11月2日朝日新聞のオピニオン欄に「AIと私たち」というテーマで社会学者の大澤真幸さんにインタビューした記事が載っています。
おもしろかったので紹介します。
人間とはまったく違うのに成り立つコミュニケーション
問――生成AIの登場により、AIは人間に限りなく近づいていくのでしょうか。
大澤「それはどうでしょうか。以前からAIは『フレーム問題』という難題を抱えていると言われてきました。例えば、こうやって話をしていても、私たちは膨大な記憶から、今の話題に無用なことを自然に省いている。話している内容のフレーム、枠組みを理解しているからです。一方でAIは、すべての事項をチェックし尽くさないと判断ができません」
私の意見∶なるほど。私はAIのメカニズムの詳しいことはわかりませんが工場でコンピューター制御された工作機械を使ってものを生産した経験からなんとなくわかることもあります。
人間は会話する際に話題にかんして問題意識を持ちます。会話の相手との間で成立している場において私の意識において「何を」話すかという限定をし、設定された話題の対象を概念規定して言語的に表現することを相手とのやりとりのなかで繰り返します。その場合に意識の中に蓄えられた膨大な概念の中から話題に合うものを選びとります。
AIはインプットされたある言葉と関連づけられたすべての言葉と文を組み合わせているだけでしょう。AIの「音声」が意味をなすというのはそれを聞く人間がそう受け取るということであってAIが意味を理解しているわけではないのです。
以上私の意見
大沢さんはさらにつづけて言います。
「生成AIは、パレスチナ問題についても、またはコーヒーの上手な入れ方でも、臨機応変に素早く答えを返してくる。フレーム問題を解決しているかのように見えますが、そうではありません。1980年代の第2次AIブームでフレーム問題を乗り越えられなかったのは、計算速度が追いつかなかったからです。処理速度が飛躍的に高まった今では、フレームを理解できずとも、ネット上の膨大な情報から素早く必要なことを検索できる。単純にハードウェアの性能が上がっただけなのです」
私の意見∶それは私にも一応わかります。コンピュータ化された工作機械はそれを労働手段として使う労働者と労働対象との間にさしいれられ労働者の目的と労働力を対象に伝える機能を果たすわけですが、労働対象の特定の物理的電気的刺激を捉え自動的に加工作業を゙行います。労働者が手足で工具を使って加工するよりはるかに速くモノをつくります。情報量が大きくなっても計算処理能力を上げれば大丈夫でしょう。
原理的にはそれと同じでしょう。AIはインプットされた特定の刺激=情報を電気的に受けとめて、人によってプログラミングされた動作を行うということでしょう。AIの「思考法」は与えられた・答えるべき問題を人がつくった多くの答のデータとワン・ツー・ワンで対応させているだけです。AIは意識があるわけではありません。自律的に問題意識を形成しそれに合った概念を適用して文章をつくることはできません。
以上私の意見
――つまり、情報処理の仕方が人間とはまったく違う、と。 「ええ。それに加えて『記号接地(シンボルグラウンディング)問題』があります。人間は記号、つまり言葉を身体的な感覚によって実世界と結びつけて理解する。しかし、身体を持たないAIは、こうした外部との接地がない。チャットGPTのような大規模言語モデルは『その単語が世界の何に対応しているのか』を理解しているのではなく、次の単語を確率的に計算しているだけです。それでもコミュニケーションが成り立つのは驚きですが、私たちの理解の仕方とはまるで違います」
私はここで言われていることはとても重要だと思います。
次回つづけて考えたいと思います。