[736](投稿)もみ消し

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①文書改ざん、国が賠償責任認める 財務局元職員妻「負けた気持ち」
12/15 17:22 更新
 森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんを苦に自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さん(50)が、国と同省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めた訴訟の進行協議(非公開)が15日、大阪地裁であり、国が約1億円の賠償請求を受け入れる書面を提出した。国との訴訟は終結し、今後は佐川氏のみを被告として続く見通し。雅子さん側が明らかにした。▼ 雅子さんの代理人弁護士によると、国に賠償を求める訴訟で、訴えがそのまま認められるのは極めて異例。国からの事前の通告はなかった。真相解明を求めていた雅子さんは大阪市内で開いた記者会見で「負けたような気持ちだ」と話した。代理人弁護士は「非公開の協議の場で訴訟を終わらせてしまった。国は隠したい事実があるのではないか」と批判した。▼ 国側は地裁に提出した書面で、赤木さんの自殺原因を「決裁文書改ざんを含め、森友学園案件への対応に忙殺された」と説明した。請求を受け入れた理由は「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではない」とした。▼ 国側は今年6月、赤木さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」を雅子さん側に開示。佐川氏の指示をうかがわせる内容があったが、詳細は判然としていない。▼ 佐川氏側も15日、地裁に書面を提出した。国家公務員による損害は国が賠償するため個人は責任を負わないとする最高裁判例を示し「公務員個人が責任を負うことはない」と改めて主張した。▼ 訴状などによると、赤木さんは2017年、佐川氏の命令を受けた上司の改ざん指示に当初抵抗したが、最終的に安倍晋三元首相の妻昭恵氏や政治家に関する記述を削除させられた。うつ病を発症して休職、18年3月に自殺したとしている。(北海道新聞デジタルより)

②改ざん記載なく「がっかり」 赤木さん妻、開示記録で

11/17 21:55
 森友学園に関する財務省の決算文書改ざんで2018年に自殺した近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の公務災害認定の記録を人事院が開示したのを受け、妻雅子さん(50)は17日、大阪市内で記者会見した。「(問題の)一番根っこの改ざんに触れられてなく、がっかりした」と述べた。▼ 雅子さんは人事院が不開示決定を取り消し、記録の内容が明らかになった点は「一歩、進むことができた」と評価。しかし記録には、財務省幹部による改ざんの指示と、赤木さんの自殺を結び付ける記述はなく「夫は自ら改ざんする人間でない。必ず指示されてやってしまったのだと思う」と悔しさをあらわにした。▼ 同席した代理人の生越照幸弁護士は「雅子さんが内容を長期間知ることができなかったのは問題だ。(国による)情報公開制度の運用が恣意的になっている」と批判した。▼ 大阪地裁では、雅子さんが国などに損害賠償を求めた訴訟と、財務省大阪地検特捜部に提出した資料を不開示とした決定の取り消しを求めた訴訟が係争中。雅子さんは「夫がどういった理由で改ざんをしたかを聞きたい」と訴えた。(北海道新聞デジタルより)


★★★ 猿轡犬汚(さるぐつわけんお)の意見
 
 夫である赤木俊夫氏の「自死」は何故起こったのかを追求したい一心で、赤木俊夫氏の妻赤木雅子さんは、裁判に訴えることでその思いを果たそうとしてきましたが、政府の担当者からは、その理由を隠すためほとんど黒塗りにした「改ざん文書」なるものしか提出されませんでした。弁護士と相談しながら、赤木俊夫氏の妻は「賠償」を訴状の表の理由にしながら、「自死」に至る背景を知るための誰もが理解できる行動に出ました。■しかし、国は突如約1億円の賠償請求を受け入れる書面を提出したことにより、「国との訴訟は終結し、今後は佐川氏のみを被告として続く見通し」となった。これに対し、真相を求めていた赤木俊夫氏の妻雅子さんは「大阪市内で開いた記者会見で『負けたような気持ちだ』」と話し、また「代理人弁護士は『非公開の協議の場で訴訟を終わらせてしまった。国は隠したい事実があるのではないか』と批判し」ました。■まさに、この突如の賠償金請求の認諾によって、赤木俊夫氏の「自死」に追い込まれた経緯を隠したことこそ、その裏にどす黒い意図が透けて見えます。森友問題にある学校建設用地確保に手を貸したと想像される安倍元首相が、財務省の佐川氏に問題の文章の改ざんを指示・命令してやらせたとこれまで推定されてきました。このことをさらに強く「証明」し「照明」を当てるに決まっている「お金による解決」策を岸田現首相(その背後霊であり指南役・黒幕の安倍元首相)と政府・自民党は選択しました。これは、いわゆる「もみけし」です。■しかし、これで最終決着がついたわけではありません。赤木俊夫氏の妻雅子さんの「夫がどういった理由で改ざんをしたかを聞きたい」と訴えている事柄が全く示されていず、今後もこの核心点を明らかにする戦いが続くことは明白です。また、全国民も大きく眼(まなこ)を開けて改ざん問題と関連する赤木俊夫氏の自死問題を見つめ、背後にある森友問題のどす黒い核心を追求していかなくてはならないと思います。

