[886]沖縄米軍基地つきで返還されて50年


 沖縄の施政権が返還されて50年が経ちます。当時学生だった私は、札幌で沖縄の核基地つき返還に反対するデモに参加しました。確か雨だったと思います。この時期は暗く湿った印象が残っています。50年後のいま、プーチンウクライナ侵略によって戦争の引き金が引かれ、アメリカが後方支援する新たな世界戦争がはじまっています。
 日本政府もロシアにたいする「戦い」を経済制裁や戦争装備品援助という形で担っています。日本の労働者は賃金は上がらず、物価が値上がりし生活は苦しくなっていますが、労働運動は財界の代表部・自民党にすり寄ってしまい産業報国会のようになっています。組合としてのウクライナ戦争反対の闘いは微弱です。
 ウクライナ戦争という歴史の激変の中で、日本も戦時下というべきです。それでも日々の「日常」は繰り返します。「戦争」は静かに私たちを包みます。
 政府と取りまき政党は上から流される戦争プロパガンダに従順なメディアに助けられ、「外から攻められる」という脅威をあおり日本の労働者民衆の意識に危機感をつくろうとしています。「ストーリーとしての日本を対象とした戦争」に備えるためにと称して平和憲法まで葬り去ろうとしています。

 「沖縄復帰50年」
 
 日経新聞に「沖縄復帰50年」の特集があります。5月12日記事の冒頭で次のように書かれています。
「沖縄は15日、復帰から50年を迎える。先の大戦で最大の激戦地となり、多くの犠牲者を出した『基地の島』からの脱却を求める声が根強い県民感情と、安全保障からみた地政学上の重要性をどう両立させるか。それは政治の役割となる。」
 両立すべくもない戦争と平和。その両立が迫られているというように思う記者の意識に、こんにちの世界の矛盾が反映しています。現代資本主義世界の東西対立が戦争というかたちで決壊しました。平和か戦争かの選択は沖縄の軍事基地の是非を問うています。
 戦争で沖縄県民の4人に1人が亡くなった。戦争を再び繰り返してはいけないという気持ちは体験に基づいています。沖縄で暮らす人々をはじめとして戦争に反対するわれわれの意志は、アメリカの対中国軍事戦略上ますます重みをます米軍基地の存在と鋭角的に対立するのです。
 戦争反対の声と安全保障からみた地政学上の重要性をどう両立させるか、という設問はヒューマニズムを基準とするかぎり成立しないと思います。
 

[885]「物価上昇の甘受は民主国国民の自由を守る戦いだ」(日経新聞コラム)


 5月13日の日経新聞のコラム「大機小機」は「新たな戦争の形」という見出しです。
次のように結ばれています。
「自由はタダでは得られない。ウクライナは死を賭して戦う。物価上昇の甘受は民主国国民の自由を守る戦いだ。経済制裁は核が使えない時代の戦争の形である。(桃李)」
 プーチンの侵略に対する戦いは、背後から米国をはじめとする西側資本主義諸国家にバックアップされたウクライナ軍と労働者民衆が矢面にたった世界戦争となっています。
 そのことを大機小機の桃李氏が感じとりはっきり語っています。今のウクライナ戦争は経済制裁という形の戦争であり、その結果物価が上昇するのは自由を守るために甘んじて受け入れようというのです。まるで太平洋戦争下の日本で言われた「欲しがりません勝つまでは」と同じです。今の日本社会はロシアや中国が攻めてきたら戦うしかないのだと言う政府に従って、戦争へと流されていっていることに気づかなければなりません。
 今為政者が語る「自由を守る」ということの危険な意味を考えなければなりません。
 昨日は戸坂潤を描く演劇の紹介をしましたが、私は戦争初期の戸坂の文章『日本のイデオロギー』を読み返してみました。「自由主義」「日本主義」を批判的に省察しています。インターネットで戸坂潤を検索すれば、青空文庫で読むことができます。

[884]憲法集会

 
 憲法集会には護憲各党の代表が参加しました。共産党社民党は委員長、党首が参加しましたが、立憲民主党は代理が来ました。改憲の風が強い中で立憲民主党は「論憲」と言っており、泉代表は参加せず様子を見ていると推察できます。
 共産党ASEANが構想している東アジアサミットに日本も連携して9条を生かした外交を、と発言しました。
 志位委員長はNHK「憲法記念日特集」でも、同様のことを語っているので紹介します。赤旗から抜粋します。

