[1057]揺らぐ米国の民主主義

 11月8日に中間選挙が行なわれるアメリカで、民主党のナンシー•ペロシ下院議長の自宅が襲撃されました。襲撃者は「ナンシーはどこだ」と叫んでいたといいます。ペロシ議長は不在で夫が重症を負いました。

 昨年1月大統領選は不正だったと主張するトランプ支持者がアメリ連邦議会議事堂を襲撃•占拠しました。議事堂に入った人々は「ナンシーはどこだ」という今回と同様の言葉を叫んだと言われています。

 昨年1月ペロシ宅のガレージの扉に落書きされ、近くに豚の頭部が置かれる事件が起きていたという地元メディアの話を朝日新聞が伝えています。落書きには「2千ドル」を意味する「$2K」「我々はすべてほしい」と書かれていて、当時アメリカ議会で議論されていた新型コロナ下の給付金への不満であろうという見方も出ていたと言います。

 10月28日の事件は、民主党に反発する人の行為です。アメリカのメディアによれば、捕らえられた襲撃者デパペのSNSには前回大統領選挙の結果を否定する投稿があったそうです。

 新型コロナ危機のなかのアメリカは物価値上げが激しい。例えばニューヨークではラーメンが1杯約3000円、ランチのセットは5000円となり生活苦が深刻になっています。

 ますます進行する中間層の貧困化、日々の食に窮する人々。生活危機の克服を民主党共和党の選択に委ねざるを得ない労働者民衆は、「分断と憎悪のレトリック」(カリフォルニア州ニューサム知事の言葉)の熱狂の渦に巻き込まれています。。

 昨年の議事堂占拠はトランプにすがらざるを得ないアメリカの労働者民衆の怒りが直接行動として爆発した事件です。民主主義の破壊という非難がありますが、確かにアメリカの民主主義的統治は危機的です。行動した民衆は既成の政党行動だけに縛られてばかりはいられない、それほどまでに困り感情的になっているのだと思います。

 アメリカの資本家階級の民主主義的統治形態は崩れつつあります。現代世界を権威主義と民主主義の対立という概念で裁断できなくなっています。