[1424]「子供の心 データで可視化」

 5日の朝日新聞一面に子どもの自殺やいじめを予防するために日頃の行いなどをデータ化して使う学校現場の特集記事が載っています。

 私はこの記事の見出しを見て、驚きました。なんてことをするんだ、と思います。

 子どもは悪く思われるのが嫌で良いデータになるように振る舞ったりウソの報告をすることもあるでしょう。データ化されることが日常的になる子どもは振る舞いや意識がおかしくなるのではないでしょうか。

 どんなウェブサイトをみたかといった履歴や「晴れ」や「雨」などのマークで毎日記録する「心の天気」、「自殺」「いじめ」などの特定のキーワードも(学校側)が検索すれば見られるようにするという。出欠や保健室の利用、学校生活アンケートや体力テストの結果もデータ化されています。

 朝日新聞はリードで次のようにいいます。

「データを分析して子どもの内面を可視化するーー。学校現場でそんな試みが広がっている。自殺やいじめなどのリスクをいち早く検知するためとして国も後押しするが、プライバシー保護や個人情報の取り扱いの問題などの課題も。データは、教師の『経験と勘』を補う存在になるのか。」

 リードを見ただけで私は直感します。国も後押ししているということは教師の量的質的不足を補うために教育労働過程をコンピューター技術化するのだと思います。教育労働の生産性向上のためです。

 子どもの自殺やいじめを防ぐには、教師が相手の立場に身を移し入れて対話することが基礎とされなければならないと思います。例えばデータ化された端末の利用履歴をめぐって教育する側が子どもと話す場合に、◯☓的思考法で対話すると子どもは☓をつけられないように仮面をつけて話し行動するでしょう。繰り返しているうちに心を閉ざすでしょう。

 中央学院大の谷口聡准教授は「データ活用には先生の『経験と勘を補う』、業務を効率化するなどの利点はあるが、日常的なデータ収集は子どもたちのストレスとなり、弊害も大きい。大切なことは、学校や先生の側がデジタル化の取り組みをコントロールできるか否かだ。本当に必要か、現場のニーズを把握した上で、データ収集•活用のあり方を慎重に検討するべきだ」と指摘しています。

 自殺やいじめを防止する教育労働の労働手段としてAIを導入すれば、教師までもがおかしくなると思います。私は教育労働者を増員し子どもと話せる環境を保障することが大切だと思います。

 子どもの自殺やいじめは、人間関係が疎外された社会が生みだしたものとして受けとめなければならない問題だと思います。  

 『AIで子どもの心を読む』という発想は危うい。事態を悪化させることになるだけだと思います。