[735]「コロナ世代」頼るのは自分という境地

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 12月9日の朝日新聞「欧州季評」というコラムにブレイディみかこさん(保育士・ライター)が「『コロナ世代』若者の政治観 頼るのは自分という境地」というタイトルをつけた一文を寄稿しています。

新型コロナ危機下の若者たちを「コビッド・ジェネレーション(コロナ世代)」とよぶのだそうです。保育士でもあるライターのブレイディみかこさんによれば、イギリスのコロナ世代は政治に関心が高く既成の政党離れをしているといいます。

 息子さんが来年カレッジ(日本の高校にあたる)に通うのでの見学に行った折のことです。どの高校も科学や歴史、経済などと比して政治の教室がいっぱいだったそうです。

 ブレイディさんは、教員になぜ政治の教室がいっぱいだったのか聞いてみたそうです。

 教員は「コロナ禍だと思います。2年前まではこんなことはありませんでしたから。休校や入試方法の変更など、これほど10代の子どもたちが政治に未来を左右された時期はありません。だから政治について考えるようになったのでしょう。」と答えました。

人気投票

 あるカレッジで保守党と労働党の人気投票が行われていました。保守党が2票労働党が4票でした。6人しか投票しなかったのではありません。政党名が書かれたホワイトボードに「自分自身の党」という字が書かれていて20人が投票したそうです。

 6年前「Mrマルクス主義」と呼ばれたコービン党首に心酔した若者たちがこぞって労働党に入党しましたが、その後党内のゴタゴタに幻滅してしまったようです。

 ブレイディみかこさんは、コラムのおわりを次のように結んでいます。

「······コロナ禍に未来を左右された10代は、もはや『カリスマティックな指導者や政党に何とかしてもらう』のではなく、『自分自身でやってみる』という境地に達しているのではないか。安直に『無政府主義』と理解されてきたアナキズムが、自治と協働の思想として見直されていることとも無関係ではないだろう。」

変革の芽吹きを

 既成の政党や運動にたいする失望は、イギリスの若者たちだけではなく世界に広がっていると私は思います。様々な色あいのアナキズムがわき起こっていることも確かです。
 スターリン主義ソ連邦が自己崩壊して30年、あの事態がマルクス主義の終焉と喧伝され、それに抗する力の弱さゆえに世界の労働運動市民運動は総体として脱イデオロギー化の波にのみこまれてしまいました。
 新型コロナ危機は資本主義の本質を白日のもとにさらしました。貧富の格差は広がりわれわれ労働者階級民衆は感染症と貧困に苦しんでいます。しかし反対運動は危機の犠牲を労働者に転嫁する資本家たちに抗するイデオロギー的な芯棒を失ったのです。
 資本主義が再び世界を制覇しかたちを変えながら永遠につづくかのような仮象に包まれた現代世界。中国は国家資本主義へと転じ各国スターリン主義党は脱色しました。
 日本においても反対党の体制内化に規定され労働運動の産業報告会化と議会の大政翼賛会化が急速に進行しています。20世紀後半にあらわれたところの・既成の運動をのりこえ階級闘争を変革するという胎動も今やしぼみ、思想的にも零落したといっても過言ではないと思います。
 いま、運動の再建のときです。すべての老若男女が奮起して階級闘争の瓦礫の中から過去の良きものを継承し新しい芽吹きを育むべきときです。

 私は労働運動のなかで蝸牛の歩みをつづけているわけですが、組合員と話す中で現実の重さをひしひしと感じています。