(1063)原発60年以上の運転も可能に 規制庁案

 原子力規制庁は2日、60年を超える運転期間を容認する案を打ち出しました。運転期間上限を廃止し、運転開始から30年を経過してその後10年ごとに建物や原子炉の劣化状況を審査するというものです。審査をパスすればいつまでも稼働できることになります。

 岸田首相の8月のGX実行会議における運転延長の指示にもとづいて、経産省は10月の原子力規制委員会で原子炉等規制法を改訂する方針を説明しました。

 規制委員会の山中伸介委員長は「運転延長は利用側できめること。規制委員会が意見を述べるべきではない」と発言し、制度の見直しを規制庁に指示しました。

 ここで「利用側」というのは経産省を指します。なんと山中委員長は規制委として運転延長を容認し、法改正を指示したのです。

 福島第一原発事故の教訓を生かし2012年に決められた「40年ルール」が岸田首相の一声で撤廃されようとしています。規制委員会は規制を「今よりはるかに厳しく」すると胸を張っているそうです。

 けれども時の経過とともに炉や建物の劣化が進みます。40年から60年、さらに60年超となれば劣化が進み壊れる危険性が高まります。規制を厳しくするから大丈夫と言い張るのは規制するのではなく、運転延長を進める側の意見です。

 原子力規制委員会原子力推進委員会と名を変えよと言いたくもなります。

 

 註∶8日の朝日新聞朝刊は経産省が運転期間上限の撤廃をやめ70年超可能性を考えていると報道していますが、私はなお流動的と思います。

[1062]寿都、神恵内の核のゴミ処分場反対シンポ

 

 11月4日小樽で核のゴミ処分場に反対するシンポジウムが開催されました。

 北海道新聞の記事の一部を抜粋します。

原発マネーに頼らぬ地域づくりを

小樽で核ごみ調査反対シンポ 11/04 22:06

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向け後志管内寿都町神恵内村で進む文献調査を巡り、次の段階となる概要調査への移行に反対するシンポジウムが4日、小樽市内で開かれた。専門家らが原発マネーに頼らない地域づくりなどを訴えた。

 以上

 

 文献調査に応じれば2年間で20億円が国から交付されます。

 すでに1年目の10億円は寿都町神恵内村それぞれに交付されています。寿都町は年度予算55億円のうち約20%、神恵内村は20億の予算の半分を交付金が占めています。

 また周辺の町にも5割未満であれば、地域の実情に応じて配分できるとされており、周辺自治体は交付を受けたところと拒否したところがあります。

 交付金を受け取ったところ

寿都町周辺∶岩内町7500万円

神恵内村周辺∶泊村、共和町、古平町がそれぞれ7500万円

 受け取りを拒否したところ

寿都町周辺∶蘭越町黒松内町島牧村

神恵内村周辺∶積丹町

北海道としては拒否しました。

積丹町松井秀紀町長は次のように言います。

交付金の話が出る以前に議会で核抜き条例を可決し、私が公布したので、尊重するのは当然だ。この交付金に頼らないまちづくりを考えていく」

(参照∶2021年10月8日のNHKホットニュースweb「核のゴミ」文献調査 ”お金は“どうなった?)

 

 政府は過疎に悩む地域住民に交付金を与えることと引き換えにして核のゴミ処分場をつくろうとしています。しかしそれもまだ文献調査が始まったばかりです。この先処分場の確保は決まっていません。

 そういう状況で岸田首相は原発の運転期間の延長や新増設をGX会議で「新しい資本主義」づくりの一つとして明言しています。

 そして4日原子力規制庁は原子炉60年超の運転を認める案を提示しました。岸田の聞く耳は右から左へ抜ける耳です。

 

[1061]ぜひ原発ゼロへ

 毎日新聞が11月1日「そこが聞きたい 原発ゼロの可能性」というタイトルで小泉純一郎元首相のインタビューを載せています。(8面 オピニオン)

 岸田首相は8月の第2回GX(グリーントランスフォーメーション)会議で、既設原子炉の運転期間の延長や新増設を打ち出しました。従来の政府方針は原発の新増設と建て替えは想定していないというものでした。