[735]「コロナ世代」頼るのは自分という境地

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 12月9日の朝日新聞「欧州季評」というコラムにブレイディみかこさん(保育士・ライター)が「『コロナ世代』若者の政治観 頼るのは自分という境地」というタイトルをつけた一文を寄稿しています。

新型コロナ危機下の若者たちを「コビッド・ジェネレーション(コロナ世代)」とよぶのだそうです。保育士でもあるライターのブレイディみかこさんによれば、イギリスのコロナ世代は政治に関心が高く既成の政党離れをしているといいます。

 息子さんが来年カレッジ(日本の高校にあたる)に通うのでの見学に行った折のことです。どの高校も科学や歴史、経済などと比して政治の教室がいっぱいだったそうです。

 ブレイディさんは、教員になぜ政治の教室がいっぱいだったのか聞いてみたそうです。

 教員は「コロナ禍だと思います。2年前まではこんなことはありませんでしたから。休校や入試方法の変更など、これほど10代の子どもたちが政治に未来を左右された時期はありません。だから政治について考えるようになったのでしょう。」と答えました。

人気投票

 あるカレッジで保守党と労働党の人気投票が行われていました。保守党が2票労働党が4票でした。6人しか投票しなかったのではありません。政党名が書かれたホワイトボードに「自分自身の党」という字が書かれていて20人が投票したそうです。

 6年前「Mrマルクス主義」と呼ばれたコービン党首に心酔した若者たちがこぞって労働党に入党しましたが、その後党内のゴタゴタに幻滅してしまったようです。

 ブレイディみかこさんは、コラムのおわりを次のように結んでいます。

「······コロナ禍に未来を左右された10代は、もはや『カリスマティックな指導者や政党に何とかしてもらう』のではなく、『自分自身でやってみる』という境地に達しているのではないか。安直に『無政府主義』と理解されてきたアナキズムが、自治と協働の思想として見直されていることとも無関係ではないだろう。」

変革の芽吹きを

 既成の政党や運動にたいする失望は、イギリスの若者たちだけではなく世界に広がっていると私は思います。様々な色あいのアナキズムがわき起こっていることも確かです。
 スターリン主義ソ連邦が自己崩壊して30年、あの事態がマルクス主義の終焉と喧伝され、それに抗する力の弱さゆえに世界の労働運動市民運動は総体として脱イデオロギー化の波にのみこまれてしまいました。
 新型コロナ危機は資本主義の本質を白日のもとにさらしました。貧富の格差は広がりわれわれ労働者階級民衆は感染症と貧困に苦しんでいます。しかし反対運動は危機の犠牲を労働者に転嫁する資本家たちに抗するイデオロギー的な芯棒を失ったのです。
 資本主義が再び世界を制覇しかたちを変えながら永遠につづくかのような仮象に包まれた現代世界。中国は国家資本主義へと転じ各国スターリン主義党は脱色しました。
 日本においても反対党の体制内化に規定され労働運動の産業報告会化と議会の大政翼賛会化が急速に進行しています。20世紀後半にあらわれたところの・既成の運動をのりこえ階級闘争を変革するという胎動も今やしぼみ、思想的にも零落したといっても過言ではないと思います。
 いま、運動の再建のときです。すべての老若男女が奮起して階級闘争の瓦礫の中から過去の良きものを継承し新しい芽吹きを育むべきときです。