 志位 よく一部から「9条で平和は守れるか」という声が聞こえてきますけど、戦争を起こさないための9条を生かした外交に、知恵と力を尽くすのが政治の役割ではないかと思うんですね。

 日本共産党は、東アジアに平和をつくるための「外交ビジョン」を提案しております。私たちが注目しているのは、あらゆる紛争問題を徹底的な平和的な話し合いで解決しているASEAN東南アジア諸国連合の取り組みなんです。いまASEANは、ASEAN10カ国プラス日米中など8カ国で東アジアサミットという平和の枠組みをつくって、これを発展させて、ゆくゆくは東アジア規模での友好協力条約を展望しようという大構想を示しています。
 私は、いま日本が進むべきは「敵基地攻撃」だのそういう物騒な話ではなくて、ASEANの国ぐにとしっかり連携して、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にするための9条を生かした平和外交だと、この努力をしっかりやるべきだと(思います)。まさに9条の出番の時を迎えていると、私は思います。

「アジアにおける平和の枠組みを考えていくことは重要」(岸田首相)
 志位氏の提案に対して、(NHKの)伊藤解説委員が「アジアの地域のなかでの安全保障の構想、これこれはどうだという提言もありましたけど、この点はどうですか」と問いかけたのに対して、岸田首相は「国際秩序の根幹が揺るがされる事態を前にして、あらためてアジアにおける安全保障や平和の枠組みを考えていくという考え方は重要だと思います」と認めました。

以上赤旗から

私の意見: 
 ASEANが東アジアサミットをつくればアメリカはそれを対中アジア戦略に位置付けるでしょう。すでに対中国の軍事的経済的包囲網づくりがクアッド(日米豪印の軍事的経済的戦略対話)という形で進められています。
 2022年ASEAN議長国カンボジアミャンマーの軍政府を擁護しています。ミャンマーの軍事クーデターと軍政に反対する運動への弾圧に正面から抗議すらできないのがASEANの現状です。アジアを戦争のない平和な地域にするためにASEANアメリカを入れた友好協力条約をつくることを期待するのはかえって危ないと思います。アメリカは対中国の東アジア軍事同盟づくりに利用するでしょう。
 岸田首相も「大東亞共栄圈」の今日的形態づくりに乗り出す好機としたいのだと思います。
 日本共産党は外交ビジョンを提示し集票したいのでしょうが、ASEANを美化していては足許をすくわれます。
 
 「9条で平和は守れるか」という声は改憲を正当化するためのかけ声です。これに対して単に外交ビジョンを対置するのは無力です。
 戦争反対の立場に立って戦争の原因を突き止めることが何より大切だと思います。
 

[883]演劇公演「真理の勇気ー戸坂潤と唯物論研究会」


 5月3日の憲法集会に行って来ました。久しぶりに晴れたこの日、会場の有明防災公園に大勢の人が集まりました。
 会場入り口で「青年劇場 第127回公演 真理の勇気ー戸坂潤と唯物論研究会」の宣伝チラシを受けとりました。5月13日~22日、紀伊国屋サザンシアターで上演するそうです。
 昭和初期に「唯物論研究会」を主導した戸坂潤は、治安維持法で囚われ1945年終戦直前に獄死させられました。獄中で疥癬にかかり栄養失調によって亡くなったといわれていますが、「おけさほど唯物論はひろがらず」と悲嘆しながらも、唯物論哲学を研究しました。
 いまその戸坂潤をテーマにした劇が創られ上演されることに驚いています。まるで50年くらい前にタイムスリップしたような感覚です。
 ストーリーが紹介されているので引用します。

「1945年8月9日、戸坂潤は獄死した。戦争が終わるわずか数日前のこと。時は遡ること12年前。『野蛮で反知性的なファシズムに対し、我々はあくまでも知性を武器にして闘い抜く』と、戸坂潤は岡邦雄、三枝博音と共に唯物論研究会を立ち上げた。しかし『危険思想を広める恐れがある』と特高警察の監視が始まり、やがて集会禁止から執筆禁止に。それでも彼の楽天性は奪われることはなかった。」
 
 戦火が絶えず、暗く冷え冷えとした現代世界を根底から見つめ直すことができる哲学の復権のために、この劇の創り手と演じる人、そして観る人々にも期待します。
 
 
 