 岸田首相の原子力政策をどう思いますかと記者に聞かれて小泉は次のように言います。

「その通り。岸田首相が判断すればできるのに、逆の方向に行っている。悪い方の決断だ。原発ゼロにできる立場なのにやるべきことをやってない。非常に残念だと、はっきり書いてくれ。」

 小泉が脱原発を主張するようになったのは、原発がクリーンで安全で、コストが安いなどというのはウソだとわかったからだと言います。そして原発の運転期間の延長もやるべきでない、もともとできないことをどうしてやろうとするのか、原発は直ちにやめるべきだとはっきり言います。

 小泉は間違ったことを言っているわけではありません。しかしなぜ政府が危険な原発政策を進めているのか、わかっているのではないでしょうか。彼は首相在任中は原発推進政策を進めていました。当時それをやめると言ったら経済界から大きな反対の圧力を受けたでしょう。

 いま労働組合・連合ですら原発に反対していないのです。8月のGX会議に芳野会長が参加したあと連合ニュースは次のように書いています。

原子力の既存施設の活用は、国の責任で安全性の強化・確認を行い、周辺自治体を含む住民合意と国民理解へ説明責任を果たすべき。」

 言い方を変えれば、原発は国民が理解できるように説明して進めるべきだということです。電力総連、鉄鋼などの基幹労連電機連合UAゼンセンなど大産別労組が会社の原発関連事業に協力する姿勢をとって原発に賛成しているからなのです。

 いわば原発は国策となっているのです。国策を変える力が必要です。小泉さんは記者に「現役の首相時代は勉強が足りなかった。原発事故後、勉強して本当のことがわかった」と言います。

 「本当のこと」を原発推進派の人々は知らないわけではないと思います。危険性を知っていてなお原発を続ける理不尽。

 原発に反対する心ある力の結集が問われています。

 

 

[1060]ブチャの”別の戦争“

 11月1日のNHKクローズアップ現代で、戦争で引き裂かれたウクライナの人々の心の一端を伝えるドキュメンタリーが放映されました。

 

 NHKの紹介を引用します。

 

戦火が引き裂いた心 ウクライナ市民たちの記録

首都キーウから西におよそ30キロに位置するブチャ。“大量虐殺があった町”として世界に知られることとなったこの町は、かつては閑静な住宅街だった。本来の姿を取り戻そうと復興が始まったものの、その先に待っていたのは戦争がもたらす“もう一つの闇”だった。人間関係や地域のつながりが引き裂かれていく現実や、広がる疑心暗鬼―。終わりの見えない戦争が人々に何をもたらしているのか。市民たちの“心の内”に迫る。

 

 ウクライナ、ブチャの人々の心は凍てついています。

 ゼレンスキー政権のNATO加盟の動きと米欧帝国主義諸国のバックアップ、追いつめられたプーチンは侵略に踏みだした。その瞬間にウクライナの人々の生命、生活そして心の破壊ははじまりました。

 NHKクローズアップ現代がはじめてウクライナのブチャの人々の気持ちを映像で伝えました。

記者は冒頭で次のように言っています。

東部からの避難民とブチャ市民

 今回、ブチャの仮設住宅の取材をする中で、住民たちは互いに不信感や憎悪といった複雑な感情を抱えていることが見えてきました。 ロシア軍に拷問された男性は、地元の住民の中にお金のためにロシア軍に情報を提供していた人がいることを知り、決して許すことはできないと強い憤りを感じています。 東部ドネツク州から避難してきた女性は、家族がウクライナ軍として戦っているのにもかかわらず、「ロシア軍を呼んだのは、東部出身のあなたたちだ。東部の人たちは皆、ロシアを支持していたでしょ?」と非難されると涙ながらに語りました。 

 

番組を見た私の感想∶ 

 東西権力者の思惑が交錯する戦時下のウクライナの地で、多くの人々が肉体的精神的に傷つけられています。

 18歳から60歳までの男性は出国が禁止され戦争に動員されています。番組では戦争に行きたくない青年のインタビューが載っていました。戦争に行きたくない、行かなくて済むようにお金をすべて注ぎ込むつもりだ、というものでした。

 国家は労働者民衆を戦争に動員するために愛国心をもつことを強要します。この青年はロシアの侵略に憤りはあっても、自分の命をゼレンスキー政権が統治する国家に捧げる気持ちになれなくなっているのです。

