味

危機感が薄すぎる政府のもとにある日本で新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されてから、ほぼ1年が経過した1月7日。菅義偉首相が緊急事態宣言を発令した。
2020年4月以来、9カ月ぶりの再宣言で、2月7日までの1カ月間となる。

前回と異なり、飲食店を対象に午後8時までの営業時間短縮や住民の不要不急の外出自粛など、要請を軸にしたものだが、多くの専門家は「感染抑止効果は限定的」と指摘しており、早期収束の見通しはまったく立っていない。

1カ月での抑え込みは至難の業
菅首相は7日夕の記者会見で、「感染防止のため政府と国民が一丸となっての対応」を要請し、「1カ月での事態改善に全力を尽くす」と決意表明した。ただ、同日の東京の新規感染者は2447人と激増し、全国でも7500人超と過去最多を大幅に更新している。それだけに菅首相の言葉はむなしく響くばかりだった。

宣言発令を承認した政府諮問委員会の尾身茂会長も「1カ月での抑え込みは至難の業」と指摘しており、政府部内でも発令前から1カ月程度の期間延長を予測する声が相次ぐ。

首都圏だけでなく、大阪府や愛知県などの大都市も感染急拡大を受けて宣言発令を要請する方針で、前回同様に、日を置かずに全国規模での発令を余儀なくされる可能性が強まっている。

菅首相は2月下旬からのワクチン接種開始に合わせての宣言完全解除に期待をつなぐが、その時点でも感染高止まりが続いていれば、念願の夏の東京五輪パラリンピック開催にも赤信号が灯る。その場合、国民だけでなく与党内からも菅首相政治責任を問う声が噴き出すのは確実で、政権の「3月危機」も現実味を帯びそうだ。

7日に改正された緊急事態宣言の具体的対処方針は、①飲食店などの午後8時までの営業時間短縮②住民の午後8時以降の外出自粛③在宅勤務(テレワーク)などの徹底による出勤者の7割削減④イベント開催、施設利用の制限、の4本柱。ただ、いずれも強制力を伴わない要請にとどまる。

宣言は新型コロナ対策の特別措置法に基づくもの。政府は専門家による基本的対処方針等諮問委員会を開いたうえで、コロナ担当の西村康稔経済再生相が同日午後の衆参両院の議院運営委員会で報告・説明した。

宣言解除は「1日500人」が目安
その中で西村氏は、最大の焦点となる宣言解除について、「感染状況が4段階中2番目に深刻な『ステージ3』相当に下がったかを踏まえ、総合的に判断する」と説明。具体的には東京都で感染者数が1日当たり500人に減少することが目安になるとの認識を示した。 

政府は7日午後5時過ぎから対策本部を開催。これを受けて菅首相は午後6時から首相官邸で記者会見し、国民に協力を呼び掛けた。

菅首相の本格的記者会見は4日に続き、今年2度目となる。冒頭発言では緊張した表情で飲食店への時短要請などを説明したが、これまでと同様、手元のメモに目を落としての棒読みを10分余り続けた。

菅首相は「最後に国民の皆さんへのお願いがあります」と視線を中継カメラに向け、「1年近くにわたるコロナとの闘いにおいて、痛みを伴う自粛要請、こうしたことに協力をいただいております。国民の皆さんに心から感謝申し上げます」と頭を下げた。

続いて「今回の世界規模の感染の波は、私たちが想像していたものを超え、厳しいものになっています。しかし私はこの状況は、必ず克服できると思っています。そのためには、もう一度、皆さんに制約のある生活をお願いせざるをえません」と述べ、会話時のマスク着用、テレワーク7割、不要不急の外出自粛を呼びかけた。

そのうえで「この3点を徹底していただければ、必ず感染を抑えることができると考えております。両親や友人など大切な命を守るために行動をお願いしたい。1カ月後には必ず事態を改善させる。首相としてありとあらゆる方策を講じる」と結んだ。

