[1036]ロシア「特別軍事作戦」から「祖国防衛戦争」へ

NHKウェブニュースは11日朝、次のニュースを発信しました。

 

 ロシアの政府系シンクタンク「ロシア国際問題評議会」のアンドレイ・コルトゥノフ会長は、NHKのインタビューに対し、プーチン政権は軍事侵攻の大義を特別な軍事作戦から祖国防衛のための戦いに変えたという見方を示しました。そのうえで核戦力を使用する危険性に触れ、ロシアとアメリカによる対話の必要性を訴えました。

 

私の意見∶

 ロシア国際問題評議会というシンクタンクはロシア政府の公認のもとに運営されているようです。プーチンが公式には言えないことを評議会の意見として公表しているといっていいと思います。

 このNHKウェブニュースは評議会会長の発言を解説的にまとめているので、情報の受け取り手である私たちは、これが日本の公共放送の価値観に規定された内容になっていることをふまえて読まなければならないと思います。

 ニュースの引用に戻ります。

一方的な「併合」と「動員」について

 コルトゥノフ氏は、ウクライナでの戦況に関連して「政権側は、『特別軍事作戦』としていたものを今では『祖国戦争』として見せようとしている。ロシアは、自分たちが併合した地域で戦闘が起きれば、領土の一体性への侵害だと主張し、相応の対応をとる」と述べ、プーチン政権は、ウクライナの4つの州の一方的な併合に踏み切ったことを受けて、軍事侵攻の大義を祖国防衛のための戦いに変え、動員も含めて国民の理解を得るねらいだと指摘しました。
 その動員をめぐり、ロシア国内で混乱が広がっていることについては「30万人の動員であれば、政治の安定性に深刻なリスクを生み出すことはないが、これに限定されるのかはわからない」として、動員の規模が拡大すればプーチン大統領政権運営にさらに影響を与える可能性があると指摘しました。

 また「動員は、右派やタカ派からの要求に応えたものだ」と述べ、政権内の強硬派からの風当たりが強まっている可能性に言及しました。

 

停戦の見通しは

 一方、コルトゥノフ氏は、先月開催された上海協力機構の首脳会議で、中国やインドから軍事侵攻に対する懸念が示されたとして「プーチン大統領にとって、この紛争を早く終結させようとする刺激となった可能性がある。併合した地域を『勝利』として示せば、軍事作戦の目標がかなり達成されたと訴えられる」と述べ、プーチン大統領が友好国からの懸念や併合の決定を踏まえ、停戦のきっかけを探りたいと考えている可能性に触れました。

 一方「併合を決めたことが、近い将来のウクライナとの停戦の可能性を閉ざすことは明らかだ。主導権を握るウクライナが、領土を大幅に失うことを受け入れるとは想像できない」とも述べ、現時点で停戦が成立する見通しは非常に低いとしています。
 

核戦力の使用は

 また、ロシアが核戦力を行使する可能性について、コルトゥノフ氏は「ロシア指導部は、欧米の軍事支援の強化を懸念している。核のリスクは、NATOウクライナの紛争により直接的に、より大規模に関わった場合、増加するだろう」と指摘しました。

 そして「プーチン政権は、いまでは戦争がロシアの領土内で直接起きていて、ウクライナだけでなく核兵器保有国を含む欧米側が活発に関与していると主張することができる」と述べウクライナの4つの州を一方的に併合したことで、プーチン政権が核戦力を使用する危険性が高まるという見通しを示しました。

 そのうえで「何よりも核大国であるロシアとアメリカの問題であり、何らかの協議や接触が必要となる」と述べ、米ロ両国による対話の必要性を訴えました。
 

今後のロシア 先行き見通せず

 一方、ロシアで再来年予定されている大統領選挙の行方についてコルトゥノフ氏は「特別軍事作戦がどうなるか、ロシア経済はどうなるかなど多くの要因によって左右される」として、先行きは見通せないとしています。

 そして「さらなる大規模な軍事活動を望むタカ派もいれば、早急な平和を望むハト派もいる。今後の外交政策を巡り、指導部内で何らかの闘争が立ちはだかるだろう」と述べ、体制内での権力争いが激しくなるという見方を示しました。
 
私の意見∶
 核戦争の危機に関してコルトゥノフは「何よりも核大国であるロシアとアメリカの問題であり、何らかの協議や接触が必要となる」と言っていますが、これはプーチンの本音を代弁していると思います。
 プーチンが牛耳るロシアはウクライナ軍兵士•労働者、無辜の民衆の生命を奪い生活を壊し、ロシア軍兵士の血の犠牲の上に、4州を暴力的に占領しました。住民投票による併合要請を名分としてウクライナの4州を西の帝国主義に対する防波堤として築こうとしているのがプーチンです。
 現在の戦況と国内の動員令反対運動に困惑しているプーチンは、4州の併呑を既成事実としてアメリカに認めさせた上で新たな世界秩序の枠組みをつくりたいのです。
 
 他方、ゼレンスキー政権を支え、NATOの軍事的圧力でプーチンのロシアと習近平の中国を封じ込めようとしているのがアメリカ•イギリス•フランス•ドイツ、日本などの権力者です。
 プーチンウクライナ侵略を起点とした現代における世界戦争の危機は、ゼレンスキー支持かプーチン支持かという二者択一によっては克服できないどころかますますドロ沼の危機へと展開してしまうと思います。
いま必要なのは国境を越えた労働者階級の反戦の力です。