[820](投稿)ウクライナ戦争反対の国際的反戦闘争を!

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読者より
 2022年2月24日、平穏だったウクライナの地にロシア軍が侵攻を開始しました。このときを境にウクライナで働き暮らす労働者民衆の日常はガラリと変わりました。
 プーチンは、ソ連邦崩壊後の東西資本主義国家の「対立と共存」関係を、この侵略によって壊しました。ロシア軍によるウクライナ侵略は21世紀資本主義世界の転回点として歴史に刻みこまれることになるでしょう。
 現代世界は新たな戦争の時代に入りました。
 プーチン政権はその直前の21日、ウクライナ東部、ドンバス地方の「ドネツク」「ルガンスク」二つの共和国の独立を承認し「友好、協力、相互援助条約」という名の軍事同盟を締結しました。両国の要請に応えてロシアが派兵することは時間の問題でした。しかし24日ロシア軍はドンバスだけではなく、キエフやハリコフなどの空港や通信施設、軍事施設などを同時にミサイル攻撃したのです。
 多くのウクライナの民衆はプーチンによる武力攻撃を避けるためにポーランド国境を越え避難しはじめました。
 平和な日常が生命の危機を感じる非常時へと一夜にして転化させられたのです。プーチンの放った侵略軍はウクライナ軍の抵抗を受けながら越境し続けています。この蛮行を止める力は今どの権力者にもありません。アメリカ、欧州をはじめ西側の権力者はプ一チンの侵略に経済制裁を発動し、ゼレンスキー政権に武器援助をするとともにプロパガンダによって外から囃し立てることしかできません。もはやアメリカ帝国主義には派兵する力がないことをプーチンは見透かした上で侵略にふみきったのです。
 ウクライナNATO 加盟の動きに危機意識を嵩じさせたプーチンの侵攻は、同時にアメリカ帝国主義の没落の影を映しだしました。末期資本主義の生き残り競争が戦争という形態で火を噴きはじめたのです。
 プーチンのしかけた戦争に憤る人々の声は世界中で巻きおこっています。しかし労働者階級の国際的な団結した闘いは微弱です。世界の反戦運動は1991年のソ連邦自己崩壊後、脱イデオロギー化し労働者階級的力を失っていったのです。ソ連邦の自己崩壊は、スターリン主義と等置された共産主義の失敗として信じこまれ喧伝され、マルクス思想の影響は世界的規模で失われていったからなのです。脱イデオロギー化に抗して日本の労働組合学生自治会の内部でたたかう労働者学生が、地道なイデオロギー的・組織的闘いを国際的にも推進しました。しかし痛苦にもスターリン主義ソ連邦ソ連労働者階層による第二革命によって打倒されるのではなく自己崩壊してしまいました。
 ソ連KGBの諜報員であった元スターリン主義プーチンは自己崩壊したソ連型「社会主義」から資本主義へとプラグマチックにのり移ったのです。その転向スターリン主義プーチンが、危機に立つロシア国家資本主義の独裁的権力者として、西側の軍事同盟NATO加盟に傾くゼレンスキー政権のウクライナにたいして軍事的制裁をしかけているのです。  
 プーチンの暴虐を阻止する労働者階級の力を再創造することがいまここで問われています。
  
 帝国主義各国から非難の大合唱

 通常は 1月に行われるアメリカの大統領一般教書下院演説が3月1日に行われました。  
 しかしバイデンは 「遅れた演説」の冒頭で共和党も含む満場の拍手を受けました。プ一チンを呼びすてにして「独裁者に侵攻の代償を」とぶったからなのです。アメリカ議会では挙国一致の反プーチン旋風が吹いています。 バイデンは、ベトナムイラクアフガニスタンなど数多の侵略で血塗られた手をおし隠し正義の味方として自らを押し出しています。国民の目を外に向け、深まるガバナンスの危機を乗りきろうとしているのです。
 今世界中の政府からプーチンウクライナ侵略に抗議し、ウクライナを支援する声が先を競うように沸き上がっています。いやむしろ反「プーチン」を叫ぶことが各国政府にとって西側の市民権の手形のようになっています。西側各国の首脳がウクライナの国旗の青と黄色をあしらった服装をすることが流行になり、日本では東京都庁舎が青と黄色のライトアップで染められはじめました。
 一体これらの政府権力者の中にアメリカのイラク侵略やアフガニスタン侵略に抗議した者が何人いたでしょうか。 
 各国政府支配階級はそれぞれの思惑を込めてウクライナ支援を掲げています。プーチンの蛮行を利用したきな臭い動きも活性化しているのです。日本では核共有が国会で議論され、ウクライナ戦争を憲法改悪に利用する動きが活発化しています。

