[417](寄稿)Covid19とこの国のこれから

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ペンギンドクターより
皆様 
昨日今日と異常に暖かな日が続いています。異常な降雪とともにやはり世界的な異常気象なのでしょうか。

 本日は、いつものMRICからの転送の文章とともに私の近頃感じたことを送信します。

 下記の「永井雅巳」という医師について、ネットで調べてみました。
現在60代半ばの医師で香川医科大学に所属していたようです。内科医のようです。徳島県立中央病院院長(当時61歳)のとき、自身も含めて病院内で喫煙していたことが公になり、「一身上の都合」を理由に退職、その後福島県いわき市の「ときわ会」の病院の在宅医療を担当されていたようですが、現在は千葉県印西市の「印西総合病院」に在職されているようです。
信頼できる医師かどうかはわかりません。「ときわ会」というのは東大の医科研の若手医師たちが関与している様々な面で活動的な団体です。永井医師が大震災後の福島県へ移動して、すぐ千葉県に移るなどの行動を見ても、本当の意味で第一線にて地道に頑張っている医師ではないと想像しますが、文章そのものはそれなりの説得力をもっています。「眉に唾をつけつつ」読んでいただければ幸いです。  


さて、私の日常生活からの駄文を少々お送りします。

一昨日金曜日に「確定申告」に行ってきました。私は40年以上前から「確定申告」を自分でしています。常勤医の時も、いろいろな病院で病理診断や手術や外来をしていましたので、やらざるを得なかったのです。2020年度は、5月に検診業務が中止になりましたが、そのしわ寄せが他の月の検診人数の大幅な増加となり、検診センターの職員の仕事量が増えたのは勿論のこと、私たちパートの医師の仕事も増えました(残業というわけではありませんが)。経営者側からみれば、5月はパート医に給与を払わなくてよかったわけで、その分人件費を節約できたことになります。私自身については金曜日の産休の医師、土曜日の大学の医師の代理などで、パートの日数はほぼ同じでした。ミスのないよう注意しつつ、老骨に鞭打っています。

 

「不要不急」の仕事は中止か延期ということが言われています。医師ネットワークM3にこんな情報が出ていました。


「『不要不急の最たるものが健康診断と人間ドックです』大木隆生氏発言 」
2021年1月23日 投稿者:自分が何科なのかよくわからな医  


「不要不急の最たるものが健康診断と人間ドックです。1月10日現在、都内の大半の急性期病院は人間ドックをやっていて、やめた病院を知りません。この事実が、医療崩壊とほど遠い証左ではないでしょうか。4~5月まで待ってもらい、医療崩壊閾値を上げる努力が必要です。東京都や医師会は医療崩壊と叫ぶ前に、こういうことをすべきです」デイリー新潮記事 東京慈恵会医科大学大木隆生氏


●日本の1年間の健診受診者数 約1億人

●大量の受診者のため、健診のスケジュールはタイトで2カ月遅れるとスケジュール調整がものすごい困難になります。昨春の緊急事態宣言時は感染対策も不十分だったため一時中止しましたがクレーム殺到でした。感染対策のための制限もあり、受診枠を減らしているので、いまだに遅れを完全には取り戻せてはいません。

●健診で急性期入院することは原則皆無、医療圧迫の要因にはならないのでは

●健診医・健診ナースを急性期病棟に回してどうにかなりますか?閾値上がります?

●そもそも健診は病院のスキマ産業。スキマがあればやるし、なければやらないのが普通。

 結局のところ、ただ単に健診というものを軽視した発言と思います。
 健診をろくに臨床的な意味も考えず金儲け目的だけでやっている所も相当数あることはわかっていますので、日常的批判はやむを得ないと思っています。
でもとてもお偉い崇高なお仕事をされている自分の診療科を回すためなら、他科は潰してしまっていい、なんていう方がいると少しがっかりします。 
△賛成181△反対34  



この大木隆生という医師の専門は血管外科らしく「神の手」とも言われているというコメントが他の医師からの発言にありました。私自身は調べていません。これらの意見に対し、大木医師より弁明?のコメントも登場しています。

 ある医師の発言「民間病院にとって、ぎりぎりの経営状況なので、検診業務は重要な収入源であり、そう簡単にやめるわけにはいかない・・・・・・」という意見に対し、大木医師は「誰も赤字覚悟で新型コロナ診療をやれ、とは考えていません。・・・・・・菅総理に会った時、新型コロナ診療に携わっている医師・ナース個人へ各々月額100万円、50万円の手当を上乗せするよう伝えました。本来こうした交渉は日本医師会がやってくれたら僕が矢面に立つこともなかったのですが・・・・・・医療財源確保の話を誰もしないのでやむにやまれず僕が火中の栗を拾った、という事情もご理解ください。今後も医療体制を強化すべく尽力したいです」と言っていました。

