2月10日の毎日新聞「コモンエイジ」に
「今の世界を疑え」というタイトルで山極寿一さんが寄稿しています。おもしろく勉強させてもらいました。
一部引用します。
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ベルリンの壁が崩壊して東西冷戦が終結し、誰もが平和な世界がやってくると思ったことだろう。しかし、それから三十余年、毎年のように世界各地で武力衝突が起こっているし、現在もなおロシアによるウクライナへの軍事侵攻やハマスとイスラエルの戦争が続いている。
なぜ人類は戦いをやめないのか。人類にとって戦争は本性なのだろうか。私の答えははっきりしている。
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ここまで読んだ私は興味津々になリました。
引用をつづけます。
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人類の700万年に及ぶ進化史の99%以上は戦争がなかった。約1万年前から定住と所有が人類の暮らしの中心になり、言葉によって敵意をあおるようになって顕著になった。極めて新しい現象なのである。
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戦争は1万年前頃から顕著になったという説を私は知りませんでした。戦争は人間に欲があるからなくならない、という説は巷間で言われています。私は戦争が起きるのは国家間に政治経済的な対立と抗争があるからであって、「欲」一般から演繹的に説明することは間違いだと思っています。歴史的には欲は私的私有が発生したからだと思っています。そう思っていた私にとって山極さんの話は具体的で新鮮です。
引用をつづけます。
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農耕と牧畜を開始するまでの人類の暮らしは、自然の網の目を縫うようにして暮らしを立てる移動生活であった。そこではシェアリングに基づく平等性が徹底していて、すべての土地を共有地にして集団間の争いを防いでいた。
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この時代は原始共産制の時代と言っていいと思います。私的所有がなければ所有をめぐる争いは起きません。戦争はなぜ起きたのか。山極さんはつづけて言います。
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戦争が起きたのは定住し、所有物が増え、人口が拡大したせいである。生産性を向上するために人が駆り集められ、家畜のように労働に従事させられた。初期の戦争は奴隷の獲得が主目的だったし、都市の城壁は防衛より労働者を゙逃さない仕組みだったという説がある。
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定住がはじまるとともに集団に土地を含む生産手段の私的所有がはじまリました。食べ・住み・生むために生活手段を生産しなければなりません。
私的所有が現れると自分の所有物、他者の私有物という区別意識も発生します。
初期の戦争は奴隷の獲得が目的だったという説があるといいます。なるほどです。ものは略奪し消費すれば消えますが、ものを生産する労働力は生きている限りものをつくる能力は消えませんからね。
山極さんはさらに言います。
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現代の私たちも過去の文明のあしき遺産を受け継ぎ、科学技術を駆使して生産性を高め、資源集約と労働集約に象徴される資本主義社会を作った。その結果、都市の人口は急増し、ますます食料生産力を高めねばならなくなった。
現代の戦争の原因は土地の権利と食料の供給をめぐる問題にあると言っても過言ではないだろう。
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この意見は正しいと思います。ここで言われている「土地」は原油やガス、金属など可能的天然資源も含まれています。やはり「人に欲があるからいつの世も戦争が起きる」という意見は、私的所有がある今日の社会で生きる人の意識に発生する観念です。
つづく