 私は労働運動のなかで蝸牛の歩みをつづけているわけですが、組合員と話す中で現実の重さをひしひしと感じています。

[734](投稿)低レベル放射性廃棄物の危険性

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<シリーズ論評 核のごみどこへ>38 
低レベル処分 周知不足 
神奈川工科大教授・藤村陽氏(59)
12/11 08:54
藤村陽氏

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場に埋めるのは、高レベル放射性廃棄物だけではない。使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す再処理過程で出る低レベル放射性廃棄物超ウラン元素(TRU)廃棄物」も一緒に処分する。高レベル放射性廃棄物と比べ、TRU廃棄物は放射能漏れ対策が甘い。地震の直撃を受ければ、地上に放射能被害をもたらす恐れがある。▼ TRU廃棄物は、核燃料の集合体の切れ端や、放射性物質が付着したフィルターを細断したものが含まれる。放射能が強いものもあり、地層処分の対象となっている。計画では1万9千立方メートル以上を処分する。▼ 処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)はTRU廃棄物を地層に埋める際、ドラム缶などの容器に入れ、さらにこれらの数本をまとめて大きな鉄製容器に入れる方針だ。鉄製容器内にはモルタルを入れて隙間をなくすという。▼ 問題は鉄製容器の厚さだ。最大5センチとする方向で検討されており、最短300年で腐食する。高レベル放射性廃棄物を覆う鉄製容器が厚さ19センチで、千年持つとされるのと比べ、防御性能が低い。TRU廃棄物の鉄製容器は梱包(こんぽう)物によって大きさや形が変わるため、規格統一が難しいようだ。▼ NUMOの包括的技術報告書によれば、断層地震が直撃して放射能が漏れる最悪シナリオの場合、年間の被ばく線量は核のごみでは最大2ミリシーベルトだが、TRU廃棄物は最大14ミリシーベルトに上る。TRU廃棄物にはヨウ素129や炭素14という水に溶けやすい放射性物質が含まれ、地下水に溶け込むと移動が速いため、数値が高くなっているが、NUMOはめったに起きないケースとして、問題ないという立場だ。▼ NUMOはまた、将来、容器の腐食などで放射性物質が漏れ出し、人の生活圏内に入り、飲料水を通して体内に取り込んだとしても被ばく線量は低いとして、問題視していない。▼ ただ、地下水の水量が少なければ放射能の濃度が高くなり、それを将来の人間が水源として使えば被害は大きくなる。さまざまなリスクを考えれば、本当に問題ないと言えるのか。▼ 国やNUMOはこれまで、TRU廃棄物の地層処分について積極的に説明することはなく、最終処分場選定に向けた文献調査が行われている寿都町神恵内村でも認識している人は少ないだろう。後になって「これも埋めます。こんなリスクがあります」と言われても、受け入れる側にとっては「後出しじゃんけん」に映り、不信感が募る。まず初めに埋めるもの全てを明示し、リスク面を含めて丁寧に説明すべきだ。(聞き手・山田一輝)

<略歴>ふじむら・よう 東京都で生まれ、小中高は福島市で育った。東大大学院修了、2009年から現職。専門は物理化学。神奈川県厚木市在住。(2011/12/11北海道新聞デジタルより引用)


★★★
一労働者の感想 


 最終処分場に埋めるTRU廃棄物について初めて知りました。これによる被ばく線量も極めて高いことも初めて知りました。 
 国やNUMOはこれまで、TRU廃棄物の地層処分について説明していません。藤村さんは、最終処分場選定に向けた文献調査が行われている寿都町神恵内村でも認識している人は少ないだろうという恐ろしい指摘をしています。これが明らかになっていたら寿都町(すっつちょう)の町長選挙の結果は変わっていた可能性があります。誰もが言うことですが、お金でもって人の命は買えません。目に見えない手触りもない放射線の「弾丸」で人が死亡することなどあってはならないことです。
 また、海水や飲料水が放射能で汚染されてはなりません。汚染された食物連鎖の最終ランナーは人間です。バタバタと人が死に絶え、地球上から人が消えていくというシナリオは決してSF映画のシナリオではないのです。現下の原発を稼働するにせよ、一時停止しているものにせよ、濃縮された放射性物質から発生している放射能が人々に危害を加えることは間違いのないことだと思います。
 実際、福島の原発事故などで原発が停止せざるを得なくても、ウラン燃料の連鎖反応を抑えるために水(あるいは海水)を絶えずかけ流して、冷却し続けないとメルトダウンが起こり、原子力発電所はまた爆発します。その結果、大量の放射性物質の粒子が海に空中に溢れ出て、海水や河川水や田んぼや畑や山林や高山などが放射能汚染されます。もちろん人間も汚染される対象に・標的になります。それでもあなたは原発の再稼働に賛成しますか?核のごみの処分場を誘致しますか?

