[1510](寄稿)医療あれこれ(その101)−2

ペンギンドクターより

その2

 H市のO商店の倒産についてはもう3-4年前になると思いますが、現当主からちょっと詳しい年賀状が来ました。在京H高校同窓会で妹に会ったので消息を聞きましたが、そのことを妹が当主に伝えたのかもしれません。倒産はもうかなり前のことになりますから、そのことは落ち着いているようです。話題は自分の母親のことや奥さんのことでした。彼はH高校25期卒です。メールアドレスが付記されていたので、今年になってメールしてみました。すると4ページほどの詳しい近況が述べられた返事が来ました。そのことについて述べる前に彼と私との経緯を伝えておきましょう。
 彼はもともと母のⅠ幼稚園時代の教え子です。母はⅠ幼稚園時代が長いので、私より年長からずっと下まで、母には数多くの「教え子」がいます。それに加えて、母は記憶力がいいというか、世話好きというか、家族関係も含めて何でもよく知っていました。そのせいもあり、私が大学に入って休みに帰省すると、短期間ですが、ちょっと英語や数学の面倒をみたのです。その一人がO君でした。O商店の創業者?Tさんからその息子さん、その奥さんK子さん(昭和23年市女卒、現在施設入所中)、現当主、妹など皆母の顔馴染みで親しい人々でした。母の7回忌にはK子さんにも来てもらいました。
 さて、病気のことですが、まず現当主まで続く「糖尿病」があります。現当主の祖父も糖尿病でした。詳細は古いことでわかりませんが、私も子供の時会ったことがあります。確かM競馬に一緒に行ったことがあった記憶があります。その息子さんも糖尿病で、彼は心筋梗塞で急死しました。木材だかシイタケだか山に状況を見に行って帰ってこないので捜しに行ったら小屋で亡くなっていたとか聞いたことがあります。奥さんのK子さんもこちらは偶然ですが糖尿病です。現当主も糖尿病です。彼はタバコも吸っていました。今はどうかは知りませんが。足の動脈が細くなっていて「そのうち切断だ。タバコをやめるように」と伝えたことがあります。現当主の奥さんはもちろん血縁ではありませんから、糖尿病云々は無関係です。別に持っているかもしれませんが。糖尿病というのは、全身の免疫力を低下させますのでガンの発生が増えます。大血管や小血管の狭窄・閉塞を起こしますから脳卒中や心血管病を起こします。非常に数が多い。やっかいな全身病です。 
 そこで、現当主のメールの内容に触れます。奥さんのCLL(慢性リンパ性白血病)ですが、現在白血球数(ほとんどがリンパ球)は7万と著増しています。しかしまったく症状はなく、お元気のようです。彼女から病気のことを聞いたのは、2018年10月26日(金)のことです。なぜ覚えているかと言うと(日記に残っている)、この日私は大学の後輩の中野区にある病院に手伝いに行っていた時に携帯に電話が入ったからです。詳しいことは省きますが、最初は「マントル細胞リンパ腫」という診断で入院精査となったのですが、それが誤診だったと不満を述べる電話だったのです。私はその時、「誤診でよかったじゃないか、いずれにしろ何か異常があることは確かだから、良く調べてもらうように」と伝えました。なぜ誤診となったか想像はつきますが、長くなるので省略します。結果的には慢性リンパ性白血病でした。これは無症状なら無治療で経過をみるということでOKです。老人に多いのでということもあります。しかし、無症状ではありますが、少しずつリンパ球が増加してきて当初の1-2万から現在7万になっているわけです。そして、最近は「分子標的薬」という新薬が登場してきて、治療の選択の幅が広がりました。そこで、この2月に新たな治験をするかどうか、再診察をしてもらうことになっているようです。私は治療費がかからないこと、治験であれば、製薬会社との共同作業なので、忙しい医師のみより面倒見がいいはずだから是非治験に参加するように伝えました。いわゆる1次2次の治験ではないので、偽薬(プラセボ)投与ではないと思います。
 さらにメールでは当主自身の疾患、左大腿部裏側に出来た腫瘤(脂肪腫か脂肪肉腫か)についての悩みが綴られていました。こちらも詳細は省きますが、島根医大の整形外科の腫瘍専門医の診断・治療を受けるようです。 私は返事のメールに、持論である「病気は天から降って来る」と話し、私の経験さらに大学の同級生たちの病気についていろいろ話しておきました。「別に悪いことはしていないのに、どうして私がこんな病気に……」という人は多いのですが、病気はそういうものです。まして糖尿病にタバコが加わればその頻度は増すわけです。最近は少量のアルコールも危険だという意見が強くなっています。長生きも大変です。
 メールには施設入所中のK子おばさんが、私に会いたがっているとあったので、母の墓参に行った時、寄ってみようかと思っています。また当主の29歳の次男に5月長男が生まれそうだと、これだけが今のところ明るい話だと結んでありました。文章も理路整然としていてしっかりしていました。彼も今年68歳、昔の頼りない男であるはずはないのが当然ですね。この話はこのへんで。 

つづく