[882]プーチン演説

 
 5月9日ロシアで対ナチスドイツ「大祖国戦争勝利記念日があり、プーチンが演説しました。
 ロシア軍がウクライナに侵略して2ヶ月半が経ちます。ロシア軍は撤退せず、ウクライナ軍はアメリカをはじめNATOに軍事的にも経済的政治的にも支えられて戦争を続け、日を追うごとに犠牲者が増えています。
 プーチン は演説で(ウクライナへの軍事行動は)やむを得ない、唯一の決断だった、と述べました。
 プーチン自身がやむを得ない、と言い訳していますが、2月24日にはじめたロシア軍の軍事行動はウクライナに対する侵略です。私はロシア軍の即時撤退をプーチンに要求します。そしてまた、アメリカの思うつぼにはまりつつあるウクライナのゼレンスキー政権に対してこれ以上労働者に戦争の犠牲を強いるのは止めよといわなければなりません。

 その上でプーチンの主張を考える必要があります。なぜ侵攻したのでしょうか。プーチン演説を引用します。

「去年12月、われわれは安全保障条約の締結を提案した。

ロシアは西側諸国に対し、誠実な対話を行い、賢明な妥協策を模索し、互いの国益を考慮するよう促した。

しかし、すべてはむだだった。

NATO加盟国は、われわれの話を聞く耳を持たなかった。

つまり実際には、全く別の計画を持っていたということだ。

われわれにはそれが見えていた。

ドンバスでは、さらなる懲罰的な作戦の準備が公然と進められ、クリミアを含むわれわれの歴史的な土地への侵攻が画策されていた。

キエフ核兵器取得の可能性を発表していた。

そしてNATO加盟国は、わが国に隣接する地域の積極的な軍事開発を始めた。

このようにして、われわれにとって絶対に受け入れがたい脅威が、計画的に、しかも国境の間近に作り出された。

アメリカとその取り巻きの息がかかったネオナチ、バンデラ主義者との衝突は避けられないと、あらゆることが示唆していた。

繰り返すが、軍事インフラが配備され、何百人もの外国人顧問が動き始め、NATO加盟国から最新鋭の兵器が定期的に届けられる様子を、われわれは目の当たりにしていた。

危険は日増しに高まっていた。

ロシアが行ったのは、侵略に備えた先制的な対応だ。」
NHK NEWS WEBから抜粋)

 プーチンが演説で述べたところの侵攻に至る経緯をつかんだ上で批判すべきだと思います。侵略反対の立場にたって、プーチンから見えていたNATOの動きとウクライナ東部の内戦についての言い分はつかんでおく必要があります。軍事的政治的対立がその背景にあるからです。
 これは次回以降書きたいと思います。
 
前面に出たアメリ

 もう一点重要だと思うのはバイデンの動向です。9日にバイデンは「レンドリース(武器貸与)法」を成立させました。これによってウクライナや東欧に対する武器貸与を大統領権限で実施できるようになります。
 第二次世界大戦でイギリスなどへの軍事支援を促進した法がウクライナを対象として復活したのです。バイデンは武器を売り込みたいのでしょう。
 ロシア研究者の和田春樹さんによれば、バイデン政権オースチン国防長官は、イラク戦争の司令官、中央軍司令官を経て、退役後は軍需大手レイセオン社(パトリオット・ミサイル製造)の重役に就いたと言われています。(『長周新聞』より)
 ともかくロシア軍の侵攻前からプーチンの侵略は確定的だと予言し、アメリカはウクライナに派兵しないと宣言したバイデン。ウクライナ戦争をバイデンの動きとの関係において見なければならないと思います。

[881](寄稿)ロシアのウクライナ侵攻と日本のコロナ対策における国民行動に見える類似性の恐ろしさ

ペンギンドクターより
その2
 山登一郎名誉教授の主張は以前にも紹介しました。MRICではお馴染みの方ですが、よく勉強されています。

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 ロシアのウクライナ侵攻と日本のコロナ対策における国民行動に見える類似性の恐ろしさ

 東京理科大学基礎工学部名誉教授
 山登一郎

2022年4月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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 今コロナ第七波か、と騒がれている。BA.2への置き換わりによると喧伝される。しかし、これまでも政府自治体専門家報道たちはその不作為を誤魔化すために、デルタ株、オミクロン株そしてBA.2亜種などに責任を押しつけてきた。毎回同じことに見える。