停戦協議の停滞、激化する侵略戦争
 
 ロシアとウクライナの停戦協議は空回りしています。いまこの時、交戦によって多くのウクライナの兵士、民衆とロシア兵士が殺害され傷ついています。ロシア軍はキエフに迫り、ポーランドなど周辺国への避難民は100方人を超えました。ロシア侵略軍にウクライナ人民は生命をかけて頑強にレジスタンスを続けています。

世界で反戦デモを
  
 報道ではこれらの権力者の動きと一緒くたにされて伝えられていますが、逮捕されることを覚悟したロシアの民衆の反戦デモが日に日に広がっています。日本でもロシア、ウクライナの人々が反戦デモに立ち上がっています。しかし労働組合は腰が重く連合事務局長が一片の「国際法違反」への非難声明を出し、「国際社会」なるものに闘いをゆだねています。
 この戦争は、東側陣営の転向スターリン主義プーチンが、西側軍事同盟=NATOウクライナへの拡大を阻止することを直接の目的として実行しました。中国は、軍事侵攻に関してコメントしていませんが、NATOの東方拡大には反対の意志を明確にしています。すでに経済制裁に反対しロシアからの小麦の輸入を全面的に解禁しました。西側からの経済制裁で困難に直面するプーチンに救いの手を差しのべているのが習近平の中国です。  
 戦局は破滅的危機の一途をたどり、ロシア軍は3月4日ザポリージヤ原発周辺を攻撃し、あわや原発事故を引き起こすという事態に立ち至っています。
  西側諸国はウクライナ・ゼレンスキ一政権にたいする政治的軍事的経済的支援を強化しています。プーチン核兵器の使用もありうることを明言しており、二国の枠を越え核戦争の危機をはらむものへとエスカレートしています。
 ロシアのウクライナ侵略とその後の西側諸国の対応は第三次世界大戦の危機を醸成し、新東西対立が沸点に達しつつあることを告げ知らせています。権力政治の土俵でのかけ引きが戦争の火に油を注いでいます。
 私はウクライナ侵略反対の闘いにたちあがっているロシアの労働者階級に、プーチンNATOへの軍事的対抗に反対するとともに米欧日帝国主義の経済制裁に反対する反戦闘争をともにたたかうことを訴えたい。
 そしてソ連邦の自己崩壊がスターリンの「一国社会主義建設」に淵源することを訴え、プーチンの資本主義への転向のプラグマテックな本質を明確にしなければなりません。
 侵略者プーチン政権はロシアの労働者階級民衆によって打ち倒されなければなりません。国際的な素朴な反戦の声が西の帝国主義者の制裁・介入への尻押し運動に疎外されてはならないと思います。いまこそロシア、ウクライナをはじめとした全世界の労働者階級民衆がプロレタリアインターナショナリズムの立場にたってロシア、ウクライナアメリカ、イギリス、EU、中国、日本など世界の政府権力者に反戦の声を突きつけていかなければなりません。反対運動の内部にたちこめる脱イデオロギーの靄をつき破りマルクス思想の復権を!  

現実の動きを認識論的観点から

 今、「プーチン」という概念が悪のシンボルとして、「ゼレンスキー」という名が善のシンボルとして実体化されています。プーチンの名を出せば政府は何をやっても正当化されるという風潮が世界を覆っています。概念を実体化して民衆の意識を操作するのは権力者の常套手段です。プーチンという名のロシアの大統領が、いまなぜ何のためにゼレンスキーという名の大統領が支配するウクライナの国土に侵攻しているのかということを、私たちは殺戮への憤激をバネに侵略反対の立場にたって理性的に考えることが何より必要だと思います。

日本の労働者
2022年3月4日