[1585](寄稿)医療あれこれ(その106)ー2ヘーゲルの本

ペンギンドクターより

その2

閑話休題

ここでちょっと本の話を。

 私は今、健診の仕事のあいまにヘーゲル精神現象学』を「開いて」います。難解で有名なこの本をなぜ「読み始めた」かといえば、くも膜下出血経験者の女房の脳外科の主治医でもあるH先生がついにこの『精神現象学』を「再読」し始めたからです。脳外科という専門からこの本に対し多少理解が可能という側面もあるかもしれません。しかし、相当変わったドクターでもあります。2月28日4年ぶりに彼を我が家に招いて一緒に一杯やった時、彼のその話を聞きました。

 ところで私にとってのヘーゲル精神現象学』はまったく理解不可能な書物です。今「読み始めた」と言いましたが、正確にいえば、ただ「字面を追っている」という方が的確な表現です。とにかく「哲学用語」が理解不可能です・・・・・・。通読した後、もう一度読んだところで理解することは出来ません。あと五年で平均寿命を迎えるという残された時間の少ない男が、馬鹿なかつ無駄な努力をしているという考えがなくはありませんが、何度も挫折していることを考えれば、とにかく最後のページに到達することだけを目指しています。 

 現在400ページ余りのこの本の半ば近くまで何とかやってきました。3月・4月は検診対象者が少ない時期でもあり、意外に早く最後のページを迎えそうです。実はこの本の最後のページに50年以上前の私のサインがありました。こんな本を買おうという時代があったのですね。 

つづく