 どんな不作為なのか。日本では、ずっと検査及びマスの療養施設準備をサボってきた。本メルマガ上、何度も繰り返して、日本のコロナ対策における市中感染状況情報の収集開示不備を批判してきた。
 2月24日プーチン・ロシアのウクライナ侵攻に際し、的確詳細な情報開示が最も重要であることが示されたと思う。現戦況は予断を許さないが、ウクライナ側の即時詳細な情報公開に、国内国際社会は敏感に反応している。国際社会からのロシア排除傾向は加速されている。
 3月17日Vol.22061で、その素晴らしいウクライナの情報公開と比較して、日本のコロナ対策における検査情報公開の不備を批判指摘した。ここでまた同じことの繰り返しだが、再度その不備とそれに対する日本国民の反応の鈍さを批判する。

 ウクライナによる戦況情報の詳細な公開はご存じのことと思う。一方、ロシアでは国内の情報統制により、SNSやインターネットへの接続も制限され、国民の多くは国営放送の政府発表情報だけにしか触れることができないために、政府見解を信じてしまっていると報道されている。そのため、4月6日ブチャの惨劇報道に対して示す国際社会の大きな衝撃と反対大合唱とは対照的に、何とロシア国内の世論調査では80%がプーチンウクライナ侵攻支持だとか。

 さて日本のコロナ対策における検査体制を再確認しておく。ご存じの方はスルーして下さい。
 一昨年の当初は37.5度以上4日以上発熱で保健所に連絡して受検できた。その受検制限は批判され、発熱外来などで医師に相談して保険適用検査を受けられるようになった。それら検査陽性者周りの濃厚接触者も定義され、彼らは保健所が検査した。以上の各種検査結果が厚労省発表の日々の公表新規感染者数情報として公開されている。
 一昨年6月第一波が終わり、夏前にはJリーグプロ野球などでのPCR検査が認められ、それぞれの競技がスタートした。その検査陽性者は、上記保健所経由の行政・保険適用検査を再受検して陽性確定される。こうした非感染・無症状者対象の検査は民間検査として有償だ。その後こうした民間自費検査は高齢者施設などでも広く行われるようになった。また一昨年12月には、一般市民に対しても市中民間自費検査センターがスタートして、多くの市中一般人が陰性確認のために受検するようになった。ただし、これら民間自費検査の検査結果、検査数も陽性者数も陽性率もどこにも収集されず、公開もされなかった。

 一昨年の暮れから昨年の正月の第3波急増に際し、この民間自費検査情報が“見えない化”されていることに気付き、各所に訴えて批判した。しかしどこも取りあげなかった。そこで本メルマガ2021年4月12日Vol.069&070にそのことを訴えた。それ以降度々本メルマガで、この同じこと、つまり市中感染状況を知るための民間自費検査情報の収集公開を訴えた。
 公表新規感染者数は上記説明のように、基本的には発熱有症者を中心とした陽性者数を示す。ところがこのコロナ感染では、無症状者が多いことも当初から知られていた。その無症状者は本人に症状が出なくとも、感染拡大させることが知られ、隔離されるべきとされる。そうした市中無症状者も特定するため、欧米や韓国などでは“誰でもどこでもいつでも”検査を街中で行っている。それらすべての検査結果である検査件数、陽性者数などを公開している。これで国民一人一人が、市中ではどの程度の感染者がいるのか、感染状況を把握できる。ところが日本ではその情報がないのだ。

 昨年末オミクロン株への置き換わりで感染拡大し、マン延防止等重点措置が発令された。政府はその際市中無症状者対象無料PCR検査を行うと発表、暮れから大阪や東京でスタートした。やっと市中無症状者の無料検査が始まった。その陽性率は正月には大阪6%、東京3%と報告された。丁度都で1万人程度の公表新規感染者数の時で、14百万人人口の3%、40万人の市中無症状感染者の存在が推定された。ところが1月末には検査資材の不足が言われ、検査をしないでも濃厚接触者への医師の診察だけで陽性確定するという“みなし陽性”もスタートし、厚労省も当初検査情報収集体制の放棄を宣言することになってしまった。そして無症状者対象無料検査情報も結局意味のないものになってしまった。3月末には当のマン延防止等も全面解除され、無料検査も停止状態である。