 この番組は、これまでのNHKが伝えなかった現地の人々の本当の気持ちの一端を映像で伝えました。私は2月以降のメデイアがロシアの反政府の反戦運動は報じても、ウクライナの民衆は政権と一丸となっているというように視聴者に感じさせる報道しかしないことに強い恣意性を感じていました。

 こういう声があるだろうということを推測してはいましたが、やっと報じられました。

 これまでは公開することがタブーのようにされていた、ウクライナ内部の民衆の悲痛な声が放映されはじめたり、BSフジの報道番組でガルージン駐日ロシア大使に「ロシアの主張」を語らせている背景に、欧米日政府のロシア封じ込めの熱狂のかげりを私は感じます。

 経済制裁のリアクションが米欧の諸国家に跳ね返りエネルギー危機とインフレに拍車をかけています。3日、4日に開かれたG7外相会議は、バラけ始めた西側帝国主義ウクライナのインフラ復旧支援でお互いにタガをはめ直したというものでした。

 犠牲にされたのはウクライナの労動者民衆兵士であり、ロシアの兵士と家族でした。これ以上の犠牲を許してはいけないと思います。労働組合反戦の声を強くしなければなりません。

 

 

 

 

[1059]北朝鮮ミサイル発射実験の動機

 

 日本のメディアは、北朝鮮のミサイル発射実験の危険性を報じる場合には、同じ大きさでせめて次のような内容の報道をすべきです。しかしいまやお上からのお達しがある前に自主規制している日本のメディアにそれを期待することはできません。

 11月1日から強行された米韓合同軍事演習は、ウクライナ戦争をめぐって緊迫する東西資本主義対立の中で対中国•北朝鮮を想定してのものです。北朝鮮の反発があることは承知の上で準備されたものです。

 北朝鮮の対抗的ミサイル発射実験は、アメリカと軍事同盟関係を強化している日本が「敵基地攻撃能力」を備える格好の口実として利用されるでしょう。

 以下、ロイターの記事を紹介します。

2022年11月1日4:34 午前3日前更新

北朝鮮、米韓に合同軍事演習の中止を要請 続行なら「追加措置」

ロイター編集

 [ワシントン 31日 ロイター]

 北朝鮮は31日、米国と韓国に対し、域内での大規模な軍事演習を止めるよう要求した。このような演習は挑発行為であり、北朝鮮からの「より強力な」対応につながる可能性があるという。北朝鮮外務省の声明を朝鮮中央通信(KCNA)が報じた。  KCNAによると北朝鮮外務省は声明で「朝鮮半島およびその周辺の状況は、米国と韓国の絶え間なく無謀な軍事行動により、再び力による力のための深刻な対立の段階に入った」と表明。北朝鮮は「外部の軍事的脅威から自国の主権、自国民の安全、領土の一体性を守るために必要な全ての措置を取る用意がある」とした。 その上で「米国が重大な軍事的挑発を続ける場合、北朝鮮は一段と強力な追加措置を講じる」とし、「米国が自国の安全保障上の利益に反する深刻な事態を回避したい場合、意味がなく、効果もない軍事演習を直ちに中止する必要がある。中止しなければ、全ての結果について完全に責任を負うことになる」と警告した。

 米国と韓国は31日、軍用機約240機を投入する合同訓練「ビジラント・ストーム」を韓国周辺で開始。訓練は11月4日まで24時間態勢で行われ、約1600回の戦闘機の出撃が予定されている。 米国務省のプライス報道官は記者会見で、朝鮮半島の完全な非核化を求める米国の方針に変わりはないとの見解を示し、北朝鮮に交渉の場に戻るよう改めて呼びかけた。

 北朝鮮を巡っては、核政策を担当する米当局者が先週、北朝鮮との軍備管理協議に応じると発言。一部の専門家は、こうした協議を行うには北朝鮮を核保有国と認めなければならないとの見方を示している。  プライス報道官は、米国が最終的に北朝鮮を核保有国と認める可能性について「米政府の政策ではない。これが米国の政策になることはない」と述べた。