 今、この地球上で一番怖いものは原発を推進しようとしている、その廃棄物を地震などに脅かされる地層に埋葬しようとしている「人間」という「動物」ではないでしょうか!!

 温暖化が二酸化炭素だけで生じていると思いますか?原発の燃料は1秒間に70トンの海水(河川では水)を7度も上げる驚くべき「熱発生器」です。これで日本で海水がおかしくならないわけがないと思います。

 温かな海で獲れる魚が北国で取れたり、赤潮で様々な海洋生物が大量に死んだりしているのは「海水温め機。河川に冷却水をたれ流す原発では水温め機」という「原発の冷却水の排出」が原因ではないということが言いきれるでしょうか?

[733]立民党は「政権批判が強く映ってしまった」(連合芳野会長)

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 連合芳野会長は日経新聞のインタビューにこたえました。
質問ーー立憲民主党衆院選議席を減らしました。
「政権批判が強く映ってしまった。どういう国、社会を目指すのかが非常にわかりづらかった。」

 なぜ政権批判が強く映ってはいけないのでしょうか。森友、加計、さくらを見る会や学術会議任命拒否問題の批判が弱いから政府は平気な顔をしているのです。「野党は批判ばかりしていて対案がない」というのは批判されて困っている与党の言いのがれです。批判ばかりしているという権力者の批判政党への非難をはね返し、労働者民衆の先頭でもっと強い批判運動を展開し信頼を勝ちとれなかったことが選挙の敗因でもあるのです。  
 ハラスメントにあたる行為を受けた孤立した労働者が権力に助けを求めるしかないのも、頼りにできる労働者の党や労働組合がないからなのです。
 批判ではなく政策提言型の政党づくりの強調は権力を頼むということばなのです。
 芳野会長は自公との関係は連合の考え方に近い部分があれば政策実現の観点から是々非々だといいます。ウエルカムの姿勢をとってしまえば批判を控えることになります。芳野会長は、立民党は政権批判が強く映ったのが良くなかったと言っていますが、批判をひかえよということでしょう。与党にすりよる労働運動をつくりかえなければ、労働者は権力に頼るしかない状況は変わらないと思います。