 日本では、情報統制もされていない。ネットを通じて、欧米や韓国の検査体制もそこでの検査結果にもアクセス可能である。もちろんコロナでは無症状感染者がいることも当初から知られている。そして、日本では行政・保険適用検査の結果だけを公表新規感染者数情報として公開していることも知られている。結局市中無症状感染者の検査も積極的に行わず、その検査結果である市中無症状者の感染状況情報が収集も公開もされていないことも知っていることになっている。国民はそれでいいのか?
 市中の感染状況は結局明らかにされていない。それでどうしてどんなコロナ対策を打てるというのだろうか。国民も、自らの行動を律するに、何を根拠に行おうというのだろうか。
 検査体制を提案したのは、厚労省や専門家・分科会などだ。もし国民の健康を第一に考えたなら、当然市中感染状況の時々刻々の詳細な情報を収集公開すべきと期待する。何故そのような情報収集公開をサボり、市中無症状者感染状況を隠蔽しようとするのか、何らかの意図があるのか分からない。ただ、その収集不作為の説明もずっとされないまま3年にもなろうとしている。
 ある分科会メンバーは、感染者の3割が無症状者だとの報告があり、一方公表新規感染者数のうちの3割程度が濃厚接触者からの陽性判明者であることから、まるで公表新規感染者数で日々の有症無症すべての新規感染者を網羅しているが如き説明をする(2021年8月31日、Vol.167)。そんなデタラメを誰が信じるのか。丁度今般、ロシア高官がブチャ惨殺現場動画をウクライナの演出でフェイクだと主張するのに重なって見える。あのメンバーは本当にそう信じているのか。まるで戦中の御用学者に重なる。

 ロシアにおいて、ロシア国民がウクライナで行われている現実を知らずにプーチンの暴挙を支持しているらしいと日本人の多くは批判するようだ。でもロシアでは情報統制で、ウクライナの情報を入手するには、ロシア国民は相当の努力を払わなければならないのが現状だと推察する。
 日本では情報統制はない。諸外国の状況にもフリーにアクセスできる。各種情報を入手も可能だ。でも上に述べたように、日本では市中感染状況は分からないままだ。そのことに、日本の政府自治体報道国民がほとんど全く注意を払わない。もちろん厚労省なり感染症専門家が何らかの意図で隠しているというのなら、その説明を是非聴きたいと思う。そして国民がこの自由な日本で、厚労省の提案する不備な検査制度を易々と信じ、何の疑いも持たずに従っていることが、ロシア国民の状況よりもずっと危ないのではないかという大きな危機感を持っている。あの太平洋戦争の戦前戦中、参謀本部大本営支持の一億総玉砕の叫びをまた聞いてしまうことになるのではないかと恐ろしい。

 日本のコロナ流行では、失う必要のなかった多くの命・健康、医療従事者等の逼迫状態、緊急事態宣言などによる国民の自由の制限・経済的損失、補償や医療などにおける税金の無駄遣いなどなど、的確な情報の非収集・非開示のために、国民は多大なる被害を被った。
 是非自由とは何か、民主主義とは何かをしっかり考え、目を見開いて欲しいと願う。ロシア国民と同様な状況に陥っていないか、心配だ。情報統制も無くネットアクセスも自由なのに、厚労省の今般の情報操作により、戦中の言論統制時と同様な状況に丸め込まれているように思えて恐ろしい。21世紀の国民はもっと自由で平等なヒトを目指すべきだと期待する。
 目を見開いて真実を見いだして欲しい。見いだせたなら、口を閉ざさず、声を上げ続けて欲しい。プーチンやその指導層にはロシア国民の指導を任せられないと思う方が世界中大多数だと思う。日本でもそれと同じことが言えるようだ。現在の厚労省分科会専門家報道がコロナ対策の中心に居座り続けるべきではないと、国民の多くに早く気づいて欲しいと願う。

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MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

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今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。
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MRIC by 医療ガバナンス学会


