[440](投稿)民意は肌感覚より数で

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<シリーズ評論 核のごみどこへ>22 民意把握、「肌」より数で 元新潟県巻町長・笹口孝明氏(72)
02/28 北海道新聞デジタル版より引用

 原発建設の是非を問うため全国で初めて条例に基づき1996年に行われた住民投票で、新潟県巻町(現新潟市)の町民は「原発は受け入れない」という民意を数字で示した。建設反対1万2478票、賛成7904票だった。
 私は町民有志で立ち上げた「巻原発住民投票を実行する会」の代表として95年に町民が自主管理する方式の住民投票を行った。反対が9割を占めても原発建設を諦めない当時の町長のリコール(解職請求)運動も行い、96年には自ら町長となって条例に基づく住民投票にこぎ着けた。その後、建設計画は撤回された。 
住民投票でこだわったのは、町民の意思を尊重することだった。原発への賛否はあえて口にせず、賛成でも反対でもいいからとにかく投票を、と呼びかけた。
 原発を受け入れるかどうかは、巻町で100年に1度あるかないかの大きな決めごとだ。町長や町議、一部の利害関係者で話が進んでいたことに危機感があった。町民の将来、子や孫の将来に関わる。自分たちの未来は自分たちで決めたいと、住民投票を実施した。
 住民の意見を直接聞くことになる住民投票は、原発推進派町議らから「議会制の間接民主主義を否定するものだ」と批判された。リコール運動は「地域にしこりを残す」と言われた。だがそうした批判は議論を抹殺し、意見の発露を抑えるための方便であって、住民の声を聞かないほうが都合がいい側の論理でしかない。 
昨年、原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分地選定に向けた調査が始まった後志管内寿都町でも、住民投票やリコール運動の動きがあると聞く。10万年も埋め続けないといけないごみを受け入れていいかは町民の大きな関心事だろう。町長選にせよ、町議選にせよ、過去にその問題は何ら争点になっていないし、住民も意識していなかった。そんな中で選ばれた人たちが住民に代わって決めるのは尊大だろう。
 また、調査への応募に際して町長は「肌感覚では過半数の賛成を得られている」と述べたという。しかし、民意は肌感覚でなく、きちんと具体的な数字で把握する必要がある。
 地域の未来に関わる問題は、一部の人間が決めるのでなく、主権者である住民みんなで決めるべきだ。そのことを、寿都町の町民も神恵内村の村民も主張し続けるべきだと思う。

(聞き手・編集委員 関口裕士)

※※※ 松尾馬生のコメント

 原発建設の是非を問うため全国で初めて条例に基づき1996年に行われた住民投票で、新潟県巻町(現新潟市)の町民は「原発は受け入れない」という民意を数字で示しました。反対が9割を占めても原発建設を諦めない当時の町長のリコール(解職請求)運動も行い、96年には自ら町長となって条例に基づく住民投票にこぎ着け、その結果、建設計画は撤回されています。 
 「住民投票でこだわったのは、町民の意思を尊重することだった」と言います。「原発への賛否はあえて口にせず、賛成でも反対でもいいからとにかく投票を」と呼びかけたということも重要だったのですね。                                        
原発を受け入れるかどうかは、巻町で100年に1度あるかないかの大きな決めごとだ」という判断と、「町長や町議、一部の利害関係者で話が進んでいたことに危機感」を覚(おぼ)えたと言います。「町民の将来、子や孫の将来に関わる。自分たちの未来は自分たちで決めたい」という思いで「住民投票を実施した」とも言われています。
「リコール運動は『地域にしこりを残す』と言われたが、そうした批判は議論を抹殺し、意見の発露を抑えるための方便であって、住民の声を聞かないほうが都合がいい側の論理でしかない」と元巻町の町長笹口孝明氏は批判します。寿都(すっつ)町で生じたことを自分の思いと体験を通して見ておられ、「(文献)調査への応募に際して『片岡町長』は『肌感覚では過半数の賛成を得られている』と述べたという。しかし、民意は肌感覚でなく、きちんと具体的な数字で把握する必要がある。地域の未来に関わる問題は、一部の人間が決めるのでなく、主権者である住民みんなで決めるべきだ。そのことを、寿都町の町民も神恵内村の村民も主張し続けるべきだと思う」と元巻町の町長笹口孝明氏は寿都町の一部の町の有力者を批判し、地域の住民みんなで地域のことを決めるようにと助言しています。
小生も笹口孝明氏の意見に賛成です。「肌感覚で分かる」という寿都町の片岡町長のおごり高ぶったもの言いは、仲間内でしか通用しないと思います。

読者の皆様はこの元巻町の町長笹口孝明氏の見解についてどのように思われますでしょうか!?

<略歴>ささぐち・たかあき 1948年巻町生まれ。明治大を卒業し家業の笹祝(ささいわい)酒造入社。94年「巻原発住民投票を実行する会」を立ち上げ代表。96年から巻町長を2期務めた。笹祝酒造5代目蔵元を経て現在会長。