[732]多事争論「政権批判はムダですか 汚れたお重 洗わぬわけには」に想う

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 「政権批判はムダですか 汚れたお重 洗わぬわけには」(12月8日朝日新聞の《多事争論》)はおもしろかったです。
 筆者の高橋純子さんはコラムのおわりに「ふう。目の奥が痛い。眉間のしわは深い。この原稿、いったい何回かき直したっけ?」といいます。苦労して書いただけあっておもしろい。
 高橋さんは立憲民主党の報道をみていて、武田泰淳の妻百合子の「誠実亭」というエッセイの一節を思い出したそうです。エッセイには武田が飲食店で食器洗いのアルバイトをしたとき、客が汚れた出前弁当のお重を洗って返してくれることがあったが、もう一度洗わなければならないので客の礼儀正しさと思いやりはムダでうっとうしいものに感じたという回想が書かれていたそうです。
 しかし高橋さんは洗わず戻すことを皆がすべきだというのは違うのではないかといいます。衛生面に気を配ったり、洗い場に立つ人の身になったり、自分でできることは自分でやるというよき心がけでやることをやめろというのは筋を違えている、という話からはじめて、政権批判をすることがムダでうっとうしいと批判される昨今の風潮にチクリ。モリカケ問題サクラを見る会や学術会議任命拒否など「汚れたお重が積み上がっている」ことを洗おうとするのは当然だと。
 コラムの下段に移ってこう言う。「政権批判への冷ややかな視線の背景にはもうひとつ、権力への警戒がほどけ、権力を頼む姿勢がひとびとの間で強まっていることもあるのでは」。
 高橋さんは法哲学那須氏の意見を紹介しています。
 「『他人の自由はリスク、自分の自由は負担』という感じ。他の人が自由にすると、こちらがどんな目に合わされるかわからないし、自分に自由が与えられると、自己責任だと言われて、そのツケは全部自分に回ってくる」といい、だから人びとはいま「自由」より法、特に国の強制力=権力に頼るようになっている、と那須は言っていると。
 多くの識者が「権力批判よりも、権力を使って何をなすのか前向きの提案をすべきだ」という方向に流れていくことに那須は「本当に望ましいことを実現するためには、時間をかけてでも、権力の手は借りない」という気概を取り戻せと言っていると高橋さんは受けとめた。
 この意見を受けとめて高橋さんが言うことは明快です。
 「『よいこと』のためなら権力を使っていいのかーーとても大事な問いだと思う。一度この問いの地点まで身を引いて考えてみないことには、『目指す社会』に向かっているはずが、『いまある社会』に鼻面を引き回されるだけになってしまうだろう。」
 
 いまの公式メディア界にこういう意見を書く方がおられるとは驚きました。考え考え何度も書き直したのでしょう。
 私も同感です。これを読んで私が連想したのは、ハラスメントといわれる行為を会社経営者に訴え懲戒処分させるということによって解決がはかられるという風潮です。今は被害者はひとりでお上に訴えるしか方法がないとはいえ、会社のコンプライアンス規定にのっとってハラスメント苦情の受付窓口に訴えるという会社の労務管理のルートに依拠して、「加害者」とされる人を処分させるのは再発防止にはなりません。当事者ではない労働者が萎縮するだけだと思います。いまこう言う私自身、「もちろん労働強化の強制や嫌がらせはよくありませんが」、と補足をつけ加えないと意見が言いづらくなっているのが当世の雰囲気です。
 私が問題だと思うのは、権力を頼むしか自分の窮地をしのぐことができなくなっている状況です。そこまで労働者の社会的分断状況が進んでいるということです。

 いまどの企業でもハラスメント苦情の受け付け窓口を設けています。言葉がハラスメント語かどうかを基準として訴えられた人を会社が罰するというように流れています。ハラスメントという言葉が妥当する行為をいつどこで誰が誰になんのために行ったのか、訴えた人がハラスメントと受けとめた他者の行為の原因を明らかにして仕事量、人員不足などのストレス要因をなくす努力を会社にさせなければハラスメントの根をたつことはできません。
 それを可能にするのは労働者の団結した闘いです。

[731]広がる“中国化”その7

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広がる“中国化”その7

 <夢へと突き進む異形の大国>

マレー半島を横断する運河

 中国の世界戦略は、カンボジアの隣国タイでも加速しています。中国国有企業も出資して、マレー半島で運河を建設するための調査が始まっています。全長130キロ、パナマ運河を超える巨大運河。マラッカ海峡を経由しない、新たな海の道を切り開き、一帯一路に革命を起こすという。
 タイ運河協会パンヤット・パッタム相談役は「タイ人は西洋人を信じてきましたが、中国に舵を切ります。中国はテクノロジーも資金も経験もすべてがあります」といいます。
 このプロジェクトを支えるのが、タイの社会に精通する現地の華僑。政府や住民との交渉、資金繰りに奔走している。タイ華僑 ジャルーン・ゲーオワジータラップ氏は言います。「中国には僕のルーツがあります。経済を飛躍させるためには輸送ルートの高速化が不可欠なのです」

 一帯一路最大のリゾート開発が進むカンボジア・ダラサコー。ホテルのプレオープンに自ら立ち会う鄧会長は「私たちは経済状況がどう変わっても成長していきます。中国の国力は変化を遂げ、ますます豊かになっていくのです」という。アメリカによる制裁を受けながらも、この日を迎えた。
 映像は空港の建設現場では、ぬかるみにはまったトラックをカンボジア人が押しだそうとしている姿を映していました。立派なホテルと劣悪な労働現場の落差。経済援助をてこに、中国はその国の中で影響力を増しています。