[880](寄稿)今回は「元外交官佐藤優」についてお話します


ペンギンドクターより
その1

皆様
 立て続けですが、今回は「元外交官佐藤優」についてお話します。
 とは言うものの、一応COVID‐19関連の意見も添えないと格好がつかないので、転送します。山登一郎名誉教授の主張は以前にも紹介しました。MRICではお馴染みの方ですが、よく勉強されています。(編集者註:次回紹介します。)前回、中村祐輔医師の本について紹介しましたが、日本の政府の新型コロナ対策の立ち遅れの根本的な原因はPCR検査の少なさに起因していると私も思っています。そりゃそうです。病気というものは診断してから治療および蔓延対策が始まるものです。誰にも自明のことです。
 ウクライナについてもまずは情報収集です。ロシアの歴史、ウクライナの歴史も必要でしょう。NHK-BSではこのところプーチンのドキュメンタリーが幅を利かせています。2016年12月のアメリカからのドキュメンタリー「プーチンの道 その権力の秘密に迫る」が放送されていたので、録画して昨日観ました。廣瀬陽子氏の本以上に、プーチン政権の腐敗が取り上げられていました。その時点でどこまで真実かは疑問符がつくものの、説得力はあります。

 さて、佐藤優です。私は彼の本を110冊以上読みました。彼のファンと言ってもいいでしょう。従って彼に対する私の評価は割り引いていただいた方が賢明です。まずは彼の略歴を述べます。2012年末ごろに私が「佐藤優」という存在を初めて知った本『獄中記』(岩波現代文庫、2009年4月16日第1刷発行)からの略歴を示します。
佐藤優:在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、95年より外務省本省国際情報局分析第一課。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。05年2月執行猶予付き有罪判決を受け、09年最高裁で判決が確定し、外務省を失職。『国家の罠――外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞、新潮文庫)、『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞新潮文庫)ほか多数。
 今、駅ビルの書店で平積みになっている『佐藤優の集中講義 民族問題』(文春新書、2017年10月20日第1刷発行)からの略歴には次のように書かれています。
佐藤優:1960年東京都生まれ。作家。同志社大学大学院神学研究科修了。元外務省主任分析官。著書に上述の2冊の他に『私のマルクス』『交渉術』『人間の叡智』『世界史の極意』『サバイバル宗教論』『宗教改革の物語』など多数。

 二つの本の経歴だけでもユニークさはある程度推定できますが、私の読んだ彼の本のなかでは、単著も多いほかに数多くの対談があります。その対談相手を列挙します。(カッコ内は職業)。順不同ですが、対談数の多いと思われる人物から始めます。ただし、彼の著書は私の持っている本の数倍はあると思いますので、絶対数ではありません。

 手嶋龍一(外交ジャーナリスト)、池上彰(ジャーナリスト)、宮崎学(作家、元共産党系ゲバルト部隊長)、宮家邦彦(元外交官)、片山杜秀(思想史研究家)、橋爪大三郎社会学者)、五木寛之(作家)、井戸まさえ(元民主党衆議院議員)、杉山剛士(浦和高校校長)、藪中三十二(元外務省事務次官)、立花隆(評論家)、山内昌之歴史学者)、山口二郎政治学者)、佐高信(評論家)、加藤陽子歴史学者)、福田和也(文芸批評家)、竹村健一(ジャーナリスト)、中村うさぎ(作家、エッセイスト)、的場昭弘マルクス主義系経済学者)、山崎耕一郎(労働運動専従、社青同元委員長)、竹中平蔵(経済学者)、副島隆彦(評論家)、斎藤環精神科医)、亀山郁夫東京外国語大学長)などです。

 いろいろな人が対談相手になっています。佐藤優の引き出しの多さがわかると思います。どの対談でも相手の意図をうまく引き出していて、大変興味深い本に仕上げています。ただし佐高信については、現在、佐高信佐藤優というタブー』という本で佐藤が1000万円以上貰っているという事実無根の情報を書かれたとして「名誉棄損」で訴訟を起こしているようです。また立花隆との対談『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』(文春新書、2009年10月20日第1刷)では、お互いの主張がかみ合っていないという感じを私はもちましたが、裏話として立花隆の「形而上学は認めない・・・・・」とかいう発言があって、この本の作製は無理かなと一時的に悩んだそうです。
 また、佐藤優は現在「末期腎不全」と「前立腺がん」にて闘病中ですが、この1月には大学病院に入院中という情報もあったと記憶しています。前立腺がんは予後のいい癌ですが、血液透析をせざるを得ないような末期腎不全が絡むと、治療法はむずかしくなります。末期腎不全の場合、腎移植が最もいい治療法で、実際奥さんから生体腎移植も考えたようです。しかし、術後免疫抑制剤を使うことになるので、もし転移がある前立腺がんの場合、移植は不可能となるだろうと素人の私でも考えます。今後どういう治療になるのか、経過が気になります。

