[1253]G7広島サミットがはじまった

 

 G7広島サミットが19日に始まりました。ゼレンスキー大統領の訪日も報道されています。ロシアのウクライナ侵攻をめぐる対応策が最大のテーマです。

 今回G7会議は、ウクライナ戦争の間接的当事者であるNATO6ヶ国(米、英、仏、独、伊、加)と日米安保同盟を媒介としてNATOとリンクする日本の7ヶ国の政府首脳が集まって開催されますが、中国の停戦仲介の動きを意識して戦争収拾のヘゲモニーを取るためのパフォーマンスと言っていいと私は思います。ロシア制裁・ウクライナ支援の継続・強化をうたうでしょうが、それはNATOが有利な立ち位置を獲得するためです。ゼレンスキー政権の戦闘を際限なく支える各国の支配階級の思惑は、自国の利益を守るためのものにほかなりません。

 とりわけバイデンは2022年冬のロシアのウクライナ越境侵略の前、ロシア軍の動きをつかみ侵攻を察知していたにもかかわらず、傍目八目を決め込んでいたのです。ロシアに攻めさせてゼレンスキーに反撃させつつロシアを国際的に孤立させる策をとったのだと思います。中国ーロシア関係の分断のチャンスと思っていたのでしょう。戦争で多くの血が流され暮らしが破壊される前に何とかしなければならないなどという発想はもとよりありません。バイデンは大統領選とアメリカの国益を基準にして動いているに過ぎません。(註)

 「法の支配」というスローガン

 首脳声明の第一のポイントは「法の支配に基づく国際秩序の維持」です。これはNATO(西側)諸国政府のための国際秩序の維持と読み替えて良いと思います。しかし、法とは支配階級が国家を統治するための基準であり都合が悪ければふみやぶります。2003年のアメリカのイラク侵略などを見ればそれはあきらかです。

 私は想起しなければならないと思います。そもそも「法の支配」なるものは1999年のNATOによる国連決議なしのユーゴ空爆によって彼ら自身が破棄しました。

Wikipediaによれば

 「この空爆は、そもそもユーゴスラビアが和平交渉において、合意文章に調印しなかったために起きたものだが、ユーゴ政府が調印しなかった理由として、和平交渉の期限切れ直前にアメリカが提出した付属文章B(Annex B)の存在がある。 その内容は、『コソボのみならずユーゴスラビア全域でNATO軍が展開・訓練できるよう認め、なおかつ治外法権を認めよ』という、NATO軍による事実上のユーゴスラビア占領を意味するようなものであった[7]。 空爆終了後、このアネックスBの存在が公表され、ドイツなどではメディアに公開されなかったことを問題視した。」引用以上

 1999年のNATOによるユーゴ空爆・侵攻に第二次世界大戦後はじめてドイツ、イタリアが参戦しました。この空爆は、20世紀現代史の結節点として意味をもつソ連邦の自己崩壊を歴史的条件として、戦後世界の本質的転換点を画する事件でした。

 その後、アメリカの単独行動主義がイラクアフガニスタン侵略で示されましたがことごとく失敗し、サブプライム危機を経てアメリカの力の翳りは明らかになっていったのです。2021年8月の米軍のアフガニスタンからの敗走は、奢れる一超帝国アメリカの没落を世界に告知しました。

 ロシアによる2022年2月のウクライナ侵略はその半年後でした。NATOの影をウクライナゼレンスキー政権の動きに感じ続けていたプーチンが、ゼレンスキーのNATO加盟の表明とアメリカの容認に怯えに近い怒りと危機感を露にして越境侵略に踏みきりました。

 この行為でプーチンNATO(西)対中・ロ(東)のこれまでの冷戦的支配秩序を破壊しました。あれからNATO諸国は在庫が無くなるほどの砲弾をゼレンスキー政権に与えつづけ、ロシアは核兵器使用の言辞をふりまいています。

 しかし、中国が停戦協議の仲介にのりだし、フランスは中国に期待を表明しています。2023年5月のG7サミットはウクライナ戦争の終わりのはじまりを画するものとなり、西側帝国主義は世界支配の新たな形を探るものとなるでしょう。

 

(註)2021年12月24日BBCニュースより

米ロ、ウクライナをめぐり来年1月協議の見通し

プーチン氏、ウクライナについて西側の保証を要求

アメリカ政府は23日、ロシアがウクライナ国境で軍を増強している問題について、来年1月にロシアと協議を行う可能性があると明らかにした。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ジュネーヴで開かれる予定の協議に期待感を示した。

プーチン大統領は先に、ウクライナ情勢をめぐる緊張を緩和させるためとして、北大西洋条約機構NATO)に対し、東欧での活動を停止するよう要求。また、ウクライナNATO加盟を認めないよう求めた。

23日に行われた年次の記者会見でプーチン氏は、「ボールはコートのそちら側にある。何らかの返答を行うべきだ」と述べた。

さらに、「そちら側が我々に保証するべきだ。今、ただちに」と話した上で、軍事作戦を取りたくはないと強調した。

アメリカは協議に期待

ウクライナの国防当局によると、ロシア側は国境付近に10万人超規模の部隊を集結させている。

プーチン大統領ウクライナに侵攻する計画はないとしているが、アメリカはもしウクライナが攻撃された場合には「前例のない」制裁を科すとロシアに通告している。

ホワイトハウスの関係者は、ロシアが提示したNATOへの要求への返答を拒否している。東欧での活動停止もウクライナの加盟否定も、西側が受け入れる可能性は低いとみられている。

ジェン・サキ米報道官は、1月の外交協議はまだ最終決定の段階ではないとしながらも、アメリカは協議に向けて調整を行っており、話し合いを期待していると語った。

イギリスのリズ・トラス外相も、ロシア政府が「1月に協議に入る意思を見せた」ことを歓迎。ただし、ロシアが何らかの攻撃を仕掛けた場合、ロシア経済にとって打撃となる制裁が加えられると警告した。

以上BBCニュース(2021年12月24日)

 

動画説明,プーチン氏、ウクライナについて西側の保証を要求アメリカ政府は23日、ロシアがウクライナ国境で軍を増強している問題について、来年1月にロシアと協議を行う可能性があると明らかにした。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ジュネーヴで開かれる予定の協議に期待感を示したプーチン大統領は先に、ウクライナ情勢をめぐる緊張を緩和させるためとして、北大西洋条約機構NATO)に対し、東欧での活動を停止するよう要求。また、ウクライナNATO加盟を認めないよう求めた。23日に行われた年次の記者会見でプーチン氏は、「ボールはコートのそちら側にある。何らかの返答を行うべきだ」とさらに、「そちら側が我々に保証するべきだ。今、ただちに」と話した上で、軍事作戦を取りたくはないと強調した米ロ、ウクライナめぐり来年1月に協議