バイデン米大統領が提唱した第2回「民主主義サミット」が3月30日、2日間の日程を終えて閉幕しました。
産經新聞は次のように伝えています。一部抜粋します。
民主主義サミット閉幕 理念で自縄自縛、厳しい声も
人権尊重や汚職防止など民主主義の強化をうたった共同宣言には、招待された国・地域の6割にあたる73カ国・地域の首脳らが署名した。中露を筆頭とする権威主義陣営に対抗し、民主主義諸国の団結を促すという目的へ一定の前進をみた。同時に、民主主義の理念だけで国際社会を糾合することの難しさも浮き彫りになっている。
今回のサミットには、前回よりも8カ国多い約120カ国・地域が招待された。「民主主義を前進させる政治的意思があるか否か」(米政権高官)を選定基準にしたという。この線引きをめぐっては、前回に続いて今回も異論が出た。
新たに招待された国
中米:ホンジェラス
アフリカ:コートジボアール、ガンビア、モーリタニア、モザンビーク、タンザニア
以上
(註)招待されなかった国
ロシア、中国、北朝鮮、トルコ、ハンガリー、タイ、シンガポール
参加120ヵ国のうち共同宣言に賛成したのが73ヵ国60%というのですから、主催した米国の威信の低下は明らかです。
バイデンはサミットの29日の演説で「民主主義国家はかつてないほど結束してロシアの残忍な戦いを非難し、民主主義を守ろうとするウクライナを支援している」と訴えました。にもかかわらず共同声明に賛同し署名したのは120ヵ国中73名だったのです。
共同宣言に署名した国
米国、日本、カナダ、英国、フランス、ドイツなど
署名を一部留保した国
インド、メキシコ、ポーランド、フィリピン、イスラエル、イラクなど
署名しなかった国
ブラジル、コロンビア、インドネシア、マレーシア、南アフリカ、ナイジェリア、ケニアなど
米国が主導する西側陣営の枠に入らない国々はグローバルサウスをはじめとして多いのです。
1日の日経新聞によれば、米国、韓国、オランダ、コスタリカとともに共催国となったザンビアは宣言の一部を保留しました。インドは署名はしましたが、ロシアによるウクライナ侵略が及ぼす悪影響に懸念を示した段落に賛同しなかったとのことです。また、インドはプーチン大統領に逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)が「果たす重要な役割を認識する」と記した共同宣言の部分も受け入れませんでした。
グローバルサウスと呼ばれるブラジル、インドネシア、南アフリカ、ナイジェリアなどは署名しませんでした。
今回の民主主義サミットは、ウクライナに侵攻したロシアにたいする民主主義を共通の理念とした包囲網づくりに失敗しました。ウクライナ戦争に介入する米欧の資本主義大国と日本は反ロシア・中国ブロックの構築に難渋しています。岸田政権はG7のウクライナ戦争へのテコ入れにおくれをとらないように前のめりになって軍事大国化の歩を早めています。
日経新聞は翼賛の檄を飛ばしています。
「米に賛同、署名6割どまり 乱れる足並み中ロが隙突く」という見出しです。
記事の終りを「米国主導で築いた国際秩序を維持するには理念だけではなく、存在感を高めるグローバルサウスを引きつける具体策が欠かせない。」と結んでいます。
日経新聞にはなぜ6割しか米国に賛同しなかったのか、考える思考回路はありません。ロシアのウクライナ侵略に抗議することが、「民主主義国」米欧日の立場の支持に直結させられるというのは思考停止してしまっているということです。危機的時代の商業メディアが陥る思考の特徴だと思います。
対ロシア包囲網をつくるためにカネと軍事的力を示せというわけでしょうか。産経と日経新聞は西側諸国政府ににあたかも日の丸の旗を振って激励しているかのごときです。