 ロシアのウクライナ侵攻に関して、佐藤優の意見がどのようなものか、私は知りません。彼は原則的にSNSは使わないと言っていましたから、病気のこともあるし、沈黙をしているのかもしれません。マスコミの記者や編集者たちは、当然彼の意見を知りたいと思いますから、いずれ出て来るとは思います。

 私が持っている彼の本のなかで、ロシアの評価やウクライナ関係にはいろいろあります。
 上述の今書店で平積みになっている本から始めますと、
 ●『民族問題』では、147-173ページに「第五講 民族理論でウクライナ問題を読み解く」という項目があります。2017年10月20日発行の本ですから、ロシアを一方的に責める本ではありません。歴史的な背景がある程度理解できるといった本であり、ロシアのプーチンについて述べていることを期待して購入した人は落胆するでしょう。でも勉強になる本です。
 ●亀山郁夫佐藤優『ロシア 闇と魂の国家』(文春新書、2008年4月20日第1刷)は、「第1章スターリンの復活」でプーチンについて述べています。前述の2016年12月のアメリカの放送の腐敗したエリツィンプーチンの描き方とは異なっています。好意的とは言えませんが、全体としてロシアを批判しつつもロシアを愛する二人の本だと思います。
 ●五木寛之佐藤優『異端の人間学』(幻冬舎新書、2015年8月5日第1刷)は、「第二部 見えない世界の力」の中で「ウクライナ危機のポイントはガリツィア地方にある」と「第二次大戦後のウクライナの混乱」という項目があります。ガリツィア地方は西側でここのウクライナ人はナチス・ドイツにつきました。結局ソ連ウクライナが併合されるとカナダに亡命してそこに120万人のウクライナ人がいて、今もウクライナ語を喋っています。カナダで喋られる言語は英語、フランス語、三番目がウクライナ語です。この項目を読むとロシアのウクライナ侵攻の背景がわかるような気がします。
 ●山内昌之佐藤優『悪の指導者論 なぜ今、「独裁者」ばかりなのか』(小学館新書、2017年12月4日第1刷発行)は、「第3章 歴史家にして希代の語り手 ウラジーミル・プーチン(ロシア)」(143-198)で、プーチンを取り上げています。佐藤によれば、プーチンは数兆円の不正蓄財を許した首相メドベージェフをこの時点で警戒していると述べています。 全体としてプーチンをそれなりに評価しているような論調です。そして佐藤優の情報収集の広範かつ深さに驚嘆します。
 ●佐藤優地政学入門』(角川新書、2021年11月20日初版発行)は、「第二講 ハートランドの意味」のなかに、『ロシア人の国境は「線」でなく「面」』という項目があります。そこで「カルパッチャ州」に言及しています。カルパッチャ州はウクライナの一番西側、ハンガリースロバキアポーランドルーマニアの国境と接しているところです。ここはウクライナの一部ですが反ウクライナで、なおかつ強力な親ロシアです。ここの人たちは自分たちのことを、988年にキエフ・ルーシにキリスト教が導入されたときのロシア人の末裔だと思っています。ここにはカルパチア山脈があって、問題を複雑化しているようです。・・・・・・

 以上、佐藤優の本の一部を引用しました。いろいろ読んで断片的な知識を得ても、全体としてロシアとウクライナのイメージは固まりません。KGB出身のプーチンが普通の意味でヒューマニストであるはずはありません。汚職・腐敗にまみれていることは明らかでしょう。どうなるか、私としては私なりの情報収集を続けるとともに、日々を大切に生きていく他はないようです。週二日の健診の仕事は、幸い「余人をもって代えがたし」と言われていますので当分は続けます。
 そうそう追加です。佐藤優浦和高校社会党系の社青同「協会派」に入り、資本論を完読しています。ただし、同志社大学学生となり二年生の時に社青同を抜けています。熱心なキリスト教カルヴァン派の信者でもあります。猛烈な勉強家であり、立花隆が「知の巨人」と言われたとすれば、佐藤優は「知の怪物」とも言われています。
 では、きょうはこのへんで。ミスがあるかもしれません。その節はご容赦ください。