[1188]「異次元の少子化対策」と「産めよ殖やせよ」

 私は毎日新聞をときどきコンビニで買って読みます。ここ3週間は2面のコラム「土記」(伊藤智永)が読みたくて土曜の毎日新聞は読んでいます。今回は「産めよ殖やせよ」というタイトルです。

今回の「土記」も示唆に富んでいておもしろい。

 ロシアはウクライナ侵攻を戦争とは言わず、「特別軍事作戦」と言っていますが、戦前の日本も中国大陸侵攻を戦争とは呼ばなかった。「盧溝橋事件」をきっかけとした侵攻を「北支事変」と呼び、「第2次上海事件」に飛び火し全面戦争となるや、これを「支那事変」と呼んだと伊藤さんは書いています。

(「第2次上海事件」という呼び名を私は知りませんでした。)

 戦争をしかける側は戦争とは呼びたがりません。国民が不安になるし、侵略することを防衛の名で正当化するためにも相手の不当な行動を懲らしめるためだと言いなすのです。

 「土記」によれば厚生労働省の前身厚生省は丁度この頃つくられたそうです。当初は「国民福祉増進」を掲げましたが、結局兵隊の体力づくりや兵器生産の労働力づくりのためでしかありませんでした。そして産めよ殖やせよが宣揚されました。

 今、岸田政権は敵基地攻撃能力の保持をはじめとする戦後日本の防衛政策の大転換をはかると同時に「異次元の少子化対策」を語りはじめています。

 このタイミングで異次元の少子化対策と言われれば、戦時中の「産めよ殖やせよ」という標語を連想するという伊藤さんの時局感覚は鋭いものがあります。

 今回の「土記」は次のように結ばれています。

「専門家は口を開けばウクライナ戦争や米中対立の長期化と国民の覚悟を説く。『新しい戦前』を肌に感じながら、生まれてくる子らの将来を想像しよう。標語に続けて『戦えよ国のため』と低いうなり声が聞こえるのは果たして空耳か。」(専門編集委員

 日本のメディア界にこういう方いるのは貴重です。がんばりましょう。