投稿[26]マスクの効用

ペンギンドクターから「新型コロナウイルスCVID-19)情報」が寄せられました。
今日明日にわたって紹介します。

●新型コロナ対策でマスク推奨すべきか

 エビデンス待たずに着用を呼びかける専門家も

 2020年4月21日配信メディカル・トリビューン

 新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)が世界各地で蔓延する中、感染防止対策として一般市民がマスクを着用すべきかどうかについては明確なエビデンスが存在せず、専門家たちの間でも意見が割れている。そのような中、英・University of OxfordのTrisha Greenhalgh氏らは、一般市民のマスク着用に関して「マスク着用による社会的、経済的活動への影響は比較的少ないが、ウイルスの感染には大きく影響する可能性がある」などとして、「エビデンスを待たずに推奨すべきである」との見解をBMJBritish Medical Journal)で発表した。以下は適宜省略あり。

◍CDCなど多くが推奨もWHOは推奨せず

 ――中略――

◍感染伝播をわずかに減少させるだけでも大きな変化

 フェイスマスク及びその他の防護具(ゴーグル、シールド、ベール)の着用によるコロナウイルス、ライノウイルス、結核菌、インフルエンザウイルスなどの感染防止効果を検討したシステマティックレビューを紹介した。

 12件のランダム化比較試験(RCT)を含む31件の研究を基にしたこのレビューでは、有意差はなかったものの、マスクの着用がインフルエンザ様疾患の感染率を低下させたとの見解が示されているという。

 ――中略――

 同氏らは「政治的意思決定があれば、工場の生産能力をマスクの生産に転用させることでマスク不足をすぐに解決でき、既にそうなってきている」とし、「マスクはシンプルかつ安価であり、感染防止に効果を発揮しうる。RCTでエビデンスが示される前に行動すべきである」と訴えている。


●ペンギンドクターの見解

 以下の文章は私の独断ではなく、特にマスクの効用についての実験的な事実については、5月24日にエムスリーで行われたインターネット講演会での国立国際医療研究センター・国際感染症センターの国際感染症対策室医長/国際対策部副部長 忽那賢志医師の講演を参考にしています。忽那医師の講演は他にも聞いていて、現場にも精通した信頼できる医師だと判断しています。

上記の論文で語られているのは、感染していない人がマスクをすることにより、COVID‐19に感染しないで済むかどうかという問題です。上記の文章にあるようにエビデンス(根拠)はないけれども、安価で手軽だから推奨したいということです。言い方を変えれば、マスクをしても感染する可能性はあるということになります。ここがポイントです。したがって、マスクをしていても、感染者と密室・密集・密接な状態で過ごせば感染する可能性はあり、感染者には近寄らないようにするということになります。だから、「ロックダウン(都市封鎖)」あるいは「3密の可能性のある場所には近寄らないよう自粛して自宅に籠もるようにしましょう」が効果を発揮することになります。

エビデンスがないのに推奨しようという論文が権威ある学術誌に受理されているのは、平時では考えられないことであり、緊急事態の故だと私は考えます。


 それとは別に、実際にはマスクには重要な効用があります。

 感染者がマスクをすると、咳をした時に、マスクをしない場合より、明らかに飛沫は遠くまで飛び散りません。これは実験的に証拠があります。だから感染者はマスクをすべきです。感染者はマスクをすれば、ウイルスを広げる可能性を低下させることができるわけです。これは誰にも異存はないはずです。


 そして、ここに重要な事実があります。実はCOVID‐19が弱毒であるということです。感染している人の8割が無症状か軽症であるということです。だから、感染者が気づかないまま、感染していて、感染を広げる可能性があるということになります。しかもクラスターでなく、どこで感染したか感染源が不明という症例が増加しています。

また、このウイルスに感染してから発症までの「潜伏期間」は平均5日程度最大14日程度です。さらに発症する数日前から発症5日後ぐらいまで「感染力」があるということがわかっています。ということは、自分は感染していないと信じている人もどこかでウイルスをもらってきているかもしれない。そうであれば、そばにいる人にマスクをせずに大きな声でしゃべったり、咳やクシャミをすれば、そこで他人に感染を広げる結果になる可能性があります。だからマスクをするべきです。

つまりすべての人がマスクをするべきであるという結論になります。

 繰り返しですが、以上のことをまとめると、未感染の人にマスクの予防効果はないであろう、そうであっても、すべての人が既に気づかないまま感染している可能性はあるからマスクをすることには意味がある。ただし、広い公園で単独でウオーキングやジョギングをする人がマスクをする必要はない。また小さな子どもにマスクをさせるのは危険である(日本小児科医会から2歳未満の子どもにマスクをするのは窒息などの危険があると警告が出ています。子どもの感染は成人と比較して少ないことも考慮しています)。中国で生徒がN95マスクをして長距離走を行ない死亡者が出ています。N95マスクは医療者がエボラ出血熱のような患者の治療において使用しますが、10-20分で治療を終えて外さないと苦しいと言われています。

 マスクをするのは、風邪をひいている人自身かテロリストや泥棒などの犯罪者のみだという欧米の伝統も新型コロナウイルス感染症によって変化するのかもしれません。


以上ペンギンドクターから貴重な意見をもらいました。
確かに新型コロナ感染症は服飾をはじめとした文化の形を変えるかもしれません。居酒屋もコジンマリではなく広い空間の居酒屋が流行るかもしれません。イメージわきませんけど。
管理人