[915]米議会占拠事件公聴会


 アメリカでは今秋の中間選挙を前にして、劣勢の民主党がトランプの共和党に前哨戦を展開しています。
 読売新聞が「米議会占拠『トランプ氏がクーデター』公聴会、民主、追及へ」という見出しで、2021年1月6日の議事堂占拠事件に関する9日の下院特別調査委員会における公聴会の様子を伝えています。
 調査委員会のベニートンプソン委員長(民主党議員)は公聴会の冒頭で次のように言いトランプを弾劾しました。
 「議会占拠事件は、クーデターの試みがもたらした結果だ。権力の移行を止めたいトランプ氏の最後の抵抗であり、暴力行為は単なる偶然ではなかった。」
 公聴会では2020大統領選の不正キャンペーンについて当時の司法長官ウィリアム・バーが「大統領に『でたらめだ』ということを何度も伝えた」と証言したことや、トランプの長女イバンカが「私はバー氏の言っていることを受け入れた」と証言したことを映像で伝えました。
 
 トンプソン委員長は、次回大統領選に再出馬する意欲を示している共和党トランプを民主主義の破壊者として指弾していますが、共和党内のトランプ支持は固いといわれています。物価高が止まらない中、民主党バイデンはウクライナ戦争における反プーチンの戦闘を支援することによって支持率を高めようとしていますが、効果が出ていません。読売新聞は調査委員会の動きは与野党分断をさらに広げることになるとコメントしていますが、調査で浮き彫りになったのはトランプの反乱がアメリカの議会制民主主義的統治形態を破壊する意味をもつ行為だったということです。2021年1月6日の連邦議会は、その投票結果を最終認定する手続きをしていました。その破壊行動を扇動したトランプは2020年秋の大統領選ではバイデンの8100万票にたいして7400万票を獲得していたのです。
 私はトンプソン委員長の発言内容にアメリカ資本家階級のガバナビリティの危機があらわれていると思います。議事堂占拠事件をトランプのクーデターと言い、偶然ではなく権力の移行を止めることを意図して議事堂が占拠されたということは、あの事件はアメリカの民主主義的統治形態の終わりの始まりとしての意味をもったということなのです。
 今ウクライナでロシアの侵略を起点として爆発している世界戦争は各国政府とメディアによって「民主主義と権威(専制)主義」との対立抗争というスキームで描かれます。戦争は西側の米欧日・資本主義国家権力と東側の中露・国家資本主義権力との激突という形にエスカレートしています。
 この「民主主義と権威(専制)主義との対立」は独自の形でアメリカ社会にもあらわれているのです。それが公聴会の本質です。