[1393]ウクライナ戦争•善悪二元論に抗して 毎日新聞「土記」

 9月30日の毎日新聞のコラム「土記」で伊藤智永編集委員が自称「安全保障屋」小泉悠の「ウクライナ戦争をめぐる『が』について」(『世界』10月号)という文章について批判的意見を書いています。

 伊藤は次のように言います。

 小泉は「侵略は絶対に悪い」という大前提で議論せよと指摘し、「複雑さへの知的誠実さより、単純と批判されても戦争の抑止を優先する方が重要だ」というが、その安全保障論では戦争は防げず止められもしなかった小泉が語ることは戦況の後付けが多く、「安全保障って何」との疑問が拭えない。

 小泉の主張にたいしてこう言う伊藤は、つづけて言います。

 「この欄や他の記事で『ゼレンスキー氏は英雄か』『ウクライナ即時停戦論』を書いた。普段の何倍も抗議が届く。大半が『ロシア=悪、ウクライナ=善の二元論』に立つ糾弾である。」

 私も危機感を持っています。政府、メディアそして反戦平和運動までもがこの二元論に立っているからです。「善」に武器とカネを援助し悪にたいして戦えと尻を押すことが正しいとされています。思考停止していると言わざるを得ません。

 伊藤は「何が、なぜ、どう起きたのか。事実と人間の複雑さに粘り強く向き合わないと、止められる時が来てもうまくいかないだろう」と言います。こういう意見を言うメディア関係者はあまりいないと思います。

 7月に出された『ウクライナ動乱ーーソ連解体から露ウ戦争まで』(松里公孝)という本がこのコラムで紹介されています。松里氏は東大の教授で、戦時下のウクライナに行って政治家や活動家にインタビューしてきたといいます。伊藤によれば「複雑さと正面から格闘し、この戦争の来歴と行方を解き明かそうとした本」だと紹介されています。

読んでみます。