[1214](寄稿)医療あれこれ(その80)ー1

ペンギンドクターより

その1

皆様
 早いもので、まもなく4月半ばになります。いかがお暮しでしょうか。
 私は、4月から町内会の防犯パトロールをしています。黄色いベストと帽子をかぶって町内を歩くのです。時間は朝でも昼でも夜でもいいのですが、暗い夜だけは安全のため二人で回るようにと言われています。別に毎日ではなく、週一度でもいいようです。私は運動のためと民家の庭先の植物を見るためもあって、4月1日、2日を除いて毎日励行しています。

 さて、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)も峠を越えたという雰囲気です。また少し感染者数の増加もあり警鐘をならすドクターもいるようですが、行楽地は賑わっています。
 以下は自然感染による抗体(N抗体)の保有率です。発表は3月13日です。今年2月19日~27日に日赤の献血ルームを訪れた16~69歳の1万3121人が対象です。データは年齢別補正はありません。都道府県別に列挙します。単位%は省略です。●は45%以上、▼は35%未満です。

 北海道39.4青森36.5▼岩手27.4
 宮城37.1秋田37.8山形39.1
 ▼福島31.7●茨城45.6栃木41.0
 群馬43.4●埼玉46.2千葉38.6
 東京42.2神奈川42.8▼新潟33.5
 冨山42.9石川40.5福井40.7
 ▼山梨34.9▼長野34.9●岐阜48.3
 静岡39.2●愛知51.8三重39.8            

 滋賀39.2京都43.6●大阪50.2
 兵庫44.0奈良44.4和歌山35.9
 鳥取40.4島根40.7岡山45.0
 広島37.9山口42.7徳島38.3
 香川39.5愛媛40.7高知40.3
 ●福岡59.4●佐賀52.5長崎39.9
 ●熊本45.9大分41.2宮崎43.5
 ●鹿児島51.5●沖縄58.0

 全国平均は42.3%。ベストスリーは岩手・福島・新潟です。ワーストスリーは福岡・沖縄・佐賀でした。ベストかワーストか一概に言えないかもしれませんが……。
 年齢別では16~19歳62.2%(前回38.0)、20~29歳51.6%(前回35.7)、30~39歳52.2%(前回33.6)60~69歳28.3%(前回16.5)でした。当然でしょうが高齢者は自然感染は少ないようです。警戒していますから。
 
 もう一つ。
 昨日は歯医者に行って、歯科衛生士さんに「掃除」をしてもらってきました。つまり、歯石除去、歯茎付近の歯垢除去をしてもらったわけです。20分余り、歯茎の根元をギーギーとやられるわけですから、お腹の上で組んでいる手に自然に力が入ります。でもひと時の我慢です。次回は11月に衛生士さんの予約です。私の主治医である歯医者さんの診察は1分あまり、「JR東日本の休日倶楽部で旅行していますか?」と聞かれて「島根県へちょっと帰ってきただけです」と返事しました。彼の奥さんは隠岐の島出身です。彼も80歳近いはずですが、元気です。在宅医療の老人の歯科医往診に頑張っています。私はさっさと常勤医をやめてパート医になりましたが、彼は今も常勤で勤務しています。
 A病院の医師には75歳を超えて常勤の勤務をしている医師も数人います。実際には楽な仕事に移りつつあるとは思いますが、「よくやるよな」と感心します。民間病院では、医師不足ですから悠々自適といかないのかもしれません。

 歯および歯肉の重要性は強調してし過ぎることはありません。医療クイズをしていると以下のような問題に遭遇します。
 70歳の糖尿病のある男性です。数日前から発熱があります。糖尿病はコントロールが不良でHbA1cが8.0……他にも多くの薬を内服中。齲歯(虫歯)があります。心肺聴診で心雑音があります。……
 という問題があるとすると、この齲歯がキーポイントです。虫歯や慢性歯肉炎から菌が全身に入り、「感染性心内膜炎」を起こして死に至ることもあります。齲歯、歯肉炎は馬鹿に出来ません。

 また先日こんなクイズがありました。30代男性が外来に受診。右側胸部に赤い皮疹とピリピリした痛みあり。数か月前にも左の側腹部に同様の皮疹と痛みあり。以前B型肝炎の既往あり。外来にて次にどんな検査を依頼するか、5つより選択せよ。
 ①HIV
 ②風疹
 ③麻疹
 ④コクサッキーウイルス
 4番目は曖昧で、5番目は忘れましたが、上記の皮疹の診断は高齢者に多い「帯状疱疹」であることは皆様のうち経験された方も多いと思いますのでおわかりでしょう。しかし、若い人にはそれほど多くはありません。しかもこの男性は二度も帯状疱疹を起こしています。さらにB型肝炎の既往があります。成人でのB型肝炎の既往は「性感染症」が疑われます。したがって、この男性はエイズが根底にあると考えられ、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の測定をしなくてはいけません。
 こんな感じで医療クイズを毎日こなしていると解説を熟読することにより有効な勉強となるわけです。
 
 昨日は歯科受診でしたが、先日は皮膚科受診しました。60歳代になって「水虫」になって、悪化はしていないのですが、多分完治はしていない状態と思います。その私に数か月前から両方の下腿に皮疹ができてかゆいので、何の気なしにかいていたら、ちょっと広がったのです。「水虫」になったのもちょっとショックでしたが、カビが広がったかと思ったので女房の行ったことのある皮膚科を受診しました。すると皮膚科の先生は即座に「湿疹」ですとのこと。「水虫」のことも話していたので、顕微鏡で病変の一部を採取しましたが、真菌はいませんでした。一応塗り薬をあげますとのことでした。なぜ「湿疹」ができたのかは不明。質問もしませんでした。一時間半待って1分余りの診察でした。かゆみ止めもくれましたが、使わず塗り薬も一回だけ、かゆみを我慢して搔かないようにしていたら、改善しました。女房も足の指の発赤で「水虫かも」と私が脅かしたら、「しもやけ」でした。
 皮膚科のクイズはよく出されていて、結構内科の重症疾患が隠れているので、私は神経質になります。何しろ後期高齢者はいわゆる「免疫不全状態」が確実にありますから、神経を使って悪いことはないと思っています。
 坂本龍一氏が直腸がんで死亡しましたが、以前「咽頭がん」をしているのに、どうしてがん検診の大腸検査を定期的にしなかったのだろうと残念に思いました。71歳と「若いのにもったいない」と思いました。特殊な悪性の直腸がんだったのかもしれませんが。