[1366]G20首脳宣言が意味するもの

 インドが主催した今回のG20(主要20カ国•地域首脳会議)は、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が欠席し、ウクライナのゼレンスキー大統領は招待されませんでした。そしてアフリカ連合(55カ国)のG20加入が正式に認められました。

 G20首脳宣言が採択されましたが、インド•モディ首相は「我々のチームの懸命な努力とみなさんの協力のおかげで、合意に達することができた」と述べ、東西新冷戦下の世界においてどちらの陣営にも「等距離」をとるインドの今日的位置を誇示するものとなりました。

 宣言はウクライナにおける現在の戦闘を如何に表現するかを巡ってロシア、中国とアメリカをはじめとする西側諸国の間で意見が対立し調整が難航していましたが、ロシアを名指しした非難は避け「全ての国が、領土獲得のための武力による威嚇や行使を控えなければならない」と記しました。

 今なお多くの両国兵士を犠牲にしながらつづくウクライナ戦争に関して「ロシアによる侵攻」という表現が消え「ウクライナでの戦争」という表現が使われました。「核兵器の使用や威嚇は許されない」という文言を入れることでアメリカ•西側諸国は妥協したようです。中国•ロシアとの経済的政治的軍事的結びつきを強めているアフリカ、中南米の諸国はウクライナの戦争に西側帝国主義が関与していることを警戒しています。インドもG20のまとめ役としてウクライナ戦争への西側の関与を懸念しています。

 今回のG20は米ー中•ロの対立と抗争を基軸として動く現代資本主義世界に、インドとアフリカ、中南米諸国支配階級のパワーが台頭してきたことを告げ知らせるものとなりました。

 招待されなかったウクライナは首脳宣言を批判しています。以下毎日新聞を引用します。。

 

 「誇れるものは何もない」 G20宣言をウクライナ報道官が批判 

2023/9/10 02:22

 主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で9日に採択された首脳宣言を巡り、ウクライナのニコレンコ外務省報道官は同日、「ロシアのウクライナに対する侵略という点では、G20は何も誇れるものはない」と批判する声明をX(ツイッター)に投稿した。 首脳宣言ではウクライナ侵攻について、「全ての国が、領土獲得のための武力による威嚇や行使を控えなければならない」と記述し、ロシアへの名指し批判を避けた。ニコレンコ氏は「こうすれば文書はより現実に近くなる」として、宣言文の「全ての国」を消し、その上に「ロシア」と赤字で書き込んだ画像も合わせて投稿した。 ただ、「強い文言を盛り込もうとしたパートナーに感謝している」とも述べ、支援国には一定の配慮を示した。【ヨハネスブルク平野光芳】

 ウクライナの報道官のコメントはウクライナ戦争をめぐる世界各国支配者階級のスタンスが、西側のバックアップを受けたウクライナから距離をとっていることに苛立っていることを示しています。

 世界中の資本家階級の政府は、アメリカを意識したロシアのウクライナ侵略という激震による地殻変動の波に、自分の置きどころを探り落ち着こうとしているように、私は見えます。