[731]広がる“中国化”その7

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広がる“中国化”その7

 <夢へと突き進む異形の大国>

マレー半島を横断する運河

 中国の世界戦略は、カンボジアの隣国タイでも加速しています。中国国有企業も出資して、マレー半島で運河を建設するための調査が始まっています。全長130キロ、パナマ運河を超える巨大運河。マラッカ海峡を経由しない、新たな海の道を切り開き、一帯一路に革命を起こすという。
 タイ運河協会パンヤット・パッタム相談役は「タイ人は西洋人を信じてきましたが、中国に舵を切ります。中国はテクノロジーも資金も経験もすべてがあります」といいます。
 このプロジェクトを支えるのが、タイの社会に精通する現地の華僑。政府や住民との交渉、資金繰りに奔走している。タイ華僑 ジャルーン・ゲーオワジータラップ氏は言います。「中国には僕のルーツがあります。経済を飛躍させるためには輸送ルートの高速化が不可欠なのです」

 一帯一路最大のリゾート開発が進むカンボジア・ダラサコー。ホテルのプレオープンに自ら立ち会う鄧会長は「私たちは経済状況がどう変わっても成長していきます。中国の国力は変化を遂げ、ますます豊かになっていくのです」という。アメリカによる制裁を受けながらも、この日を迎えた。
 映像は空港の建設現場では、ぬかるみにはまったトラックをカンボジア人が押しだそうとしている姿を映していました。立派なホテルと劣悪な労働現場の落差。経済援助をてこに、中国はその国の中で影響力を増しています。


NHKの取材班は次のようにまとめています。

 もたらされる成長の陰で、各地に戸惑いと反発が広がっていた。
中国新世紀。
異形の大国は、それでも自らの夢に向かって突き進もうとしている。


 私の感想:

 一帯一路戦略にもとづいて進められているアジア、中東、アフリカ、ヨーロッパの国々にたいする中国の新植民地主義的な経済進出は、アメリカをはじめとする世界の資本主義国に警戒と対抗的行動をうみだし東シナ海や、台湾海峡日本海で軍事的緊張関係をも高めています。
 各国に進出した中国資本はカンボジアのバナナ農園の労働現場が象徴的に示しているように、各国の労働者階級に低賃金と長時間労働、労働の強化を強いています。反発や闘争が自然発生的に、あるいは散在する既成の反対運動によって組織されるのは必至です。

第3の歴史決議

 中国共産党習近平は第3の歴史決議を発表し、1978年の第11期3中全会の改革開放路線への転換後の資本主義化にさらにブースターをかけることを宣言しました。中国資本主義化の結節点は1978年の3中全会の鄧小平体制の確立です。市場経済化を「先富論」によって合理化した鄧小平は、資本主義化する中国に「社会主義の初級段階」という規定をあたえて正当化したのです。習近平は改革開放に終わりはなく、「足踏みや後戻りに活路はなく、より大きな政治的勇気と知恵をもって改革を全面的に深化させなければならない」と宣言しました。歴史決議ではマルクス主義という言葉を使っていますが、こんにちの中国共産党の「マルクス主義」はマルクスのガイストがぬき去られ資本主義化をおし隠すためにくりかえされているにすぎないのです。

 そもそも社会主義社会には国家は存在しません。「社会主義の初級段階」という規定は鄧小平の造語です。市場経済の導入と社会主義は相いれないので「初級段階」なら市場経済もありだという理屈をひねり出したのだと私は思っています。マルクスのいう社会主義社会は、全社会的生産の組織的計画的な実現をなしとげるための「機関」がのこるだけなのです。

 習近平の中国は資本家階級が労働者階級を搾取し収奪し政治的に虐げる資本主義の道を歩むことを宣言しています。
私は労働者階級の立場にたって中国資本主義社会で呻吟する労働者農民にともに頑張ろうというエールをおくります。