[1239]「容疑者の動機を報じるな」とは?

 

 「容疑者の動機」を報じるべきではないという意見を言う国会議員が出てきたそうです。

東京新聞を抜粋して引用します。

「犯人の動機を報じるな」はどういう理屈? 首相襲撃事件で一部自民党議員が主張

2023年4月22日 

 岸田文雄首相に対する爆発物襲撃事件から22日で1週間。威力業務妨害容疑で現行犯逮捕された無職木村隆二容疑者(24)=兵庫県川西市=は黙秘を続けているとされ動機は不明だが、一部の自民党国会議員らからは、「犯人の動機を報じるな」との声が上がる。テロ肯定や、模倣犯につながるからだという。ただ、どのような背景から動機が生まれ、犯行に至ったかは重要な問題だし、その報道を権力側が統制するのはおかしい。「動機を報じるな」の理屈を検証する。(大杉はるか、中山岳)

細野豪志氏「報道に『売れる』という以外の価値を感じない」

 逮捕された木村容疑者は、いぜん黙秘を続けているという。共同通信によれば、昨年、参院選の被選挙権年齢制限などを違憲だとして本人訴訟で提訴していたことや、同容疑者のものとみられるツイッターに「岸田首相も世襲3世」などの投稿があったことが判明している。ただそれでも、今回の事件の動機や背景はまだ不明だ。 こうした中で、自民党の国会議員らが、「報道は動機や背景を追及するな」と主張している。 自民党細野豪志衆院議員は20日、「岸田総理を襲撃した男の人物像、テロの動機について報道合戦が始まった。私はこれらの報道に『売れる』という以外の価値を感じない」とツイート。「卑劣なテロ行為がなければ、男の政治や選挙制度に対する不満(単なるわがまま)を人々が知ることはなかった。テロにより目的の半分を達成したと言えるかもしれない」と続けた。

 孤独・孤立対策に取り組むNPO「あなたのいばしょ」の大空幸星こうき理事長の「犯行に至った背景を解明し、必要に応じて社会的アプローチを検討する事は必ずしもテロ行為に正当性を与えるものではない」というツイートには、「私はテロを起こした時点でその人間の主張や背景を一顧だにしない。そこから導き出される社会的アプローチなどない」と断じた。

引用以上

 細野氏が「テロを起こした時点でその人間の主張や背景を一顧だにしない」のは自由ですが、報道は動機や背景を追及するなというのはおかしいです。

 なぜ動機や背景を追及するなというのか。テロ肯定や、模倣犯につながるからだということのようです。報道された行為者の動機を受け手がどのように受け止めるかというのはその人の主体性の問題です。情報の受け手は行為者の動機目的を知らないと事件の評価と判断はできません。

 動機を知ってその人がどう考えるのかまで政治家が関与差配することはできません。動機を隠せというのは容疑者を行動に駆り立てたところの理由に権力者にとって「不都合な真実」が含まれているからではないでしょうか。語られたありのままの動機を隠せというのは真実を隠蔽する危ない意見です。

 私は政治家がこういう意見を公然と述べて同調圧力をかけ、メディアが萎縮するような風潮ができていることに危機感を覚えます。