 私はこの大木医師は偉い医師のようですが、無知で増長した医師のような感じがします。彼自身は新型コロナの診療に関与していないようです。慈恵医科大学では呼吸器内科や救急部など頑張っていますが、彼自身の血管外科が関与しているという情報はありません。また慈恵医大では今でも人間ドックを続けています。そこに働いている医療従事者を新型コロナ診療に回したという話もない、と別の医師が述べていました。 そもそも「菅総理に話しておいた」と言うこと自体が、私には気に入りません。こういう発言はいわゆる日本の政治屋の「口利き」の闇を連想させます。

 医療の世界の前近代性の一端がここにもある、と思うのは考え過ぎでしょうか。ではこのへんで。 

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Covid19とこの国のこれから 永井雅巳 2021年2月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp ································································

1年前となる2020年2月、和光市にある国立税務大学校を訪ねた。ここでは、普段は税務に携わる国家公務員(税務職員)が各種の研修や税務に関する学術研究を行なっている所だそうだ。広大な敷地の中に幾棟もの建物があるが、当日はガランとして人影も少ない。所々に、自衛隊ジープが停車しており、隊員がタイベックの着脱訓練をしているのが見られた。

ここに私が来た目的は横浜港に停泊するダイアモンド・プリンセス号(以下、ダ号)の乗客の入国受け入れを手伝うためだ。乗員・乗客併せて約3700人を乗せたこの船は2020年1月20日に横浜を出港した。ところが、出港6日目香港で下船した乗客が30日に発熱し、翌2月1日にCovid-19 (SARS-CoV-2)に感染していることがわかった。ダ号は行程を早めて2月3日 横浜に戻り、有症状者に再検疫を行ったところ少なからず陽性者のいることが判明した。

2月5日以降、症状のない乗員・乗客は14日間の大半を船内で待機し、すべての乗客がPCR検査を受けた後、陰性者は最後の期間を下船して、宿泊施設を有するここで異常のないことを最終確認し開放される仕組みであった。

私は厚労省関係者の指導下、橋本康子先生(日慢恊副会長)をリーダーにDMAT、DPATの方々(総勢約30名程度)とともに、施設入所に際しての問診や滞在中の健康相談に関わった。

ダ号については、それまで連日報道で映像がながされ、私のいた当日には隣の施設に武漢からの最後のチャーター便(第5便)の住民も搬送されたが、いずれも粛々と静かな入場であった。結局、初動の感染対策の不十分さによりダ号の乗客・乗員の感染者数は700余名に及び、うち7人が死亡した。 3月になり、感染経路のはっきりしない感染者が東京都を中心に少しずつ増え始めた。第1波とよばれるものである。

この時点では、症状がなければPCR検査をしない、その適応は保健所が決めるというのが国策であり、関連学会も追従した。しかし、ダ号での経験から軽症者・無症状陽性者の早期からの隔離が重要であることを学んだ私は2020年4月2日掲載の本誌(Vol.075)に、「感染症学会・環境感染学会の“軽症者にはPCR検査推奨せず”に反論」をあげた。私の病院の発熱外来には、すでに何か所か医療機関を受診した若い介護士や看護師が訪れ、結果、PCR陽性と診断されるようなケースが続いた。彼らは施設・病院で感染者と接する機会があり、一方プライベートの活動範囲は概して広い。その中で不本意にもスプレッダーとなってしまったのだ。私たちは、ダ号の経験から元気な軽症者・無症状者にこそこの時期、PCR検査をすべきことを学んだはずなのに、いつからこの国の学界代表者は権力筋に阿るようなったのか、非常に残念だ。ただ、幸いなことに第1波は国民自らが自分たちの行動を律する(未知なるウィルスに怖れをいだいた)ことにより、5月初めには一旦終息した。1年後に日本が、世界がこのような状況になるとは多くの国民が無想だにしなかったに違いない。 しかし、蟻の一穴をすり抜けたようなCovid19は6月末からの大きな第二波、そしてその波は終息することなくダラダラ続き、そのまま11月中旬から第三波といわれる巨大な波となった。

第二波の途中、千葉県知事は幕張に1000床規模の隔離病床を作る構想を発表した。当時、私はたとへ病床は1か月で作れても、働く医療スタッフはどうするのだろうか、病床規制の問題はどうクリアするのかとか思った。この森田構想は年を超え2月になって、千葉県がんセンター旧病棟をつかって、66床確保され、2月5日から当面26床で運用されるそうだ。スケールダウンはやむを得ないとして、とりあえずは専用病棟がつくれたのは良かった。スタッフは大変だが、感染患者にだけ対峙すればよい。感染者と感染しているかどうか解らない患者両方に接することは大変だし、リスキーだ。

