[1431]首相の器は「ザル」

 11日の朝日新聞「多事奏論」で高橋純編集委員岸田文雄首相の人物評を書いています。このコラムに立憲民主党逢坂誠二氏がブログ「徒然日記」で感想を述べているので合わせてここで紹介します。

 高橋さんは器が大きいとか小さいとかいうが、岸田首相は「器がザル」と言わザルを得ないそうです。そのわけはいくら努力しても効果がないから。内閣改造、所得減税、人気回復に務めるもやればやるほど支持率低下。(確かにザルのようです。)高橋さんは「私がお抱え占い師ならば、こういう時こそ『自分』を見つめ直せと言うだろう。あなたは何をなすために首相になったのかーー。」と問うています。

 その高橋さんにとって10月30日の衆院予算委員会立憲民主党逢坂誠二氏の質問は「ナイス」だったと言います。逢坂誠二氏はブログ『徒然日記』でこの多事奏論に「一昨日の朝日新聞「多事奏論」で髙橋純子編集委員が言及してくれ、嬉しく感じました。」と感想を述べています。

 逢坂氏は「2045年、戦後100年をどんな気持ちで迎えるために今の総理の仕事をしているのか」と問いました。逢坂氏の『徒然日記』によれば上の質問の前に彼は次のように言いました。 「 私は日本が真の独立国、真の主権国家になるべきだと常々ずっと思っています。アメリカと日本の関係は大事です。切っても切れない重要な関係です。今、仮に官邸の前の道路に米軍のヘリが墜落しても、日本の警察は現場検証や捜査ができないんです。ほかにもそううことがいっぱいあるんですが、私は、本当の意味での主権国家になるんだ、独立国としてしっかりと自立をするんだ、そういう気概でこの国の政治をやっていきたいと思っています。」

 逢坂氏はここで政治家としての気概をか語り、岸田首相はどういう気概でやるのかを問うているのです。

 この質問を岸田首相は自分の国家像を問われたと受けとめて「私の目指す国家像としては······すべての人が生きがいを感じられる包摂的な社会を目指さなければならないと思っています。」と語り「やはり今、日本は国の内外で大きな変化に見舞われています。この変化に臆することなく、逆に変化を力に変えるようなしたたかさを持って将来の国づくりを考えていかなければならない。······変化を力に変えると同時に、明日は必ず今日より良くなる、希望を持てる国を作っていかなければならない。そのためにこの変化に対応すると同時に、防衛力だけではなくして、社会の変化、そして経済の変化にもしっかりと向き合っていく、先送りできない課題に一つ一つ向き合っていく必要があると考えて政治に臨んでいるところであります。」と結んでいます。逢坂氏は「結局、自分が言い出した国家像は語られることはありませんでした。」と感想を書いています。

 高橋さんは「多事奏論」で次のようにまとめています。

 「『戦後100年』のお題に対し、これほどどうでもいいことだけを並べられるのは一種の才能だ。」

 岸田首相の答弁に高橋さんは、国家像なんかなくても首相が務まる、これが私の国家像です、と言っているようなものだと怒っています。そして「要は首相就任から2年経った今でも『自分』がないということだろう。」と言い、「首相の任を全うすること能わザルなり。自ら身を引けぬなら、解散・総占拠で国民の信を問え」と迫っています。

 私は、齒に衣着せぬ高橋純子・編集委員のコラムを楽しみにしています。支持率が下り続ける首相に解散して信を問えと言っています。しかし彼は支持率が低下すればするほどムキになっています。日本国家を世界の「変化」に直対応した軍事強国に変貌させつつあります。

 岸田首相は安倍元首相のような日本軍国主義国家建設の「夢」を語ることはない、いや語れないというべきでしょう。ウクライナ戦争とガザ戦争の勃発は第二次世界大戦の戦後の終焉を告知しました。今なお多くの犠牲を出しつづけています。なんとかして止めなければなりません。岸田首相には変化する世界に対応して日本の軍事大国化を基礎とした日米軍事同盟の強化をまるで足し算のように無表情に進めていくという危うさがあります。いまはアメリカの言う通りに動いています。

 高橋さんが言うように岸田首相は政治家として自分がない、今だけ、自分の保身だけです。やっていることは戦争の態勢づくりですが、それが日本の今と将来に何をもたらすか想像できない首相です。わからないでコマを進めているという意味で極めて危険です。