以上

追伸

 4日の日経新聞によると米韓合同軍事演習は北朝鮮弾道ミサイル発射に対抗して延長すると発表されました。

悪無限です。

[1058]奇妙なアラート訓練

政府は3日、北朝鮮からミサイルが発射されたもようと全国瞬時警報システム(Jアラート)を発表。Jアラートは、宮城県山形県新潟県を対象地域に指定し、避難を呼びかけた。(スポニチアネックス)

 

 私は7時50分頃NHKテレビを見ていました。画面が切り替わり、北朝鮮がミサイル発射して3県にJアラートが出たことを繰り返しました。近くの建物や地下に避難するようにというアナウンスが流れました。ちょっと経って、ミサイルは日本列島を越えて太平洋上に落下したと伝えられましたが発せられる言葉は同じ。付け加えられたのは不審な物には手を触れず警察消防にしらせるように、でした。同じことを何度も繰り返すので他チャンネルを見てみました。どこも同じでした。

 私は非常事態を知らせる一斉テレビ放送自体がよほど異常事態だと思いました。北朝鮮が今日本列島を狙ってミサイルを発射することはないと思いますが、日本政府はすでに太平洋に落ちたと8時の時点で発表しました。それなのに繰り返し警戒を喚起する政府とメデイアはは意図的に不安を煽っているとしか思えません。

 しかし日本政府は北朝鮮に攻撃されるかもしれないという不安感を実際にもっているのではないでしょうか。なぜなら日常的に日米と米韓軍事事同盟にもとづく軍事行動を北朝鮮にたいして準備しているからです。今米韓合同軍事演習「ビジラント・ストーム」が続けられています。

 北朝鮮のミサイル発射実験は、向けられた矢に対抗する姿勢を押し出すために行われているのでしょう。米韓日政府と北朝鮮政府は悪無限的に軍備拡張を行っています。

 米韓合同軍事演習も北朝鮮ミサイル実験も停止すべきです。

 メデイアは双方の目で報道しません。私たちは自分の頭で考えなければならないと思います。

 アラートの発信訓練は国民を国家の軍事力強化の方向に馴化させるためのものだと思います。

 

 

[1057]揺らぐ米国の民主主義

 11月8日に中間選挙が行なわれるアメリカで、民主党のナンシー•ペロシ下院議長の自宅が襲撃されました。襲撃者は「ナンシーはどこだ」と叫んでいたといいます。ペロシ議長は不在で夫が重症を負いました。

 昨年1月大統領選は不正だったと主張するトランプ支持者がアメリ連邦議会議事堂を襲撃•占拠しました。議事堂に入った人々は「ナンシーはどこだ」という今回と同様の言葉を叫んだと言われています。

 昨年1月ペロシ宅のガレージの扉に落書きされ、近くに豚の頭部が置かれる事件が起きていたという地元メディアの話を朝日新聞が伝えています。落書きには「2千ドル」を意味する「$2K」「我々はすべてほしい」と書かれていて、当時アメリカ議会で議論されていた新型コロナ下の給付金への不満であろうという見方も出ていたと言います。

 10月28日の事件は、民主党に反発する人の行為です。アメリカのメディアによれば、捕らえられた襲撃者デパペのSNSには前回大統領選挙の結果を否定する投稿があったそうです。

 新型コロナ危機のなかのアメリカは物価値上げが激しい。例えばニューヨークではラーメンが1杯約3000円、ランチのセットは5000円となり生活苦が深刻になっています。

 ますます進行する中間層の貧困化、日々の食に窮する人々。生活危機の克服を民主党共和党の選択に委ねざるを得ない労働者民衆は、「分断と憎悪のレトリック」(カリフォルニア州ニューサム知事の言葉)の熱狂の渦に巻き込まれています。。

 昨年の議事堂占拠はトランプにすがらざるを得ないアメリカの労働者民衆の怒りが直接行動として爆発した事件です。民主主義の破壊という非難がありますが、確かにアメリカの民主主義的統治は危機的です。行動した民衆は既成の政党行動だけに縛られてばかりはいられない、それほどまでに困り感情的になっているのだと思います。

 アメリカの資本家階級の民主主義的統治形態は崩れつつあります。現代世界を権威主義と民主主義の対立という概念で裁断できなくなっています。