[1550]『なるようになる』その3

「日常から離れた学問でいいのか」

101頁

承前

「仮説を立てて実験動物で研究する欧米流の自然科学は『人口科学』にしか見えず、肌に合わない。」

「紛争が起きたのはまさにそんな頃で、学生から『自分たちの日常生活と有機的関連のない学問はいらない』ーー、そんなふうに言われたと、僕は受け止めた。

 言った学生は、紛争が終わるといなくなったけれど、言われた私は、その問いを必死に考えていかざるをえなかった。」(101頁)

「······僕は死体を解剖しながら、全共闘の学生たちや内科医から不要不急と言われた解剖の意義を考えていました。」

 団塊の世代の私は、当時学生で地方の一大学の学園闘争の中にいました。私たちの世代の問題提起はさまざまでした。東大全共闘の学生から上のこと言われ研究者としてずっと考え続けたという養老先生は、「東大闘争」を内面でたたかい続けたということです。

つづく