記者との質疑応答で東京五輪パラリンピック開催の可否を問われると、「新型ウイルスの克服に全力を尽くし、感染対策を万全にして、安全・安心な大会を実現したい」と、従来通りの決意を表明。「日本でも2月下旬までにワクチン接種を始めたい。しっかり対応することで、国民の雰囲気も変わってくる」とワクチン接種が国民の安心につながるとの判断を示した。

50分余りで打ち切られた記者会見
ただ、記者団が質した「国民一律10万円再給付」や「PCR検査の大幅拡充」については、答弁メモを読むだけで可否も含めた明確な説明は避けた。

同日の菅首相の会見は、今年の政局を左右する重要な意思表示の場だった。しかし、従来と同様、時間は合計50分間余。出席記者も限定し、再質問も受け付けずに次の日程を理由に打ち切った。

ただ、その後公表された首相動静をみると、菅首相は会見後に首相補佐官厚生労働省事務次官ら「官邸官僚」メンバーと打ち合わせをしただけで議員宿舎に帰っており、与党内でも「首相の国民に訴えるという熱意が感じられない」との批判・不満が相次いだ。

菅首相は就任時に「悪しき前例主義の打破」を公約したが、その後の首相会見を見る限り「悪しき前例の拡大強化にしか見えない」(自民長老)というわけだ。

この首相会見はネット上でも生中継された。冒頭発言最後の「お願い」のくだりでは、中継画面に「国民にお願いするならメモなど読むな」などの書き込みがあふれた。併せてSNS上では「#ガースー」のハッシュタグがトレンド上位に並び、「心に響かない」などの不満が爆発した。

自民党内でも「このままでは内閣支持率のさらなる低下は避けられない」(幹部)との悲観論が広がっている。

首相自ら認めた「見通しの悪さ」
今回の緊急事態宣言は、飲食店の時短など限定・集中的な対策が特徴だ。菅首相は「1年間に学んだ結果」と胸を張るが、会見の冒頭発言で「今回の感染の波は、私たちが想像していたものを超えた」と述べたこと自体が「見通しの悪さを認めた」(閣僚経験者)ことにもなる。

宣言解除の見通しについて、感染症分析を専門とする京都大学の西浦博教授は「今回の対策では高止まりが続く」と断言。前回宣言時と同レベルの対応でも感染鎮静化には2カ月はかかるとのシミュレーションを公表した。

菅首相は会見の質疑で、「宣言を仮に延長する場合、今回と同様に1カ月程度の延長を想定しているのか」と問い詰められると、「仮定のことについては私からは答えは控えさせていただきたい」と薄笑いでかわしたが、記者団からは失笑が漏れた。

有識者の間でも、今回の緊急事態宣言の実効性については「すべてお願いベースで、国民の自助努力しかない。ただ、最大のポイントとなる政府や政治家全体への信頼がなければ、コロナ特措法を改正しても事態は改善しない」(感染症専門家)との見方が支配的だ。

宣言発令と並行してSNS上で大炎上したのが、国会議員の会食のルール化だ。6日の段階では自民、立憲民主の森山裕安住淳国対委員長が「緊急事態宣言下の議員の会食は『夜8時までで4人以下』」で合意していた。しかし、日本医師会やネット上で「議員は率先垂範して全面自粛すべきだ」と批判され、7日の協議でルール策定を見送った。

有識者の間でも「自分で判断できないのでは国会議員ではない」「そもそも会食はやめて昼間に会議室で会えばいい」との声が相次ぎ、SNS上でも「小学生以下」「選良でなく選悪だ」などの書き込みがあふれた。「これでは国民が政治を信頼するはずがない」(財界幹部)というわけだ。

「ポスト菅」めぐり、早くも臆測
そうした中、年明けに発売された有力週刊誌の多くは、「ポスト菅」をめぐる特集記事を一斉に掲載した。「断末魔の菅政権」などそれぞれ刺激的な見出しが並び、次期衆院選での情勢分析でも「自民敗北・菅退陣」の大胆予測が目を引く。

