[1052]胡錦濤退場事件が意味するもの

 

[1047]で速報しましたが中国共産党大会で途中退席させられた前総書記の胡錦濤に関するニュースコメントがメディア各社から発表されています。ロイター通信を紹介します。

 

中国胡氏の異例の党大会退席、秘密主義がさまざまな臆測に

ロイター編集 [北京 24日 ロイター] -

 中国共産党の第20回党大会最終日の22日に胡錦濤前総書記(前国家主席、79)が係員に付き添われて突然、退席したことに中国ウオッチャーの間で臆測が盛り上がっている。中国では党や国の重要行事は綿密に式次第が計画され、政治的な動きは人目には触れないようにされるのが常だからだ。

 胡氏は党のエリート集団とされた共産主義青年団共青団)出身。共青団系の幹部3人も今回の党大会で党指導部から排除され、個人独裁を防ぐため党が築いた集団指導体制は事実上、瓦解した。 こうした状況での胡氏の退席や、突然の退席のタイミングは「本当は一体何が、なぜ起きたのか」を巡る思惑を呼んだ。

 高齢から来る体調不良だったのか。もっと別の、例えば胡氏による抗議の表れだったのか。あるいは習近平総書記(国家主席)による胡氏追放劇だったのか-などだ。

 在中国の欧州商工会議所のイエルク・ブトケ会頭は「一つの時代が終わったように見える」とした一方、「率直に言って、極めて不気味に見えた」とも指摘した。 退席時には胡氏は苦しそうな表情にも見え、さらには壇上から連れ出されるのに抵抗しているようにも見えた。自分の右隣に座っていた習氏とは立ち去り際に何か言葉を交わし、退任する共青団出身の李克強首相の後ろを通る際には李氏の肩に手を置く場面もあった。 ブトケ氏は「1人の老人が明らかに苦しそうにしているのに、場内の誰一人として寄り添う感情を何ら見せていないことに本当に驚愕した」と話した。

 退席についての中国当局からの論評は同日遅くに国営通信新華社が英語で「体調が優れなかった」ためだと2本ツイートしただけで、これ以外の国内メディアは一切触れなかった。 ツイッターは中国ではブロックされている。国営テレビの同日夜のニュース番組は、退席前の胡氏や議場を放映した。中国外務省の24日の定例記者会見は、退席やこれに対する世界からの注目についての質問に対し、新華社のツイートを引用しただけだった。

 オーストラリア国立大学のリサーチフェローのベンジャミン・ハースコビッチ氏は「このエピソードは恐らく、中国の政治エリート層内の権力闘争について以上に、中国の情報環境について多くを物語る」と指摘する。「胡氏は体調不良だったとのありふれた説明は確かにありそうなことに聞こえるが、中国共産党の高齢指導部やエリート政治集団に関する党の秘密主義からすると、もっと多くの、よりえげつない説明の方が当てはまる」と語った。

 中国のツイッターに似た微博(ウェイボ)では、数人のソーシャルメディアのユーザーが胡氏についての古い投稿に論評する形で、今回の一件をほのめかしたが、同日夜までに、胡氏の名前が含まれるほぼ全ての微博投稿のコメント欄は見られなくなった。 

以上ロイター

 

 「もっと多くの、よりえげつない説明の方が当てはまる」というのは何なのかよくわかりません。

 しかし李克強共産主義者青年団出身の後輩が指導部から排除されて胡錦濤が不満を持たないわけがないと思います。

 最新の画像を見ると、胡錦濤は机に置かれた赤いカバーに覆われた書類を見ようとしています。その行為を隣に座っていた共青団出身の栗戦書に止められています。笑顔で好意的にたしなめているように見えます。

 それでも見たかったようです。胡錦濤は止められても何度か試みています。習近平胡錦濤に顔を向けて何かつぶやき、ステージの袖に目配せをした直後、一人の男が抵抗する胡錦濤の腕を持ってステージから連れ出しました。

 これだけのことですが、やはり尋常ではありません。公式には体調が悪くなったとされていますが、急に悪くなったようには見えません。すでに22日に205人の党中央委員は選出されており、習派ではない李克強、汪洋ら共青団出身の政治局乗務委員は更迭されました。習近平の強引な人事に反発した老•胡錦濤が一刻も早く党規約改正案を見たかったということなのではないでしょうか。

 現指導部は決して一枚岩ではなく、反対派の存在があり習三選に抵抗があったということを意味していると思います。党規約改正に習近平「独裁」を象徴する「2つの確立」という文言が入れられなかったことにもそれは示されているのです。

 これからの習近平にとってたとえ最高指導部を習派で固めたとしても党内反対意見を封じ込める必要性が高まっているということです。

 胡錦濤退場事件には些細が不明なところもありますが、習近平は党内の反発をおさえきれなくなっているということが露呈したと言えます。

 

 改正された党規約は次の通りです。(日テレニュース参照)

 習近平総書記の党の核心としての地位を守ることが党員の義務とされたほか、台湾独立への反対が明記されました。

 改定された党規約には「2つの擁護」という言葉が盛り込まれ、「党中央の集中統一指導」と「習近平総書記の党の核心としての地位」を守ることが党員の義務となりました。

 改定では、習総書記の思想の指導的地位を確立することを含む「2つの確立」という言葉が入ると見込まれていましたが、個人崇拝につながるという批判もあり、今回は入りませんでした。

 また、新しく「台湾独立に断固反対し阻止する」と書き込まれ、中国共産党として譲れない一線を明記しました。

 


中国共産党大会で改正案が採決された党の最高規則、「党規約」の内容が公表され「『台湾独立』に断固として反対し、抑え込む」という表現が新たに盛り込まれま中国国営の新華社通信は、今月の共産党大会で台湾情勢をめぐり「『台湾独立』に断固として反対し、抑え込む」という表現が新たに盛り込