NHKの取材班は次のようにまとめています。

 もたらされる成長の陰で、各地に戸惑いと反発が広がっていた。
中国新世紀。
異形の大国は、それでも自らの夢に向かって突き進もうとしている。


 私の感想:

 一帯一路戦略にもとづいて進められているアジア、中東、アフリカ、ヨーロッパの国々にたいする中国の新植民地主義的な経済進出は、アメリカをはじめとする世界の資本主義国に警戒と対抗的行動をうみだし東シナ海や、台湾海峡日本海で軍事的緊張関係をも高めています。
 各国に進出した中国資本はカンボジアのバナナ農園の労働現場が象徴的に示しているように、各国の労働者階級に低賃金と長時間労働、労働の強化を強いています。反発や闘争が自然発生的に、あるいは散在する既成の反対運動によって組織されるのは必至です。

第3の歴史決議

 中国共産党習近平は第3の歴史決議を発表し、1978年の第11期3中全会の改革開放路線への転換後の資本主義化にさらにブースターをかけることを宣言しました。中国資本主義化の結節点は1978年の3中全会の鄧小平体制の確立です。市場経済化を「先富論」によって合理化した鄧小平は、資本主義化する中国に「社会主義の初級段階」という規定をあたえて正当化したのです。習近平は改革開放に終わりはなく、「足踏みや後戻りに活路はなく、より大きな政治的勇気と知恵をもって改革を全面的に深化させなければならない」と宣言しました。歴史決議ではマルクス主義という言葉を使っていますが、こんにちの中国共産党の「マルクス主義」はマルクスのガイストがぬき去られ資本主義化をおし隠すためにくりかえされているにすぎないのです。

 そもそも社会主義社会には国家は存在しません。「社会主義の初級段階」という規定は鄧小平の造語です。市場経済の導入と社会主義は相いれないので「初級段階」なら市場経済もありだという理屈をひねり出したのだと私は思っています。マルクスのいう社会主義社会は、全社会的生産の組織的計画的な実現をなしとげるための「機関」がのこるだけなのです。

 習近平の中国は資本家階級が労働者階級を搾取し収奪し政治的に虐げる資本主義の道を歩むことを宣言しています。
私は労働者階級の立場にたって中国資本主義社会で呻吟する労働者農民にともに頑張ろうというエールをおくります。

[730]カンボジア首相フン・センがミャンマーに何をしに行くのか?

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 7日カンボジアのフン・セン首相は、来年1月にミャンマーを訪問することをミャンマー国軍ワナマウンルウィン外相との間で合意しました。
 この間「暴力の停止」「特使の派遣」を提言するASEANの代表の訪問を拒んでいた国軍がフン・センと会うことに懸念の声が広がっています。その中でフン・センは次のように言います。「権力の座にある者と協力せずに誰と協力するのか。カンボジアは対応方法をしっている。」と国軍をミャンマーの代表として認めているのです。。
 ミャンマーではNLDのアウン・サン・スーチーさんが12月4日裁判で社会不安を煽ったとして4年の禁固刑の判決をうけました。国軍は「民主化運動」のシンボル的存在であるスーチー氏を拘束し続けようとしています。そして5日ヤンゴンで行なわれたデモに軍の車両が突込み5人が虐殺されました。すでに国軍の暴力的弾圧による犠牲は1300人をこえています。
 
中国の影

 中国は一帯一路戦略の展開を通じて東南アジアの国々に政治的経済的な影響力を拡大しています。このブログの「広がる“中国化”」によればカンボジアのフン・セン政権は情報省トップが中国メディア企業を通じて習近平に密着しています。
 フン・センのミャンマー訪問の背後には習近平の“影”がチラチラします。中国は内政不干渉を名分として国軍の暴力的圧制を容認するばかりか香港のように反対運動を壊滅することを期待しているのかもしれません。白猫でも黒猫でもいいから一帯一路の受け入れ先として「平定」されることを期待しているのです。
 フン・センは中国の「特使」のような役を担っているといっても過言ではありません。
 ミャンマーで弾圧に抗してたたかう労働者農民学生に日本の地から支援の声を!