一方、少し前後するが、1月中旬、同じ千葉県知事から二次救急告示病院宛に1床でもよいからCovid19の専用病床を持つようにとの要請があった。病床専用率が連日60%を超え逼迫したため、自宅待機中に急変・亡くなられる患者さんも増えた。私の所属する病院も現在4床動かしているが、効率が悪い上に、私は陽性の患者だけでなく、一般病棟の患者や在宅患者もみなければならない。十分、気を付けてはいても危険だ。他の民間病院も同様であろう。やはり森田構想(一か所で集中的に診る)が一番良いような気がするが、いかがだろうか。

もう一つ民間病院で陽性患者の受け入れが困難な理由の一つに医者や看護師が高齢であることだ。厚労省の2018年の調査報告によると、医育機関付属の病院の医師の年齢別割合は39歳以下で61.3%、逆にそれ以外の病院では40歳以上が60%。同じく厚労省からの報告によると、2021年1月18日時点でCovid19による日本の死者3470名のうち、死者数÷感染者数(死亡率)が30代以下は0%、40代から徐々に上昇して、60代で1.4%、70代で4.5%となる。その他には、私の病院の例でもあげたようにスタッフ数が少なく専門チームが作りにくいことだ。そのため、効率が悪くかつ蔓延リスクが高くなる。

特定機能病院には若く優秀なスタッフがたくさんおり、そこに患者を集めることにより効率的で、蔓延リスクが少なく、さらにもし医療スタッフが感染しても重症化率は少ない医療を提供できる。国が緊急事態宣言をしている非常時に、独法化したとはいえ、旧国立大学に対して、行政府の与える影響力は大きいのではないか。各県に一つ以上ある大学病院の地域必要度に併せて、非常時に限り、○○〇床準備しなさいと首相が言えば即座に叶うガバナンスがこの国にはないのだろうか。

A医大学長は特別であろうが、自らの使命を果たさず、この学長に同調しているボードの方々の見識を疑う。自治体病院は首長の権限でのガバナンスが概して強い(首長の資質により必ずしも良いことばかりではないと思うが・・)。権力筋に阿る学界と、彼らに遠慮してモノ言えない行政府のもたれあった関係が垣間見えるようだ。

幸い、2月になり都市部の新規感染者数は減少している。緊急事態宣言の成果と思うが、東京・神奈川では保健所の疲弊のため、濃厚接触者の追跡を止めたと聞く。千葉でも同様、私の病院の発熱外来(PCR検査)は一般が半分、残りは保健所から指示された濃厚接触者であったが、2月になりこの保健所からの指示による濃厚接触者がなくなった。濃厚接触者が自らの意思で検査に来ることもあるが、自分が濃厚接触したと解らない場合もあろう。また、濃厚接触したと解っても、検査はしたくない場合もあろう。PCR検査を受ける人が減り、陽性率がさがれば、当然、新規感染者数は減る。最近の感染者数は、実際の感染者をunderestimate している可能性を危惧する、杞憂であればよいが・・。

さて、最後にこの国のこれからの医療・介護の話だ。1月末で国内では5753人の方が亡くなっている。世界では1月中旬にすでに200万人を超えているそうだ。この200万人の中には入院できずに亡くなった人が多くいるに違いない(必ずしも、全員、病院で死ぬ必要もなくて良いと思うが・・)。この時期、景気が良いのは株を持っている一部の富裕層だけで、日本でも職を失ったり、商売を失ったり、夢を失った方々が多くいるに違いない。年々格差は広がる一方である。

振り返れば、2019年10月28日の経済財政諮問会議において時の安倍首相は「地域住民の医療・介護サービスへのニーズを的確に反映し、持続可能で安心できる地域医療・介護体制を構築していくためには地域医療構想を実現していくことが不可欠」と述べた。時の加藤厚労相(現・官房長官)は、具体的に過剰と考えられる約 130,000床の病床削減を速やかに進める意を表した。また、時の西村内閣府特命担当大臣(現・新型コロナ対策担当大臣兼務)も共に、(現在まで各地域で先頭に立って新型コロナ対応に頑張っている)公立・公的病院のうち424病院は再編・統合が必要と表明した。たった1年半前の話だ。1983年時の厚生省保険局長の「医療費亡国論」以来、厚労省の宿願である病床削減は数次の医療法改正を経て、ついにあと一歩まで迫ったところで、Covidがきた。

確かに最初は想像できなかったことかもしれないが、平時の際に、緊急事を想定して対応するのが政ではないか。東北震災の原発問題、そしてCovid、また予測される大規模地震災害・・。安倍元首相は“政治は結果責任である。”と言われたが、その責任の渦中に立たされるのは国民である。是非、議員・官僚の方々、そして国民は、しっかり“この国の医療・介護のこれから”について考えるべき時でなかろうか。


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