政府与党の苦境を横目に勢いづく主要野党は、18日召集の次期通常国会の冒頭から菅首相に集中砲火を浴びせる構えだ。2021年度予算案に先立って行われる2020年度第3次補正予算案やコロナ特措法改正の審議は、「表向きは順調に進む」(自民国対)と見られている。ただ、「コロナ対策の迷走だけでなく、『桜』や『卵』など追及材料はいくらでもある」(立憲民主幹部)。与党内からも「支持率低下の材料ばかりで、政権はまさに八方ふさがり」(公明幹部)との悲鳴が漏れる。

自民党内の一部には「一か八かの予算成立後の解散断行で4月25日の衆院選しかない」(幹部)との声も出るが、「もはや菅首相の下での解散は困難」(閣僚経験者)との見方も急速に広がっている。多くの与野党幹部は「コロナが収束して、東京五輪開催につなげられるかどうか」が今後の政局展開のカギとみており、「事実上、これから3カ月で政権の命運が決まる」(自民長老)ことは間違いなさそうだ。

東洋経済オンライン 泉宏:政治ジャーナリスト 2021/01/09 より引用)

※※※ 与謝不遜のコメント

 「前回と異なり、飲食店を対象に午後8時までの営業時間短縮や住民の不要不急の外出自粛など、要請を軸にしたものだが、多くの専門家は『感染抑止効果は限定的』と指摘しており、早期収束の見通しはまったく立っていない」と言われている今年の1か月間の「緊急事態宣言」には、経済的に苦しむ様々な業種の経営者も、雇用されている労働者も「納得できない」と思われていると思います。「蛇の生殺し」だと感じませんか!?
 感染拡大のスピード(1月10日には国内死者4000人越え)と目の前にある医療崩壊、多くの業種の方のお店の閉鎖など、現実の人びとの声や現状の把握の極め付きの「甘さ」に、首相の周囲はなにも発言しないのはなぜでしょうか!?記者会見もそそくさに後にしてしまう態度まで指摘される首相がかつていたでしょうか?某新聞社は会見を書面で申し込んでいたにもかかわらず、指名されなかったと書かれていました。
 NHKの解説委員の有馬氏が降板させられました。「所信表明の話を聞きたいといって呼びながら、所信表明にない学術会議について(菅首相に)話を聞くなんて。全くガバナンスが利いていない。NHK執行部が裏切った」(朝日新聞が2020年12月12日付朝刊で報じた発言。酒井官房副長官が5日夜に会食した時のもの)。国谷さんの「クローズアップ現代」の降板にもガースーが関与していました。ガースーは「首切り・左遷」は得意でも、問いかけにアドリブで答えるのは全くの苦手と見えて、質疑応答でも、「宣言文」の棒読みも、見聞すると他人事ながらハラハラするので、見たくない、聞きたくないと目と耳を覆いたくなります。
 これでは、全人民に感染回避の方法・生活・活動をお願いしても伝わらないのも納得します。番頭さんならいいけれど、首相の柄ではないといわれるのも当然のことですね。「『事実上、これから3カ月で政権の命運が決まる』(自民長老)ことは間違いなさそうだ」と言われるのも当然のことですね。
 医療崩壊、経済の崩壊などが生じないように、「見通しの悪い」・「頭」の切り替えが必要な時期ですね。早くしなければ、死屍累々(ししるいるい)となります。それだけは避けなければなりません。「ワクチンを2月末に」と言いますが、「ワクチンは、人口の7割から8割にいきわたるまで効果が出ないと言われている」ことさえ分かっていません。しかも、ファイザーのワクチンに効果があるとしても、1人に2回注射しなければなりません。それを準備し、おおむね終了するまで幾月かかると思いますか?年単位で考える必要があるのではないでしょうか? 
 読者の皆様、労働者の皆様、学生の皆様は、現政権に関してどのようにお考えになられますでしょうか?