[1526]今の世界の常識を疑えーその2

「現代の戦争の原因は土地の権利と食料の供給をめぐる問題にあると言っても過言ではないだろう。」と言い、山極さんはつづけます。

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 だとすれば、戦争を終結させるためには定住と所有の呪縛を弱めていけばいい。

 長い間、神仏習合で神社にもお寺にもお参りしてきた日本人にとって、ユダヤ教キリスト教イスラム教の激しい対立は不思議なことのように思える。

 日本には容中律という「あいだ」を認める思想があって、こっちかあっちかしかない欧米や中東の排中律に基づいた世界観を見直す契機が潜んでいる。

 今、日本の漫画やアニメが世界で人気を集めている。それは現世と違う世界のパラレルワールドを描いているからだと私は思う。この世とあの世が往還不能一神教の世界にはない、時空間を越えた交流が可能な世界観を日本の文化が創ってきたからである。世界の若者たちがその世界に魅力を感じ始めているのをみると、第二のジャポニズムが到来し始めている予感がする。

 排中律ではなく容中律の考えを用いて、多民族、多宗教、多文化が共存できる社会を構想しなければならない。

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 あしたのジョーのファンだった私ですが、近頃アニメや漫画をみていません。ですから第二のジャポニズムの到来と言われてもよくわかりません。しかしあっちかこっちかという考え方は日本でも徹底されているように思います。

 例えばゼレンスキーのウクライナは善でプーチンのロシアは悪、という単純な二者択一の思考がメディアを通して流されています。

 アニメや漫画の文化的世界では容中律の考えが若者に受けいれられているというのはいいことなのかもしれません。「あいだ」を認め考えることは大切なことだと思います。

 根本的には「シェアリングに基づく平等性が徹底していて、すべての土地を共有地にして集団間の争いを防い」でいけるような社会をつくることが必要です。ですが土地の私有をやめて共有地にするだけではうまくいきません。ソ連邦は土地を含む生産諸手段を国家の所有にしましたが、過渡期国家建設に失敗しました。シェアリングに基づく平等性が国づくりの担い手である労働者の意識に根付いていなければなりません。社会建設の先頭に立つ党や国家組織の官僚主義化の可能性を断たなければなりません。国の仕組みづくりと、ここで言われている「あいだ」を深く考えるような文化とが統一されることが必要ないのではないでしょうか。