[1212]「捏造」発言、「言葉 政治家は磨いているか」

 

 4月5日朝日新聞「多事奏論」で高橋純編集委員が小西議員による高市経済安保担当相の「捏造」発言批判への答弁をはっきり分かりやすく批判しています。

 放送法をめぐる自身の発言が収録された行政文書を高市氏が「捏造」だと言ったことについて、立憲民主党の小西議員から「文書が捏造でなかったら大臣も議員もやめるということでいいか」と問われたことにたいして高市氏は「けっこうですよ」と言いました。高橋さんはこの答弁について「鼻で笑う=軽蔑のニュアンスを答弁にのせられるのがすごい」と揶揄しています。

「猛々(たけだけ)しくて太々(ふてぶて)しくて」とまで言います。おまけに「キングオブ猛々太々たる麻生太郎自民党副総裁の背中はもうすぐだ」とだめ押ししています。さらに高市氏は「安倍氏に振る舞いが似てゆく」ともいいます。怒りが伝わってきます。

2014年10月の「安倍首相(当時)の国会答弁は、今思い出しても怒りに震える」

 2014年10月朝日新聞ほか新聞各社は政治資金問題での野党の追及をめぐり、「撃ち方やめ」になればと安倍首相が語ったと報じましたた。

 高橋さんは次のようにいいます。

「国会で事実関係をただされた安倍氏はこう言い放った。

『今日の朝日新聞ですかね。これは捏造です。』

 各紙の報道には根拠がある。首相の側近議員が記者団にそう説明したのだ。事実誤認なら側近を注意すべきで、実際、側近は『「撃ち方やめ」は自分の言葉だった』と説明を修正した。にもかかわらず、である。安倍氏は翌日の国会でも再び朝日新聞だけを名指しし、『私は「撃ち方やめ」とは言っていない。火がないところに火をおこしている。記事としては捏造だろうというのが率直な感想だ』。破廉恥なメディア攻撃。なのに他媒体がおおむね『静観』を決め込んだのにも驚き、絶望の念を深めた。」

 高橋さんは、当時から孤軍奮闘していました。歯に衣着せぬ批判、ここまで言って大丈夫かといささかハラハラしますが、次の段落で、今日の高市氏に向き合って諌めています。

「権力者は捏造という言葉を振り回してはならないと私は思う。正誤の問題を超えて、行為者の悪意を一方的に認定することになるからだ。メディアも、官僚も、民主主義という『競技』のプレーヤーである。厳しく批判しつつも互いへの敬意とフェアプレー精神をもって全力で闘う。·····首相や閣僚はその範を示すトッププレーヤーであるべきで、勝てば良いというものでは当然ない。磨くべきは何より言葉。雑に言葉を操る政治家は本来、フィールドに立つ資格がない。」

 こう言われれば高市大臣はグーの音もでないでしょう。捏造発言にたいする筆者の怒りの理性的基準が論理的に表現されています。

 終りのパラグラフで筆者はいいます。

 「それにしても、14年が分水嶺だったのだと改めて思う。憲法9条を空文化させた安全保障法制の閣議決定がされたのが同年7月。放送法の解釈変更の起点は同年11月。国家が軍拡に踏み出す時は後ろ脚で自由を踏みつけている。」

 日本のメディアの中にこういう文章を書いて発表する人がいることに救われる感ありです。毎日新聞の伊藤さんの「土記」とともに朝日新聞「多事奏論」の高橋さんのこれからに期待します。