第11回 「バカの壁」超える養老孟司さんの学び 昆虫も永田町も「解剖」する
宮田裕介 2022/10/7 8:00
解剖学者の養老孟司さん(84)は、「バカの壁」など数多くの著作があります。昭和から令和に時代が変わり、都市化が進む中で、学びはどう変容してきたのか。あらゆるテーマを「解剖」してきた養老さんに、学びの意味を聞きました。
――解剖学としてのフィールドにとどまらず、精力的な執筆活動を続けておられます。専門分野はどのように生かされていますか。
僕にとって、解剖学とは、いわば方法論です。 解剖するものは、カエルでも、昆虫でも、永田町でも何でもいい。観察して、分類して、概念化する。この見方を学んだので、色んなことを考えることができる。 例えば、政治学をやっているといいながら、政治の知識はあっても、政治の見方がわからない人がいる。哲学でさえ、誰かが言ったことを暗記しているだけの人もいる。それでは役に立ちませんよ。 そうではなくて、その人の考え方を応用することが大切です。方法を学ばないと、何も学んだことにはなりません。
(以上、インタビューの一部です。)
「僕にとって、解剖学とは、いわば方法論です。」
なるほど。私は解剖学の内容は知りませんが、認識対象を「観察して、分類して、概念化する」、この認識過程の意識の働きを論理的に明らかにすることが認識方法論の課題だというのはわかります。
解剖学についてだけではなく、科学や哲学はその叙述に貫かれている著者の認識方法を、学ぶ者が読みとることが必要だと思います。しかしある本で、その叙述の認識方法それ自体が書かれていることは稀です。それは読むものがつかみ取るほかないと思います。