[947](投稿)「国民作家の憂鬱」


<卓上四季>国民作家の憂鬱
07/11 05:00
国民作家と呼ばれた司馬遼太郎は「ひとびと」を哀惜し、尊重したが、大衆や庶民や人民を必ずしも信頼しなかった。群衆に至っては眉をひそめるばかりだった。作家の関川夏央さんが、「司馬遼太郎の『かたち』」に記した評価だ▼司馬は統帥権の独立という超法規的思想を産み落とした近代を「異胎」と呼んだ。そして、群衆こそが積極的助産婦の役割を果たしたという。日露講和条約を弱腰と批判し、日比谷公園で戦争継続の大会を開こうと暴動を起こした群衆である▼「私はこの大会と暴動こそ、むこう四十年の魔の季節への出発点ではなかったかと考えている」。倒れる前日まで筆を執った「文芸春秋」の巻頭随筆「この国のかたち」に書いた憂いであった▼ロシアのウクライナ侵攻の影響だろう。参院選は防衛力の在り方への関心が高まった。9条の下でも自衛権が認められているにもかかわらず、改憲論が注目されたのも不安の表れと言えよう▼選挙戦終盤に起きた安倍晋三元首相襲撃事件の衝撃も大きかった。その恐怖が増幅すれば、秩序や保安を優先する強権的監視社会に道が開かれるかもしれない▼ムードに流される群衆を恐れた司馬は「自分が生きているあいだにこんないい憲法をもつ国が出来ようとは思わなかった」とくぎを刺していた。国を守るためなら戦うと勇ましい声も上がる群衆に国民作家ならば何と答えたろうか。2022・7・11(北海道新聞デジタルより)


■一労働者の投稿
卓上四季のコラム氏はこう言います。司馬遼太郎氏はムードに流される群衆を恐れた。「日露講和条約を弱腰と批判し、日比谷公園で戦争継続の大会を開こうと暴動を起こした群衆」が、昭和の戦争の「積極的助産婦の役割を果たした」と●今回の参議院選挙では、「平和憲法」と呼ばれている現憲法を改悪しようと主張する党派がほとんど占拠しました。

●ロシアのプーチンウクライナに侵攻した時から、「日本の国家」がますます「専守防衛」から、「撃って出る」方向へと変わっていくのではないかと危惧していましたが、そのようになる可能性が今回の参議院選挙で増してしまいました。●それをどのように食い止めていくかが、この先の多くの労働者の役目ではないかと思います。●日露戦争や昭和の15年戦争を振り返って、「戦争反対」「平和憲法改悪反対」の声を上げることを忘れないようにしていきたいと思います。